【5団体共同政策提案】

                           2006年9月7日
国土交通大臣
北側 一雄 殿

               財団法人 さわやか福祉財団
                 理事長 堀田 力
               NPO法人 市民福祉団体全国協議会
                 代表理事 米山 孝平
               NPO法人 全国移動サービスネットワーク
                 理事長 杉本 依子
               移送・移動サービス地域ネットワーク団体連合会
                 代表  竹田 保
               NPO法人 移動支援フォーラム
                 代表  長谷川 清


  改正道路運送法の施行にあたって(政策提案)

 改正道路運送法の施行にあたっては、市民団体・ボランティア団体の活動を抑制することなく、誰もが、いつでも気軽に、自由にどこへでも、出かけられる社会が実現できるように、以下について要請いたします。

<提案事項>
1.意見公募の手つづき(パブリックコメント)のありかた
2.ボランティア活動の定義と改正道路運送法の適用について
3.福祉有償運送を利用する移動制約者の考えかたと運用
4.運営協議会の開催から団体の登録にいたるプロセス

1.意見公募の手つづき(パブリックコメント)のありかた
 パブリックコメントを行う際には、国民がその内容を十分に理解した上で意見表明ができるよう、可能な限り詳細な内容を提示すべきです。道路運送法改正に係る省令および告示・通達に関するパブリックコメントでは、予定されている内容の詳細が明らかにされず、単なる資料が示されただけで、国民が適切に判断し、意見表明をする機会が不当に制限されています。

2.ボランティア活動の定義と改正道路運送法の適用について
 自家用有償旅客運送関係において示された告示・通達(案)等を総合すれば、今回の法改正により登録を受けることが想定されているのは、自ら自動車及び運転者を確保し、運行・管理体制を整備するなど、タクシー運送事業者に準ずる物的・人的設備を整え、多数の旅客を相手に、日常的、継続的、組織的に運送事業を行う者です(もしそういう者を想定していないならば、省令案による規制は明らかに過剰である。)。
 ところが、世の中には、生活上必要な家事や外出などに支援を必要とする高齢者などに対し、謝礼もしくは実費を通常伴うボランティアを仲介する助け合い活動を行っている団体(NPOの場合と人格なき社団の場合がある)は数多くあります。そして、外出支援の場合は、その団体の自家用車よりも、ボランティア個人の自家用車を使用することが多いのが実態です。
 もしこれらの運送(助け合いによる福祉輸送)について団体の登録を要するとなると、省令等の求める要件に適合することは不可能であり、省令案は、これらの活動を社会から抹殺することになります。これは、北側一雄国土交通大臣の国会答弁(5月11日参議院国交委員会)に反する、反社会的措置というほかありません。
 よって、省令等の制定に当たっては、あわせて運用通達を発出し、上記のような助け合いによる福祉輸送については、運送行為でなく助け合い行為について謝礼金を手交する場合はもちろんのこと、当然として、運送行為について報酬に至らない謝礼ないしは実費を手交する場合であっても、「有償運送」には当たらないことを明記するよう要請します。

以下参考 (6月22日付 さわやか福祉財団 理事長 堀田力ふれあい移送に関する見解メモより)   このたび道路運送法の改正により、NPO等による福祉有償運送について登録制が採られ、運営協議会における合意が要件とされると共に、運送区域、対価、運転者、運行登録等についてさまざまな規制に服することとなったが、ふれあいボランティア活動を行う団体又は活動者が行う次のような移送は、登録する必要がないと解する。
1.利用者から運送の対価を受け取らない場合
(1)団体又は個人の自家用車(福祉車両、セダン等)を、用いて会員のための移送を行う運転者が、団体から給与、報酬、謝礼等を受け取り、また、団体がガソリン代を負担している場合であっても、利用会員から移送に対応する対価を受け取らないときは、「有償」ではない。
(2)移送の都度、対価を払わなくても、会員が団体に支払う会費その他の名目の金員が、移送の対価と認められるときは、「有償」となる。移送サービスだけを行う団体が、会員の移送に必要な実費の全部又は一部をまかなうため、会費を徴収しているときは、有償と解されるおそれが強い。
2.利用者が移送に伴って謝礼金を手交する場合
(1)個人として、たまたま近隣の人等に対する善意で移送を行い、これに対し謝礼として金品を受け取った場合においては、たとえその金品の価額が実費を超えていたとしても、社交的儀礼の範囲に止まる限り、「有償」運送にはあたらない(従前からの国交省解釈)。
(2)団体が、外出支援を含む各種のふれあい・助け合いの活動を行っており、団体又は個人の自家用車による移送が外出支援の一つの手段として行われる場合において、会費(個別の活動に対応しない、たとえば月単位の会費)が、移送だけでなく、すべてのふれあい・助け合いの活動の費用をまかなうために支払われているときは、たとえその費用から運転者の給料等やガソリン代が支払われていても、移送と会費支払いとは対価関係に立たないから、「有償」ではない。
(3)上記(2)の場合において、ふれあい・助け合いの活動に対し、時間等に応じて団体あるいは活動者に謝礼金が支払われるときは、その謝礼金の額等によって、次のように解される。
1)謝礼金の額が、移送活動をしたことに対して特別費として定められているときは、「有償」運送となり、登録を要する。
2)謝礼金の額が定められているが、その額が、移送をした場合であると否とにかかわらず同額であるときは、一般的には謝礼金は「移送」の対価とは認められない。 ただし、謝礼金の額がかなり高額で、移送の費用の負担分を含むと認められるときは、「有償」と認められる(実際にはそのように高額な謝礼金を設定しているさわやか福祉財団の仲間はいないと認識している)。
3)助け合い活動又は移送に対する謝礼金の支払いの要否又はその額自体が、利用者の任意の判断に委ねられているときは、「有償」にはあたらない。

3.福祉有償運送を利用する移動制約者の考えかたと運用
 ガイドラインおよびセダン特区で過疎地有償運送、福祉有償運送が利用できている人が、改正により、利用できなくなることが決して起こらないよう、利用者の範囲は、少なくともガイドラインでの対象を維持するよう要請します。
 福祉有償運送の旅客は障害の種別により扱いを変えず、すべての障害者が福祉有償運送の旅客対象であることを明確にすべきです。
 福祉有償運送においても、障害の種類によって、いかなる差別もされないようにしてください。12月に施行予定のバリアフリー新法では、障害者には身体障害のみならず、知的障害、精神障害、発達障害も含むことが明確にされています。障害によってそれぞれ障害に起因する公共交通利用上の困難があります。また、発達障害については発達障害者支援法が昨年4月に施行となり、国は発達障害者の支援に向け、積極的に取り組むこととなっています。ガイドラインでは発達障害について何ら触れられていませんでしたが、今回改正にあたり、配慮されるよう要請します。

4.運営協議会の開催から団体の登録にいたるプロセス
 福祉有償運送の実施には、運営協議会の開催が前提となります。運営協議会の開催を容易にせず、過度の人的、経済的な負担を地方自治体に掛けることは、運営協議会の開催を抑制し、よって、この制度の普及を遅らせます。その為、以下について要請します。

(1)自治体の権限の強化
 運営協議会における合意の方法として、国自旅第240号(ガイドライン)で書かれているように、『構成員による協議が調わない場合においては、主宰者及び主宰者があらかじめ構成員の中から指名した者が協議して決定するところによるものとする。』を書いて下さい。
 そのため、今回の運営要領の以下を削除して下さい。
『この場合において、全会一致が望ましいが、これにより難い場合は、予め運営協議
会の設置要綱に、公正・中立な運営を確保するための議決に係る方法を定めるとともに、運営協議会の構成員のバランスにも配慮し議決を行う方法を定めるとともに、運営協議会の構成員のバランスにも配慮し議決を行う必要がある。』

(2)運営協議会開催の義務付け
 地域によっては、全く運営協議会の開催を考慮していない地方自治体があります。このような実態回避のため、自治体が福祉有償運送団体からの運営協議会開催を要求されたにも関わらず、開催せず、団体から運輸支局に直接申請があった場合は、福祉有償運送については、運輸支局が地方自治体に運営協議会の開催について話し合うよう明記すべきです。

(3)運営協議会の審査事項の簡素化
幹事会及び判定委員会は、これまで検討課題として挙げられたこともなく、それぞれの運用内容についての検討が不十分なままモデル要綱に記載されています。運営協議会で判断するべき問題であり、不必要なのでモデル要綱から削除すべきです。

(4)利用者の住所地主義に基づく手続きの廃止
利用者の範囲については当該市町村在住者に限らず、運送の範囲である「発地又は着地」のどちらかの条件に合っていれば、利用対象者として認めるべきです。
移動困難者が必要とする公共施設・病院等は、当該市区町村内で需要が完結するとは限りません。当該住民だけの利便性を確保するだけでなく、移動困難者に対する移動環境を充実させる視点を持つべきです。

(5)福祉車両所有の義務化の廃止
セダン型車両の使用については、セダン特区が全国化する以上、利用対象者を限定すべきではありません。また、福祉車両保有の義務化もすべきではありません。
現行のセダン特区では、利用対象者の範囲は福祉車両対象者と同一であり、かつ、福祉車両保有の義務化もありません。登録制度となることによってセダン型車両の利用者を制限することはセダン特区での取り組み自体を否定することであり、規制緩和を目的とした構造改革特区とは逆行します。

(6)運送の対価についての考え方の整理
1)旅客から収受する対価まで通達で規制しないでください。
旅客から収受する対価については地域の協議会で個々の団体に即して判断すべきです。旅客から収受する対価については地域の協議会で個々の団体に即して判断すべきです。運送の対価については、地域の状況や申請団体の運行方法等によって違ってくるのは当然であり、一律した基準を持って運送の対価を運営協議会で諮ることは非営利性の確保ではなく、単なる価格設定に過ぎません。
2)運送の対価はタクシーの上限運賃と比較せず、団体の実態に合わせて個々に判断されるべきです。
今回のパブリックコメントでは,対価の基準は「運送の対価が実費の範囲であり、かつ、営利行為とは認められないものとして妥当な場合として、当該地域のタクシーの上限運賃等を勘案した目安を定める」としています。しかし、自家用有償旅客運送とタクシーとは全く別の事業であり、実費の範囲としてタクシーと比較することにはなんら妥当性が見出せません。

以下参考 (7月28日付 移動支援フォーラム政策提案より)営利行為とは認められないもので,実費の範囲内であること」と示されています。このことについて次のように適切に判断されるような基準が示されるように要望します。まず,「営利行為と認められないもの」についてですが,今回の改正で挙げられている運送主体は市町村の他,公益法人に分類される法人ですが,営利を目的とする法人が収益事業をした場合、利潤を株主や社員に分配するのに対し、公益法人が行う収益事業の利潤は基本的に公益事業の目的に再投資し,関係者で配分することはできないことになっています。そもそも公益法人が営利を目的とすることは考えにくいのです。また,「実費の範囲内での対価」については,利潤を生まない範囲での対価であることを明確にしてください。利潤とは,サービスを提供することにより生ずる収入から,サーヒスを提供することにかかる費用をさしひいたものであり,その際には,サービス提供に必要な燃料費,保険料,車両維持費,駐車場代,人件費その他サービスに必要な費用全てが認められるべきです。営利であるかという場合に,担い手が収入を得ているのかどうかが問題とされる場合がありますが,上述のように,人件費も必要な費用であり,担い手が,公益法人に雇われているとしても,その人が社会の一員として生活するに遜色のないだけの給与は当然支払われなければなりません。また例え,ボランティア活動であったとしても,市場の賃金よりも少ない報酬が支払われる活動はその差額の範囲において無償労働を提供しているボランティアといえます。このような考え方は「有償ボランティアpaid volunteering」として欧米でも定着しており,これら担い手への支払いも移動サービスの提供に必要な実費として認められるべきです。このような合理的な考え方により算出された対価が協議会で尊重されるよう明確な基準を示すとともに,通知等で徹底させてください。

(7)活動実態に即した認定講習科目の設定
運転研修は運転及び介助を基本とする研修にすべきであり、使用車両によって研修の種類等を変えるべきではありません。また、管理者研修についても新規申請団体を配慮し、実務経験がなくても研修受講で申請を認めるべきです。
セダン型車両使用者に対して特別な講習や資格等を取得させるのは、非営利活動でありながらも団体としての経費負担増につながり、本末転倒になりかねません。使用車両がセダン型であっても福祉車両であっても、必要とされる運転・介助技術は運転者に受講を求める運転研修に含まれるべきであり、それをもって運転者条件とすべきです。
また、運行管理責任者についても今後の新規申請団体を受け入れる立場から、実務経験を課するのは現実的ではなく、研修の受講によって登録申請を受理すべきです。
さらに、講習に精神障害、知的障害、発達障害の介助についての項目を入れてください。ガイドラインで示された講習内容は身体障害、とくに車いすユーザーの介助が中心であり、その他の障害についての実践的な介助方法がほとんど扱われていません。利用者の安全確保のためにも十分に受講生が他の障害についても理解できるような講習内容にしてください。

(8)乗合について
1)公共交通機関を代表する例示としてタクシーを挙げるのは、適切でなく、強いて挙げるのであれば、乗合バスとすべきです。
2)文案では、旅客を限定しているのか、運送目的を限定しているのか、施設を限定しているのか、理解が困難です。
通達案を以下のように訂正し、運営協議会の合意の成立等過度な義務付けはやめて下さい。
『ドア・ツー・ドアの個別輸送を原則とするが、施行規則第49条第3号に掲げる者のうち透析患者の透析のための輸送、知的障害者施設の送迎等、その他必要ある場合には、当該地域における乗合バス等の公共交通機関による乗合運送が困難である場合には、乗合による運送が行う事が出来る。』とし、運営協議会の合意の成立等過度な義務付けはすべきではありません。

(9)対面点呼の原則の廃止
対面点呼は非営利活動の上では非現実的な管理方法であり、原則化すべきではありません。
非営利団体は事業所の規模、活動内容、活動時間、社会資源の活用等の現状から、事業所に立ち寄らず直行直帰で活動するケースが多いです。対面点呼の原則化は、現状の活動に大きな影響を与えることになり、移動困難者の利便性を損なうことにつながります。

(10)複数の地域にまたがる団体の手続きの簡略化
複数の自治体に申請している福祉有償運送団体は申請・更新等の事務手続きが煩雑となることが予想されるため、事務手続きの簡略化を考慮すべきです。
該当するすべての自治体に申請及び更新時の手続きを行うのは、提出書類の重複や運営協議会の手続き等の煩雑さを配慮すると、簡略化することが望ましいのは言うまでもありません。また、この申請の煩雑さが新規申請団体や利用者の要求によって運送の範囲を広げる際に大きな妨げとなります。

以上


◎緊急アピール「改正道路運送法の施行にあたって」

 わが国はかつてない高齢化社会を迎えています。だれもが人間らしい社会生活を全うするには、自由な移動と交通を保障しなければなりません。そこで公共交通をバリアフリー化すると同時に、STS移動サービスを導入し活用する必要があります。

 2004年に国土交通省は240号通達(ガイドライン)を発し、STSを福祉有償運送として許可する道を開きました。そして先の国会で道路運送法の一部を改正し、この10月からは、条件を満たすNPO活動を登録する制度がスタートします。

 私たちは住民参加による移動サービスをすすめ、だれひとり移動の制約を感じない社会をめざします。その目標を達成するためには、担い手が自由に参加できる活動でなければなりません。そういう視点から以下のように行動したいと考えています。

2006年7月28日
NPO法人 移動支援フォーラム

◎草の根の活動を休止に追い込まないように(行動指針)


1)いわゆる有償運送でなければ、団体登録する必要はありません
2)自治体に運営協議会を開催させ、福祉有償運送として登録します
3)必要なら移動支援フォーラムとして登録することもあります


1)いわゆる有償運送でなければ、団体登録する必要はありません
 これについては「さわやか福祉財団」の堀田理事長から見解が示されました。STS移動サービスを実施してきた立場から、この見解を支持し当面の標準的な指針とします(見解メモ参照)。

2)自治体に運営協議会を開催させ、福祉有償運送として登録します
 これまで移動サービス全国ネットワークなどが、運営協議会を設置する運動をすすめてきました。これからは地域の活動グループと地方自治体が、共同連携して地域交通を発展させるときです。

3)必要なら移動支援フォーラムとして登録することもあります
 任意団体もしくは個人で活動してきた担い手が、有償運送として登録する必要に迫られるとき、必要なら移動支援フォーラムの法人格において、当該地域の運営協議会に協議を申し入れます。

◎ふれあい移送に関する見解メモ '06.6.22

さわやか福祉財団 理事長 堀田力

 このたび道路運送法の改正により、NPO等による福祉有償運送について登録制が採られ、運営協議会における合意が要件とされると共に、運送区域、対価、運転者、運行登録等についてさまざまな規制に服することとなったが、ふれあいボランティア活動を行う団体又は活動者が行う次のような移送は、登録する必要がないと解する。
1.利用者から運送の対価を受け取らない場合

(1)団体又は個人の自家用車(福祉車両、セダン等)を、用いて会員のための移送を行う運転者が、団体から給与、報酬、謝礼等を受け取り、また、団体がガソリン代を負担している場合であっても、利用会員から移送に対応する対価を受け取らないときは、「有償」ではない。


(2)移送の都度、対価を払わなくても、会員が団体に支払う会費その他の名目の金員が、移送の対価と認められるときは、「有償」となる。移送サービスだけを行う団体が、会員の移送に必要な実費の全部又は一部をまかなうため、会費を徴収しているときは、有償と解されるおそれが強い。
2.利用者が移送に伴って謝礼金を手交する場合

(1)個人として、たまたま近隣の人等に対する善意で移送を行い、これに対し謝礼として金品を受け取った場合においては、たとえその金品の価額が実費を超えていたとしても、社交的儀礼の範囲に止まる限り、「有償」運送にはあたらない(従前からの国交省解釈)。


(2)団体が、外出支援を含む各種のふれあい・助け合いの活動を行っており、団体又は個人の自家用車による移送が外出支援の一つの手段として行われる場合において、会費(個別の活動に対応しない、たとえば月単位の会費)が、移送だけでなく、すべてのふれあい・助け合いの活動の費用をまかなうために支払われているときは、たとえその費用から
運転者の給料等やガソリン代が支払われていても、移送と会費支払いとは対価関係に立たないから、「有償」ではない。

(3)上記(2)の場合において、ふれあい・助け合いの活動に対し、時間等に応じて団体あるいは活動者に謝礼金が支払われるときは、その謝礼金の額等によって、次のように解される。

1)謝礼金の額が、移送活動をしたことに対して特別費として定められているときは、「有償」運送となり、登録を要する。

2)謝礼金の額が定められているが、その額が、移送をした場合であると否とにかかわらず同額であるときは、一般的には謝礼金は「移送」の対価とは認められない。
 ただし、謝礼金の額がかなり高額で、移送の費用の負担分を含むと認められるときは、「有償」と認められる(実際にはそのように高額な謝礼金を設定しているさわやか福祉財団の仲間はいないと認識している)。

3)助け合い活動又は移送に対する謝礼金の支払いの要否又はその額自体が、利用者の任意の判断に委ねられているときは、「有償」にはあたらない。


◎政策提案「改正法の施行にあたって検討すべき課題」

国土交通省は、改正道路運送法を施行するにあたって、今回改正の主眼である福祉有償運送について、地域住民の生活を左右しかねないと認識し、国会での審議および付帯決議にいたるまで、国民の声に謙虚に耳を傾けなければなりません。
 また時を同じくして採択された、通称バリアフリー新法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」において、地域住民の参加による協議会を設置することとされるなど、改正道路運送法を施行する上で整合性が求められます。
 そのような観点から、改正法の施行にあたって、省令・通達などに法改正の趣旨が十分反映されるよう期待します。以下にあげる4点は、ガイドライン~改正道路運送法を検討し、省令その他に反映するべき政策として提案するものです。

2006年7月28日
NPO法人 移動支援フォーラム

1 福祉有償運送の対象者をガイドラインより広く、移動に制約を感じる人および子どもとするべきです

2 公共交通を利用することが難しい、住民や移動困難者の意思が、もっとも重要であることを明確にしましょう

3 一般乗用自動車の方が乗りやすく、なじみやすい利用者に配慮し、使用する車両に制限を設けない

4 対価の基準とされている「実費の範囲」が、適切に判断されるよう基準を示す必要があります



1〈2-1(2)?運送の種類〉
 福祉有償運送の対象者をガイドラインより広く、移動に制約を感じる人および子どもとするべきです。
 今回の改正を前に「NPO等によるボランティア有償運送検討小委員会報告書」は、移動の対象を「肢体不自由、内部障害(人工透析患者等)、精神障害、知的障害等を有する者、若しくは介護保険法第19条に基づく要支援者認定を受けている者であって、独立した歩行が困難な者であり、単独ではタクシー等の公共交通機関を利用することが困難な者であると確認された者」としました。
 ところが福祉有償運送すなわち移動サービスを利用するのは、独立した歩行が困難であるために、公共交通を利用できない人ばかりではありません。
 もともとこの改正のきっかけとなったガイドラインでは「その他肢体不自由、内部障害(人工血液透析を受けている場合を含む。)、精神障害、知的障害等により単独での移動が困難な者であって、単独では公共交通機関を利用することが困難な者。」を対象と定義しています。
 改正にあたって、この定義を基本としながら、さらに単独で移動することが安全上心配な子どもたちを対象に加えるなど、地域に生活する全ての人が安心して移動できるようにするべきです。

2〈2-1(2)?自家用有償旅客運送に係わる関係者の合意〉
 公共交通を利用することが難しい、住民や移動困難者の意思が、もっとも重要であることを明確にしましょう。
 実際に、移動ができない状態にある住民や移動困難者こそが、どのようなサービスが必要で、それにどのぐらいの対価を支払うのかを決定する権利を持っているはずです。このことは、自家用有償旅客運送に係わる、その他の関係者の合意の有無よりも尊重されるべきものです。
 12月に施行予定の「高齢者、障害者等の移動等の円滑化に促進に関する法律」では、もっとも影響を受ける高齢者や障害者だけでなく、住民などが構想の作成を提案できる制度も創設されていることを考えると、利用者が開催を要請した場合には、必ず、自治体は運営協議会を開かなくてはならないとしてもよいでしょう。過疎地有償運送や福祉有償運送においても、もっと利用者や住民の意思が尊重されるべきです。
 省令や通達で、もっとも必要としている人のニーズが決定に際し、まず尊重されるよう徹底するとともに、障害の種別ごとのニーズの違いが十分に反映されるように配慮した、利用者の代表が運営協議会に参加すべきことを明記する必要があります。

3〈2-1(2)?登録時に必要となる輸送の安全および旅客の利便を確保するために必要な措置〉
 一般乗用自動車の方が乗りやすく、なじみやすい利用者に配慮し、使用する車両に制限を設けない。
 今回の改正にあわせ、セダン特区を全国展開するにあたり、福祉有償運送を行う団体については、福祉車両を保有すべきという意見が聞かれるようです。
 しかし、移動が困難な人や子どもの中には、普段から使っている一般乗用自動車の方が乗りやすく、なじみやすい人が少なくありません。一般乗用自動車の方が、利用者の利便にかなうこともあるのです。
 現在、セダン特区をとった自治体が主催する運営協議会で、セダン型車両のみを使って運行している団体もありますが、特に問題があるという話は聞いていません。
 利用者の利便のために必要がない車両を所有することは、不要な設備への投資を団体に強いることになりかねません。セダン型車両のみでも福祉有償運送ができるようにするべきです。

4〈2-1(2)?旅客から収受する対価の基準〉
 対価の基準とされている「実費の範囲」が、適切に判断されるよう基準を示す必要があります。
 今回のパブリックコメントでは、対価の基準は「営利行為とは認められないもので、実費の範囲内であること」と示されています。このことについて次のように適切に判断されるような基準が示されるべきです。
 まず、「営利行為と認められないもの」についてですが、今回の改正で挙げられている運送主体は市町村の他、公益法人に分類される法人です。営利を目的とする法人が収益事業をした場合、利潤を株主や社員に分配するのに対し、公益法人が行う収益事業の利潤は、基本的に公益事業の目的に再投資し、関係者で分配することはできないことになっています。そもそも公益法人が営利を目的とすることは考えにくいのです。
 また、「実費の範囲内での対価」については、利潤を生まない範囲での対価であることを明確にしませんか。利潤とは、サービスを提供することにより生ずる収入から、サービスを提供することにかかる費用をさしひいたものであり、その際には、サービス提供に必要な燃料費、保険料、車両維持費、駐車場代、人件費その他サービスに必要な費用全てが認められるべきです。
 営利であるかという場合に、担い手が収入を得ているのかどうかが問題とされる場合がありますが、上述のように、人件費も必要な費用であり、担い手が、公益法人に雇われているとしても、その人が社会の一員として生活するに遜色のないだけの給与は、当然支払われなければなりません。また例え、ボランティア活動であったとしても、市場の賃金よりも少ない報酬が支払われる活動は、その差額の範囲において無償労働を提供しているボランティアといえます。
 このような考え方は「有償ボランティア paid volunteering」として欧米でも定着しており、これら担い手への支払いも、移動サービスの提供に必要な実費として認められるべきです。このような合理的な考え方により算出された対価が、協議会で尊重されるよう明確な基準を示すとともに、通知等で徹底させなければなりません。
 なお、改正法附帯決議にある「好意に対する任意の謝礼にとどまる金銭の授受」についても、上記のような根拠に基づく明確で合理的な基準を示す必要があるでしょう。
 また同様に、附帯決議にあるように、地域における助け合い活動、ボランティア活動による移動制約者の円滑な移動が、引き続き確保されるよう十分配慮しなければなりません。
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