東京電力:来年大幅値上げも 基準価格改定、燃料高転嫁を容易に

 東京電力は26日、発電コスト全体を見直す「本格改定」を9月をめどに実施し、電気料金を見直すと発表した。燃料費負担の増加を料金に反映させる際の「基準燃料価格」を引き上げ、高騰が続く原油価格を料金に転嫁しやすくする。実際の料金は年内は据え置く方向だが、来年1月以降大幅値上げされる可能性が出てきた。改定は06年4月以来で、7月に経済産業省に届ける。
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毎日新聞 2008年6月27日 東京朝刊


東京電力:
料金改定 原発停止・原油高で決断 「経営努力で吸収できず」

 東京電力が2年ぶりとなる電気料金の「本格改定」に踏み切ることを決めたのは、昨年7月の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所の運転停止に原油価格の急騰が重なり、経営の屋台骨が揺らぎかねないと判断したためだ。改定により原油価格の高騰を電気料金に上乗せしやすくなり、燃料費の負担増に苦しむ他の電力各社でも追随する動きが広がりそうだ。【谷川貴史】
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毎日新聞 2008年6月27日 東京朝刊


中越沖地震:
柏崎刈羽原発安全性問題 技術委8月中開催へ 2小委平行線で/新潟
 ◇論議中断の可能性

 東京電力柏崎刈羽原発の安全性について県に助言する技術委員会は、8月中をめどに委員会の会合を開催する方針を固めた。技術委の下では現在、「地質・地盤」問題と「設備健全性、耐震安全性」問題に関する小委員会が開かれているが、議論は平行線。小委の論点を一度整理し、技術委に上げる見通し。技術委の判断次第では小委の議論を中断する可能性も出てきた。【渡辺暢】

 県は昨年の中越沖地震を受けて、技術委の体制を強化した。委員会下部に二つの小委を設置し、出された意見を参考にして、技術委が具体的な助言をまとめる計画だ。技術委の助言は、原発再開について、県などが了解するかという問題にも大きく影響する。

 しかし、小委では、原発の安全性に疑問を持つ委員と容認する委員との間で、議論がかみ合わない状況が続いている。23日開かれた「地震、地質・地盤に関する小委員会」でも、委員同士が激しく衝突。委員長の山崎晴雄・首都大学東京大学院教授は「どこかで線を引かないといけないが、新しいデータを取る方法もない。私自身は東電は結構データを出していると思うし、いったん(上部委員会に両論併記で)上げるしかないのでは」と話す。

 関係者によると、技術委で「小委員会でこれ以上の議論の発展はない」と見なされた場合、小委開催を中断する可能性もある。そうなった場合、発言の機会を失う小委委員からの反発も予想される。

毎日新聞 2008年6月24日 地方版


柏崎刈羽原発:
立石教授「安全重視の評価を」--県技術委小委 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発の安全性について県に助言する県技術委員会の「地震、地質・地盤に関する小委員会」の第5回会合が3日、新潟市内で開かれ、先月発表された新たな基準地震動について議論した。立石雅昭・新潟大教授は、東電による断層の評価について反論。「現時点では両者の相違は埋まらない」と、より安全を重視した評価を求めた。

 立石教授は、「変動地形学的な立場からみれば、(震源断層とされているF-B断層より北東に)断層がある可能性は否定できない」と主張。東電はこれらの手法を採用していないとして、「(東電との)視点の相違は現時点では埋まらない。だからこそ、現時点では安全サイドに立って評価すべきだ」と述べた。【渡辺暢】

毎日新聞 2008年6月4日 地方版


柏崎刈羽原発:
東電、県技術委小委に基準地震動を説明 議論、また物別れ /新潟

 東京電力は27日、柏崎刈羽原発の耐震設計の基準となる新たな基準地震動について、県の技術委員会「地震、地質・地盤に関する小委員会」や地元自治体に説明を行った。議論は従前通り、反対派と容認派の委員とで対立。小委員会の意見取りまとめは、活断層の評価について「両論併記」する論点整理にとどまる可能性が高まった。

 説明会は県庁で開かれ、東電の新潟県中越沖地震対策センター職員が算定の根拠となる活断層の長さや地盤構造について、調査方法などを解説した。

 説明会後、委員長の山崎晴雄・首都大学東京教授が「一つのモデルとして納得は出来る」と評価した。一方、立石雅昭・新潟大教授は「(震源断層とされるF-B断層が)34キロかどうかも議論中で、もっと長くみるべきだ。今後も小委員会で議論していく」と批判した。山崎教授は「(小委員会の)片方は確たる証拠もないまま、断層が長いと主張している。このまま物別れに終わって結論はまとまらないだろう」と話した。【渡辺暢】

毎日新聞 2008年5月28日 地方版


社説:
柏崎刈羽原発 ここだけが特殊とは限らない

 建設時の想定に比べ、5倍の揺れを想定する必要があるという。新潟県の柏崎刈羽原発について東京電力がまとめ、経済産業省の原子力安全・保安院に提出した報告書の内容だ。

 柏崎刈羽原発では、昨年7月の中越沖地震で実際に「想定外」の揺れが記録された。それだけでも市民の不安は大きいが、かつての想定の5倍とは驚くような値だ。

 いったいなぜ、これほどの開きが生じたのか。

 原発の耐震指針は06年に28年ぶりに改定されている。全国の電力会社など事業者は、これを基に既存の原発施設の再評価を進めている。柏崎刈羽原発も新指針を基に再評価してきたが、その際に中越沖地震の観測データを踏まえるよう、求められていた。

 その結果、揺れの大幅な引き上げにつながる複数の要素が明らかになった。第一に、中越沖地震の震源断層と思われる活断層を設計時に想定していなかった。これとは別に、連動して動く可能性のある三つの断層を別々に評価していた。

 加えて、地盤の構造に揺れを増幅する特徴があることも明らかになったという。震源から出る波が重なり合う現象や、地層が波状に曲がった褶曲(しゅうきょく)構造による増幅効果だ。

 東電は当時の知見ではわからなかったという。しかし、最新知見による見直しを定期的に行うべきだったのではないか。

 今回の結果は、他の原発にとっても人ごとではない。柏崎刈羽以外の全国の原発も、新指針に基づく再評価で、想定される揺れを軒並み引き上げている。ただ、これまでの報告では、補強工事の必要はないと結論付けている。安全に余裕を持たせて設計してあるのでだいじょうぶという理由からだ。

 だが、今回の柏崎刈羽のケースをみると、それで安心はできない。揺れを増幅する地下の構造は柏崎刈羽に特徴的なものと東電はみるが、別の場所にも同様の効果を生む構造がないとは限らない。柏崎刈羽が特殊だったとの思い込みは避けるべきだ。その上で、必要な補強工事をためらうべきでない。

 柏崎刈羽を含め、原発の耐震性の再評価は国がチェックする。ここでも、電力会社の報告をうのみにするのではなく、責任を持った評価を尽くしてほしい。

 東電は6月から補強工事を始めるという。しかし、中越沖地震による影響の点検も、まだ終わったわけではない。今回の報告書の妥当性も、補強工事の妥当性も、国の評価で覆される可能性は残されている。

 原発にも地震にも、不確かなリスクがつきまとう。柏崎刈羽に限らず、非常に大きな揺れに見舞われる可能性のある場所で原発運転を続けるべきなのか。そういった根本的課題も含め慎重な検討が欠かせない。

毎日新聞 2008年5月24日 東京朝刊


中越沖地震、活断層の過小評価 耐震性、信頼揺らぐ--他原発でも同じ例

 新潟県中越沖地震の震源だった可能性が指摘されている海底の断層について、柏崎刈羽原発建設時に「活断層でない」としていた東京電力が、活断層だったことを認めた。活断層の過小評価は、耐震設計の信頼性を根底から揺るがす事態だ。

 活断層が過小評価されていた例は他にもある。今年3月の能登半島地震では、北陸電力が三つに分かれているとしていた断層が一体となって動いて発生した。同社はこのうち1本については「活断層ではない」としていたが、専門家からは「通常なら1本のつながった活断層として評価する」との声が上がっていた。中国電力島根原発を巡っても、同社が長さ10キロとする原発近くの宍道断層について、広島工業大の中田高教授が「長さは20キロ」との調査結果を発表している。

 毎日新聞が昨年、全国の原発周辺にある活断層のうち、国の地震調査研究推進本部(推本)の調査対象になった17断層について、電力会社の調査結果と比較したところ、15断層で電力会社の方が想定地震を小さく見積もっていた。柏崎刈羽原発に近い長岡平野西縁断層帯についても、推本の調査ではマグニチュード(M)8の巨大地震が想定されたが、東京電力の想定はM6・9だった。

 原発が想定外の揺れに襲われる事態は、東北電力女川原発で03年と05年の2回、能登半島地震で志賀原発、中越沖地震で柏崎刈羽原発と、既に4回に達した。各電力会社は今、昨年9月に改定された国の原発の耐震指針に基づき、耐震性のチェックを進めているが、活断層の過小評価を繰り返すことは許されない。十分に安全側に判断して耐震性の評価を進めない限り、国民の原発の耐震性への不安は解消できない。【鯨岡秀紀】

毎日新聞 2007年12月6日 東京朝刊
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