Kashiwazaki-Kariwa
東京電力柏崎刈羽原子力発電所


柏崎刈羽原発:7号機の営業運転移行、トラブルで延期に

2009723 2015分 更新:723 2027

 東京電力は23日、新潟県中越沖地震(07年7月)で被災し、起動試験中の柏崎刈羽原発7号機で、燃料棒被覆管に微小な穴(ピンホール)が開いた可能性があると発表した。7号機は営業運転に向けて、同日午後から国の最終的な検査を受ける予定だったが、東電は「万全の状態とは言い切れない」として延期を決めた。原因特定のためピンホールを探す場合、24日にも予定されていた営業運転への移行は、最大1週間程度遅れる見込みという。

 東電によると、23日午前11時ごろ、7号機の原子炉復水器から環境に影響のない低濃度の放射性物質を含んだ空気を排気筒に逃がす「気体廃棄物処理系」に設置した高感度放射線カウンター(高感度オフガスモニター)の数値が警報値を超えた。外部への放射能の影響はないという。【五十嵐和大】


柏崎刈羽原発:新潟県が営業運転を容認 24日にも移行

2009722 2023分 更新:722 2045

 新潟県と柏崎市、刈羽村は22日、中越沖地震(07年7月)で被災し、起動試験(試運転)中の東京電力柏崎刈羽原発7号機の営業運転への移行を容認することを東電に通知した。東電は国の最終的な検査を受け、順調に進めば24日にも地震後初の営業運転に移行する見通しとなった。

 県と市、村は起動試験の結果などについて、「妥当な対応がなされている」と判断、営業運転再開を了承することで合意。県が東電に文書を手渡した。

 これを受け、東電は23日から経済産業省原子力安全・保安院による最終的なチェックとなる「総合負荷性能検査」を受け、問題がなければ24日に保安院から定期検査終了証が交付される。

 東電は「引き続き安全運転に努めたい。7号機以外の各機についても安全第一に着実に進めたい」とのコメントを出した。【岡田英、五十嵐和大】


柏崎原発:7号機の営業運転再開認めないで 市民団体要請

2009716 1914

 新潟県中越沖地震で被災し、現在は出力100%で試験中の東京電力柏崎刈羽原発7号機(新潟県)について、首都圏の市民団体「東京電力と共に脱原発をめざす会」は16日、営業運転再開を認めないよう二階俊博経済産業相に求める申し入れ書を提出した。

 申し入れ書は「断層の直上で発電するような危険なやり方をしてまで電気を送ってほしいとは思わない」とし、営業運転再開に関する行政庁の評価報告書をパブリックコメント(意見公募)にかけること、首都圏の電力消費者向けに公開討論会を開くことを求めた。


「再生」への道筋:
中越沖地震2年/下 被害の全体像、未解明 /新潟

 ◇再開間近の原発7号機


 「ご質問は、ありませんか」

 8日、柏崎市のホール。中越沖地震後9回目を数えた、東京電力による柏崎刈羽原発に関する説明会の会場は静まり返っていた。全7基のうち最も復旧作業が先行した7号機の起動試験を控えた2月の説明会では質問が相次いだが、この日は司会者も「こんなに質問が少ないのは初めて」と苦笑するほどだった。

     ◇

 7号機は5月9日に起動試験に入り、「40~50日」という東電の見込み通り6月19日までにすべての試験項目を終えた。しかし、それから1カ月近くがたとうとしているのに、営業運転へ移行できない状態が続いている。国と県技術委員会は「安全上の問題はない」との評価を示したが、泉田裕彦知事、会田洋柏崎市長、品田宏夫刈羽村長による了承が得られないからだ。

 県技術委での審議結果について、県は11、12日、県民向けの説明会を開いた。新潟市での会に参加した出席者の一人は「慎重に判断しているという姿勢を強調する『アリバイ作り』のようだった」と感想を述べる。

 県と市、村は起動試験入りの段階で「事実上の運転再開」と見なして了承。7号機は既に営業運転と同様の出力100%の発電を行っている。

 品田村長は営業運転を容認する意向を示す一方、会田市長は、村長との立場の違いを周囲に漏らしているという。原発の安全性を巡り、市民の間には懐疑的な意見が根強い。営業運転再開を前に、泉田知事に対し3者会談を申し入れるなど慎重な姿勢を示す背景には、02年に明らかになったトラブル隠し問題をはじめ、東電の企業姿勢を疑う市民への配慮がうかがえる。

     ◇

 7号機の営業運転再開と同時に、6号機の起動試験開始も控える。同原発の高橋明男所長は9日の会見で「ここまで来るのに、大変多くの人にお世話になった。やるべきことを一つ一つ慎重に進めてきた結果だと思う」と振り返った。

 一方、残る5基の設備点検の進ちょく率はまちまちだ。特に2、4号機は点検作業がほとんど進んでいない。東電は「これまでは作業員を6、7号機に集中して投じてきた」と説明。復旧作業に当たる下請け業者の関係者は「地震による被害には相当な差がある。被害の全体像や復旧の見通しが明らかになるまで、まだ数年はかかるのではないか」と指摘する。

 地震から2年を迎える16日の午前10時13分、原発構内では社員や下請け作業員約8000人が犠牲者に黙とうをささげるという。【五十嵐和大】=おわり

==============

 ◆柏崎刈羽原発の設備点検進ちょく率

    目視点検 作動・機能確認
1号機  93%    80%
2号機  準備中    準備中
3号機  80%    77%
4号機  20%    13%
5号機  68%    51%
6号機 100%   100%
7号機 100%   100%
 6月22日現在。東電の資料から

毎日新聞 2009715日 地方版


原発再開:
柏崎刈羽7号機 県技術委の評価、審議経過を説明 /新潟

 ◇知事判断は下旬に


 県は11日、東京電力柏崎刈羽原発7号機の起動試験(試運転)結果について、「営業運転移行に問題はない」と結論付けた県技術委員会独自の評価案に関する説明会を、新潟市と上越市で開いた。12日には柏崎市で行う。

 説明会と並行し、県はホームページ上の「電子会議室」などを使い、技術委見解に対する意見募集を18日まで続ける。技術委の最終報告を踏まえた泉田裕彦知事の判断は今月下旬以降になりそうだ。

 新潟市での説明会には34人が参加。技術委座長の代谷誠治・京都大教授や山田治之・県原子力安全対策課長らが、起動試験中のトラブルに対する技術委の評価や、東電が報告した試験結果の審議経過を説明した。

 質疑応答では説明会の周知期間の短さに不満を漏らす声のほか、「すべての原子炉で点検を終え、問題点を改善した後、7号機の営業運転を認めるか判断すべきだ」との意見も寄せられた。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009712日 地方版


新潟・柏崎刈羽原発:7号機、安全上問題なし--新潟県技術委

 新潟県中越沖地震(07年7月)で停止し、5月から起動試験(試運転)を続けている東京電力柏崎刈羽原発7号機について、県の技術委員会は7日、営業運転の移行に「安全上の問題はない」との見解をまとめ了承した。

 住民説明会を11、12日に開き、泉田裕彦知事と地元の柏崎市、刈羽村の3首長が営業運転再開を認めるか否か最終判断する。7号機は出力100%で調整運転をしており、順調に進めば7月中に営業運転再開となる見通し。【岡田英】

毎日新聞 200978日 東京朝刊


柏崎刈羽7号機:「安全上問題なし」新潟県技術委

 新潟県中越沖地震(07年7月)で停止し、5月から起動試験(試運転)を続けている東京電力柏崎刈羽原発7号機について、県の技術委員会は7日、営業運転の移行に「安全上の問題はない」との見解をまとめ了承した。

 住民説明会を11、12日に開き、泉田裕彦知事と地元の柏崎市、刈羽村の3首長が営業運転再開を認めるか否か最終判断する。7号機は出力100%で調整運転をしており、順調に進めば7月中に営業運転再開となる見通し。

 経済産業省原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会は既に「安全上の要求事項をすべて満たしている」との最終報告をまとめている。【岡田英】

毎日新聞 200977日 1949分(最終更新 77日 2020分)


柏崎刈羽原発:
6号機、起動試験へ 東電、県と柏崎市などにきょう同意要請 /新潟

 東京電力は2日、中越沖地震で被災し運転停止中の柏崎刈羽原発6号機について、起動試験(試運転)に入る準備が整ったとして、安全協定を結ぶ県と柏崎市、刈羽村に対し、3日に同意を求めて要請を行うと発表した。

 東電が行った点検、復旧作業や耐震安全性の評価について、経済産業省原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会が2日までに「妥当」として起動試験を認める判断を示したのを受けたもの。地元自治体が了承すれば、7号機に続き2基目の運転再開となる。

 原子力安全委員会は2日、6号機の起動試験について、保安院が「安全上の問題はない」とした評価を追認した。起動試験の全試験項目を終え、調整運転中の7号機についても営業運転への移行に問題はないと認めた。7号機については起動試験の結果を報告し、県技術委員会での審議を求める。柏崎市と刈羽村には同原発の高橋明男所長らが訪問し、同様の報告を行う。【五十嵐和大】

毎日新聞 200973日 地方版


柏崎刈羽原発:7号機、来月7日にも県技術委開催 /新潟

 起動試験(試運転)の全試験項目を終えた東京電力柏崎刈羽原発7号機について、安全性を評価する県の技術委員会が7月7日にも開かれる。

 東電は19日に「運転状態は安定している」との最終評価をまとめ、経済産業省原子力安全・保安院も24日、「安全上の要求事項をすべて満たしている」との判断を示した。

 原子力安全委員会と県の技術委が安全性を評価し、県などが最終判断を示せば、7号機は7月中に営業運転へ移行する見通し。【岡田英】

毎日新聞 2009627日 地方版


柏崎刈羽原発:7号機、保安院が最終報告書

 新潟県中越沖地震で停止し、5月から起動試験(試運転)を続けてきた東京電力柏崎刈羽原発7号機について経済産業省原子力安全・保安院は24日「安全上の要求事項をすべて満たしている」との最終報告書をまとめた。原子力安全委員会の審議や新潟県技術委員会の確認を経て、7月に営業運転再開となる見通し。7号機は既に出力100%の状態だが、営業運転は07年7月16日の震災から2年ぶりとなる。

 報告書によると試運転中、原子炉に給水するポンプの蒸気漏れなど約70件の不具合があった。これに対し保安院は「東電の対策は適切で継続的かつ安定的に運転するうえで問題ない」と認めた。6号機についても「起動試験に進むことは問題ない」との安全評価を下した。新潟県が同意すれば、7号機の営業運転後に起動試験に入る見込み。1~5号機は機器の基本点検中で、再開の見通しは立っていない。

毎日新聞 2009624日 2002


柏崎刈羽原発:
6号機、起動試験の計画書提出 東電、保安院に /新潟

 ◇再開論議が本格化


 東京電力は23日、中越沖地震で被災し運転停止中の柏崎刈羽原発6号機について、復旧・点検作業が終わったとして起動試験(試運転)に関する計画書を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。24日に開かれる保安院の作業部会で審議され、了承される見通し。

 東電によると、6号機の試験計画は、既に試験項目をすべて終えた7号機とほぼ同じ内容。40~50日間にわたり、原子炉の出力を段階的に上げながら、各設備が長期運転に耐えられるかを確認する。

 営業運転への移行が目前に迫る7号機に次いで、今後は6号機の運転再開に向けた論議が本格化する。柏崎市は22日、6号機の消防法に基づく緊急使用停止命令を解除。保安院と原子力安全委員会の専門家による安全性の評価は月内にも大詰めを迎える見込みだ。

 しかし、県と柏崎市、刈羽村が安全協定に基づき6号機の運転再開について同意する手続きの道筋については「決まった手順はない」(会田洋・柏崎市長)といい、不透明なままだ。

 国による評価の後、県技術委員会による具体的な議論が始まるのは7号機が営業運転に入る7月以降とみられる。しかし、7号機の起動にあたっては泉田裕彦知事、会田市長、品田宏夫・刈羽村長の3者で認識を一致させるまでに約3カ月かかった経緯がある。そのうえ、市村長側には「結局、3者会談で合意できなかった」という知事に対するわだかまりがくすぶっている。

    ◇

 一方、同原発の建屋に関する耐震安全性を審議している保安院の作業部会「構造ワーキンググループ」の西川孝夫・首都大学東京名誉教授ら2委員は23日、6号機の耐震補強工事などについて視察した。地震後、6号機原子炉建屋やタービン建屋で見つかったひび割れの補修のほか、建屋の天井や排気筒などの耐震補強工事の状況について、東電の担当者から説明を受けた。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009624日 地方版


柏崎刈羽原発:6号機の使用停止命令を解除

2009年6月22日 11時11分

 新潟県柏崎市は22日、07年7月の中越沖地震直後に東京電力柏崎刈羽原発6号機に出していた消防法に基づく緊急使用停止命令を解除した。同命令を受けた同原発全7基のうち、解除は試運転中の7号機に続き2基目。運転再開に向けた事実上の歯止めが外れ、国による安全性の確認、県などの同意手続きが本格化する。

 中越沖地震の際、同原発の防火体制に問題があると判断した会田洋市長は07年7月18日、1~7号機の軽油タンクや消火配管など55施設の使用を禁じていた。


柏崎刈羽原発:
7号機は「運転安定」と最終評価 東京電力

 東京電力は19日、起動試験(試運転)を行っていた新潟県の柏崎刈羽原発7号機について、試験項目をすべて終え「運転状態は安定している」との最終評価を発表した。週明けにも経済産業省原子力安全・保安院に報告書を提出。同院の作業部会や県の技術委員会の評価を受けたうえで営業運転に移行する。

 東電は7号機を5月9日に起動、6月6日に営業運転と同様の「定格熱出力一定運転」に達した後、安定的に稼働できるかを確認してきた。

 また柏崎市の会田洋市長は19日、07年7月の中越沖地震直後、同原発6号機に出していた消防法に基づく緊急使用停止命令を解除する方針を決めた。22日に同原発の高橋明男所長を市役所に呼び、解除通知書を手渡す。

毎日新聞 2009年6月19日 22時08分


柏崎刈羽原発:
6号機、市消防本部が立ち入り検査 消火設備正常を確認 /新潟

 ◇きょう市長に報告

 柏崎市消防本部は18日、中越沖地震で被災し運転停止中の東京電力柏崎刈羽原発6号機への立ち入り検査を行い、タービン関連の消火設備が正常に機能することを確認した。19日に検査結果を会田洋市長へ報告。市が出している消防法に基づく緊急使用停止命令の解除を最終判断する。

 東電はこの日、タービン回転軸の潤滑油に引火した際、二酸化炭素ガスを噴射して消火する設備の作動試験を行った。市消防本部予防課の担当者10人が立ち会った。

 市は地震2日後の07年7月18日、同原発全7基の軽油タンクや消火設備などの危険物施設55カ所について使用禁止を命じた。このうち既に起動試験に入っている7号機関係の13カ所については2月に解除している。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年6月19日 地方版


柏崎刈羽原発:
6号機への緊急使用停止命令19日にも解除

 07年7月の新潟県中越沖地震で被災し運転停止中の東京電力柏崎刈羽原発6号機について、柏崎市が出している緊急使用停止命令が19日にも解除される見通しとなった。

 東電は17日、6号機起動前の復旧作業や設備動作確認を終えた。市消防本部が18日に立ち入り検査を行い、会田洋市長に報告する。問題ないと判断されれば、命令解除を東電に通知する。停止命令は地震直後に全7基に対して出された。解除は2月の7号機に次いで2基目。

 解除後、東電は国から安全性評価を受け、県などに同意を求めたうえで6号機の起動試験(試運転)に入りたい意向。5月に試運転を始めた7号機は月内にも営業運転する見通しとなっている。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年6月17日 20時01分


柏崎刈羽原発:
1号機ひび割れ 保安院「報告対象の可能性高い」 /新潟

 経済産業省原子力安全・保安院は16日、東京電力柏崎刈羽原発1号機で98~99年にあった定期検査中に見つかった蒸気配管のひび割れを国に報告しなかったことについて「法令違反ではないが、当時の通産相通達に基づく報告対象だった可能性が高い」との見解を示した。東電は同日「社内での隠ぺいを裏付ける事実はなかった」との調査結果を発表した。

 問題のひび割れについて2月に「重大事故を隠ぺいし、国への報告義務を無視した」との匿名通報が県などに寄せられ、東電が内部調査していた。

 東電によると、当時ひび割れを確認した東電の工事担当者が「ひびがなくなれば、工事続行に問題はなく、報告を要する事案ではない」と判断。下請け会社との検討の末、ひびを除去することで問題を処理したという。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年6月17日 地方版


東京電力:
夏の電力供給「安定」を予想 柏崎原発稼働で

 東京電力は16日、今夏の電力供給力が6720万~6730万キロワットになるとの計画を発表した。電力需要は6100万キロワットを見込んでおり、供給余力は10.2~10.3%となる。試運転中の柏崎刈羽原子力発電所7号機(新潟県)からの発電を加えたためで、安定供給の目安となる2けたの供給余力が保てる見通しとなった。

 7号機は既に100%の出力で送電を始めており、計画にはこの出力分(約135万キロワット)を上積みしている。同原発は07年7月の新潟県中越沖地震で全機が停止。07、08年の夏には企業や家庭に節電を呼びかけたほか、他の電力会社から融通を受けるなどしてしのいだが、東電は「今夏は安定した供給が見込める」と話している。【三沢耕平】

毎日新聞 2009年6月16日 20時24分


柏崎刈羽原発:
7号機、出力75%試運転 東電「問題なし」 /新潟

 ◇3、4日で100%に

 東京電力は1日、柏崎刈羽原発7号機の出力75%での試運転について「試験の継続に問題はない」とする評価結果を発表した。今後出力を上げる操作を始め、順調に推移すれば3、4日で100%に到達するという。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年6月2日 地方版


柏崎刈羽原発:
7号機、出力75%到達 週内に100%へ /新潟

 起動試験(試運転)中の東京電力柏崎刈羽原発7号機について、東京電力は30日、出力が75%に達したと発表した。東電によると、順調に進めば75%に保った状態での試験結果を評価した後、6月5日ごろまでに出力を100%に上げる見込み。

 7号機では23日から出力50%での試験を実施。2日後の25日に排気筒から微量の放射性ヨウ素が検出された。東電は試験結果に「問題はない」とし、経済産業省原子力安全・保安院と県技術委員会も妥当と判断していた。東電は「対策は取っており、出力を75%に引き上げてもヨウ素は漏れない」としている。【岡田英】

毎日新聞 2009年5月31日 地方版


柏崎刈羽原発:
7号機ヨウ素検出 タンク室に原子炉水混入 /新潟

 起動試験(試運転)中の東京電力柏崎刈羽原発7号機の排気筒で25日、微量の放射性ヨウ素が検出されたトラブルについて、東電は29日、原子炉を通った水の一部を集める「復水回収タンク室」にヨウ素の濃度が高い原子炉水が混入、気化して排気筒へ漏れ出たとする推定原因を発表した。一方、同機の出力50%の状態での試験結果には「問題はない」と評価し同日夕、出力を75%に引き上げた。

 東電によると、復水回収タンクには通常、原子炉の蒸気でタービンを回した後、ヨウ素などをろ過した水が流れるという。しかし、通常の試運転よりも出力50%での運転を長く続け、原子炉給水ポンプからタンクへヨウ素を含んだ水が流れやすくなったと説明した。

 配管の破損などはなく、応急措置として室内の空気中のヨウ素をフィルターで吸着させてから排気している。

 経済産業省原子力安全・保安院も同日会見し、東電の調査結果を「妥当」と評価したが、対策が有効か今後も監視を続けると説明した。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年5月30日 地方版


柏崎刈羽原発:
点検中に男性作業員がけが /新潟

 東京電力は27日、柏崎刈羽原発で26日午後、地中に埋めた排気管点検のため穴を掘っていた下請け会社の男性作業員(20)が、誤って削岩機の先端を右足の甲に落として骨折する重傷を負ったと発表した。中越沖地震後の点検・復旧作業でけがをした作業員は45人目という。

 事故があったのは、2号機の原子炉から放射能が漏れた際、建屋内の空気を浄化して排気筒へ逃がす「非常用ガス処理系」。作業員は26日午後6時25分ごろ、配管の外観調査のため削岩機で穴を掘っていて負傷した。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年5月28日 地方版


柏崎刈羽原発:
試運転中の7号機 排気から放射性物質検出

 東京電力は25日、起動試験(試運転)中の柏崎刈羽原発(新潟県)7号機で、主排気筒の排気から放射性物質のヨウ素133が検出されたと発表した。周辺地域の大気濃度で評価すると規制値の約70億分の1と微量で、人体への影響はないという。東電は試験を継続するか検討する。

 放射性ヨウ素の放出は、週1回のサンプリング測定で判明した。いつから放出が始まったのか、現在も放出が続いているかは不明。

毎日新聞 2009年5月25日 22時32分


柏崎刈羽原発:
19日夜から発電 首都圏への送電も再開

2009年5月18日 19時53分

 東京電力は18日、新潟県中越沖地震(07年7月)で被災後、初の起動試験(試運転)をしている柏崎刈羽原発7号機について、19日夜から試験的に発電を開始し、首都圏への送電も再開すると発表した。

 東電は当初、15日夕方から送電する予定だったが、実施直前に原子炉給水ポンプの作動状態を中央制御室に送る発信器が正常に動かないトラブルが発生。16日未明に、いったん原子炉を停止し、発信器を交換した。18日未明に原子炉を再び起動し、発電前に必要な点検作業をやり直している。【五十嵐和大】


柏崎刈羽原発:
19日にも7号機の発電を再開…東電

Pasted Graphic
柏崎刈羽原発7号機=2009年5月9日撮影

 東京電力は17日、新潟県の柏崎刈羽原発7号機の発電を延期したトラブルについて、原子炉給水ポンプの状況を感知する発信器の不具合が原因だったと発表した。発信器を交換するなどして、早ければ19日にも発電を再開する見通し。

 東電は15日に発電を再開する予定だったが、直前になって給水ポンプの状況を示す監視盤に誤表示があったため中止し、原因究明を急いでいた。7号機は現在、営業運転に向けて起動試験を実施しているが、実際に発電するのは07年7月の地震発生以降、初めてとなる。【三沢耕平】

毎日新聞 2009年5月17日 19時56分(最終更新 5月17日 20時07分)


柏崎刈羽原発:
7号機、原子炉いったん停止

 新潟県中越沖地震(07年7月)で被災し、初の起動試験(試運転)中の柏崎刈羽原発7号機について、東京電力は16日、原子炉内の制御棒をすべて挿入し、午前3時に原子炉をいったん停止したと発表した。

 15日に地震後初めて首都圏へ送電を始める予定だったが、同日夕、原子炉の給水ポンプの作動状況を示す監視盤に誤表示が見つかった。東電は試験を中断して原因究明と部品交換を優先すると説明している。

 トラブル解消後に再び原子炉を起動し、週明け以降に発電作業を行う見通し。

毎日新聞 2009年5月16日 12時01分


柏崎刈羽原発:
7号機の発電再開を延期…東京電力

Pasted Graphic 1
柏崎刈羽原発7号機の発電が延期となったことを説明する東京電力の担当者(右端)=東京都千代田区の東京電力本店で2009年5月15日午後6時33分、武市公孝撮影

 東京電力は15日夕に予定していた柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の発電を中止した。原子炉の給水ポンプの稼働状況を示す監視盤に誤表示があったため。原因調査のため、いったん原子炉の出力を落とした。新潟県中越沖地震の被災後、初めての発電再開として注目されていたが、「原因を明らかにしたうえで発電時期を再検討する」(広報部)という。

毎日新聞 2009年5月15日 20時58分(最終更新 5月15日 23時18分)


柏崎刈羽原発:
東電、地震計80個を増設

 東京電力は14日、07年7月の新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発(新潟県)の建物内や周辺に約80個の地震計を増設するなど観測強化策をまとめた。原発周辺の断層帯の活動性や建物の耐震性を再検証する狙いで、今年夏から着手する。

毎日新聞 2009年5月14日 20時47分


柏崎刈羽原発:
7号機、15日にも試験送電開始

 起動試験中の柏崎刈羽原発7号機(新潟県)が15日にも、07年7月の新潟県中越沖地震以来、初めて発電し首都圏へ試験送電を開始する見通しとなった。東京電力が14日発表した。また、13日午後8時15分ごろ、蒸気を原子炉内に戻す7号機の「タービン駆動給水ポンプ」2台のうちの1台で、タービン出力を上げた際に漏電を示す警報が4秒間鳴ったことを明らかにした。原因を調べているが、東電は警報装置の不具合とみており、絶縁テープを張るなどの対策を取った。

毎日新聞 2009年5月14日 19時51分


原発:
作動状況を随時掌握できるシステム導入 保安院が

2009年5月14日 15時0分 更新:5月14日 15時0分

Pasted Graphic
導入された緊急時対策支援システムで各原子力施設の状況をチェックする職員=東京都千代田区の経済産業省原子力安全・保安院で、山田大輔撮影

 国内の全原子力発電所の主要機器の作動状況を随時掌握できる「緊急時対策支援システム」を、経済産業省原子力安全・保安院が導入した。各原発の中央操作室と同じ情報を東京・霞が関の保安院や各地の保安検査官事務所が共有することで、緊急避難などの判断をより迅速にできると期待される。

 対象は、廃炉措置中の中部電力浜岡1、2号機や建設中の北海道電力泊3号機を含む全原発、高速増殖炉もんじゅ、六ケ所再処理施設の計58施設。

 これまで保安院は、個々の原発のデータを取得するには、各原発ごとにシステムの接続を要請する必要があった。

 新システムの導入で、原子炉の圧力や水位、核反応を調整する制御棒の状態、非常時の炉心冷却装置の流水量、建物内の主要地点の温度や放射線量など40~50項目の運転データを1分間隔で随時入手できるようになった。

 こうしたデータを基にして、燃料の露出や圧力容器の破損、放射能放出などの危険事態の判断を外部から行うことが可能になるという。

 また、風速などの気象情報を基に放射能の拡散や被ばく線量などを予測するシステムや、首相官邸の災害対策本部と各原発の地元自治体など約100地点をテレビ電話で結ぶ防災ネットワークも導入した。

 総事業費は83億円で「01年の保安院発足以来の大規模システムの導入」という。

【山田大輔】


柏崎原発7号機:
トラブルは2件とも人為的ミス

2009年5月13日 20時23分

 07年7月の新潟県中越沖地震から1年10カ月ぶりに起動試験(試運転)を始めたばかりの東京電力柏崎刈羽原発7号機で11日に起きたトラブル2件について、東電は13日、いずれも人為的なミスが原因だったとして、国と県へ報告した。当初、9日の試運転開始から1週間程度で首都圏への送電を再開するとしていたが、3日ほど遅れる見通しという。

 東電によると、非常用の炉心冷却装置「原子炉隔離時冷却系」が中央制御室からの操作で停止できなかったトラブルは、専用タービンを回す蒸気配管の開閉弁を08年12月に点検した際、弁の取り付け位置を誤って調整したためという。

 同冷却系で使った蒸気を逃がすプール「圧力抑制室」の規定水位を上回ったトラブルは、運転員の監視不足で水位を下げる動作が遅れたためと説明した。【五十嵐和大】


柏崎刈羽原発:
7号機試運転中に2件のトラブル

Pasted Graphic 1
中越沖地震による被災から1年10カ月ぶりに、運転が再開された柏崎刈羽原発の7号機=新潟県柏崎市で2009年5月9日午後2時13分、手塚耕一郎撮影

 東京電力は11日、起動試験(試運転)中の柏崎刈羽原発7号機で同日朝、非常用の炉心冷却装置「原子炉隔離時冷却系」に2件のトラブルが起きたと発表した。放射能漏れなどはなく、起動試験は続けている。7号機は9日、新潟県中越沖地震(07年7月)の被災から1年10カ月ぶりに運転を再開したばかり。

 東電によると、11日午前6時43分、外部から原子炉に注入する冷却水をためる「圧力抑制室」の水位が規定を5センチ以上上回り、8分後に水位を下げた。さらに同53分、この冷却系を中央制御室からの操作で停止できなくなり、手動で止めた。原因は調査中という。

 この冷却系は、6種類ある非常用炉心冷却装置の一つ。【岡田英】

毎日新聞 2009年5月11日 11時23分(最終更新 5月11日 13時31分)


原発:
保安院、防災体制見直し 事故と自然災害の複合想定

2009年5月11日 2時30分 更新:5月11日 3時2分

 地震や津波、台風などの自然災害と原子力発電所の事故が同時発生する「複合災害」を想定し、経済産業省原子力安全・保安院は、主に自治体の原子力防災体制を見直す検討を始めた。07年7月の新潟県中越沖地震を教訓とし、今年中に指針をまとめて原発の立地自治体などに防災計画の見直しを促す方針だ。

 複合災害はこれまで発生の可能性が極めて低いとして、現在の原子力防災体制では想定外だった。しかし、中越沖地震で東京電力柏崎刈羽原発が被災した際、地震の影響で電話回線が混雑し、自衛消防隊員の招集や消防署への通報が遅れるなど対応が混乱した。

 これらを踏まえ、保安院は電力会社の防災体制を強化するとともに、自治体にも緊急医療や情報伝達、物資輸送など分野別に特別な対策が必要な項目を挙げ、複合災害に備える防災体制づくりを促すことにした。

 検討項目として、避難誘導に複数の代替ルートを用意▽原発事故の対策拠点(オフサイトセンター)が自然災害で被災した場合の代替策▽原発周辺の放射線を常時測定するモニタリングポストの被災に備えて運搬可能な測定器の用意--などを指摘。また、交通網の寸断に備えて放射線被ばく患者をヘリコプターや船で広域搬送することも課題とする。

 複合災害を考慮した地域防災計画は、県内全域が東海地震防災対策強化地域の静岡県で策定済みのほか、新潟県も今年4月に策定した。【山田大輔】


柏崎刈羽原発:
7号機、1年10カ月ぶり起動 安堵と不安、交錯 /新潟

 ◇信頼回復へ「道半ば」 住民複雑、経済効果期待も

 中越沖地震から1年10カ月。東京電力柏崎刈羽原発7号機の起動試験が9日始まり、臨界に達した。同原発の高橋明男所長は「発電が始まれば、違う思いがあるのかも」と安堵(あんど)の表情。一方、地元住民は「トラブルが不安だが、にぎわいが戻れば」と複雑な思いで「運転再開」を見守った。【五十嵐和大、畠山哲郎】

 7号機の中央制御室。東電の清水正孝社長は起動前、職員を集め、「人が行うことに100%はあり得ない」との泉田裕彦知事の言葉を引きながら訓示。経済産業省原子力安全・保安院の加藤重治審議官も「『本当に動かして大丈夫か』との素朴な不安が地元の皆さんにはあると思う」と付け加えた。

 2月に国が起動試験に入ることを了承してから、泉田知事が再開に同意するまで約3カ月。加藤審議官は「了解はいただけたが、信頼を得ていくためには、私どもも東電も道半ばだ」と話し、出力100%に達するまで、検査官を24時間態勢で中央制御室に張り付ける異例の態勢を組み、トラブル対応に備える。

 地元住民の受け止め方も複雑だ。柏崎市東本町で中華料理店を営む本間悦子さん(44)は「原発が稼働していたころは関連企業などの関係者が常連となってくれたが、今はそうした人たちの来店も少なくなった。火災が頻繁に起こるので不安だが、また客足が戻ってくれれば」と話した。

毎日新聞 2009年5月10日 地方版


柏崎刈羽原発:
揺れる住民「いつまでも頼れない」

Pasted Graphic
中越沖地震による被災から1年10カ月ぶりに、運転が再開された柏崎刈羽原発7号機=新潟県柏崎市で2009年5月9日午後2時11分、手塚耕一郎撮影

 「事故が不安」「被災地が元の姿に」--。07年7月の新潟県中越沖地震で震度7の揺れに襲われた東京電力柏崎刈羽原発7号機が9日、1年10カ月ぶりに運転を再開した。地元の柏崎市と刈羽村の住民は複雑な思いで「起動試験開始」「臨界到達」の知らせを受け止めた。

 「安全を強調したうえで問題を起こせば再起できない。東電は重荷を背負った」。原子炉から制御棒が引き抜かれ、核分裂が始まった午後2時。刈羽村の通称「団結小屋」で元村議の武本和幸さん(59)はこう語った。

 労組や住民でつくる「原発反対地元3団体」が79年に結成されて以来のメンバー。監視を続けてきた意義を強調する一方「問題は複雑」とも言う。

 85年に1号機が営業運転を始めるまでは多くの住民が参加したが、稼働以降「子供が東電に入った」などと距離を置く人が出始めた。「原発城下町」という現実は認めざるを得ない。

 柏崎商工会議所の松村保雄会頭は「不況が襲うなか、運転再開は明るい希望」と歓迎したが、経済効果については「1基が動いたからといって、地元が急に潤うわけじゃない」と冷静だった。

 柏崎市のJR柏崎駅前の仮設住宅。主婦(67)は「地元発展のためには仕方がないが、放射能漏れ事故が起きたら、被害を受けるのは私たち」と経済と不安の間で揺れる。

 地震後「原発がなくなるのでは」と心配した市民もいる。電気工事会社経営の桑山秀雄さん(38)は「原発をあてに商売してきた仲間は多い。柏崎が震災前の姿に戻る意義は大きい」と語る一方「いつまでも原発に頼るわけにはいかないかも、と考えるようになった」と明かした。

 「原発には寿命がある。今からその後のことを考えないと」。武本さんも同じ思いだ。「答えを持っているわけじゃないが、気づけた意義は大きい」【五十嵐和大、岡田英、渡辺暢、畠山哲郎】

毎日新聞 2009年5月9日 20時34分(最終更新 5月9日 22時11分)


柏崎刈羽原発:
運転再開 中越沖地震から1年10カ月ぶり

2009年5月9日 18時44分 更新:5月9日 22時25分

Pasted Graphic
柏崎刈羽原発7号機で制御棒の引き抜きが始まり、中央制御室で原子炉の状態をチェックする職員ら=新潟県刈羽村で2009年5月9日午後2時2分、手塚耕一郎撮影

Pasted Graphic 1
中越沖地震による被災から1年10カ月ぶりに、運転が再開された柏崎刈羽原発7号機=新潟県柏崎市で2009年5月9日午後2時12分、手塚耕一郎撮影

 07年7月の新潟県中越沖地震で被災し、運転を停止していた東京電力柏崎刈羽原発7号機(改良型沸騰水型炉、135.6万キロワット)の起動試験(試運転)が9日始まった。約1年10カ月ぶりの事実上の運転再開で、試運転は40~50日間の予定。順調に進めば、1週間後には首都圏への送電を始め、6月下旬にも営業運転に移行する。地震被災で長期間停止した原発が運転を再開したのは、世界初となる。

 東電は9日午後1時53分、7号機中央制御室で、原子炉の制御棒を引き抜く作業を開始。約1時間半後に核分裂が連鎖的に起こる臨界に達した。清水正孝社長も立ち会った。

 起動試験では、出力を段階的に100%まで上げ、原子炉や配管、タービンなどについて、地震の影響の有無や今後の連続運転に耐えられるかなどを確かめる。

 原子炉が7基ある同原発の中で、最新型の7号機は地震被害が最も少なかったとして、東電は被災直後から点検や耐震補強工事を最優先して進めてきた。

 経済産業省原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会は今年2月、「安全上の問題はない」として起動試験を了承、県の技術委員会も4月にこれを追認した。ただ、同原発では地震後9件の火災が相次いだことから、泉田裕彦知事は7日、「安全確保のため継続的な改善を求める」との条件付きで運転再開を認めた。

 地震の際、同原発では運転中の4基が緊急停止。3号機の変圧器から黒煙が上がり、微量の放射性物質が外部に漏れるなどトラブルが多発した。東電は、残る6基については、再開のめどは立っていないとしている。【五十嵐和大】


柏崎刈羽原発:
7号機起動試験開始 県が放射線の監視体制強化 /新潟

 東電柏崎刈羽原発7号機の起動試験開始に備え、県は8日、常時行っている発電所周辺の放射線監視体制を強化することを決めた。

 発電所から半径約10キロ圏内にある11カ所のモニタリングポスト(自動観測設備)などに移動式ポストを2カ所追加するほか、モニタリング車による巡回測定も行う。【小川直樹】

毎日新聞 2009年5月9日 地方版


柏崎刈羽原発:
7号機、6月下旬にも営業運転

2009年5月8日 14時12分 更新:5月8日 14時14分

 東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転再開容認を表明した新潟県の泉田裕彦知事は8日午前、東電の清水正孝社長を県庁に呼び、起動試験(試運転)に入ることに同意する文書を手渡した。東電はこれを受け同日午後から原子炉の起動準備を開始、9日にも制御棒を引き抜いて臨界に達する見通し。順調に進めば6月下旬にも営業運転に入る。


柏崎刈羽原発:
運転再開、知事が条件付き容認(その1) /新潟

 ◇「安全確保へ改善継続を」

 中越沖地震での被災から1年10カ月。泉田裕彦知事は7日、東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転再開に「安全性の改善継続」の条件を付けてゴーサインを出した。東電は泉田知事からの同意を8日に受けて起動試験の準備を開始。9日には原子炉から制御棒が引き抜かれ、臨界に達する見通し。【五十嵐和大】

 ◇「行政が完全に保証できず」

 県議会全員協議会で泉田知事は、原発について「現在の生活水準を維持するエネルギーを確保するためには、原発と共生せざるを得ない」との認識を述べた。しかし、4月10日の3者会談で、結論先送りの理由とした「多岐にわたる論点」をどう整理したのかは明らかにしなかった。

 泉田知事は、地震後9件に及ぶ火災を起こした東電について「原発を運営する事業者としてお粗末」と厳しく批判したが、原発の安全性については「おおむね確保されていると受け止めた」との言葉を繰り返した。

 一方で「行政が安全を完全に保証することはできない」とも述べ、地元自治体の原発依存を理由に「当面は共存すべきではないか」と結論付けた。

 また、一定の条件付きでの同意であることを強調し、「常に改善を継続することが求められる」と言及。起動試験の途中経過と最終結果を県の技術委員会に諮るよう、東電側に改めて念を押した。

 全員協議会終了後、決断に至った理由を問う記者団に、泉田知事は「議会でご説明した通り。一言では言い表せない」と述べた。

 ◇推進派「本来の姿に」/反対派「説明不十分」

 泉田裕彦知事が柏崎刈羽原発7号機の起動試験に同意したことを受け、会田洋柏崎市長は「まだ試験の一環。地元自治体として安全を確認するステップがいる」と述べた。また、4回にわたった3者会談で合意できなかったことも振り返り「なかなか共通の認識に立てなかったが、(知事は)県全体を見渡して判断したのだろう」と推し量った。

 品田宏夫刈羽村長は「時間はかかったが、至極、真っ当な結論だ」とコメント。知事が決断したプロセスについては「『多岐にわたる論点』というのは私には分からないが、結論を出されたのだから、それはそれでいいのでは」と語った。

 経済、雇用への影響を訴え、知事に早期再開を要望してきた柏崎商工会議所の松村保雄会頭は「柏崎がやっと本来の姿に戻れる。(国が2月に)安全を確認したのだから、遅過ぎたくらいだ」と話した。

 一方、原発反対地元3団体は「『多岐にわたる論点』をどう整理したのかの説明もなく、不十分だ」と知事の再開容認表明を批判し、原発周辺の活断層や一部設備の耐震性についての真相解明を求める抗議声明文を県に送った。【五十嵐和大】

==============

 ◇知事の発言要旨

 県議会全員協議会での泉田裕彦知事の発言要旨は次の通り。

 【原発に対する所見】

 原発も人が造ったものである以上、完全無欠はあり得ず、行政が完全な安全性を保証することはできない。

 現在の生活水準を維持するエネルギーを確保するためには、原発と共生せざるを得ない現実がある。原発に賛成の方も反対の方も安全の確保が何にも増して必要という点では全く違いはないと思う。

 異なるのは安全確保の程度、方法論。現時点の日本において、安全を確保するためには、仮に原発は造るべきでないという立場に立って柏崎刈羽原発の廃止をしても、日本国内に原発がある限り、事故や放射線のリスクを回避できず、問題の解決にはならない。

 当面、県は原発と共存する道を選択すべきではないかと考えている。この選択をする以上、行政は原発の安全確保に大きな責任を負うことになるという自覚を持ち、原発の安全性を高めていく不断の努力と政策を実施することが不可欠と考える。

 安全確保のためには日々進歩していく人類の知見と科学技術に合わせて常に改善を継続していくことが必要であり、そのことが県民の信頼につながる。

 改善すべき(国の)制度として、個人の責任追及より不断の安全性の向上を促す仕組みの構築が重要ではないか。この点、国に対応を求めていきたい。

 【7号機の安全性について】

 今回、基準地震動が引き上げられたことにより、現在の知見で予想しうる最大級の地震を想定した対策が取られたものと理解した。耐震性には十分な冗長性が認められ、おおむね安全が確保されているとの説明には説得力があると受け止めた。起動試験から営業運転に移行するに際して、技術委員会の審議を経ることなど一定の条件を付したうえで、東電からの運転再開申し入れに同意をしたいと考えている。

毎日新聞 2009年5月8日 地方版


柏崎刈羽原発:
運転再開、知事が条件付き容認(その2止) /新潟

 ◇震災、揺れた1年10カ月

 ◆柏崎刈羽原発を巡る経緯◆

07・ 7・16 中越沖地震発生。全7基のうち運転・起動中の4基が緊急停止。3号機変圧器で火災。6号機使用済み核燃料プール水が海に漏えい
      17 7号機主排気筒からヨウ素が漏えい
      18 柏崎市長、危険物施設の緊急使用停止命令を発令
    8・ 4 トラブルを「代え難い貴重で歴史的な実験」と評した県技術委員会座長が辞任
    9・27 知事、トラブル続発で「廃炉もあり得る」と発言
      27 資源エネルギー庁、柏崎市と刈羽村の電源立地地域対策交付金を3倍に追加交付と発表
   12・ 6 東電、設置許可申請時の判断を覆し、F-B断層を活断層と認める
       同 東電、新潟県へ30億円寄付すると発表
      24 原発構内「震度7」だったと東電が公表
08・ 2・27 IAEA(国際原子力機関)調査団、報告書で「深刻な損傷なし」と公表
    5・ 9 柏崎市、原発停止で財源不足の恐れと公表
      21 「09年1月以降再開」との東電内部文書が流出
      22 東電、基準地震動を最大約5倍に改定
    9・ 1 東電、7号機主要設備の健全性に「地震の影響なし」と発表
   11・ 4 7号機の耐震補強工事が終了
       8 7号機に地震後初めて核燃料を装てん
09・ 2・ 3 柏崎市長、7号機の緊急使用停止命令を解除
       6 知事と柏崎市長、刈羽村長が初の3者会談。起動試験は事実上の運転再開との認識で一致
      13 原子力安全・保安院、7号機起動試験を了承
      18 内閣府原子力安全委員会も起動試験を了承
      19 東電、7号機運転再開への同意を県、柏崎市、刈羽村に求める
    3・ 5 1号機原子炉建屋で、地震後8件目の火災発生
      18 県技術委、運転再開を了承する見解を取りまとめる
      30 県技術委の見解に批判的だった立石雅昭・新潟大教授が「同意した」と県が発表
    4・ 7 県技術委の見解報告に、知事が「安全性はおおむね確保されていると受け止めた」
       8 柏崎市長と刈羽村長、7号機再開容認を表明
      11 予備品倉庫で地震後9件目の火災発生
      17 火災の責任を取り、東電が副社長らを減給処分に
      23 知事、東電の火災再発防止策を了承
       同 1号機の設置許可取り消し訴訟で、住民側の敗訴確定
      30 知事、原発の復旧状況を初めて視察。7号機の安全性について「納得度は高まった」
    5・ 7 県議会全員協議会で知事が7号機運転再開容認を表明

==============

 ◆柏崎刈羽原発の復旧状況◆

    設備点検・試験   耐震補強 核燃料の装てん
1号機 機器ごとの点検中  実施中  未実施
2号機 地震直後の目視点検 未実施  未実施
3号機 機器ごとの点検中  実施中  未実施
4号機 機器ごとの点検中  未実施  未実施
5号機 機器ごとの点検中  実施中  未実施
6号機 系統機能試験中   完了   完了
7号機 系統機能試験完了  完了   完了

毎日新聞 2009年5月8日 地方版


柏崎刈羽原発:
7号機の運転再開容認を表明…新潟知事

2009年5月7日 12時12分 更新:5月7日 19時41分

 07年7月の新潟県中越沖地震で被災し停止中の東京電力柏崎刈羽原発7号機(改良型沸騰水型炉、出力135.6万キロワット)について、泉田裕彦知事は7日の県議会全員協議会で、事実上の運転再開となる起動試験に入ることを容認する考えを表明した。泉田知事は8日午前、東電に容認の考えを伝える予定で、東電は同日午後から起動試験の準備を開始。9日には制御棒を引き抜いて臨界に達する見通し。順調に進めば6月下旬にも営業運転に移行する。地震で大規模な被害を受けた原発の運転再開は世界的にも初めてとなる。

 泉田知事は「安全確保には現在の技術に合わせた改善継続が必要」と一定の条件を付け、「(東電の)運転再開の申し入れに同意したい」と述べた。

 同原発は地震に伴い3号機の変圧器で火災が発生するなどし、運転起動中の4基がすべて緊急停止。7号機は最も復旧作業が進んでいた。

 経済産業省原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会は今年2月、「安全上の問題はない」と起動試験に入ることを了承。東電は安全協定に基づき、地元の県と柏崎市、刈羽村に起動試験開始への同意を求めた。

 これに対し、県の技術委員会(座長、代谷誠治・京都大教授)は4月7日、国の結論を追認する見解を報告。泉田知事は「安全性はおおむね確保されていると受け止めた」と発言し、柏崎市と刈羽村も再開容認を明言した。

 しかし、同11日に原発内の倉庫で被災後9件目となる火災が発生。県は東電側に防火体制の見直しを求め、容認表明も先送りされた。泉田知事は東電が火災の再発防止策などをまとめた報告書を提出した後の30日に復旧状況を初めて視察。「被災前と変わらなかった。これは危ないという感触はなかった」と、前向きな発言をしていた。残る6基のうち、6号機は核燃料を入れて試験中。1~5号機は点検が続いており、再開の見通しは立っていない。【岡田英】


柏崎原発:
GW明け運転再開へ 新潟知事、容認の見通し

2009年4月24日 2時30分 更新:4月24日 2時30分

Pasted Graphic 1
柏崎刈羽原発の配置

 07年7月の新潟県中越沖地震で被災し、緊急停止している東京電力柏崎刈羽原発7号機(改良型沸騰水型炉、出力135.6万キロワット)が、5月の大型連休(GW)明けにも起動試験に入り、運転を再開する見通しとなったことが23日分かった。泉田裕彦知事が県議会に運転再開を諮る意向を示した。【岡田英】

 起動試験は50日程度かかる見込みで、順調に進めば7月にも営業運転に移行する。夏の電力需要増への対応に間に合うことになる。

 泉田知事は、GW明けにも開かれる県議会全員協議会で経緯を報告したうえで、正式に7号機の運転再開容認を表明するとみられる。地元の柏崎市と刈羽村は容認を明言しており、県議会も同調する方向にある。東電は既に起動試験の準備を整えており、県の容認が得られ次第、運転を再開する。

 同原発の全7基の中で最も復旧作業が進む7号機について、経済産業省原子力安全・保安院と内閣府原子力安全委員会は2月、起動試験を了承する判断を示した。県の技術委員会(座長、代谷誠治・京都大教授)も今月7日、「安全性は確保されている」とした国の結論を追認する見解を県に報告。これを受け、21日の全員協議会に運転再開が諮られる予定だったが、11日に原発内の倉庫で地震後9件目となる火災が発生し、県は東電に再発防止策の提出を求めていた。
 ◇東京電力柏崎刈羽原子力発電所

 新潟県柏崎市と刈羽村にまたがる。7基の原子炉があり、1号機は1985年に運転を開始した。総出力は821.2万キロワット。1カ所の発電所としては世界最大の発電出力があり、東電の発電電力量の約2割を占めていた。07年7月16日に起きた新潟県中越沖地震で、3号機の変圧器で火災が発生するなどし、運転・起動中の4基が緊急停止した。


柏崎原発火災:
東電の再発防止策、新潟知事が了承

 柏崎刈羽原発で中越沖地震後の復旧作業中9件目となる火災が起きた問題で、新潟県の泉田裕彦知事は23日、東電の再発防止策を了承した。5月初旬にも開かれる県議会全員協議会で経緯を報告し、7号機の運転再開について最終判断する見通し。泉田知事は火災発生前、「安全性はおおむね確保されていると受け止めた」と述べ、運転再開を容認する考えを示唆している。【岡田英】

毎日新聞 2009年4月23日 22時21分(最終更新 4月23日 22時57分)


柏崎原発訴訟:
住民側敗訴 提訴から30年 最高裁決定

 東京電力柏崎刈羽原発1号機(新潟県柏崎市)を巡り、地元住民10人が「安全審査は不十分で違法」として、経済産業相を相手に原子炉設置許可の取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(甲斐中辰夫裁判長)は23日、原告側の上告を棄却する決定を出した。79年の提訴から30年を経て、住民側敗訴が確定した。07年7月の新潟県中越沖地震については判断を示さなかった。

 住民側は上告審で、中越沖地震で同原発が想定の最大3.8倍の揺れに見舞われたことを挙げ、「地震は国の審査当時に無視された断層で起こった。06年改定の耐震設計審査指針は『原発のすべての建物は十分な地盤に設置しなければならない』と定めており、同原発が満たしていないのは明らか」と主張した。

 これに対し小法廷は、上告理由に当たらないとして退けた上で、「中越沖地震が発生した点は、事実関係は審理せず法律問題のみを審査する上告審の性格、事案の内容、訴訟の経緯などにかんがみ、上告を退ける判断を左右するものではない」と述べた。

 1審・新潟地裁は94年3月、「設置許可の手続きに違法はなく、安全審査に見過ごしがたい過誤、欠落もない」と請求を棄却し、2審・東京高裁も05年11月に支持していた。

 中越沖地震で同原発は被災し、多くのトラブルが発生。1号機を含む全7基が停止したままになっている。【銭場裕司】

毎日新聞 2009年4月23日 21時48分


原発火災:
増加傾向に 00年以降、柏崎刈羽が最多

2009年4月23日 20時56分 更新:4月23日 23時27分

Pasted Graphic
柏崎刈羽原発の(手前から)7号機、6号機、5号機=新潟県柏崎市で2009年3月3日、石井諭撮影

 全国の原子力発電所で起きた火災は1967年以後105件に上り、うち半数の49件は2000年以降に発生したことが23日、経済産業省原子力安全・保安院の調べで分かった。東京電力柏崎刈羽原発で火災が相次いでいることを受け、初めて集計した。最近増加傾向にあり、一部の原発で発生が集中していた。保安院は6月までに、総務省消防庁と共同で原因を分析し、対策をまとめる。

 同日開かれた専門家会合で報告された。

 それによると、▽79年以前13件▽80年代17件▽90年代26件▽00年以降49件だった。特に00年以降で分析すると、▽東電柏崎刈羽17件▽東電福島第1で7件▽東北電力女川6件▽北海道電力泊5件▽中部電力浜岡、中国電力島根各3件など、一部の原発に偏っていることが判明した。

 00年以降の原因を調べた結果、作業中の出火が41%を占めた。このうち溶接などの火気作業が62%、洗浄などで可燃性溶剤を使う作業が19%だった。いずれも近年増えており、耐震補強工事の増加や、引火性の強い代替フロン溶剤導入の影響が考えられるという。

 一方、作業中以外の火災は59%で、劣化による漏電、設計・施工不良、過熱など保守管理体制に問題がある事例が目立った。【山田大輔】


柏崎刈羽原発:
火災で東電が報告書 運転再開へ内容検討

 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)で、07年7月に発生した中越沖地震からの復旧作業中に9件の火災が起きた問題で、東電は22日、火災の再発防止策をまとめた報告書を新潟県へ提出した。泉田裕彦知事は焦点となっている同原発7号機の運転再開について、報告書の内容の妥当性を評価したうえで最終判断することになるとの考えを示した。

 東電は17日に柏崎市消防本部へ報告書を提出したが、県は有識者らの意見を基に情報共有の仕組みを作ることなど6項目の改善を東電側に要請。東電はこれを受け、22日に提出した報告書には▽部署間で定期的に会合を開いて情報共有を図る▽必要に応じて点検や作業のマニュアルを改善する▽点検がおろそかになってもカバーできる体制を作る--などの事項を盛り込んだ。

 泉田知事は「報告書をよく読んで(了承するかどうかを)決めたい」と語った。【岡田英】

毎日新聞 2009年4月22日 20時55分


柏崎刈羽原発:
火災で副社長ら処分…東京電力

 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の倉庫で中越沖地震(07年7月)後の復旧作業中9件目となる火災が起きた問題で、東電は17日、武黒一郎副社長を10%の減給3カ月とするなど役員ら5人の懲戒処分と原発管理職4人を厳重注意とする処分を発表した。

 東電が同日、経済産業省原子力安全・保安院と柏崎市消防本部に提出した報告書によると、11日の火災の原因は空調機のファンベルトが切れ、電熱線に触れて過熱したためと推定されるという。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年4月17日 23時38分


保安院:
東電に厳重注意 柏崎刈羽原発倉庫火災で

2009年4月13日 19時45分 更新:4月13日 20時23分

 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)で11日夜起きた倉庫火災で、経済産業省原子力安全・保安院は13日、東電に文書で厳重注意し、防火対策の徹底を指示した。同原発では新潟県中越沖地震(07年7月)以後、これまで8件の火災が相次いでおり、保安院による改善指示は4回目。

 保安院は「再発防止策の徹底を指示していたにもかかわらず、火災が発生したのは極めて遺憾」と指弾した。11日夜の火災では倉庫内の空調機モーターが焼損した。同社で原因を調べている。【山田大輔】


柏崎刈羽原発:
倉庫火災…空調機が過熱し出火か

2009年4月12日 19時29分 更新:4月12日 20時06分

Pasted Graphic
火災が起きた空調機のモーター部分を指し示す東電の担当者=新潟県の柏崎刈羽原発で2009年4月12日午後4時56分、五十嵐和大撮影

 新潟県中越沖地震(07年7月)で被災し運転停止中の東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の倉庫で11日夜に発生した火災で、東電は12日、何らかの原因で空調機のモーター付近が過熱し、出火した可能性が高いことを明らかにした。同原発では最も早く復旧作業が進む7号機の運転再開について、泉田裕彦知事が21日にも開かれる県議会全員協議会で説明したうえで最終判断を示す予定だったが、今回の火災を受けて、その日程も先送りされる見通しとなった。

 同原発で地震後の復旧作業中に火災が発生するのは今回で9件目で、柏崎市消防本部は12日、東電に対し、原因究明と再発防止を求める文書指導を行った。地震後、消防が行政指導を行うのは5度目で、「これまでも再三にわたって指示、命令してきたにもかかわらず、極めて遺憾」との厳しい表現で注意。今回出火した空調機と同様の機器を総点検するよう指示した。

 同原発の高橋明男所長は「火災防止対策に取り組んでいるところ、地域の皆さまに大変ご心配をおかけしたことを心からおわびする」との謝罪コメントを出した。【五十嵐和大、岡田英】


柏崎刈羽原発:
倉庫で火災 7号機再開に影響も

2009年4月12日 1時11分 更新:4月12日 1時50分

 11日午後10時25分ごろ、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)敷地内の予備品倉庫で火災報知機が鳴った。県警柏崎署によると、空調機のモーターのベルトが焦げて煙が充満しており、放水はせず、約2時間後に鎮火を確認した。倉庫には測定機器などの予備品が保管され、放射線管理区域外。放射能漏れなどの影響はなかった。

 同原発は07年7月の中越沖地震で被災し、全7基が停止中。復旧作業が終了した7号機は、東電が県などに運転再開の事前了解を申し入れ、近く正式に容認される見通しだった。

 同原発では復旧作業中に8件の火災が相次ぎ、3月には7号機の再開論議が一時中断。東電は防火体制に万全を図るとしていただけに再開論議に影響が出るのは必至とみられる。【五十嵐和大】


柏崎刈羽原発:
7号機運転再開は時期尚早 市民グループ、「真相解明」訴える /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発に反対する市民グループが11日、柏崎市役所で記者会見し、「7号機の運転再開容認は時期尚早で、再開への手続きより真相の解明を優先すべきだ」と改めて訴えた。泉田裕彦知事が10日、柏崎市長、刈羽村長との3者会談で再開容認を先送りしたことについては「合意に至らなかったことは歓迎する」と慎重姿勢を評価した。

 会見したのは、労働団体などで構成する「柏崎刈羽原発反対地元3団体」と、中越沖地震後に設立された「柏崎刈羽原発の閉鎖を訴える科学者・技術者の会」。

 同会メンバーで元原子炉設計技術者の田中三彦さんは、7号機原子炉圧力容器の底にぶら下がった、再循環ポンプのモーター容器について重大な問題があると指摘。

 「冷却水漏れにつながる重要な機器なのに、基準地震動に対する余裕が小さい。東電は目視点検だけで安全と主張し、国や県技術委でも突っ込んだ議論がない。いま起動試験を認めるには問題がある」と主張した。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年4月12日 地方版


柏崎刈羽原発:
7号機運転再開、3者会談で結論先送り 市村長、不満あらわ /新潟

 ◇知事「意見整理して判断」

 東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転再開を巡り、泉田裕彦知事と会田洋・柏崎市長、品田宏夫・刈羽村長による3者会談が10日に県庁で行われたが、結論は先送りされた。泉田知事は「県議会への説明が必要」とし、運転再開の是非について、自身の判断も明確にしなかった。会田市長と品田村長は「見込み違いだった」「とにかく速やかに対応すべきだ」と不満を隠さなかった。泉田知事は21日にも開かれる県議会全員協議会で説明する方針。

 この日が4回目となる3者会談は初めて報道陣に公開され、約30分行われた。会田市長と品田村長は「7号機の起動試験を行うことについて同意する」という文書を手渡した。

 これに対し、知事は県技術委員会が7日に示した「安全性に問題はない」との結論について、「おおむね安全性は確保されたと受け止めたが、『おおむね』であって、100%ではない」と、なお懸念が残っていることを示唆。市村長に、地元住民への説明がどの程度済んでいるかなどを質問した。市村長とも「もう何も説明することはないくらいだ」と応じた。

 質疑が一段落し、知事は「技術委の結論について、県議会への報告ができていない。何らかの結論を出す前に、県議会に諮りたい」と、結論持ち越しを打診。これに対し、市村長は失望した様子で「知事が判断をまとめる上で、何がネックとして残っているのか」(会田市長)、「この会談はゴーサインが出る場だと思っていた。スカッと結論を出す条件は整っている」(品田村長)と食い下がったが、結局は知事に押し切られた形となった。

 会談後、3人で会見したが、知事は「両首長から聞いた話を整理し、判断を決めたい」という言葉を繰り返した。県議会への説明は、報告だけなのか、同意を取り付けることなのかなどについては明かさなかった。【小川直樹】

==============

 ◇知事会見、主な発言

 3者会談終了後、会見した泉田知事の主な発言は次の通り。

 --運転再開について、県議会へ説明する前に、知事の判断を下すのか。
 今日、両首長から話を聞いたので、内容を整理した後、どうするか決めたい。
 --両首長からは早い再開を求める声が出たが。
 そういう声も十分に受け止める。
 --県議会から知事へ、説明の要請があったのか。
 もともと県議会への説明が必要だと思っていた。
 --県議会の後、また、3者会談を開いて最終結論を出すのか。
 それは分からない。
 --内容整理はいつごろをめどに終えるのか。
 (地元に)問い合わせが必要かもしれないし、今の段階では「いつ」というラインを引けない。
 --3者会談で知事は自分の意見を言っていないがこれでは説明を受ける県議会も困るのではないか。
 両首長の話をふまえて、内容を整理して判断する。
 --知事の判断はまだ固まっていないのか。
 もちろん。
 --県議会は意見を聴く場にするのか、それとも知事の判断を伝える場にするのか。
 議会運営に関して私が決定することは難しい。繰り返しになるが、両首長の話を整理し、自分の中で判断を決めたい。
 --整理しなければならない論点とはどういうものか。
 どれだと限定しろと言われても、さまざまな声が私にも届いている。全部含めて整理が必要だ。

毎日新聞 2009年4月11日 地方版


クローズアップ2009:
新潟・柏崎刈羽原発7号機試運転へ 全基復旧、道遠く

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 新潟県中越沖地震で緊急停止した東京電力柏崎刈羽原発7号機(改良型沸騰水型炉、出力135・6万キロワット)の点検・補修が進み、近く試運転を実施する見通しになった。夏の電力需要増への対応や地球温暖化防止に向け、国や東電は一刻も早い全面営業運転の布石にしたい考えだ。地元には地域振興の観点から再稼働を歓迎する声がある一方、安全面の不安はなお払拭(ふっしょく)されていない。1~6号機を含む全基復旧への道は遠い。

 ◇地震対策、課題なお

 新潟県の泉田裕彦知事は10日、柏崎市の会田洋市長、刈羽村の品田宏夫村長との3者会談に臨み、21日にも開かれる県議会全員協議会で、早期運転再開を容認する地元の意向を説明する考えを示した。

 7号機に関するこれまでの点検で東電は、1360の機器を調べ、71件の故障を見つけた。再び地震が起きた場合、主要な建物や機器に不具合が生じないかどうかも分析した。

 この結果を踏まえ、国の原子力安全委員会や経産省原子力安全・保安院は2月、「中越沖地震をやや上回る地震の可能性はあるが、放射能漏れなど重大な影響は出ない」と評価した。東電は今後、原子炉の起動試験を40~50日間実施する。問題がなければ夏までに営業運転が可能になる。

 だが、予定通りに進むかどうか予断を許さない。地震の影響を調べる過程で、発電用タービン翼の設計不良に起因する破損や重要な機器のボルトの緩みが見つかった。いずれも通常の定期検査で発見できなかったトラブルで、今後、新たな問題が出てくる恐れも捨てきれないからだ。

 さらに、復旧中に続発した火災に関しては、東電が下請け任せで安全を確認していなかったとの指摘も出た。2月の評価後、国が東電による建物の耐震性の計算ミスを見落としていたことも判明。東電、国の姿勢が問われてもいる。

 一方、7号機以外は復旧の見通しが全く立っていない。6、7号機より古いタイプの1~5号機は配管類が多く、確認作業が増える。特に定期点検中だった1号機は、分解していた機器が地震で動いて他の機器を壊し、被害を広げた。

 世界最大級の原発停止は、深刻な影響をもたらした。電力供給を補う火力発電の燃料費が年約5850億円かかり、二酸化炭素の排出量も約3000万トン(国内総排出量の2%)増やした。東電は7号機の復旧で、燃料費を約700億円、二酸化炭素を約400万トン減らせると試算する。

 地球温暖化対策のため原発依存が増す「原子力ルネサンス」の流れは世界的に強まっている。だが柏崎刈羽の7基をはじめ、1カ所に原発を集中させる立地は日本独特だ。地震が起きれば打撃が大きいという課題もそのまま残る。

 原子力資料情報室の山口幸夫・共同代表は「全号機停止が現実に起きた以上、楽観的な抽象論は言えないはずだ。保安院と安全委の審査体制でも計算ミスを見落としており、万全の保証はない」と指摘した。【岡田英、山田大輔、関東晋慈】

 ◇災害・失業、二重の不安 住民、ジレンマ抱え

 7号機の運転再開について、新潟県の泉田裕彦知事はこれまで「予断を持たない」と言い続けてきた。中越沖地震から1年9カ月を経て今月7日、「運転再開に向けた前提となる安全性は、おおむね確保されていると受け止めた」と一歩踏み込んだ。「安全上の問題はない」と国の結論を追認した県の「技術委員会」の報告を受けた発言だった。

 「原発の火災が怖かった。今でも消防車のサイレンに『またか』と身構えてしまう」。原発から南に1キロ足らずの柏崎市荒浜地区。巨大な原発の排気筒を背に男性住民(72)は話した。

 地震直後、3号機の変圧器から黒煙が上がる光景が衝撃を広げたが、東電はその後の復旧作業中にも8件の火災を起こしている。柏崎市民には、知事の慎重姿勢への支持がある。

 一方で、早期再開を望む声も強い。地震で地元経済は冷え込んだままだ。夏の海水浴客は地震前、約100万人だったが、08年は75万人に減った。今回の不況で柏崎市など周辺3市町村で昨年末以降、機械メーカーを中心に400人以上の失業者が出た。

 原発が止まり赤字決算となった東電に、柏崎市は08年度、約2億7000万円の法人市民税を還付した。原発が再稼働し、東電が黒字に転じなければ市財政が好転しないことも、早期再開を望む背景にある。

 「地元住民の不安には二つある。一つは災害、もう一つは稼ぎがなくなることだ」。刈羽村の品田宏夫村長はそう代弁する。住民はジレンマを抱えたまま、国や自治体、東電の対応を見つめている。【五十嵐和大】

==============

 ■ことば

 ◇柏崎刈羽原発と中越沖地震

 新潟県柏崎市と刈羽村にまたがる東京ドーム約90個分の敷地に建設された原発。7基の合計出力は821.2万キロワットと世界最大級。07年7月16日に発生した新潟県中越沖地震で想定を上回る震度6強~7の揺れ(加速度は想定の3.8倍に当たる約1700ガル)に見舞われ、全基に機器や設備の被害が出た。運転再開の見通しとなった7号機は、燃料取り換え機のボルトが折れたほか、タービンの車軸の一部が損傷、重要機器の土台のコンクリートがひび割れた。

==============

 ■柏崎刈羽原発各号機の地震被害と現状■

号機 出力(万キロワット) 地震発生時の状況 目視点検の進ちょく率(3日現在) 主な被害
1  110        定期点検中    81%              主排気筒ダクトのズレ
2  110        起動中      今後実施             主排気筒ダクトのズレ
3  110        運転中      77%              所内変圧器の火災
                                        主排気筒ダクトのズレ
4  110        運転中      1月から実施           主排気筒ダクトのズレ
5  110        定期点検中    51%              主排気筒ダクトのズレ
6  135.6      定期点検中    終了               放射性物質を含む水が海に流出。原子炉建屋屋上クレーンの軸破損
7  135.6 運転中  終了                        放射性物質が主排気筒から放出される

毎日新聞 2009年4月11日 東京朝刊


柏崎刈羽原発:
県議会に説明後運転再開判断へ 新潟県知事

Pasted Graphic
柏崎刈羽原発の(手前から)7号機、6号機、5号機=新潟県柏崎市で、本社ヘリから石井諭撮影

 新潟県中越沖地震(07年7月)で被災して運転を停止している東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転再開を巡り、泉田裕彦知事は10日、会田洋・柏崎市長、品田宏夫・刈羽村長との3者会談に臨んだ。市村長が早期の運転再開を容認する考えを示したのに対し、泉田知事は「結論を出す前に県議会に諮りたい」と語り、21日にも開かれる県議会の全員協議会で地元の意向などを説明する方針。県議会も再開を容認する見通しだ。

 泉田知事は会談で、「地域社会の中での同意をしっかりつくる必要がある。できるだけ説明を尽くしたい」と主張、「論点を整理して判断したい」と述べた。この日の会談は、県の技術委員会による「安全上の問題はない」との報告について、泉田知事が7日に「安全性はおおむね確保されていると受け止めた」と再開容認を示唆する発言をしたことを受け、市村長の要請で開かれた。泉田知事は県議会への説明を経て、運転再開の可否を判断するとみられる。

 東電は、同原発の全7基の中で最も早く復旧作業が進む7号機について、県や地元市村と結んでいる安全協定に基づき、事実上の運転再開となる起動試験の開始への了解を各自治体に求めている。【岡田英】

毎日新聞 2009年4月10日 20時09分(最終更新 4月11日 2時11分)


柏崎刈羽原発:
県議会に説明後運転再開判断へ 新潟県知事

2009年4月10日 20時09分

 新潟県中越沖地震(07年7月)で被災して運転を停止している東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転再開を巡り、泉田裕彦知事は10日、会田洋・柏崎市長、品田宏夫・刈羽村長との3者会談に臨んだ。市村長が早期の運転再開を容認する考えを示したのに対し、泉田知事は「結論を出す前に県議会に諮りたい」と語り、21日にも開かれる県議会の全員協議会で地元の意向などを説明する方針。県議会も再開を容認する見通しだ。

 泉田知事は会談で、「地域社会の中での同意をしっかりつくる必要がある。できるだけ説明を尽くしたい」と主張、「論点を整理して判断したい」と述べた。この日の会談は、県の技術委員会による「安全上の問題はない」との報告について、泉田知事が7日に「安全性はおおむね確保されていると受け止めた」と再開容認を示唆する発言をしたことを受け、市村長の要請で開かれた。泉田知事は県議会への説明を経て、運転再開の可否を判断するとみられる。

 東電は、同原発の全7基の中で最も早く復旧作業が進む7号機について、県や地元市村と結んでいる安全協定に基づき、事実上の運転再開となる起動試験の開始への了解を各自治体に求めている。【岡田英】


柏崎刈羽原発:
7号機、きょう3首長会談 推進派「早く」/反対派「慌てず」 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転再開を巡って、泉田裕彦知事と会田洋・柏崎市長、品田宏夫・刈羽村長による3者会談が10日開かれる。事実上の運転再開となる起動試験を正式に認める見通し。地元の観光関係者は9日、早期再開を泉田知事に要望した一方、反原発団体からは「慌てて開かず、県民の意見を聞いてほしい」との声が挙がった。【岡田英、五十嵐和大】

 ◇「運転再開を」 地元観光関係者、知事に要望書

 柏崎市などの観光協会でつくる「柏崎地域観光復興推進協議会」(内藤信寛会長)は、旅館のおかみら約10人で泉田知事を訪問。「風評被害を防ぐためにも一日も早く運転再開し、正常な状態に戻してほしい」との要望書を提出した。

 同協議会によると、約110万人いた柏崎市内の海水浴客は、中越沖地震(07年7月)で原発火災が起きてから約1割の16万人に激減。08年は約75万人に回復したものの、内藤会長は「観光客に(原発は)もう心配ないんだと打ち出すために、運転を始めることが大事」と訴えた。泉田知事は「地域が生活できる環境を維持できないと、復興とはいえない」と応じた。

 ◇技術委の最終報告に不満噴出--小委員会

 技術委が最終報告を取りまとめて泉田知事に提出したことを受け、9日行われた「設備健全性、耐震安全性に関する小委員会」では、委員から技術委と小委のあり方について疑問を呈する意見が相次いだ。

 小岩昌宏・京都大名誉教授は「小委で議論中なのに、技術委が独自に見解をまとめた」と不信感をあらわにし、黒田光太郎・名古屋大大学院教授も「小委の独立性が保たれなかった」と指摘した。

 ◇了解後、速やかに運転再開を準備--原発所長

 同原発の高橋明男所長は9日の会見で、会田市長、品田村長が8日に7号機の起動試験を容認したことを受けて「我々の取り組みがご理解いただけたものと受け止める」と語った。ただ「まだ最終的な了解ではない」とも述べ、3者会談の行方を見守る姿勢を強調。仮に運転再開が認められれば、「速やかに(起動の)準備をする」と話した。

 ◇「県民の意見聞いて」 反原発団体、県に申し入れ

 反原発地元3団体などでつくる「原発からいのちとふるさとを守る県民の会」(和田光弘共同代表)は飯沼克英・県防災局長に、3者会談を開く前に技術委員会が取りまとめた最終報告について県民から意見募集することなどを求める申し入れを行い、13日までの回答を要請した。

 同会の矢部忠夫柏崎市議は「知事は2日に技術委の委員間の意見の違いを検証する必要があるとしていたのに、最終報告書を受け取ると同時に『安全が確保された』とは納得できない」と批判した。

毎日新聞 2009年4月10日 地方版


柏崎刈羽原発:
10日に地元3首長会談 運転再開を容認

 新潟県は9日、中越沖地震(07年7月)で被災した東京電力柏崎刈羽原発7号機の事実上の運転再開となる起動試験について県と柏崎市、刈羽村による3者会談を10日午後、県庁で開くと発表した。泉田裕彦知事、会田洋市長、品田宏夫村長が協議し、起動試験を正式に認める見通し。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年4月9日 20時23分


柏崎刈羽原発:
運転再開後の安全対策努力強調 東電副社長

 東京電力の武黒一郎副社長は9日の定例会見で、新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発7号機の運転再開を、泉田裕彦・新潟県知事が容認する姿勢を示したことについて、「再開の判断は我々が申し上げることではない。耐震安全性の強化策などを粛々と進める」と述べ、運転再開後の安全対策に全力を尽くす考えを強調した。

 7号機同様、運転が停止したままの1~5号機については「7号機の工事の経験や教訓を反映してどう進めていくかを評価している段階」と説明。運転再開のめどは立っていない状態だ。

 原発近くに別の活断層が存在するとして、運転再開に慎重な意見があることについては「最高の知見、多数の専門家が熱心に議論をしてきている」と述べ、安全性に問題はないとの認識を示した。【三沢耕平】

毎日新聞 2009年4月9日 20時03分


柏崎刈羽原発:
7号機運転再開へ 柏崎・刈羽両首長、起動試験を容認 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発の運転再開問題は、7日に泉田裕彦知事が「安全性はおおむね確保されていると受け止めた」と運転再開を容認する考えを示唆したことから、一挙に動き出した。地元・柏崎市の会田洋市長は8日、7号機の運転再開を容認する考えを表明し、刈羽村の品田宏夫村長は週内にも泉田知事も交えた3者会談を開くことを求める構えだ。【五十嵐和大】

 泉田知事の発言を受け、会田市長と品田村長は8日早朝、柏崎市役所で協議。1時間ほどのやりとりで、最も復旧作業の進む7号機の事実上の運転再開となる起動試験を容認する考えで一致した。

 直後の定例会見で会田市長は、知事の発言について「安全性に初めて言及し、共通の認識に立ったのではないか」と評価。次回の3者会談では「運転再開への対応に加え、その後の運びについても話し合いたい」と述べた。

 一方、品田村長は同日午後、7号機の安全性について県の技術委員会の報告について説明に訪れた県の武藤敏明・危機管理監に対し、「知事のリーダーシップで、起動にサインを出す会合を開いていただきたい」と要請。報道陣に対しては「村民も異存はないと思う。条件が整えば、(判断を)遅らせる理由はない」と明言した。

毎日新聞 2009年4月9日 地方版


柏崎刈羽原発:
夏前の営業運転再開を目指す

 新潟県中越沖地震で被災し、運転を停止している東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転が再開する見通しとなった。震災で柏崎刈羽原発が停止して以降、他社から電力を譲り受けるなど「急場しのぎ」を強いられてきた東電は、40~50日間の試運転を経て、夏前の営業運転再開を目指している。

 同社は今夏の管内の最大電力を6100万キロワットと見込むが、供給力は6420万キロワットと「供給余力」は5%しかない。7号機の出力は世界最大規模の136万キロワットで、再開すれば供給余力は7~8%に回復し、8~10%とされる安定供給の水準に近づくことになる。

 また、原発は1キロワット時の発電コストが5.3円と水力(同11.9円)や石油(同10.7円)と比べて安価。東電は1~7号機の運転停止に伴って年間約5850億円(09年3月期)のコスト増を見込んでいたが、再開でこの負担も約700億円少なくなる計算だ。

 ただ、同原発で被害が小さかった6号機以外は再開のメドは立っておらず、3月5日には1号機で火災が発生するなど周辺住民の不安も完全には払拭(ふっしょく)されていない。東電は「情報公開を徹底して安全で安心な原発を目指さないといけない」(広報室)と話している。【三沢耕平】

毎日新聞 2009年4月8日 21時10分(最終更新 4月9日 0時31分)


柏崎刈羽原発:
地元首長も運転再開を容認

 新潟県中越沖地震(07年7月)で停止中の東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転再開を巡り、柏崎市の会田洋市長と刈羽村の品田宏夫村長は8日、事実上の運転再開となる起動試験を容認する考えで一致した。

 両首長は東電側が求めていた運転再開を正式に了解するため、県に対し泉田裕彦知事を交えた3者会談を早期に開くようにも求めた。7日に泉田知事が「安全性はおおむね確保されていると受け止めた」と運転再開を容認する考えを示唆する発言をしたことに対応した。

 8日に柏崎市内で品田村長と会談した会田市長は、県設置の技術委員会が7日に「起動試験を了承する」と泉田知事に報告したことについて「国の結論に沿ったもの。私も村長も起動試験を認める考えで、条件が整った」と述べた。

 泉田知事は7日、地元自治体からの要請があれば3者会談に応じる考えを示していた。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年4月8日 19時27分


柏崎刈羽原発:
7号機の安全性「おおむね確保」…新潟知事

 07年7月の新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転再開について、同県の泉田裕彦知事は7日、「安全性については、おおむね確保されていると受け止めた」と述べた。今後は地元の柏崎市、刈羽村の意向を聞き、事実上の運転再開となる起動試験を了承するかどうか判断する。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年4月7日 22時04分(最終更新 4月7日 22時07分)


柏崎原発:
耐震性評価誤り、安全性低く見積もる 東京電力

 東京電力は2日、新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発7号機(新潟県)について、建物の耐震性評価の一部を誤り、本来より安全性を低く見積もっていたと発表した。国の安全判定が覆ることはない見通しだが、誤りを見抜けず「合格」とした審査の信頼性が問われそうだ。

 東電によると、7号機タービン建屋が揺れでどうひずむかを解析する際、耐震壁だけで算定し、放射能の遮へい用などに設けた補助壁を入れ忘れたという。補助壁を入れると、ひずみが数%少なくなる。6号機の評価結果と比較して発覚した。建屋内の機器や配管類にどう影響するかは今後、再評価する。

 経済産業省原子力安全・保安院は、原子炉建屋は独自に耐震性を評価したが、タービン建屋は東電の評価のみで安全性を判定していた。保安院の森山善範・原子力発電安全審査課長は「この誤りを見抜くのは難しい。設計時のデータなどを多面的に判定しているので、これだけで問題とは言えないと思う。しかし、こうしたことから信頼性を損なうことがないよう、再発防止策の検討を東電に指示した」と話している。【山田大輔】

毎日新聞 2009年4月2日 22時17分


原子力安全白書:
柏崎原発の被災を反省 「教訓生かす」

Pasted Graphic
中越沖地震直後の東電柏崎刈羽原発(奥)。地震の生々しい傷跡が海岸線に残った=柏崎市で2007年7月27日撮影

 政府の原子力安全委員会(鈴木篤之委員長)は「07・08年版原子力安全白書」をまとめ、31日の閣議に報告した。新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原発の被災対応のため昨年は発行できず、白書が始まった81年以来初めて2年分合本で刊行した。

 同原発が設計時の想定を大きく上回る揺れで被災した問題について、白書は冒頭、「率直に反省し、得られた教訓や知見を生かすことが安全委の使命」と自省。被災状況の分析や対策など中越沖地震に全体の40%、122ページを割いた。

 また、海底の活断層を見逃し、断層評価の見直し後も、結果を東電が伏せてきた問題を指摘。地震でドアが変形して緊急時対策室に入れず、消防署への専用電話が使えなかったなど、初動体制の課題を列挙した。一方で「(建設)当時の安全審査は最善を尽くした」と弁明し、同原発7号機の起動試験を認める見解を盛り込んだ。【山田大輔】

毎日新聞 2009年3月31日 10時51分


新潟・柏崎刈羽原発:
中越沖地震による被災、安全白書で自省--原子力安全委

 政府の原子力安全委員会(鈴木篤之委員長)は「07・08年版原子力安全白書」をまとめ、31日の閣議に報告した。新潟県中越沖地震による東京電力柏崎刈羽原発の被災対応のため昨年は発行できず、白書が始まった81年以来初めて2年分合本で刊行した。

 同原発が設計時の想定を大きく上回る揺れで被災した問題について、白書は冒頭、「率直に反省し、教訓や知見を生かすことが安全委の使命」と自省。被災状況の分析や対策など中越沖地震に全体の40%、122ページを割いた。

 また、海底の活断層を見逃し、断層評価の見直し後も、結果を東電が伏せてきた問題を指摘した。【山田大輔】

毎日新聞 2009年3月31日 東京夕刊


地震調査委:
新潟・高田断層帯、30年以内にM7.2 確率は最大8%

 政府の地震調査委員会は18日、高田平野断層帯(新潟県)の地震発生確率の長期評価を公表した。高田平野断層帯は東西の二つに区分される。上越市から妙高市に延びる東縁断層帯(約26キロ)では「今後30年以内にマグニチュード(M)7・2程度の地震が発生する確率はほぼ0~8%」としている。西縁断層帯(約30キロ)は「30年以内にM7・3程度の地震が起こる確率はほぼ0%」だった。

 東縁断層帯の最新活動は約3500年前以後~19世紀以前で、平均約2300年の間隔で活動していると推定。M7・2程度の地震が発生すると、上越市北部の一部や長野県飯山市の一部で震度6強以上、柏崎市の一部などで震度6弱の揺れが生じると予測している。西縁断層帯の最新活動は1751年の地震で、平均活動間隔は約2200~4800年だった。【足立旬子】

毎日新聞 2009年3月19日 東京朝刊


柏崎原発:
新潟県技術委が7号機の運転再開を了承

Pasted Graphic
技術委の見解を取りまとめる代谷座長(中央)=新潟市中央区の自治会館で2009年3月18日、渡辺暢撮影

 07年の新潟県中越沖地震で被災して運転を停止している東京電力柏崎刈羽原発の安全性について、専門家の立場から県に助言する県技術委員会(座長、代谷誠治・京都大原子炉実験所長)は18日、7号機については、事実上の運転再開となる起動試験に入ることを了承するとの見解をまとめた。

 見解では、存否が議論されてきた活断層「佐渡海盆東縁断層」について「存在しない」と結論付けた。また、原子炉内の配管が地震で揺さぶられ、元に戻らないほど変形する「塑性変形」の程度についても「安全性を損なうまでには至らない」と評価。代谷座長は「(7号機の起動を了承した)国の判断と技術委の判断が一致したということだ」と説明した。

 泉田裕彦知事らは技術委の見解を「(地元自治体として再開を了承するかどうかの)判断の大切な材料にしたい」としていた。

 今後は、1号機で今月5日に発生した火災で、消防から改善命令を受けた東電が防火体制の見直しを報告するのを待って、県と柏崎市、刈羽村の3首長が再開の是非を判断することになる。【渡辺暢】

毎日新聞 2009年3月18日 20時40分(最終更新 3月18日 21時39分)


柏崎刈羽原発:
運転再開問題 11日に3度目の知事ら3者会談 /新潟

 柏崎刈羽原発7号機の運転再開問題で、県は5日、泉田裕彦知事、会田洋柏崎市長、品田宏夫刈羽村長による3度目の3者会談を11日午前11時から県庁で開くと発表した。

 2月23日にあった前回の会談では、再開問題について泉田知事が「県内で理解に差がある」と発言、県民の理解を深める必要性で一致したが、東電が求めた起動試験開始について了解するかの判断については先送りされた。

 この間、県などは各地で住民説明会を開いてきた。しかし、1号機原子炉建屋で5日に起きた火災が問題視されるのは確実で、7号機の再開についての議論が進むかどうかは不透明な情勢だ。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年3月6日 地方版


柏崎刈羽原発:
再開論議中、また火災 中越沖地震後、8件目 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発で5日、また火災が起きた。同原発では7号機の運転再開の是非を巡って県が説明会を開いているさなか。また、中越沖地震後の復旧作業中、8件目の火災となるだけに、地元自治体と国は、東電の防火体制に疑問を投げ掛けるとともに、改めて再発防止を求めた。経済産業省原子力安全・保安院は6日、立ち入り調査を行う。

 火災は、1号機原子炉建屋の地下5階にある「原子炉隔離時冷却系ポンプ室」で起きた。現場にいた作業員4人のうちの1人が金属製の危険物保管庫内にあった有機溶剤を含む洗浄液を、一斗缶から小分けする作業をしていたという。

 その際、保管庫の中にあったエタノール缶を持ち上げたところ、缶を覆うビニール袋に引火したのに気づき、瞬く間に炎が舞い上がったという。保管庫に隣り合う空調機にも燃え移り、消火作業をした男性作業員(39)が顔にやけどをした。現場に火の気はなく、火元は特定できていない。

 柏崎市消防本部は地震以降、同原発で火災が相次いだことを受け、東電に2度にわたって行政指導を行い、2月26日には合同の消防訓練を行ったばかり。今回の火災を受け、3度目となる行政指導をする方針。県の渡辺博文防災局長は、同原発の高橋明男所長に対し、原因究明と再発防止を徹底するよう文書で申し入れた。

 ◇知事「チェック改めて求める」

 相次いだ火災を受けて、泉田裕彦知事は「また火災かという思い。運転再開の議論をする前に、防火体制をしっかり確認すべきだと申し上げてきた。東電だけでなく、柏崎消防にも改めてチェックを求めたい」と注文を付け、運転再開を巡る議論への影響については「予断を持たずに対応したい」と話すにとどめた。

 ◇「市民の疑念と不安が高まる」--柏崎市長

 同市の会田洋市長は「極めて遺憾。市民の疑念と不安が高まる」と語り、運転再開への影響についても「別(の問題)だが、安全、安心という基本的なところで共通の問題もある」と指摘。刈羽村の品田宏夫村長は「安全確保は当たり前で、(運転再開に)プラスには働かないだろう」と語った。【五十嵐和大、黒田阿紗子】

==============

 ◆中越沖地震以降、柏崎刈羽原発で起きた火災◆

発生日       現場          焼失した設備
07・ 7・16 3号機屋外(中越沖地震) 変圧器
    9・20 1号機原子炉複合建屋   エアコン電源ケーブル
   12・12 ケーブル地下連絡通路   小型変圧器
08・ 7・ 1 1号機タービン建屋    電気乾燥機
    7・22 1、2号機サービス建屋  放射線監視装置用電源
   11・22 7号機タービン建屋    タービン洗浄機
   12・ 8 6号機タービン建屋    溶接棒送り出し装置
09・ 2・ 8 避雷鉄塔の航空障害灯   制御盤
    3・ 5 1号機原子炉建屋     危険物保管庫

毎日新聞 2009年3月6日 地方版


柏崎刈羽原発:
火災続発で東電に厳重注意 保安院

 柏崎刈羽原発1号機で起きた火災について経済産業省原子力安全・保安院は5日、原因究明と再発防止策を報告するよう、東電に文書で厳重注意した。08年11、12月にも6、7号機で火災が発生し厳重注意した。経産省の望月晴文事務次官は会見で「たびたび火災が起きるのは問題で大変遺憾だ」と批判した。6日には立ち入り検査を行う。

 7号機では運転再開準備が進む。望月次官は「詳細な原因を見なければ分からないが、今回の火災と7号機の安全性は異なる問題だ」と述べ、影響しないとの見方を示した。【山田大輔】

毎日新聞 2009年3月5日 19時02分(最終更新 3月5日 19時44分)


柏崎刈羽原発:
原子炉建屋内で火災 1時間半後に鎮火

 5日午前9時ごろ、新潟県柏崎市の東京電力柏崎刈羽原発1号機の原子炉建屋内で火災が発生、作業員らが消火器などで消火し、同10時半ごろ鎮火が確認された。放射線管理区域内だが、放射能漏れや外部への影響はないという。消火作業の際、下請け会社の男性作業員(39)が顔に軽いやけどをした。

 東電によると、火災があったのは同建屋の地下5階で、緊急時に原子炉を冷やすためのポンプがある「原子炉隔離時冷却系ポンプ室」。室内で数人の作業員が点検作業の準備中だった。作業に使う溶剤が燃えた可能性があるとみている。

 同原発は中越沖地震(07年7月)で被災し全7基が停止したまま。最も復旧作業が進んだ7号機で事実上の運転再開となる起動試験の開始を地元自治体が了解するかを巡って、県などが県民向けの説明会を開いているさなか。また、同原発では中越沖地震の際、3号機変圧器で火災が起きたほか、その後の復旧作業中にも昨年11月、7号機タービン建屋でぼやが発生し、作業員2人が負傷するなど、火災が7件相次いでいる。【岡田英、五十嵐和大】

毎日新聞 2009年3月5日 11時21分


柏崎刈羽原発:
再開問題で県が説明会 技術委の論点に理解を /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発の運転再開問題で、県は4日、原発の安全性について専門家が県に助言する県技術委員会の議論についての説明会を新潟市で開いた。県などが再開についての了解の是非を判断するのを前に、県民に理解を深めてもらうのが狙い。5日に柏崎市、6日に上越市でも開かれる。

 同原発7号機の運転再開を巡っては、起動試験前に地元了解が不可欠との方針で、県と柏崎市、刈羽村の認識が一致。2月23日に開かれた泉田裕彦知事らによる3首長会談では、「(原発立地地域とそれ以外で)理解に差がある」との指摘もあり、県内3カ所で説明会が開かれることになった。

 説明会には141人が参加。技術委の二つの小委員会から山崎晴雄・首都大学東京大学院教授と鈴木元衛・日本原子力研究開発機構研究主幹が出席。活断層の長さなど、主な論点を説明したほか、県のホームページで後日答えるのみとしていた参加者の質問にも、部分的には回答した。

 一方で難しい専門用語の多用や、論点説明に委員個人の見解が混在するなど、説明会のあり方に課題も残った。【渡辺暢】

毎日新聞 2009年3月5日 地方版


柏崎刈羽原発:
運転再開断念求め58万人署名 東電に提出

 反核平和団体「原水爆禁止日本国民会議」(市川定夫議長)など4団体は27日、07年の新潟県中越沖地震で被災し、運転停止中の東京電力柏崎刈羽原発の運転再開断念を求める約58万人分の署名を東電に提出した。

 運転再開を断念して復旧工事を中止し、損傷検査の結果を他の原発の耐震補強に役立てることなどを求めている。同日午後には、首相と経済産業相宛ての約60万人分の署名を経産省に提出。同原発7基の原子炉設置許可を取り消し、国の責任で損傷調査を実施することと、結果を他の原発の耐震補強に利用し、06年策定の新耐震審査指針を改定することなどを求める。

毎日新聞 2009年2月27日 12時56分


柏崎刈羽原発:
再開巡り、県民の質問募集--技術委議論で /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発の運転再開問題で、県は26日、原発の安全性について専門家が県に助言する県技術委員会の議論について、県民からの質問の募集を始めた。同原発7号機の運転再開について、全県的な理解を進めるのが狙い。主な質問を取りまとめた上で、県のホームページなどに回答を掲載する。

 応募方法は、各地域振興局の県民相談窓口に備えた質問票に記入して担当者に渡す方法のほか、郵送の場合は連絡先と氏名を記入の上、〒950-8570 新潟市中央区新光町4の1、県原子力安全対策課へ。

 3月4~6日に県内3カ所で開く県主催の説明会でも質問を受け付ける。問い合わせは同課(025・280・5238)。【渡辺暢】

毎日新聞 2009年2月27日 地方版


柏崎刈羽原発:
火災相次ぎ、合同の消防訓練--市本部と東電 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発で中越沖地震の際、3号機変圧器が燃えたほか、その後の点検・復旧作業中も火災が7件相次いだことを受け、柏崎市消防本部と東電は26日、合同消防訓練を行った。

 訓練は1号機タービン建屋から出火したとの想定で、東電の自衛消防隊50人、消防からは約35人が参加。災害時、放射線管理区域に速やかに入るため、放射線検査や防護服の装着などの動作を確認した。

 地震を受け、東電は24時間対応できる専任の自衛消防隊を下請け会社に委託するなど改善策を講じた。しかし、原発での火災の際には、消防隊員が消火作業やけが人の救助のため管理区域内での活動を強いられることもある。

 柏崎市消防署の須田正明署長は「一般の火災とはまったく違い、隊員の被ばく管理など2次災害に注意しなければならない」と話した。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年2月27日 地方版


柏崎刈羽原発:
早期再開求め要望書提出--柏崎・刈羽の商工業関係者 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発が立地する、柏崎商工会議所や刈羽村商工会など地元の商工業関係者は25日、同原発の早期運転再開を求める要望書を会田洋柏崎市長と品田宏夫刈羽村長に提出した。07年の地震後、原発再開を促す地元からの要望は初めて。会田市長は「意見を踏まえ、的確に判断する」と述べるにとどめ、品田村長は「原発が動き出さなければ、地震の復旧は終わらない」と理解を示した。

 要望書では、停止状態が続く原発が経済、雇用面に与える影響を憂慮しながら「地域では東京電力を地元企業として認知し、地域振興に欠くことのできない存在」と指摘。「国の安全確認がなされた7号機については、速やかに運転再開すべきだ」としている。

 柏崎商議所の松村保雄会頭は今後、泉田裕彦知事にも同様の働き掛けをする意向を示した上で「県技術委員会があろうがなかろうが、国が安全というのなら、もういいのではないか」と話した。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年2月26日 地方版


柏崎刈羽原発:
来月4~6日に3カ所で説明会 再開巡って県技術委員参加 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転再開問題で、県は25日、原発の安全性について専門家が県に助言する県技術委員会の議論について3月4~6日に県内3カ所で説明会を開くと発表した。

 説明会は3月4日、県自治会館201会議室(新潟市中央区)▽5日、柏崎商工会議所大研修室(柏崎市)▽6日、上越市民プラザ第1会議室(上越市)。いずれも開会は午後6時半で「設備健全性、耐震安全性」「地震、地質・地盤」の2小委員会の委員が参加し、論点などについて説明する。

 7号機の運転再開問題を巡っては、泉田裕彦知事と会田洋柏崎市長、品田宏夫刈羽村長による23日の3者会談で「(東電や国からの)情報提供について(同市など立地地域とそれ以外の地域で)理解の差がある」として、県内各地で説明会を開く必要性が指摘された。【渡辺暢】

毎日新聞 2009年2月26日 地方版


新潟・柏崎刈羽原発:
7号機の起動試験、県に了解申し入れ--東電

 東京電力は19日、新潟県中越沖地震(07年)で被災し運転停止中の柏崎刈羽原発7号機について、事実上の運転再開となる起動試験(試運転)を行う準備が整ったとして、同県と柏崎市、刈羽村に事前了解を申し入れた。

毎日新聞 2009年2月20日 東京朝刊


原子力安全委:
柏崎起動了承 志賀2号機も耐震性OK

 新潟県中越沖地震(07年7月)で被災した東京電力柏崎刈羽原発7号機(新潟県)について、内閣府原子力安全委員会は18日、「起動させるに必要な施設健全性および耐震安全性は確保されている」とし、起動試験に入ることを了承した。起動試験は営業運転再開につながる作業で、経済産業省原子力安全・保安院も了承済み。国のゴーサインが出そろったことを受けて東電は近く、安全協定に基づく事前了解を新潟県など地元自治体に求める。

 安全委は同日、北陸電力志賀原発2号機(石川県)について、北陸電力が昨年報告した耐震性の再評価結果は適切と判定した。

毎日新聞 2009年2月18日 20時07分


新潟・柏崎刈羽原発:
7号機停止を解除 市長通知「再開容認ではない」

 新潟県柏崎市は3日、中越沖地震(07年7月)直後、消防法に基づき東京電力柏崎刈羽原発1~7号機に付随する「危険物施設」に出した緊急使用停止命令のうち、7号機について消火設備などの安全性が確認できたとして東電に解除を通知した。これで運転再開に向けた事実上の歯止めが解除された。

 県と柏崎市、刈羽村は臨界を伴う試運転(起動試験)前に地元自治体の了解が必要と東電側に求めており、運転再開の可否については今後、国と県の専門家の評価を受けて3首長が判断する。

 柏崎市の会田洋市長は同日午前、市役所に柏崎刈羽原発の高橋明男所長を呼び、解除通知書を手渡した。会田市長は「法に基づいて解除した。原発そのものの安全確認とは別問題」と話し、命令の解除が運転再開を認めるものではないことを強調した。

 同原発では地震発生時、3号機の変圧器で火災が発生するなどした。市は地震2日後の07年7月18日、防火体制に問題があるとして1~7号機の軽油タンクや消火配管などの危険物施設55カ所の使用を禁じた。東京電力によると、7号機は最も復旧作業が進んでおり損傷した発電タービンの検査が今月4日に終了、7日に全施設の復旧が完了するという。

 東電は地元の了解が得られ次第、原子炉の起動試験に入るが、試験は40~50日かかる見通し。出力を段階的に引き上げながら機器を点検し、出力100%に達した段階で国が安全性を最終評価する。問題がなければそのまま営業運転となる。【五十嵐和大、山田大輔】

毎日新聞 2009年2月3日 東京夕刊


新潟・柏崎刈羽原発:
7号機、再起動を了承--保安院

 新潟県中越沖地震(07年)で被災した東京電力柏崎刈羽原発7号機(新潟県)について、経済産業省原子力安全・保安院は13日、原子炉を再起動させることに安全上の問題はないとし、起動試験に入ることを了承した。しかし「実際の起動には東電が地元自治体の事前了解を得ることが必要だ」と条件をつけた。

 内閣府原子力安全委員会の評価委員会も同日開かれ、条件つきで起動を了承した。【山田大輔】

毎日新聞 2009年2月14日 東京朝刊


柏崎刈羽原発:
7号機の施設使用停止を解除 柏崎市

Pasted Graphic
高橋明男・東京電力柏崎刈羽原発所長(左)に、緊急使用停止命令の解除通知書を交付する会田洋・柏崎市長=新潟県柏崎市役所で2009年2月3日午前9時33分、五十嵐和大撮影

 新潟県柏崎市は3日、中越沖地震(07年7月)直後、消防法に基づき東京電力柏崎刈羽原発1~7号機に付随する「危険物施設」に出した緊急使用停止命令のうち、7号機について消火設備などの安全性が確認できたとして東電に解除を通知した。これで運転再開に向けた事実上の歯止めが解除された。

 県と柏崎市、刈羽村は臨界を伴う試運転(起動試験)前に地元自治体の了解が必要と東電側に求めており、運転再開の可否については今後、国と県の専門家の評価を受けて3首長が判断する。

 柏崎市の会田洋市長は同日午前、市役所に柏崎刈羽原発の高橋明男所長を呼び、解除通知書を手渡した。会田市長は「法に基づいて解除した。原発そのものの安全確認とは別問題」と話し、命令の解除が運転再開を認めるものではないことを強調した。

 同原発では地震発生時、3号機の変圧器で火災が発生するなどした。市は地震2日後の07年7月18日、防火体制に問題があるとして1~7号機の軽油タンクや消火配管などの危険物施設55カ所の使用を禁じた。東京電力によると、7号機は最も復旧作業が進んでおり、損傷した発電タービンの検査が今月4日に終了、7日に全施設の復旧が完了するという。

 東電は地元の了解が得られ次第、原子炉の起動試験に入るが、試験は40~50日かかる見通し。出力を段階的に引き上げながら機器を点検し、出力100%に達した段階で国が安全性を最終評価する。問題がなければそのまま営業運転となる。【五十嵐和大、山田大輔】

毎日新聞 2009年2月3日 12時50分(最終更新 2月3日 13時28分)


柏崎刈羽原発:
7号機停止命令解除へ 運転再開手続き始動

 新潟県柏崎市は28日、中越沖地震(07年7月)直後、消防法に基づき東京電力柏崎刈羽原発1~7号機に出した緊急使用停止命令のうち、7号機分を週明けにも解除する方針を固めた。東電も同日、7号機の再起動に必要な施設全体の機能試験計画書案を経済産業省原子力安全・保安院部会に提出した。命令が解除されれば、運転再開に向けた事前了解の手続きが本格化する。

 柏崎市の会田洋市長は取材に「運転再開とは別の話だが、機能に問題がなければ淡々と解除する」と答えた。市は消防本部による、タービンに付随する消火設備の立ち入り検査をした上で、命令解除を最終判断する。

 東電によると、7号機は7基の原子炉のうち、最も復旧作業が進んでおり、地震で損傷した発電タービンの復旧工事が2月上旬に終わる予定。機能試験は営業運転再開に向けた最終作業。命令が解除されれば、東電と地元自治体で結ぶ安全協定に基づく運転再開に向けた事前了解の手続きを経て、早ければ2月中にも、原子炉内で核分裂反応を抑えている制御棒が引き抜かれ臨界に達する。

 柏崎市は地震直後、3号機の変圧器で火災が起きたことなどから消防法に基づき2日後使用停止命令を出した。【五十嵐和大、山田大輔】

毎日新聞 2009年1月29日 2時30分


新潟・柏崎刈羽原発:
柏崎市、7号機分の停止命令解除へ

 新潟県柏崎市は28日、中越沖地震(07年7月)直後、消防法に基づき東京電力柏崎刈羽原発1~7号機に出した緊急使用停止命令のうち、7号機分を週明けにも解除する方針を固めた。東電も同日、7号機の再起動に必要な施設全体の機能試験計画書案を経済産業省原子力安全・保安院部会に提出した。命令が解除されれば、運転再開に向けた事前了解の手続きが本格化する。

 柏崎市の会田洋市長は「運転再開とは別の話だが、機能に問題がなければ淡々と解除する」と答えた。【五十嵐和大、山田大輔】

毎日新聞 2009年1月29日 東京朝刊


柏崎刈羽原発:
6号機の火災、原因は「端子にほこり」 /新潟
 ◇消防通報遅れで東電、基本動作の徹底図る

 東京電力柏崎刈羽原発6号機で昨年12月8日に起きた火災で、東電は8日、溶接機器の電源端子にほこりがたまって発火した「トラッキング」を原因と推定する報告書を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。また、火災発生の情報を1時間近く把握できなかった東電自身の問題については「今後、『煙』というキーワードを含め、火災が否定できない連絡を受けた場合は、東電社員が直ちに現場確認を行うようにしたい」とするなど、改めて基本動作を徹底せざるを得ない現状を露呈した。

 火災は6号機タービン建屋の溶接作業時に発生。溶接機器の一つ、ワイヤ送り出し装置から発煙、下請け作業員が直ちに消火したが、消防への通報が約1時間遅れた。

 東電の報告書によると、発生直後の午前10時40分ごろ、現場には東電から溶接工事を請け負った元請け会社の担当者2人と、その下請け会社の作業員6人がいた。

 火災現場に居合わせ、気分が悪くなった1人の作業員を見た元請け担当者は直ちに東電に通報したが、「溶接時の煙を吸った」と思うなど火災に気づかなかった。作業員は「既に(元請け担当者が)消防通報した」と思い込み、結局、互いに意思の疎通が図れなかった。

 さらに「体調不良者がいる」との通報で現場に来た東電社員2人が作業員を外に運び出したが、直接現場を確認することも怠った。結局、東電は約50分後の11時半ごろになって元請け会社から報告を受けるまで火災を認知できなかった。

 一方、出火した送り出し装置は下請け会社が持ち込んだもので、原発や一般の工場などで約20年間使っていた。電源端子の接続部でトラッキングが起きたと推定し、今後はこの部品の点検も作業手順に盛り込む。

 しかし、東電は「下請けに点検を任せるという意味では従来とスタンスは同じ。(経験の)積み重ねでしっかりするしかない」と釈明している。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年1月9日 地方版


福島原発:
安全性評価の最終報告書提出延期 東電

 東京電力は8日、国が06年に改定した原発の耐震設計審査指針(新耐震指針)に基づく福島第1、第2原発の安全性評価最終報告書の提出を延期すると発表した。昨年7月の新潟県中越沖地震の影響を受けて、想定される地震の再検討など追加作業が必要になったためという。

 最終報告書は、福島第1(1~6号機)が来年6月、福島第2(1~4号機)は来年3月の提出予定だったが、いつまで延びるかは未定という。両原発では、耐震安全性評価の中間報告が福島第1の5号機、第2の4号機のみ経済産業省原子力安全・保安院に提出されている。

【関連記事】
志賀原発:運転差し止め控訴審判決3月18日に
原発耐震性M6.8想定 下限設定、短い活断層でも
島根原発:プルサーマル「慎重姿勢を」 市民団体、松江市に申し入れ /島根
原発ミニニュース:敦賀原発1号、7日から定検 /福井
伊方原発:環境安全管理委員会、耐震安全性評価など討議 松山で技術専門部会 /愛媛

毎日新聞 2008年12月8日 22時37分


新潟・柏崎刈羽原発:
14年間、弁開けっ放し 放射性廃棄物漏れる

 東京電力は4日、新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発1号機(新潟県)のタービン建屋の床下から、放射性廃棄物の樹脂約0・82立方メートルが見つかったと発表した。94年に廃棄槽へ流した際、途中の配管の排水弁が開いていたため漏れたらしい。14年後に発見された時も弁は開いたままで、ずさんな管理が明らかになった。

 樹脂は原子炉に戻される冷却水のろ過用で直径約1ミリのビーズ状。3日午後3時ごろ、配管類の耐震補強が必要かどうかを確認するため、通常、人が立ち入らない地下2階の床下パイプスペースを開けると、樹脂が深さ最大約9センチ、面積約20平方メートルに広がっていた。放射能量は約1800万ベクレル。室内の放射線は検出限界値以下で、作業員や外部への影響はないという。

 東電によると、排水弁は隣接する他の弁とコックの操作方向が逆で、閉めたつもりで開けてしまったらしい。管理記録はなく、いつから開いていたかは不明。東電は「地震がなければ今後も見逃されていた」と認めている。【山田大輔】

毎日新聞 2008年12月5日 東京朝刊


将来脱却 VS. 積極推進
朝日新聞 2008年11月04日
Pasted Graphic
「原発依存からの脱却」を訴える会田洋氏=柏崎市半田1丁目
Pasted Graphic 1
「原子力行政の推進」を訴える桜井雅浩氏=柏崎市駅前2丁目

 昨年7月の中越沖地震で被災し、停止中の東京電力柏崎刈羽原子力発電所を抱える柏崎市で、地震後初の市長選(9日告示、16日投開票)が迫っている。同原発を今後どのように位置づけて市政運営するかは大きな争点の一つだ。立候補を表明した現職と新顔は、いずれも同原発の運転再開を認めているため争点が見えにくいが、街の将来像として、現職は「原発依存からの脱却」を、新顔は「原子力行政の推進」を掲げている。(曽田幹東)

              ◆

 立候補を表明しているのは、いずれも無所属で現職の会田洋市長(61)と新顔の桜井雅浩・元市議会副議長(46)。市長選では、震災復興や医療・福祉の充実、産業振興なども争点となる。

 会田氏はこれまで、市財政の約2割が原発関連財源に依存していることなどから、「当面、原発の存在を抜きには語れない」としているが、将来的には「固定資産税が年々減少しており、いつまでも原発には頼れない。それに代わる産業振興が課題だ」と主張してきた。

 これに対し、市議時代から原発容認派だった桜井氏は「柏崎は日本のエネルギー政策を引っ張ってきたリーダー。原発部品を地元で作るなど、原子力技術で金を稼ぐ産業構造にしたい」と原子力を積極的に活用する方針を打ち出している。

 先月31日に市内であった公開討論会では、まず、桜井氏が中越沖地震の復興支援について、「国からの支援に不満がある。原子力政策を支えてきた自治体なのに支援が小さかった」と批判。会田氏は「4年前の中越地震を上回る支援を受けられた。これまでの震災より早い速度で復興が進んでいる」と反論した。

 柏崎刈羽原発について、桜井氏は「原発は今後も中心的存在、課題であり続ける。東電は基準地震動の設定、耐震補強の責任を果たしつつあるが、国に対して規制体制の見直しを求めていく」。会田氏は「原発と共存共栄を図る。国が責任をもって安全性を確認し、市民にわかりやすく説明することが大事だ」と訴えた。

 桜井氏が「会田氏の支持者には原発反対の立場の人が多い。(会田氏が)表面上では『再稼働が必要』と言っても、国に信じてもらえるのか」と批判すると、会田氏は「原発推進、反対の立場から幅広く支援を受けている。市民の総意がどこにあるか、耳を傾ける」と答えた。

 市財政の悪化問題について、会田氏は「原発の固定資産税が毎年減る中で2度の震災が続いた。自助努力が大事だ」とし、市有地売却やガス事業の民営化を主張すると、桜井氏は「10年間で市職員を3割減の700人にする」と訴えた。


新潟・柏崎刈羽原発:
中越沖地震で発覚、原発機器トラブル 従来の定期検査の盲点は

 昨年7月の新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原発7号機(新潟県)。地震による影響を調べる設備健全性調査で、発電用タービン翼の破損や重要機器の据え付けボルトの緩みなどが相次いで見つかった。通常の定期検査では発見できず、地震がなければ見逃されていたトラブルだ。従来の検査方法の「盲点」が浮かび上がったとはいえないか。【山田大輔】

 ◆タービン動翼破損

 柏崎刈羽原発は、中越沖地震により3号機の変圧器火災などの被害を受け、現在も運転が停止したままだ。東電は運転再開に向け、被害の少なかった7号機から順次、設備健全性調査を実施している。7号機では、想定の1・5倍の揺れを受け、タービンの動翼と静翼の接触による傷や軸受け部の変形など29件の被害が見つかった。一方、地震によるものではないとされるトラブルも42件発覚した。

 最も深刻なのは、発電機を回す低圧タービンの動翼付け根の損傷だ。2枚が破損していたほか、187枚に微小なひびが見つかった。東電は、ひびの断面の酸化状態などから、ひびは地震前に生じたと推定。蒸気の流れをコンピューター解析した。その結果、点検で発電を停止する際や試運転の低速回転中に蒸気が不安定に逆流することが判明、想定外の振動で金属疲労が起きたと分析した。

 付け根が完全に折れれば、高速で回転している動翼が飛び、タービン大破という大事故につながる危険性は否定できない。地震の影響を詳しく調べるため、目視点検したり、磁石の粉を使って目に見えないひびまで探した結果だが、定期検査は動翼を固定するピンに超音波を当てて傷の有無を調べ、異常があれば付け根部分を見る方法だ。今回判明した多数の損傷は見逃されてきた。また、蒸気の逆流という設計上の問題も発覚しなかったといえる。

 ◆炉心ボルトに緩み

 原発の中枢部である原子炉圧力容器や、非常時の炉心冷却に使われる残留熱除去系熱交換器など、重要度の高い機器では、土台に固定する基礎ボルトの固定力が弱まっていたことも分かった。16本のうち10本が緩んでいた機器もあった。地震の揺れで機器が動いた跡はなかったが、通常の定期検査では、ボルトの緩みは点検しないという。

 例えば圧力容器は、円筒状の鋼鉄製容器の外周部分を長さ1・5メートル、直径68ミリのボルト120本で土台に留め、容器が倒れたり飛び上がるのを防いでいる。調査では、12本のナットを締める方向に回すと11本が動いた。緩む方向には動かず、ボルトの役割は保たれているとされたが、こうした検査は97年の運転開始以来初めてという。東電は、起動や停止で熱による変形が繰り返され、ボルトとナットの締め付けがなじんだためと説明する。他にも、蒸気配管の支持金具や非常用発電機の基礎コンクリートのひび割れなど、重要な設備で異常が見つかった。

 ◆「不適合」受け対策

 動翼の破損について東電は、翼の交換や点検強化のうえ、10年以内に設計改良することを決めた。同様の損傷は6号機でも見つかった。6・7号機は発電量の大きな新型で、経済産業省原子力安全・保安院は「他の原発に同様の問題が生じるとは考えにくい。対策を全国の原発にまで広げる必要はない」との見解だ。しかし、小林英男・横浜国立大特任教授(破壊力学)は「普通の運転状態を基に設計する考え方は同様だから他の原発でもあり得ることだ」と指摘する。

 一方、ボルトの緩みに対して東電は、点検時にボルトを締め付けるよう自社の「保全プログラム」(保守管理対策)を改める方針だ。保安院も「経年的事象なら対応が必要。他の原発の状況も調査すべきだ」としている。

 今回の調査で発覚したトラブルについて、保安院はいずれも安全性に問題はなく、補修で済む「軽微な不適合」と結論づけた。しかし、技術評論家の桜井淳さんは「大切な部分をなぜ点検してこなかったのか。地震後に見つかったのに『地震とは関係ない。前からあった』で済ますのは無責任だ。揺れが大きかった1号機などの今後の調査では、より深刻なトラブルも予想される」と批判する。

 原発の定期検査の間隔を現在の13カ月から最長2年間に延ばす新検査制度では、各原発の特性を踏まえた日ごろの「保全活動」の充実が求められている。地震を機に判明したような「不適合」の管理や劣化の監視も電力会社自らの取り組みに委ねられることになる。災害や事故の起きる前に十分に目が届く体制をつくることが急務だ。

==============
 ◇地震と無関係とされた7号機の主な異常
 <低圧タービン動翼の折損やひび>
・第14段=912枚のうち折損2枚、ひび90枚
・第15段=756枚のうちひび1枚
・第16段=780枚のうちひび96枚
 <基礎ボルトの緩みや固定力低下>
・原子炉圧力容器
・原子炉冷却材浄化系再生熱交換器
・気体廃棄物処理系排ガス再結合器
・残留熱除去系熱交換器
・燃料取り換えエリア排気放射線モニター
・非常用ガス処理系フィルター装置
 <ひび>
・非常用ディーゼル発電機3台の基礎コンクリート(0.3ミリ未満のひび割れ多数)
・主蒸気配管系の支持構造物(施工時の溶接ひびと推定)

毎日新聞 2008年11月2日 東京朝刊


新潟・柏崎刈羽原発:
7号機の耐震性、保安院が追加検証指示

 新潟県中越沖地震の影響を調べるため東京電力が行った柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の設備点検報告について、経済産業省原子力安全・保安院は25日、原子炉冷却用配管などの耐震性検討が不十分だとして、東電に追加検証を指示することを決めた。

 原子力安全基盤機構(東京都)が、設備の耐震性を東電とは別に評価した結果、残留熱除去系配管の支持金具の一部に、地震の揺れでメーカーの保証値を超える力が加わる可能性が判明した。

毎日新聞 2008年9月26日 東京朝刊


新潟・柏崎刈羽原発:
地震の揺れ想定、再引き上げ--東電

 東京電力は22日、柏崎刈羽原発(新潟県)について、耐震設計の基準として想定する地震の揺れを最大で2300ガル(ガルは加速度の単位)に再び引き上げ、経済産業省原子力安全・保安院に報告した。

 東電は5月、耐震設計の基本となる地盤の「解放基盤表面」での揺れを見直した。しかし、昨年7月の新潟県中越沖地震の震源とみられる断層を34キロから36キロに延長し、東側にある「長岡平野西縁断層帯」(長さ91キロ)が原発直下まで延びている場合を考慮し再見直しした。

 基盤表面での揺れの想定は1~4号機で2280ガルから2300ガル、5~7号機で1156ガルから1209ガルに引き上げた。基盤表面と地表との間には揺れを抑える堆積(たいせき)層があるため、原発建屋の揺れは最大845ガルとし、現在進めている補強工事への影響はないという。【山田大輔】

毎日新聞 2008年9月23日 東京朝刊

新潟・柏崎刈羽原発:
6、7号機タービン動翼損傷 蒸気逆流が原因

 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)で、低圧タービンを構成する動翼の約7%にあたる331枚で付け根が破損したりひびが見つかった問題で、東電は19日、発電を止める際などに蒸気の逆流が起き、翼に想定以上の振動を与えたことが原因とみられると発表した。当面、翼の交換や点検強化で対処、10年以内の実用化をめどに改良を検討する。

 動翼の損傷は7月末、新潟県中越沖地震の被害点検中に見つかった。分析の結果、落雷や点検のため発電を停止する時や、試運転の低速回転中に、タービンを回す蒸気が逆流することが判明。これが繰り返されて動翼に金属疲労が起きたと推定した。今後は、発電停止4回ごとに点検するという。

 中部電力浜岡原発5号機(静岡県)でも06年6月、動翼破損が起き、メーカーの日立製作所に対して中電が総額418億円の損害賠償訴訟を起こしている。柏崎刈羽6、7号機の動翼は米ゼネラル・エレクトリック社製だが、東電は「損傷は運転開始から約10年後に生じており、運転期間の短い浜岡原発のケースとは異なる」として賠償請求の予定はないという。【山田大輔】

毎日新聞 2008年9月20日 東京朝刊


新潟・柏崎刈羽原発:
6号機不具合 同型浜岡5号機、中電に対応指示 /静岡

 07年の中越沖地震後の検査で東京電力・柏崎刈羽原発6号機で制御棒の不具合が見つかったことを受け、原子力安全・保安院は12日、6号機と同型の原子炉である浜岡原発5号機を所有する中部電力に対応を指示した。

 柏崎刈羽6号機では、地震発生後の安全確認で、制御棒駆動機構と制御棒の結合不良が確認された。昨年の定期検査で浜岡5号機でも同様の結合不良が見つかっていたため、保安院は中電に再発防止策を指示した。

 具体的には、人間の判断ミスや操作ミスが起きないようにする設備を導入することや、結合作業を変更することなどを求めた。【浜中慎哉】

毎日新聞 2008年9月13日 地方版


新潟・柏崎刈羽原発:
6号機、東電の手順書に不備 制御棒結合の確認怠る

 ◇保安院、厳重注意

 東京電力は12日、新潟県中越沖地震後に停止している柏崎刈羽原発6号機(改良型沸騰水型軽水炉=ABWR)で、制御棒と駆動装置の結合作業の手順書に、安全上重要な不備があったことを明らかにした。経済産業省原子力安全・保安院は保安規定に違反したとして東電に厳重注意し、改善を指示した。

 東電によると、定期点検中の07年6月、制御棒の駆動装置1体と制御棒が結合していないことが判明。制御棒交換時に結合確認試験をする作業手順書を作成せず、別の手順書を流用していた。作業員は結合状態を荷重計などで確認する作業をしていなかったという。

 6号機では、04年と07年にも同様の結合不良が起きたが、詳しく原因究明や情報共有をしていなかった。

 保安院はABWRで同様の設備を持つ中部電力、北陸電力にも作業内容の改善を指示した。【五十嵐和大】

毎日新聞 2008年9月13日 東京朝刊


新潟・柏崎刈羽原発:
3号機で水漏れ

 東京電力は1日、柏崎刈羽原発3号機の原子炉建屋内で、燃料を冷やすため原子炉内に水を注入する「残留熱除去系」の配管から微量の放射性物質を含む水約98リットルが漏れたと発表した。放射線量は18万ベクレルと、国への報告義務の約20分の1。水は付近にいた作業員4人にかかったが、健康影響はなく、外部への放射能漏れもない。

 水漏れは8月29日午後4時15分ごろ、発生した。東電によると、配管に水を充てんする作業中で、操作する弁を誤ったという。

 3号機は定期検査中だが、配管内に放射性物質が付着していたらしい。【山田大輔】

毎日新聞 2008年9月2日 東京朝刊


中越沖地震:
活断層の長さ、保安院が再調査

 経済産業省原子力安全・保安院は6日、昨年の新潟県中越沖地震の震源とされる「F-B断層」の長さについて、現在の想定より北に2キロ長い36キロの可能性があるとの見解を発表した。断層が動いて引き起こされる地震の揺れは大幅に変わらないが、被災した東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再開に向けた耐震安全性評価の基準が変更されるため、再開時期に影響する可能性がある。

 保安院は9日から、活断層がさらに北に延びていないか調査に乗り出す。

 F-B断層は、79年の同原発の設置許可申請時には活断層とされず、東電は03年に活断層の可能性を確認したが昨年12月まで未公表だった。【山田大輔】

毎日新聞 2008年8月7日 東京朝刊


中越沖地震:
震源断層、2キロ長い可能性…原子力保院

 経済産業省原子力安全・保安院は6日、昨年の新潟県中越沖地震の震源とされる「F-B断層」の長さについて、現在の想定より北に2キロ長い36キロの可能性があるとの見解を発表した。断層が動いて引き起こされる地震の揺れは大幅に変わらないが、被災した東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再開に向けた耐震安全性評価の基準が変更されるため、再開時期に影響する可能性がある。保安院は9日から、活断層がさらに北に延びていないか調査に乗り出す。

 F-B断層は、79年の同原発の設置許可申請時には活断層とされず、東電は03年に活断層の可能性を確認したが昨年12月まで未公表だった。【山田大輔】

毎日新聞 2008年8月6日 20時18分


原発情報:
地震時に携帯メールで配信…原子力保安院

 経済産業省原子力安全・保安院は16日、大地震が起きた際の原発などの運転状況や放射能漏れの程度を携帯電話メールで知らせるサービスを始めた。昨年7月の新潟県中越沖地震で、東京電力柏崎刈羽原発が被災したのを受け、緊急時の情報を直接知りたいという原発を抱える自治体の要望に応えた。保安院が住民に直接、原発などの状況について情報提供するのは初めて。

 対象施設は、原発や再処理工場、核燃料加工会社など30カ所。施設が立地する市町村で震度5弱以上、道府県で震度6弱以上の揺れを観測した場合、配信される。地震に見舞われた施設名や運転状況、放射能漏れの有無、設備の被害情報などが伝えられる。

 希望者は、携帯電話の緊急時情報ホームページ(http://kinkyu.nisa.go.jp/m/)から登録する。【河内敏康】

毎日新聞 2008年7月16日 10時24分(最終更新 7月16日 11時44分)


中越沖地震:
柏崎刈羽原発停止1年 苦境長引く東電 原油高追い打ち

 新潟県中越沖地震で東京電力の柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市、刈羽村)が運転を停止してから16日で1年が経過する。東電の発電量の2割程度を占めた同原発が停止する非常事態に、原油など燃料価格の歴史的な高騰が直撃し、08年3月期は28年ぶりの最終(当期)赤字へ転落した。点検や耐震強化工事などの作業を急いでいるが運転再開のめどは立っておらず、経営への影響も長期化している。

 柏崎刈羽原発1~7号機の06年度の発電量は計549億キロワット時。原発の停止で、代替となる火力発電の燃料費増加や補修費が6150億円(単体)の収益押し下げ要因となり、08年3月期の連結決算は1501億円の最終赤字を計上した。09年3月期も原発停止に伴う負担増が6000億円以上に達する見通しだ。

 東電は地震発生直後から原発設備の被害状況の点検を進め、今年5月には耐震設計の基準となる地震の揺れの想定を、最大で建設時の5倍に引き上げると発表。新基準に基づいて耐震強化工事に着手し、再開に向けた作業を急いでいる。

 だが、運転再開へこぎ着けるには原子力安全・保安院による安全性の確認が必要。保安院による検査は最も先行する7号機で8割程度まで進んでいるものの、5号機はいまだ着手すらしていない状況で「いつ完了するか全く分からない」(保安院)状態だ。

 地元の了解も取り付ける必要があり、清水正孝社長は「我々の一存だけでは判断できず、具体的な再開時期は見通せない」としている。

 東電は9月をめどに発電コスト全体を見直す「本格改定」を実施予定。火力発電の比率が増えていることを踏まえ、原油高騰によるコスト増を電気料金に転嫁しやすくする方向で、消費者にも原発停止の影響が及ぶことになる。【谷川貴史、坂本昌信】

毎日新聞 2008年7月16日 東京朝刊


中越沖地震:
増幅する地震波 揺れの大きさは地下構造で決まる

 昨年7月の新潟県中越沖地震=マグニチュード(M)6・8=で被災した東京電力柏崎刈羽原発。直下の岩盤(解放基盤表面)を襲った揺れの加速度は最大で約1700ガルと従来の想定の最大約3・8倍に達した。想定を超える揺れによる原発震災への懸念が高まる。揺れが大きくなった理由や、耐震安全性向上につなげる課題を探った。【河内敏康】

 ◆想定の3・8倍

 「(新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発での揺れが)設計値を超えたのは憂慮すべき事態だ」。新潟県柏崎市で19日から開かれた国際原子力機関(IAEA)主催の国際会議で、議長のアントニオ・ゴドイIAEA技術安全課長代行は強調した。

 同原発の原子炉建屋では、中越沖地震で最大680ガルの加速度を観測した。観測値から原発耐震設計での基準となる岩盤「解放基盤表面」の揺れを推定すると最大1699ガルとなった。設計時の想定の最大約3・8倍だ。

 なぜ大きな加速度になったのか。土方勝一郎・東電原子力設備管理部新潟県中越沖地震対策センター部長は「震源での応力降下量が大きかったことが原因の一つだ」と説明する。

 断層面をはさんで岩盤同士には力が加わっている。応力降下量とは、地震によってこの力が解放される量をいい、これが大きいほど加速度を左右する短い周期の地震波がよく出る。土方部長は「平均的な地震の約1・5倍もの短周期の地震波が出た」と語る。

 こうした震源の特性によるばらつきは中越沖地震に限ったことではない。東京大地震研究所の纐纈一起(こうけつかずき)教授(強震動地震学)は「各原発の耐震安全性を検討する際、震源の影響として中越沖地震程度のばらつきは考慮する必要がある」と指摘する。

 ◆堆積層の焦点効果

 柏崎刈羽原発周辺は、震源から地表まで約15キロもの厚さの堆積層に覆われている。この厚い堆積層も揺れを増幅させた。土方部長は「『焦点効果』によって原発に地震波が集中した」と説明する。

 地層がまっすぐで平行に重なっていると地震波の曲がり方は小さい。ところが同原発周辺では、地層が不整形に曲がっている。屈折現象によって地震波が大きく曲げられ、原発に向かって集まるケースがある。これが焦点効果だ。

 さらに、原発直下の地層の褶曲(しゅうきょく)も影響した。東電の地下構造探査などによると、最も揺れの大きかった1号機は、褶曲した地層の谷の部分にある。その結果、レンズで光が収束するように、地震波が集まって揺れが大きくなったという。一方、1号機と比べて揺れが大きくなかった5号機(766ガル)は、褶曲した地層の山の部分にあったため、地震波の集中を免れた。

 経済産業省原子力安全・保安院では、原発を持つ各事業者が、新指針に照らして原発の耐震性を再評価した報告書が妥当か審議している。同原発での中越沖地震によるこうした揺れの増幅を重く見た原子力安全委員会は今月、震源や地下構造の影響が再評価に適切に考慮されているか保安院に追加検討するよう求めた。

 ◆観測波形から予測

 東京電力は国の新耐震指針に基づき、将来、柏崎刈羽原発を襲う揺れを想定し直し、解放基盤表面での揺れを最大2280ガルとした。従来の最大約5倍に達する大きさだ。

 なぜこれほど大きくなったのか。

 その理由の一つが「断層モデル」という揺れを予測する新手法だ。従来は、想定する活断層の長さから算出した地震の規模や、震央から原発までの距離を用いて経験式から予測した。しかし、中越沖地震のように揺れを大きく左右する地下構造の情報は生かされず、結果的に過小評価となった。

 新手法では、想定される地震の震源付近で、実際に起きた小規模地震による観測波形を使い、想定される大地震の揺れを予測する。観測波形には震源から原発までの重要な地下構造の情報が含まれており、揺れを正確に予測する上で不可欠だ。例えば、地震波がやってくる方向が違えば、通過する地下構造も異なるため、揺れ方も違う。実際、中越沖地震では大きな揺れに見舞われた同原発だが、同規模の新潟県中越地震(04年)での揺れはあまり大きくなかった。

 ただ、情報が必要な震源付近で、小規模地震が都合よく起こる保証はない。新指針を踏まえ、同原発を襲うと予測される揺れの新たな策定に反映させようと、東電は同原発周辺の地下構造を探査したが、地震動の専門家は「中越沖地震の大きな揺れを、地下構造探査だけで事前に正確に予測するのは難しかったのではないか」と語る。

 入倉孝次郎京都大名誉教授(強震動地震学)は「各原発に置かれた地震計で得られる観測波形は揺れを予測する上で重要。今後、地震の発生数が増えると共に、情報量も増えてくるため、広く公開すべきだ」と指摘する。

毎日新聞 2008年6月29日 東京朝刊


東京電力:
来年大幅値上げも 基準価格改定、燃料高転嫁を容易に

 東京電力は26日、発電コスト全体を見直す「本格改定」を9月をめどに実施し、電気料金を見直すと発表した。燃料費負担の増加を料金に反映させる際の「基準燃料価格」を引き上げ、高騰が続く原油価格を料金に転嫁しやすくする。実際の料金は年内は据え置く方向だが、来年1月以降大幅値上げされる可能性が出てきた。改定は06年4月以来で、7月に経済産業省に届ける。
・・・

毎日新聞 2008年6月27日 東京朝刊


東京電力:
料金改定 原発停止・原油高で決断 「経営努力で吸収できず」

 東京電力が2年ぶりとなる電気料金の「本格改定」に踏み切ることを決めたのは、昨年7月の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所の運転停止に原油価格の急騰が重なり、経営の屋台骨が揺らぎかねないと判断したためだ。改定により原油価格の高騰を電気料金に上乗せしやすくなり、燃料費の負担増に苦しむ他の電力各社でも追随する動きが広がりそうだ。【谷川貴史】
・・・

毎日新聞 2008年6月27日 東京朝刊


中越沖地震:
柏崎刈羽原発安全性問題 技術委8月中開催へ 2小委平行線で/新潟
 ◇論議中断の可能性

 東京電力柏崎刈羽原発の安全性について県に助言する技術委員会は、8月中をめどに委員会の会合を開催する方針を固めた。技術委の下では現在、「地質・地盤」問題と「設備健全性、耐震安全性」問題に関する小委員会が開かれているが、議論は平行線。小委の論点を一度整理し、技術委に上げる見通し。技術委の判断次第では小委の議論を中断する可能性も出てきた。【渡辺暢】

 県は昨年の中越沖地震を受けて、技術委の体制を強化した。委員会下部に二つの小委を設置し、出された意見を参考にして、技術委が具体的な助言をまとめる計画だ。技術委の助言は、原発再開について、県などが了解するかという問題にも大きく影響する。

 しかし、小委では、原発の安全性に疑問を持つ委員と容認する委員との間で、議論がかみ合わない状況が続いている。23日開かれた「地震、地質・地盤に関する小委員会」でも、委員同士が激しく衝突。委員長の山崎晴雄・首都大学東京大学院教授は「どこかで線を引かないといけないが、新しいデータを取る方法もない。私自身は東電は結構データを出していると思うし、いったん(上部委員会に両論併記で)上げるしかないのでは」と話す。

 関係者によると、技術委で「小委員会でこれ以上の議論の発展はない」と見なされた場合、小委開催を中断する可能性もある。そうなった場合、発言の機会を失う小委委員からの反発も予想される。

毎日新聞 2008年6月24日 地方版


柏崎刈羽原発:
立石教授「安全重視の評価を」--県技術委小委 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発の安全性について県に助言する県技術委員会の「地震、地質・地盤に関する小委員会」の第5回会合が3日、新潟市内で開かれ、先月発表された新たな基準地震動について議論した。立石雅昭・新潟大教授は、東電による断層の評価について反論。「現時点では両者の相違は埋まらない」と、より安全を重視した評価を求めた。

 立石教授は、「変動地形学的な立場からみれば、(震源断層とされているF-B断層より北東に)断層がある可能性は否定できない」と主張。東電はこれらの手法を採用していないとして、「(東電との)視点の相違は現時点では埋まらない。だからこそ、現時点では安全サイドに立って評価すべきだ」と述べた。【渡辺暢】

毎日新聞 2008年6月4日 地方版


柏崎刈羽原発:
東電、県技術委小委に基準地震動を説明 議論、また物別れ /新潟

 東京電力は27日、柏崎刈羽原発の耐震設計の基準となる新たな基準地震動について、県の技術委員会「地震、地質・地盤に関する小委員会」や地元自治体に説明を行った。議論は従前通り、反対派と容認派の委員とで対立。小委員会の意見取りまとめは、活断層の評価について「両論併記」する論点整理にとどまる可能性が高まった。

 説明会は県庁で開かれ、東電の新潟県中越沖地震対策センター職員が算定の根拠となる活断層の長さや地盤構造について、調査方法などを解説した。

 説明会後、委員長の山崎晴雄・首都大学東京教授が「一つのモデルとして納得は出来る」と評価した。一方、立石雅昭・新潟大教授は「(震源断層とされるF-B断層が)34キロかどうかも議論中で、もっと長くみるべきだ。今後も小委員会で議論していく」と批判した。山崎教授は「(小委員会の)片方は確たる証拠もないまま、断層が長いと主張している。このまま物別れに終わって結論はまとまらないだろう」と話した。【渡辺暢】

毎日新聞 2008年5月28日 地方版


社説:
柏崎刈羽原発 ここだけが特殊とは限らない

 建設時の想定に比べ、5倍の揺れを想定する必要があるという。新潟県の柏崎刈羽原発について東京電力がまとめ、経済産業省の原子力安全・保安院に提出した報告書の内容だ。

 柏崎刈羽原発では、昨年7月の中越沖地震で実際に「想定外」の揺れが記録された。それだけでも市民の不安は大きいが、かつての想定の5倍とは驚くような値だ。

 いったいなぜ、これほどの開きが生じたのか。

 原発の耐震指針は06年に28年ぶりに改定されている。全国の電力会社など事業者は、これを基に既存の原発施設の再評価を進めている。柏崎刈羽原発も新指針を基に再評価してきたが、その際に中越沖地震の観測データを踏まえるよう、求められていた。

 その結果、揺れの大幅な引き上げにつながる複数の要素が明らかになった。第一に、中越沖地震の震源断層と思われる活断層を設計時に想定していなかった。これとは別に、連動して動く可能性のある三つの断層を別々に評価していた。

 加えて、地盤の構造に揺れを増幅する特徴があることも明らかになったという。震源から出る波が重なり合う現象や、地層が波状に曲がった褶曲(しゅうきょく)構造による増幅効果だ。

 東電は当時の知見ではわからなかったという。しかし、最新知見による見直しを定期的に行うべきだったのではないか。

 今回の結果は、他の原発にとっても人ごとではない。柏崎刈羽以外の全国の原発も、新指針に基づく再評価で、想定される揺れを軒並み引き上げている。ただ、これまでの報告では、補強工事の必要はないと結論付けている。安全に余裕を持たせて設計してあるのでだいじょうぶという理由からだ。

 だが、今回の柏崎刈羽のケースをみると、それで安心はできない。揺れを増幅する地下の構造は柏崎刈羽に特徴的なものと東電はみるが、別の場所にも同様の効果を生む構造がないとは限らない。柏崎刈羽が特殊だったとの思い込みは避けるべきだ。その上で、必要な補強工事をためらうべきでない。

 柏崎刈羽を含め、原発の耐震性の再評価は国がチェックする。ここでも、電力会社の報告をうのみにするのではなく、責任を持った評価を尽くしてほしい。

 東電は6月から補強工事を始めるという。しかし、中越沖地震による影響の点検も、まだ終わったわけではない。今回の報告書の妥当性も、補強工事の妥当性も、国の評価で覆される可能性は残されている。

 原発にも地震にも、不確かなリスクがつきまとう。柏崎刈羽に限らず、非常に大きな揺れに見舞われる可能性のある場所で原発運転を続けるべきなのか。そういった根本的課題も含め慎重な検討が欠かせない。

毎日新聞 2008年5月24日 東京朝刊


中越沖地震、活断層の過小評価 耐震性、信頼揺らぐ--他原発でも同じ例

 新潟県中越沖地震の震源だった可能性が指摘されている海底の断層について、柏崎刈羽原発建設時に「活断層でない」としていた東京電力が、活断層だったことを認めた。活断層の過小評価は、耐震設計の信頼性を根底から揺るがす事態だ。

 活断層が過小評価されていた例は他にもある。今年3月の能登半島地震では、北陸電力が三つに分かれているとしていた断層が一体となって動いて発生した。同社はこのうち1本については「活断層ではない」としていたが、専門家からは「通常なら1本のつながった活断層として評価する」との声が上がっていた。中国電力島根原発を巡っても、同社が長さ10キロとする原発近くの宍道断層について、広島工業大の中田高教授が「長さは20キロ」との調査結果を発表している。

 毎日新聞が昨年、全国の原発周辺にある活断層のうち、国の地震調査研究推進本部(推本)の調査対象になった17断層について、電力会社の調査結果と比較したところ、15断層で電力会社の方が想定地震を小さく見積もっていた。柏崎刈羽原発に近い長岡平野西縁断層帯についても、推本の調査ではマグニチュード(M)8の巨大地震が想定されたが、東京電力の想定はM6・9だった。

 原発が想定外の揺れに襲われる事態は、東北電力女川原発で03年と05年の2回、能登半島地震で志賀原発、中越沖地震で柏崎刈羽原発と、既に4回に達した。各電力会社は今、昨年9月に改定された国の原発の耐震指針に基づき、耐震性のチェックを進めているが、活断層の過小評価を繰り返すことは許されない。十分に安全側に判断して耐震性の評価を進めない限り、国民の原発の耐震性への不安は解消できない。【鯨岡秀紀】

毎日新聞 2007年12月6日 東京朝刊
NPO IDO-Shien Forum