STS Action 15MAY09
STS移動支援のこれから


新たなSTS構築模索 全国の移送NPO
 民主党・国交省と意見交換 東京交通新聞

 民主党は15日、参議院議員会館で全国のNPO有償運送団体や移動サービスを利用する障害者と意見交換した。昨年12月に続く2回目で、国土交通省の自動車交通局、道路局、総合政策局から係官約10人が出席、質疑応答した。党側から田名部匡省・参院元国土交通委員長、谷博之・党障がい者政策推進議員連盟会長、大河原雅子・企業団体対策委員長代理らが出席、「運営協議会の全国設置に期限を設けよ」(谷氏)など厳しい意見が出された。参加NPOらは終了後、STS(スペシャルトランスポートサービス)をバス・タクシーと並ぶ公共交通機関に位置付ける新たな枠組み構築へ向けて模索することとした。

 民主党側窓口は市民活動に明るい大河原氏。小宮山泰子・党障がい者議連事務局長らも参加した。谷氏は党ハイタク政策議員懇談会事務局長も務める。
 NPO側の発起人は竹田保・日本移送移動サービス地域ネット連合会(J-NET!)理事長。長谷川清・移動支援フォーラム理事長、越谷秀明・青森県移送サービスネットワーク代表、伊藤寿朗・移動サービスネットワークみやぎ理事、笹沼和利・埼玉県移送サービスネットワーク会長、猪野裕子・千葉県移送サービス連絡会代表、水谷克博・愛知県ハンディキャブ連絡会副代表(日本NPO救急搬送連合会理事長)、今福義明・DPI日本会議交通問題担当常任理事、山本憲司・全国移動ネット理事、伊藤みどり・同事務局長、福原秀一・市民福祉団体全国協議会事務局員らが参加した。
 NPO側から運営協議会の改善、移動困難者ニーズの把握、地方交通のバリアフリー化、緊急経済対策での措置、高速料金割引の見直しなどについて事前提示された項目をもとに国交省側と質疑応答した。
 移動支援フォーラムは、市民が自発的に行う互助活動に対し道路運送法を適用しないことや移動量を数値化し達成目標を設定することなどを盛り込んだ内容を書面提案した。
 意見交換終了後、参加NPO間で非公式に協議。「国交省のガイドライン設定から5年、制度化されたが利用当事者や送迎NPOは身動きがとれない。運営協が改善されてもタクシーとの綱引きが続き徒労感ばかり広がる。無駄な労力を費やしている場合ではない」といった問題意識を共有した。
 DPI会議の今福氏は「STSはバスやタクシーの補完ではなく、公共交通機関そのものだ。バスやタクシーと相まってSTSが地域の公共交通に位置付けられるようSTSの解釈を捉え直すべき」とし、移動支援フォーラムの長谷川氏は「地方分権の流れも踏まえ、市民が自由に参加できる当初の姿に立ち返るべく新しい枠組みを改めて提案していくべき」などと述べた。

NPO・・運営協設置率低い
国交省・・全自治体に周知へ

 民主党の意見交換会での主なやりとりは次の通り。
 竹田・J-NET代表 NPOの移動サービスの改善だけが今回の意見交換の目的ではない。どうしたら市民が自由に移動できるようになるか、そこを追求したい。
 国交省 運営協は現在、全市町村の約6割で設置されている。上乗せ基準は適切に見直したい。
 竹田氏 有償運送の国の権限を地方に移譲する話があるが、国が最低限を保証するナショナルミニマムの観点はどうなのか。国がある程度決めないと不安だ。
 国交省 権限委譲の勧告がなされたが、地域格差が広がる懸念は聞いている。国交省の方から進んで委譲する気はないが、現状ではフォローアップしながら前向きに対策を講じていくとしか言えない。
 笹沼・埼玉ネット会長 運営協は5年経ってまだ40%が未設置とも言える。
 谷・民主党障がい者議連会長 いつまでに運営協を全自治体で設置すると具体的な目標を置けないか。
 国交省 運営協の設置では自治体が先ず有償運送の必要性があると考えるかがポイントになる。必要性を判断しようとしていない自治体は問題で判断を求めていきたい。
 越谷・青森ネット代表 秋田や岩手では(有償運送の)ネットワーク団体がないので必要な情報が伝わっていかないが、必要な情報なら自治体にも漏れなく伝えてほしい。
 国交省 どんな形であるにせよ、全自治体に情報が伝わるようにしたい。
 小宮山・民主党障がい者議連事務局長 政権を取ったら移動困難者のニーズを把握し、運営協を開かせることを約束する。
 水谷・愛知連絡会副代表 隠れたニーズを把握する方法を考えてほしい。国交省と厚労省の共同事業として把握の仕方を考えてほしい。
 今福・DPI会議常任理事 青森や長崎などの公営バスは実質的に車いす利用者を乗車拒否している。こうした会社は補助金の対象から除外してほしい。
 国交省 検討する。

(東京交通新聞5月25日号)


STS Action 03DEC08
STS移動支援のこれから

移動支援フォーラム2008のレジュメに掲載された発言要旨をアレンジしたもの。12月3日、参議院議員会館で行われた民主党との意見交換会で解説した。
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STS移動支援のこれから
~移動支援ドライバー/STSの担い手たち

2008年12月3日
移動支援フォーラム 代表理事 長谷川清

1.公共交通が十分機能することが前提

 鉄道や路線バスは民営化による効率追求のあまり、不採算路線を容赦なく切り捨てている。その結果、地域住民の生活を支える機能を失ってきた。
 あらためて国家的プロジェクトとして、公共交通の再生に取り組まなければならない。
 なぜなら公共交通が基幹交通としての役割を果たしてこそ、より身近なドア・トゥ・ドアのSTS移動支援が可能になるからである。

2.わが国のSTSは大きく二分される

1)介護ヘルパーのマイカー輸送
○福祉有償運送の主力は事実上この方式が占めている
○問題点として、介護のメニューに移動支援がないこと
○きちんと介護給付の対象サービスにするべきである
○介護ヘルパーは実践的な安全運転講習を受講する

2)地域住民の運転ボランティア
○ここまで普及した自家用車をシェアするエコロジー
○一億総ドライバーとも言われる時代にマッチしている
○通院・介助より以上に、旅行や墓参りなどサポート
○この活動は法律による規制を受けるべきではない

3.厚生および運輸行政の緊急課題とは

1)厚生労働省が実施すべきこと
○介護給付に移動介護もしくは移動支援を新設する
○障害者自立支援事業においても同様の給付を導入する
○いずれも公共交通のほか、マイカー送迎も対象と明記
○少なくとも身体介護と同等かそれ以上の単価とする

2)国土交通省が実施すべきこと
○福祉有償運送を行う事業所は都道府県に届け出る
○介護ヘルパーは安全運転講習を受講することとする
○運転ボランティアの活動は道路運送法の対象としない
○その際に金銭の収受をともなうかどうかを問わない


 IDO-Shien Drivers
ドライバー講習が一段落しました
 〜これからの移動支援ドライバー

● 福祉有償運送とドライバー講習

 改正道路運送法による、福祉有償運送および市町村運営有償運送のドライバーに、国土交通大臣認定講習を提供し、いずれも相当の修了証を発行してきました。
 なりゆきで認定講習を実施するようになり、講習を通して多くのドライバーに出会い、活動の実態、地域の実情を知ることができ、なにより大きな収穫でした。

 しかし、また一方では、市民活動としての運転ボランティアが、もっと気軽に参加できるドライバー講習を、どこでも開催できるといいと強く感じてもいます。
 市民参加をすすめるモデルケースということでは、東京都練馬区が同区移動サービス連絡会と共催する、「移動サービス研修」を一番手にあげたいと思います。

● 練馬区の「運転ボランティア入門」

 担当者のアイデアで、認定講習の講座の一部を初日に開催し、「運転ボランティア入門」講座として、ひろく区民の関心を集めることに成功したとりくみです。
 もともと練馬区は、いち早く運営協議会を招集し、ドライバー養成に予算を付け、連絡会と共同で研修を開催、そして運転ボランティア入門講座につなげます。

 いくつかの自治体がこれを手本としています。練馬区の担当者の先見性と行動力には、いつも刺激を受け、インスピレーションを与えられ、尻を叩かれました。
 ところで入門講座にも弱点が一つあります。ドライバーとして実際に活動するには、認定講習をすべて修了して、有償運送ドライバーになるほかないことです。

● 道路運送法と決別するほかない

 練馬区の「運転ボランティア入門」講習には、文字どおり、運転ボランティアとして役に立ちたいと、素朴な気持ちで受講されたかたが少なくないと思います。
 しかし運転ボランティアを受け入れる団体がありません。ごく少額の利用料をとる社会福祉協議会ですら、福祉有償運送として法内活動をしようとしますから。

 それならば、道路運送法による福祉有償運送と決別するほかに、こうした運転ボランティアが活躍することはできない。どう考えてみても結論は変わりません。

 このところ四条許可の介護事業所から依頼がきます。もちろん喜んで引き受けます。生活のかかったヘルパーによる運転業務は、まったく次元の違う仕事です。
 介護保険と有償運送がもたらした新しい業態です。タクシーとも運転ボランティアとも違っていて、介護を必要とする利用者にだれより頼りにされる存在です。

 タクシーと運転ボランティアと介護ドライバーとは、似て非なるものであるということを認め、決して一つの土俵に乗せないで別々のルールをつくりませんか。

● 移動と交通の現状を見なおそう

 そこで、あらためて交通バリアフリーの視点から、移動と交通の体系を整理すると次のようになります。

1)鉄道や路線バスなどの公共交通、それを補完するタクシーなど
2)介護の現場を中心に、通院などを支援する、ヘルパーによる送迎
3)運転ボランティアが自家用車を走らせる市民活動のスタイル

 それぞれの現状について考えてみましょう。

1)鉄道やバス、それを補完するタクシー

 交通バリアフリーを実現しようとするとき、必ず引き合いに出されるのが公共交通と、そのターミナル、駅やバス停の段差解消、ユニバーサル・デザインです。ここ10年、20年で飛躍的な進展も見られます。

 しかし、それらを利用する国民の生活環境を考えると、決して喜んでばかりいられないと感じます。なにより民営化・効率化を追求するあまり、不採算路線が容赦なく廃止されています。すでに地方の鉄道やバスは生活交通と呼ぶに値せず、その地位をとっくに自家用車に譲ってしまいました。

 住民はマイカーに乗って、バイパス道路沿いに出現したショッピング・センターに出かけます。新しい大規模店には、ユニバーサル・トイレの設置もすすんできました。一方、駅前商店街などは文字どおりシャッター街になり果て、無人駅に鍵のかかった障害者用トイレが使われることもない。

 よく言われるところですが、となり近所に声かけ合って助け合うこともできず、高齢者も障害者も車に乗れなくなったら、そこでは暮らしていけないという厳しい現実があります。

 そして、これはたしかに地方を切り捨ててきた結果ではあるけれど、それでは都会はバリアフリーを享受しているのだろうか。

 なるほど外見はそんな風に見えていながら、東京などでも大手ディベロッパーによる駅前再開発を頼み、自治体は予算も人材も割けないから後手に回り、まちづくりのプランを示して号令をかけることもできず、ただただ成りゆきまかせにするほかありません。

 たとえば文京区では、区役所シビックセンターに地下鉄駅が集中し、ほかがうらやむほど便利なようであっても、エレベーター一つ、通路一つを区が設置する力さえなく、区役所の向かいに持ち上がっているという、再開発事業に期待するのみという姿勢です。

 野放しに高騰してしまった地価が原因で、行政の手に負えなくなり、住民の生活を優先する立場を放棄したとも言えるでしょう。

2)通院送迎などに活躍する介護ヘルパー

 2000年に介護保険がスタート、つづいて障害者への支援費支給へと、介護の社会化の流れが始まります。それまでの住民互助活動から家政婦紹介所まで、こぞって介護事業所に模様替えしました。

 介護保険に移動支援メニューがないため、当初はタクシーを呼んだり、ボランティア・グループに頼んだり、やがて介護ヘルパーが白ナンバー車両で、利用者の通院送迎を手がけるようになりました。

 介護へルーパーによる通院送迎は時代の要請です。そのこと抜きに社会的な介護は成り立たない、と言っても決して言いすぎではありません。また介護ヘルパーこそ移動支援の中核を担えるはずです。

 厚生労働省は、乗降介助などという愚かなシステムを廃止して、直ちに正規の介護メニューに移動支援を加え、少なくとも現在の身体介護に匹敵する単価、4000円~6000円を付けることです。

 国土交通省は、これこそが福祉有償運送の担い手なのだから、一定の要件を満たす介護運送事業を認定し、ヘルパーが移動支援ドライバーを兼ねるために、安全運転講習を受けてもらえばいいのです。

3)もう一度見直したい運転ボランティア

 さて前回までに、福祉有償運送は介護事業所とヘルパーに任せようと述べました。すこし乱暴なようですけど実態に沿った考えかたです。もちろんタクシーが介護事業を始めるのもOKです。つまり運輸行政と福祉施策の折り合いがつけばいいのです。

 それでは運転ボランティアとは何者なのか・・。

すでにお知らせしたとおり、11月29日に文京区内のアカデミー茗台で、
移動支援フォーラム2008を開催します。

 セッション2でSTSをとりあげる予定であり、道路運送法による福祉有償運送と決別する、ボランティア輸送宣言のようなことを考えています。以下、セッション2の企画を提案したときのメモから・・

◎パネルトーク・セッション2
 「移動支援サービスと交通バリアフリー」
 ~とりわけSTSの自由で効果的な運用のために

 まちづくりをすすめる上で、どんな移動支援が必要とされるか、なかでも飽和状態といわれるクルマ社会と、一億総ドライバー化を逆手にとって、有効活用する新しい道はないだろうか

 道路運送法による福祉有償運送が、だれでも使えるモデルにならないとすれば、市民ドライバーによるボランティア輸送が、あらためて柔軟に、効果的に運用されるしかないと思われる

 それぞれSTSに関わってきたパネラーから、現状と問題点を報告していただき
1)福祉有償運送によるシステムの大胆な改革
2)福祉有償運送でない市民活動の再スタート
という2点について、秋山教授のコメントを挟みながら提案したい

考えられるパネラー候補:
○竹田たもつ(ホップ障害者地域生活支援センター)
○杉本よりこ(全国移動サービスネットワーク)
○柿久保浩次(移動送迎支援活動情報センター)ほか

(つづく)

イージーライダー長谷川

 
FreeWay「移動の自由」メーリングリスト
NPO IDO-Shien Forum