【東京電力柏崎刈羽原子力発電所】

柏崎刈羽原発:
運転再開問題 11日に3度目の知事ら3者会談 /新潟

 柏崎刈羽原発7号機の運転再開問題で、県は5日、泉田裕彦知事、会田洋柏崎市長、品田宏夫刈羽村長による3度目の3者会談を11日午前11時から県庁で開くと発表した。

 2月23日にあった前回の会談では、再開問題について泉田知事が「県内で理解に差がある」と発言、県民の理解を深める必要性で一致したが、東電が求めた起動試験開始について了解するかの判断については先送りされた。

 この間、県などは各地で住民説明会を開いてきた。しかし、1号機原子炉建屋で5日に起きた火災が問題視されるのは確実で、7号機の再開についての議論が進むかどうかは不透明な情勢だ。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年3月6日 地方版

柏崎刈羽原発:
再開論議中、また火災 中越沖地震後、8件目 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発で5日、また火災が起きた。同原発では7号機の運転再開の是非を巡って県が説明会を開いているさなか。また、中越沖地震後の復旧作業中、8件目の火災となるだけに、地元自治体と国は、東電の防火体制に疑問を投げ掛けるとともに、改めて再発防止を求めた。経済産業省原子力安全・保安院は6日、立ち入り調査を行う。

 火災は、1号機原子炉建屋の地下5階にある「原子炉隔離時冷却系ポンプ室」で起きた。現場にいた作業員4人のうちの1人が金属製の危険物保管庫内にあった有機溶剤を含む洗浄液を、一斗缶から小分けする作業をしていたという。

 その際、保管庫の中にあったエタノール缶を持ち上げたところ、缶を覆うビニール袋に引火したのに気づき、瞬く間に炎が舞い上がったという。保管庫に隣り合う空調機にも燃え移り、消火作業をした男性作業員(39)が顔にやけどをした。現場に火の気はなく、火元は特定できていない。

 柏崎市消防本部は地震以降、同原発で火災が相次いだことを受け、東電に2度にわたって行政指導を行い、2月26日には合同の消防訓練を行ったばかり。今回の火災を受け、3度目となる行政指導をする方針。県の渡辺博文防災局長は、同原発の高橋明男所長に対し、原因究明と再発防止を徹底するよう文書で申し入れた。
 ◇知事「チェック改めて求める」

 相次いだ火災を受けて、泉田裕彦知事は「また火災かという思い。運転再開の議論をする前に、防火体制をしっかり確認すべきだと申し上げてきた。東電だけでなく、柏崎消防にも改めてチェックを求めたい」と注文を付け、運転再開を巡る議論への影響については「予断を持たずに対応したい」と話すにとどめた。
 ◇「市民の疑念と不安が高まる」--柏崎市長

 同市の会田洋市長は「極めて遺憾。市民の疑念と不安が高まる」と語り、運転再開への影響についても「別(の問題)だが、安全、安心という基本的なところで共通の問題もある」と指摘。刈羽村の品田宏夫村長は「安全確保は当たり前で、(運転再開に)プラスには働かないだろう」と語った。【五十嵐和大、黒田阿紗子】

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 ◆中越沖地震以降、柏崎刈羽原発で起きた火災◆

発生日       現場          焼失した設備

07・ 7・16 3号機屋外(中越沖地震) 変圧器

    9・20 1号機原子炉複合建屋   エアコン電源ケーブル

   12・12 ケーブル地下連絡通路   小型変圧器

08・ 7・ 1 1号機タービン建屋    電気乾燥機

    7・22 1、2号機サービス建屋  放射線監視装置用電源

   11・22 7号機タービン建屋    タービン洗浄機

   12・ 8 6号機タービン建屋    溶接棒送り出し装置

09・ 2・ 8 避雷鉄塔の航空障害灯   制御盤

    3・ 5 1号機原子炉建屋     危険物保管庫

毎日新聞 2009年3月6日 地方版

柏崎刈羽原発:
火災続発で東電に厳重注意 保安院

 柏崎刈羽原発1号機で起きた火災について経済産業省原子力安全・保安院は5日、原因究明と再発防止策を報告するよう、東電に文書で厳重注意した。08年11、12月にも6、7号機で火災が発生し厳重注意した。経産省の望月晴文事務次官は会見で「たびたび火災が起きるのは問題で大変遺憾だ」と批判した。6日には立ち入り検査を行う。

 7号機では運転再開準備が進む。望月次官は「詳細な原因を見なければ分からないが、今回の火災と7号機の安全性は異なる問題だ」と述べ、影響しないとの見方を示した。【山田大輔】

毎日新聞 2009年3月5日 19時02分(最終更新 3月5日 19時44分)

柏崎刈羽原発:
原子炉建屋内で火災 1時間半後に鎮火

 5日午前9時ごろ、新潟県柏崎市の東京電力柏崎刈羽原発1号機の原子炉建屋内で火災が発生、作業員らが消火器などで消火し、同10時半ごろ鎮火が確認された。放射線管理区域内だが、放射能漏れや外部への影響はないという。消火作業の際、下請け会社の男性作業員(39)が顔に軽いやけどをした。

 東電によると、火災があったのは同建屋の地下5階で、緊急時に原子炉を冷やすためのポンプがある「原子炉隔離時冷却系ポンプ室」。室内で数人の作業員が点検作業の準備中だった。作業に使う溶剤が燃えた可能性があるとみている。

 同原発は中越沖地震(07年7月)で被災し全7基が停止したまま。最も復旧作業が進んだ7号機で事実上の運転再開となる起動試験の開始を地元自治体が了解するかを巡って、県などが県民向けの説明会を開いているさなか。また、同原発では中越沖地震の際、3号機変圧器で火災が起きたほか、その後の復旧作業中にも昨年11月、7号機タービン建屋でぼやが発生し、作業員2人が負傷するなど、火災が7件相次いでいる。【岡田英、五十嵐和大】

毎日新聞 2009年3月5日 11時21分

柏崎刈羽原発:
再開問題で県が説明会 技術委の論点に理解を /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発の運転再開問題で、県は4日、原発の安全性について専門家が県に助言する県技術委員会の議論についての説明会を新潟市で開いた。県などが再開についての了解の是非を判断するのを前に、県民に理解を深めてもらうのが狙い。5日に柏崎市、6日に上越市でも開かれる。

 同原発7号機の運転再開を巡っては、起動試験前に地元了解が不可欠との方針で、県と柏崎市、刈羽村の認識が一致。2月23日に開かれた泉田裕彦知事らによる3首長会談では、「(原発立地地域とそれ以外で)理解に差がある」との指摘もあり、県内3カ所で説明会が開かれることになった。

 説明会には141人が参加。技術委の二つの小委員会から山崎晴雄・首都大学東京大学院教授と鈴木元衛・日本原子力研究開発機構研究主幹が出席。活断層の長さなど、主な論点を説明したほか、県のホームページで後日答えるのみとしていた参加者の質問にも、部分的には回答した。

 一方で難しい専門用語の多用や、論点説明に委員個人の見解が混在するなど、説明会のあり方に課題も残った。【渡辺暢】

毎日新聞 2009年3月5日 地方版

柏崎刈羽原発:
運転再開断念求め58万人署名 東電に提出

 反核平和団体「原水爆禁止日本国民会議」(市川定夫議長)など4団体は27日、07年の新潟県中越沖地震で被災し、運転停止中の東京電力柏崎刈羽原発の運転再開断念を求める約58万人分の署名を東電に提出した。

 運転再開を断念して復旧工事を中止し、損傷検査の結果を他の原発の耐震補強に役立てることなどを求めている。同日午後には、首相と経済産業相宛ての約60万人分の署名を経産省に提出。同原発7基の原子炉設置許可を取り消し、国の責任で損傷調査を実施することと、結果を他の原発の耐震補強に利用し、06年策定の新耐震審査指針を改定することなどを求める。

毎日新聞 2009年2月27日 12時56分

柏崎刈羽原発:
再開巡り、県民の質問募集--技術委議論で /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発の運転再開問題で、県は26日、原発の安全性について専門家が県に助言する県技術委員会の議論について、県民からの質問の募集を始めた。同原発7号機の運転再開について、全県的な理解を進めるのが狙い。主な質問を取りまとめた上で、県のホームページなどに回答を掲載する。

 応募方法は、各地域振興局の県民相談窓口に備えた質問票に記入して担当者に渡す方法のほか、郵送の場合は連絡先と氏名を記入の上、〒950-8570 新潟市中央区新光町4の1、県原子力安全対策課へ。

 3月4~6日に県内3カ所で開く県主催の説明会でも質問を受け付ける。問い合わせは同課(025・280・5238)。【渡辺暢】

毎日新聞 2009年2月27日 地方版

柏崎刈羽原発:
火災相次ぎ、合同の消防訓練--市本部と東電 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発で中越沖地震の際、3号機変圧器が燃えたほか、その後の点検・復旧作業中も火災が7件相次いだことを受け、柏崎市消防本部と東電は26日、合同消防訓練を行った。

 訓練は1号機タービン建屋から出火したとの想定で、東電の自衛消防隊50人、消防からは約35人が参加。災害時、放射線管理区域に速やかに入るため、放射線検査や防護服の装着などの動作を確認した。

 地震を受け、東電は24時間対応できる専任の自衛消防隊を下請け会社に委託するなど改善策を講じた。しかし、原発での火災の際には、消防隊員が消火作業やけが人の救助のため管理区域内での活動を強いられることもある。

 柏崎市消防署の須田正明署長は「一般の火災とはまったく違い、隊員の被ばく管理など2次災害に注意しなければならない」と話した。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年2月27日 地方版

柏崎刈羽原発:
早期再開求め要望書提出--柏崎・刈羽の商工業関係者 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発が立地する、柏崎商工会議所や刈羽村商工会など地元の商工業関係者は25日、同原発の早期運転再開を求める要望書を会田洋柏崎市長と品田宏夫刈羽村長に提出した。07年の地震後、原発再開を促す地元からの要望は初めて。会田市長は「意見を踏まえ、的確に判断する」と述べるにとどめ、品田村長は「原発が動き出さなければ、地震の復旧は終わらない」と理解を示した。

 要望書では、停止状態が続く原発が経済、雇用面に与える影響を憂慮しながら「地域では東京電力を地元企業として認知し、地域振興に欠くことのできない存在」と指摘。「国の安全確認がなされた7号機については、速やかに運転再開すべきだ」としている。

 柏崎商議所の松村保雄会頭は今後、泉田裕彦知事にも同様の働き掛けをする意向を示した上で「県技術委員会があろうがなかろうが、国が安全というのなら、もういいのではないか」と話した。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年2月26日 地方版

柏崎刈羽原発:
来月4~6日に3カ所で説明会 再開巡って県技術委員参加 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発7号機の運転再開問題で、県は25日、原発の安全性について専門家が県に助言する県技術委員会の議論について3月4~6日に県内3カ所で説明会を開くと発表した。

 説明会は3月4日、県自治会館201会議室(新潟市中央区)▽5日、柏崎商工会議所大研修室(柏崎市)▽6日、上越市民プラザ第1会議室(上越市)。いずれも開会は午後6時半で「設備健全性、耐震安全性」「地震、地質・地盤」の2小委員会の委員が参加し、論点などについて説明する。

 7号機の運転再開問題を巡っては、泉田裕彦知事と会田洋柏崎市長、品田宏夫刈羽村長による23日の3者会談で「(東電や国からの)情報提供について(同市など立地地域とそれ以外の地域で)理解の差がある」として、県内各地で説明会を開く必要性が指摘された。【渡辺暢】

毎日新聞 2009年2月26日 地方版

新潟・柏崎刈羽原発:
7号機の起動試験、県に了解申し入れ--東電

 東京電力は19日、新潟県中越沖地震(07年)で被災し運転停止中の柏崎刈羽原発7号機について、事実上の運転再開となる起動試験(試運転)を行う準備が整ったとして、同県と柏崎市、刈羽村に事前了解を申し入れた。

毎日新聞 2009年2月20日 東京朝刊

原子力安全委:
柏崎起動了承 志賀2号機も耐震性OK

 新潟県中越沖地震(07年7月)で被災した東京電力柏崎刈羽原発7号機(新潟県)について、内閣府原子力安全委員会は18日、「起動させるに必要な施設健全性および耐震安全性は確保されている」とし、起動試験に入ることを了承した。起動試験は営業運転再開につながる作業で、経済産業省原子力安全・保安院も了承済み。国のゴーサインが出そろったことを受けて東電は近く、安全協定に基づく事前了解を新潟県など地元自治体に求める。

 安全委は同日、北陸電力志賀原発2号機(石川県)について、北陸電力が昨年報告した耐震性の再評価結果は適切と判定した。

毎日新聞 2009年2月18日 20時07分

新潟・柏崎刈羽原発:
7号機停止を解除 市長通知「再開容認ではない」

 新潟県柏崎市は3日、中越沖地震(07年7月)直後、消防法に基づき東京電力柏崎刈羽原発1~7号機に付随する「危険物施設」に出した緊急使用停止命令のうち、7号機について消火設備などの安全性が確認できたとして東電に解除を通知した。これで運転再開に向けた事実上の歯止めが解除された。

 県と柏崎市、刈羽村は臨界を伴う試運転(起動試験)前に地元自治体の了解が必要と東電側に求めており、運転再開の可否については今後、国と県の専門家の評価を受けて3首長が判断する。

 柏崎市の会田洋市長は同日午前、市役所に柏崎刈羽原発の高橋明男所長を呼び、解除通知書を手渡した。会田市長は「法に基づいて解除した。原発そのものの安全確認とは別問題」と話し、命令の解除が運転再開を認めるものではないことを強調した。

 同原発では地震発生時、3号機の変圧器で火災が発生するなどした。市は地震2日後の07年7月18日、防火体制に問題があるとして1~7号機の軽油タンクや消火配管などの危険物施設55カ所の使用を禁じた。東京電力によると、7号機は最も復旧作業が進んでおり損傷した発電タービンの検査が今月4日に終了、7日に全施設の復旧が完了するという。

 東電は地元の了解が得られ次第、原子炉の起動試験に入るが、試験は40~50日かかる見通し。出力を段階的に引き上げながら機器を点検し、出力100%に達した段階で国が安全性を最終評価する。問題がなければそのまま営業運転となる。【五十嵐和大、山田大輔】

毎日新聞 2009年2月3日 東京夕刊

新潟・柏崎刈羽原発:
7号機、再起動を了承--保安院

 新潟県中越沖地震(07年)で被災した東京電力柏崎刈羽原発7号機(新潟県)について、経済産業省原子力安全・保安院は13日、原子炉を再起動させることに安全上の問題はないとし、起動試験に入ることを了承した。しかし「実際の起動には東電が地元自治体の事前了解を得ることが必要だ」と条件をつけた。

 内閣府原子力安全委員会の評価委員会も同日開かれ、条件つきで起動を了承した。【山田大輔】

毎日新聞 2009年2月14日 東京朝刊

柏崎刈羽原発:
7号機の施設使用停止を解除 柏崎市

Pasted Graphic
高橋明男・東京電力柏崎刈羽原発所長(左)に、緊急使用停止命令の解除通知書を交付する会田洋・柏崎市長=新潟県柏崎市役所で2009年2月3日午前9時33分、五十嵐和大撮影

 新潟県柏崎市は3日、中越沖地震(07年7月)直後、消防法に基づき東京電力柏崎刈羽原発1~7号機に付随する「危険物施設」に出した緊急使用停止命令のうち、7号機について消火設備などの安全性が確認できたとして東電に解除を通知した。これで運転再開に向けた事実上の歯止めが解除された。

 県と柏崎市、刈羽村は臨界を伴う試運転(起動試験)前に地元自治体の了解が必要と東電側に求めており、運転再開の可否については今後、国と県の専門家の評価を受けて3首長が判断する。

 柏崎市の会田洋市長は同日午前、市役所に柏崎刈羽原発の高橋明男所長を呼び、解除通知書を手渡した。会田市長は「法に基づいて解除した。原発そのものの安全確認とは別問題」と話し、命令の解除が運転再開を認めるものではないことを強調した。

 同原発では地震発生時、3号機の変圧器で火災が発生するなどした。市は地震2日後の07年7月18日、防火体制に問題があるとして1~7号機の軽油タンクや消火配管などの危険物施設55カ所の使用を禁じた。東京電力によると、7号機は最も復旧作業が進んでおり、損傷した発電タービンの検査が今月4日に終了、7日に全施設の復旧が完了するという。

 東電は地元の了解が得られ次第、原子炉の起動試験に入るが、試験は40~50日かかる見通し。出力を段階的に引き上げながら機器を点検し、出力100%に達した段階で国が安全性を最終評価する。問題がなければそのまま営業運転となる。【五十嵐和大、山田大輔】

毎日新聞 2009年2月3日 12時50分(最終更新 2月3日 13時28分)

柏崎刈羽原発:
7号機停止命令解除へ 運転再開手続き始動

 新潟県柏崎市は28日、中越沖地震(07年7月)直後、消防法に基づき東京電力柏崎刈羽原発1~7号機に出した緊急使用停止命令のうち、7号機分を週明けにも解除する方針を固めた。東電も同日、7号機の再起動に必要な施設全体の機能試験計画書案を経済産業省原子力安全・保安院部会に提出した。命令が解除されれば、運転再開に向けた事前了解の手続きが本格化する。

 柏崎市の会田洋市長は取材に「運転再開とは別の話だが、機能に問題がなければ淡々と解除する」と答えた。市は消防本部による、タービンに付随する消火設備の立ち入り検査をした上で、命令解除を最終判断する。

 東電によると、7号機は7基の原子炉のうち、最も復旧作業が進んでおり、地震で損傷した発電タービンの復旧工事が2月上旬に終わる予定。機能試験は営業運転再開に向けた最終作業。命令が解除されれば、東電と地元自治体で結ぶ安全協定に基づく運転再開に向けた事前了解の手続きを経て、早ければ2月中にも、原子炉内で核分裂反応を抑えている制御棒が引き抜かれ臨界に達する。

 柏崎市は地震直後、3号機の変圧器で火災が起きたことなどから消防法に基づき2日後使用停止命令を出した。【五十嵐和大、山田大輔】

毎日新聞 2009年1月29日 2時30分

新潟・柏崎刈羽原発:
柏崎市、7号機分の停止命令解除へ

 新潟県柏崎市は28日、中越沖地震(07年7月)直後、消防法に基づき東京電力柏崎刈羽原発1~7号機に出した緊急使用停止命令のうち、7号機分を週明けにも解除する方針を固めた。東電も同日、7号機の再起動に必要な施設全体の機能試験計画書案を経済産業省原子力安全・保安院部会に提出した。命令が解除されれば、運転再開に向けた事前了解の手続きが本格化する。

 柏崎市の会田洋市長は「運転再開とは別の話だが、機能に問題がなければ淡々と解除する」と答えた。【五十嵐和大、山田大輔】

毎日新聞 2009年1月29日 東京朝刊

柏崎刈羽原発:
6号機の火災、原因は「端子にほこり」 /新潟
 ◇消防通報遅れで東電、基本動作の徹底図る

 東京電力柏崎刈羽原発6号機で昨年12月8日に起きた火災で、東電は8日、溶接機器の電源端子にほこりがたまって発火した「トラッキング」を原因と推定する報告書を経済産業省原子力安全・保安院に提出した。また、火災発生の情報を1時間近く把握できなかった東電自身の問題については「今後、『煙』というキーワードを含め、火災が否定できない連絡を受けた場合は、東電社員が直ちに現場確認を行うようにしたい」とするなど、改めて基本動作を徹底せざるを得ない現状を露呈した。

 火災は6号機タービン建屋の溶接作業時に発生。溶接機器の一つ、ワイヤ送り出し装置から発煙、下請け作業員が直ちに消火したが、消防への通報が約1時間遅れた。

 東電の報告書によると、発生直後の午前10時40分ごろ、現場には東電から溶接工事を請け負った元請け会社の担当者2人と、その下請け会社の作業員6人がいた。

 火災現場に居合わせ、気分が悪くなった1人の作業員を見た元請け担当者は直ちに東電に通報したが、「溶接時の煙を吸った」と思うなど火災に気づかなかった。作業員は「既に(元請け担当者が)消防通報した」と思い込み、結局、互いに意思の疎通が図れなかった。

 さらに「体調不良者がいる」との通報で現場に来た東電社員2人が作業員を外に運び出したが、直接現場を確認することも怠った。結局、東電は約50分後の11時半ごろになって元請け会社から報告を受けるまで火災を認知できなかった。

 一方、出火した送り出し装置は下請け会社が持ち込んだもので、原発や一般の工場などで約20年間使っていた。電源端子の接続部でトラッキングが起きたと推定し、今後はこの部品の点検も作業手順に盛り込む。

 しかし、東電は「下請けに点検を任せるという意味では従来とスタンスは同じ。(経験の)積み重ねでしっかりするしかない」と釈明している。【五十嵐和大】

毎日新聞 2009年1月9日 地方版

福島原発:
安全性評価の最終報告書提出延期 東電

 東京電力は8日、国が06年に改定した原発の耐震設計審査指針(新耐震指針)に基づく福島第1、第2原発の安全性評価最終報告書の提出を延期すると発表した。昨年7月の新潟県中越沖地震の影響を受けて、想定される地震の再検討など追加作業が必要になったためという。

 最終報告書は、福島第1(1~6号機)が来年6月、福島第2(1~4号機)は来年3月の提出予定だったが、いつまで延びるかは未定という。両原発では、耐震安全性評価の中間報告が福島第1の5号機、第2の4号機のみ経済産業省原子力安全・保安院に提出されている。

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毎日新聞 2008年12月8日 22時37分

新潟・柏崎刈羽原発:
14年間、弁開けっ放し 放射性廃棄物漏れる

 東京電力は4日、新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原発1号機(新潟県)のタービン建屋の床下から、放射性廃棄物の樹脂約0・82立方メートルが見つかったと発表した。94年に廃棄槽へ流した際、途中の配管の排水弁が開いていたため漏れたらしい。14年後に発見された時も弁は開いたままで、ずさんな管理が明らかになった。

 樹脂は原子炉に戻される冷却水のろ過用で直径約1ミリのビーズ状。3日午後3時ごろ、配管類の耐震補強が必要かどうかを確認するため、通常、人が立ち入らない地下2階の床下パイプスペースを開けると、樹脂が深さ最大約9センチ、面積約20平方メートルに広がっていた。放射能量は約1800万ベクレル。室内の放射線は検出限界値以下で、作業員や外部への影響はないという。

 東電によると、排水弁は隣接する他の弁とコックの操作方向が逆で、閉めたつもりで開けてしまったらしい。管理記録はなく、いつから開いていたかは不明。東電は「地震がなければ今後も見逃されていた」と認めている。【山田大輔】

毎日新聞 2008年12月5日 東京朝刊

将来脱却 VS. 積極推進
朝日新聞 2008年11月04日
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「原発依存からの脱却」を訴える会田洋氏=柏崎市半田1丁目
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「原子力行政の推進」を訴える桜井雅浩氏=柏崎市駅前2丁目

 昨年7月の中越沖地震で被災し、停止中の東京電力柏崎刈羽原子力発電所を抱える柏崎市で、地震後初の市長選(9日告示、16日投開票)が迫っている。同原発を今後どのように位置づけて市政運営するかは大きな争点の一つだ。立候補を表明した現職と新顔は、いずれも同原発の運転再開を認めているため争点が見えにくいが、街の将来像として、現職は「原発依存からの脱却」を、新顔は「原子力行政の推進」を掲げている。(曽田幹東)

              ◆

 立候補を表明しているのは、いずれも無所属で現職の会田洋市長(61)と新顔の桜井雅浩・元市議会副議長(46)。市長選では、震災復興や医療・福祉の充実、産業振興なども争点となる。

 会田氏はこれまで、市財政の約2割が原発関連財源に依存していることなどから、「当面、原発の存在を抜きには語れない」としているが、将来的には「固定資産税が年々減少しており、いつまでも原発には頼れない。それに代わる産業振興が課題だ」と主張してきた。

 これに対し、市議時代から原発容認派だった桜井氏は「柏崎は日本のエネルギー政策を引っ張ってきたリーダー。原発部品を地元で作るなど、原子力技術で金を稼ぐ産業構造にしたい」と原子力を積極的に活用する方針を打ち出している。

 先月31日に市内であった公開討論会では、まず、桜井氏が中越沖地震の復興支援について、「国からの支援に不満がある。原子力政策を支えてきた自治体なのに支援が小さかった」と批判。会田氏は「4年前の中越地震を上回る支援を受けられた。これまでの震災より早い速度で復興が進んでいる」と反論した。

 柏崎刈羽原発について、桜井氏は「原発は今後も中心的存在、課題であり続ける。東電は基準地震動の設定、耐震補強の責任を果たしつつあるが、国に対して規制体制の見直しを求めていく」。会田氏は「原発と共存共栄を図る。国が責任をもって安全性を確認し、市民にわかりやすく説明することが大事だ」と訴えた。

 桜井氏が「会田氏の支持者には原発反対の立場の人が多い。(会田氏が)表面上では『再稼働が必要』と言っても、国に信じてもらえるのか」と批判すると、会田氏は「原発推進、反対の立場から幅広く支援を受けている。市民の総意がどこにあるか、耳を傾ける」と答えた。

 市財政の悪化問題について、会田氏は「原発の固定資産税が毎年減る中で2度の震災が続いた。自助努力が大事だ」とし、市有地売却やガス事業の民営化を主張すると、桜井氏は「10年間で市職員を3割減の700人にする」と訴えた。


新潟・柏崎刈羽原発:
中越沖地震で発覚、原発機器トラブル 従来の定期検査の盲点は

 昨年7月の新潟県中越沖地震で被災した東京電力柏崎刈羽原発7号機(新潟県)。地震による影響を調べる設備健全性調査で、発電用タービン翼の破損や重要機器の据え付けボルトの緩みなどが相次いで見つかった。通常の定期検査では発見できず、地震がなければ見逃されていたトラブルだ。従来の検査方法の「盲点」が浮かび上がったとはいえないか。【山田大輔】

 ◆タービン動翼破損

 柏崎刈羽原発は、中越沖地震により3号機の変圧器火災などの被害を受け、現在も運転が停止したままだ。東電は運転再開に向け、被害の少なかった7号機から順次、設備健全性調査を実施している。7号機では、想定の1・5倍の揺れを受け、タービンの動翼と静翼の接触による傷や軸受け部の変形など29件の被害が見つかった。一方、地震によるものではないとされるトラブルも42件発覚した。

 最も深刻なのは、発電機を回す低圧タービンの動翼付け根の損傷だ。2枚が破損していたほか、187枚に微小なひびが見つかった。東電は、ひびの断面の酸化状態などから、ひびは地震前に生じたと推定。蒸気の流れをコンピューター解析した。その結果、点検で発電を停止する際や試運転の低速回転中に蒸気が不安定に逆流することが判明、想定外の振動で金属疲労が起きたと分析した。

 付け根が完全に折れれば、高速で回転している動翼が飛び、タービン大破という大事故につながる危険性は否定できない。地震の影響を詳しく調べるため、目視点検したり、磁石の粉を使って目に見えないひびまで探した結果だが、定期検査は動翼を固定するピンに超音波を当てて傷の有無を調べ、異常があれば付け根部分を見る方法だ。今回判明した多数の損傷は見逃されてきた。また、蒸気の逆流という設計上の問題も発覚しなかったといえる。

 ◆炉心ボルトに緩み

 原発の中枢部である原子炉圧力容器や、非常時の炉心冷却に使われる残留熱除去系熱交換器など、重要度の高い機器では、土台に固定する基礎ボルトの固定力が弱まっていたことも分かった。16本のうち10本が緩んでいた機器もあった。地震の揺れで機器が動いた跡はなかったが、通常の定期検査では、ボルトの緩みは点検しないという。

 例えば圧力容器は、円筒状の鋼鉄製容器の外周部分を長さ1・5メートル、直径68ミリのボルト120本で土台に留め、容器が倒れたり飛び上がるのを防いでいる。調査では、12本のナットを締める方向に回すと11本が動いた。緩む方向には動かず、ボルトの役割は保たれているとされたが、こうした検査は97年の運転開始以来初めてという。東電は、起動や停止で熱による変形が繰り返され、ボルトとナットの締め付けがなじんだためと説明する。他にも、蒸気配管の支持金具や非常用発電機の基礎コンクリートのひび割れなど、重要な設備で異常が見つかった。

 ◆「不適合」受け対策

 動翼の破損について東電は、翼の交換や点検強化のうえ、10年以内に設計改良することを決めた。同様の損傷は6号機でも見つかった。6・7号機は発電量の大きな新型で、経済産業省原子力安全・保安院は「他の原発に同様の問題が生じるとは考えにくい。対策を全国の原発にまで広げる必要はない」との見解だ。しかし、小林英男・横浜国立大特任教授(破壊力学)は「普通の運転状態を基に設計する考え方は同様だから他の原発でもあり得ることだ」と指摘する。

 一方、ボルトの緩みに対して東電は、点検時にボルトを締め付けるよう自社の「保全プログラム」(保守管理対策)を改める方針だ。保安院も「経年的事象なら対応が必要。他の原発の状況も調査すべきだ」としている。

 今回の調査で発覚したトラブルについて、保安院はいずれも安全性に問題はなく、補修で済む「軽微な不適合」と結論づけた。しかし、技術評論家の桜井淳さんは「大切な部分をなぜ点検してこなかったのか。地震後に見つかったのに『地震とは関係ない。前からあった』で済ますのは無責任だ。揺れが大きかった1号機などの今後の調査では、より深刻なトラブルも予想される」と批判する。

 原発の定期検査の間隔を現在の13カ月から最長2年間に延ばす新検査制度では、各原発の特性を踏まえた日ごろの「保全活動」の充実が求められている。地震を機に判明したような「不適合」の管理や劣化の監視も電力会社自らの取り組みに委ねられることになる。災害や事故の起きる前に十分に目が届く体制をつくることが急務だ。

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 ◇地震と無関係とされた7号機の主な異常

 <低圧タービン動翼の折損やひび>

・第14段=912枚のうち折損2枚、ひび90枚

・第15段=756枚のうちひび1枚

・第16段=780枚のうちひび96枚

 <基礎ボルトの緩みや固定力低下>

・原子炉圧力容器

・原子炉冷却材浄化系再生熱交換器

・気体廃棄物処理系排ガス再結合器

・残留熱除去系熱交換器

・燃料取り換えエリア排気放射線モニター

・非常用ガス処理系フィルター装置

 <ひび>

・非常用ディーゼル発電機3台の基礎コンクリート(0.3ミリ未満のひび割れ多数)

・主蒸気配管系の支持構造物(施工時の溶接ひびと推定)

毎日新聞 2008年11月2日 東京朝刊

新潟・柏崎刈羽原発:
7号機の耐震性、保安院が追加検証指示

 新潟県中越沖地震の影響を調べるため東京電力が行った柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の設備点検報告について、経済産業省原子力安全・保安院は25日、原子炉冷却用配管などの耐震性検討が不十分だとして、東電に追加検証を指示することを決めた。

 原子力安全基盤機構(東京都)が、設備の耐震性を東電とは別に評価した結果、残留熱除去系配管の支持金具の一部に、地震の揺れでメーカーの保証値を超える力が加わる可能性が判明した。

毎日新聞 2008年9月26日 東京朝刊

新潟・柏崎刈羽原発:
地震の揺れ想定、再引き上げ--東電

 東京電力は22日、柏崎刈羽原発(新潟県)について、耐震設計の基準として想定する地震の揺れを最大で2300ガル(ガルは加速度の単位)に再び引き上げ、経済産業省原子力安全・保安院に報告した。

 東電は5月、耐震設計の基本となる地盤の「解放基盤表面」での揺れを見直した。しかし、昨年7月の新潟県中越沖地震の震源とみられる断層を34キロから36キロに延長し、東側にある「長岡平野西縁断層帯」(長さ91キロ)が原発直下まで延びている場合を考慮し再見直しした。

 基盤表面での揺れの想定は1~4号機で2280ガルから2300ガル、5~7号機で1156ガルから1209ガルに引き上げた。基盤表面と地表との間には揺れを抑える堆積(たいせき)層があるため、原発建屋の揺れは最大845ガルとし、現在進めている補強工事への影響はないという。【山田大輔】

毎日新聞 2008年9月23日 東京朝刊

新潟・柏崎刈羽原発:
6、7号機タービン動翼損傷 蒸気逆流が原因

 東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)で、低圧タービンを構成する動翼の約7%にあたる331枚で付け根が破損したりひびが見つかった問題で、東電は19日、発電を止める際などに蒸気の逆流が起き、翼に想定以上の振動を与えたことが原因とみられると発表した。当面、翼の交換や点検強化で対処、10年以内の実用化をめどに改良を検討する。

 動翼の損傷は7月末、新潟県中越沖地震の被害点検中に見つかった。分析の結果、落雷や点検のため発電を停止する時や、試運転の低速回転中に、タービンを回す蒸気が逆流することが判明。これが繰り返されて動翼に金属疲労が起きたと推定した。今後は、発電停止4回ごとに点検するという。

 中部電力浜岡原発5号機(静岡県)でも06年6月、動翼破損が起き、メーカーの日立製作所に対して中電が総額418億円の損害賠償訴訟を起こしている。柏崎刈羽6、7号機の動翼は米ゼネラル・エレクトリック社製だが、東電は「損傷は運転開始から約10年後に生じており、運転期間の短い浜岡原発のケースとは異なる」として賠償請求の予定はないという。【山田大輔】

毎日新聞 2008年9月20日 東京朝刊

新潟・柏崎刈羽原発:
6号機不具合 同型浜岡5号機、中電に対応指示 /静岡

 07年の中越沖地震後の検査で東京電力・柏崎刈羽原発6号機で制御棒の不具合が見つかったことを受け、原子力安全・保安院は12日、6号機と同型の原子炉である浜岡原発5号機を所有する中部電力に対応を指示した。

 柏崎刈羽6号機では、地震発生後の安全確認で、制御棒駆動機構と制御棒の結合不良が確認された。昨年の定期検査で浜岡5号機でも同様の結合不良が見つかっていたため、保安院は中電に再発防止策を指示した。

 具体的には、人間の判断ミスや操作ミスが起きないようにする設備を導入することや、結合作業を変更することなどを求めた。【浜中慎哉】

毎日新聞 2008年9月13日 地方版

新潟・柏崎刈羽原発:
6号機、東電の手順書に不備 制御棒結合の確認怠る
 ◇保安院、厳重注意

 東京電力は12日、新潟県中越沖地震後に停止している柏崎刈羽原発6号機(改良型沸騰水型軽水炉=ABWR)で、制御棒と駆動装置の結合作業の手順書に、安全上重要な不備があったことを明らかにした。経済産業省原子力安全・保安院は保安規定に違反したとして東電に厳重注意し、改善を指示した。

 東電によると、定期点検中の07年6月、制御棒の駆動装置1体と制御棒が結合していないことが判明。制御棒交換時に結合確認試験をする作業手順書を作成せず、別の手順書を流用していた。作業員は結合状態を荷重計などで確認する作業をしていなかったという。

 6号機では、04年と07年にも同様の結合不良が起きたが、詳しく原因究明や情報共有をしていなかった。

 保安院はABWRで同様の設備を持つ中部電力、北陸電力にも作業内容の改善を指示した。【五十嵐和大】

毎日新聞 2008年9月13日 東京朝刊

新潟・柏崎刈羽原発:
3号機で水漏れ

 東京電力は1日、柏崎刈羽原発3号機の原子炉建屋内で、燃料を冷やすため原子炉内に水を注入する「残留熱除去系」の配管から微量の放射性物質を含む水約98リットルが漏れたと発表した。放射線量は18万ベクレルと、国への報告義務の約20分の1。水は付近にいた作業員4人にかかったが、健康影響はなく、外部への放射能漏れもない。

 水漏れは8月29日午後4時15分ごろ、発生した。東電によると、配管に水を充てんする作業中で、操作する弁を誤ったという。

 3号機は定期検査中だが、配管内に放射性物質が付着していたらしい。【山田大輔】

毎日新聞 2008年9月2日 東京朝刊

中越沖地震:
活断層の長さ、保安院が再調査

 経済産業省原子力安全・保安院は6日、昨年の新潟県中越沖地震の震源とされる「F-B断層」の長さについて、現在の想定より北に2キロ長い36キロの可能性があるとの見解を発表した。断層が動いて引き起こされる地震の揺れは大幅に変わらないが、被災した東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再開に向けた耐震安全性評価の基準が変更されるため、再開時期に影響する可能性がある。

 保安院は9日から、活断層がさらに北に延びていないか調査に乗り出す。

 F-B断層は、79年の同原発の設置許可申請時には活断層とされず、東電は03年に活断層の可能性を確認したが昨年12月まで未公表だった。【山田大輔】

毎日新聞 2008年8月7日 東京朝刊

中越沖地震:
震源断層、2キロ長い可能性…原子力保院

 経済産業省原子力安全・保安院は6日、昨年の新潟県中越沖地震の震源とされる「F-B断層」の長さについて、現在の想定より北に2キロ長い36キロの可能性があるとの見解を発表した。断層が動いて引き起こされる地震の揺れは大幅に変わらないが、被災した東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再開に向けた耐震安全性評価の基準が変更されるため、再開時期に影響する可能性がある。保安院は9日から、活断層がさらに北に延びていないか調査に乗り出す。

 F-B断層は、79年の同原発の設置許可申請時には活断層とされず、東電は03年に活断層の可能性を確認したが昨年12月まで未公表だった。【山田大輔】

毎日新聞 2008年8月6日 20時18分

原発情報:
地震時に携帯メールで配信…原子力保安院

 経済産業省原子力安全・保安院は16日、大地震が起きた際の原発などの運転状況や放射能漏れの程度を携帯電話メールで知らせるサービスを始めた。昨年7月の新潟県中越沖地震で、東京電力柏崎刈羽原発が被災したのを受け、緊急時の情報を直接知りたいという原発を抱える自治体の要望に応えた。保安院が住民に直接、原発などの状況について情報提供するのは初めて。

 対象施設は、原発や再処理工場、核燃料加工会社など30カ所。施設が立地する市町村で震度5弱以上、道府県で震度6弱以上の揺れを観測した場合、配信される。地震に見舞われた施設名や運転状況、放射能漏れの有無、設備の被害情報などが伝えられる。

 希望者は、携帯電話の緊急時情報ホームページ(http://kinkyu.nisa.go.jp/m/)から登録する。【河内敏康】

毎日新聞 2008年7月16日 10時24分(最終更新 7月16日 11時44分)

中越沖地震:
柏崎刈羽原発停止1年 苦境長引く東電 原油高追い打ち

 新潟県中越沖地震で東京電力の柏崎刈羽原子力発電所(新潟県柏崎市、刈羽村)が運転を停止してから16日で1年が経過する。東電の発電量の2割程度を占めた同原発が停止する非常事態に、原油など燃料価格の歴史的な高騰が直撃し、08年3月期は28年ぶりの最終(当期)赤字へ転落した。点検や耐震強化工事などの作業を急いでいるが運転再開のめどは立っておらず、経営への影響も長期化している。

 柏崎刈羽原発1~7号機の06年度の発電量は計549億キロワット時。原発の停止で、代替となる火力発電の燃料費増加や補修費が6150億円(単体)の収益押し下げ要因となり、08年3月期の連結決算は1501億円の最終赤字を計上した。09年3月期も原発停止に伴う負担増が6000億円以上に達する見通しだ。

 東電は地震発生直後から原発設備の被害状況の点検を進め、今年5月には耐震設計の基準となる地震の揺れの想定を、最大で建設時の5倍に引き上げると発表。新基準に基づいて耐震強化工事に着手し、再開に向けた作業を急いでいる。

 だが、運転再開へこぎ着けるには原子力安全・保安院による安全性の確認が必要。保安院による検査は最も先行する7号機で8割程度まで進んでいるものの、5号機はいまだ着手すらしていない状況で「いつ完了するか全く分からない」(保安院)状態だ。

 地元の了解も取り付ける必要があり、清水正孝社長は「我々の一存だけでは判断できず、具体的な再開時期は見通せない」としている。

 東電は9月をめどに発電コスト全体を見直す「本格改定」を実施予定。火力発電の比率が増えていることを踏まえ、原油高騰によるコスト増を電気料金に転嫁しやすくする方向で、消費者にも原発停止の影響が及ぶことになる。【谷川貴史、坂本昌信】

毎日新聞 2008年7月16日 東京朝刊

中越沖地震:
増幅する地震波 揺れの大きさは地下構造で決まる

 昨年7月の新潟県中越沖地震=マグニチュード(M)6・8=で被災した東京電力柏崎刈羽原発。直下の岩盤(解放基盤表面)を襲った揺れの加速度は最大で約1700ガルと従来の想定の最大約3・8倍に達した。想定を超える揺れによる原発震災への懸念が高まる。揺れが大きくなった理由や、耐震安全性向上につなげる課題を探った。【河内敏康】

 ◆想定の3・8倍

 「(新潟県中越沖地震で柏崎刈羽原発での揺れが)設計値を超えたのは憂慮すべき事態だ」。新潟県柏崎市で19日から開かれた国際原子力機関(IAEA)主催の国際会議で、議長のアントニオ・ゴドイIAEA技術安全課長代行は強調した。

 同原発の原子炉建屋では、中越沖地震で最大680ガルの加速度を観測した。観測値から原発耐震設計での基準となる岩盤「解放基盤表面」の揺れを推定すると最大1699ガルとなった。設計時の想定の最大約3・8倍だ。

 なぜ大きな加速度になったのか。土方勝一郎・東電原子力設備管理部新潟県中越沖地震対策センター部長は「震源での応力降下量が大きかったことが原因の一つだ」と説明する。

 断層面をはさんで岩盤同士には力が加わっている。応力降下量とは、地震によってこの力が解放される量をいい、これが大きいほど加速度を左右する短い周期の地震波がよく出る。土方部長は「平均的な地震の約1・5倍もの短周期の地震波が出た」と語る。

 こうした震源の特性によるばらつきは中越沖地震に限ったことではない。東京大地震研究所の纐纈一起(こうけつかずき)教授(強震動地震学)は「各原発の耐震安全性を検討する際、震源の影響として中越沖地震程度のばらつきは考慮する必要がある」と指摘する。

 ◆堆積層の焦点効果

 柏崎刈羽原発周辺は、震源から地表まで約15キロもの厚さの堆積層に覆われている。この厚い堆積層も揺れを増幅させた。土方部長は「『焦点効果』によって原発に地震波が集中した」と説明する。

 地層がまっすぐで平行に重なっていると地震波の曲がり方は小さい。ところが同原発周辺では、地層が不整形に曲がっている。屈折現象によって地震波が大きく曲げられ、原発に向かって集まるケースがある。これが焦点効果だ。

 さらに、原発直下の地層の褶曲(しゅうきょく)も影響した。東電の地下構造探査などによると、最も揺れの大きかった1号機は、褶曲した地層の谷の部分にある。その結果、レンズで光が収束するように、地震波が集まって揺れが大きくなったという。一方、1号機と比べて揺れが大きくなかった5号機(766ガル)は、褶曲した地層の山の部分にあったため、地震波の集中を免れた。

 経済産業省原子力安全・保安院では、原発を持つ各事業者が、新指針に照らして原発の耐震性を再評価した報告書が妥当か審議している。同原発での中越沖地震によるこうした揺れの増幅を重く見た原子力安全委員会は今月、震源や地下構造の影響が再評価に適切に考慮されているか保安院に追加検討するよう求めた。

 ◆観測波形から予測

 東京電力は国の新耐震指針に基づき、将来、柏崎刈羽原発を襲う揺れを想定し直し、解放基盤表面での揺れを最大2280ガルとした。従来の最大約5倍に達する大きさだ。

 なぜこれほど大きくなったのか。

 その理由の一つが「断層モデル」という揺れを予測する新手法だ。従来は、想定する活断層の長さから算出した地震の規模や、震央から原発までの距離を用いて経験式から予測した。しかし、中越沖地震のように揺れを大きく左右する地下構造の情報は生かされず、結果的に過小評価となった。

 新手法では、想定される地震の震源付近で、実際に起きた小規模地震による観測波形を使い、想定される大地震の揺れを予測する。観測波形には震源から原発までの重要な地下構造の情報が含まれており、揺れを正確に予測する上で不可欠だ。例えば、地震波がやってくる方向が違えば、通過する地下構造も異なるため、揺れ方も違う。実際、中越沖地震では大きな揺れに見舞われた同原発だが、同規模の新潟県中越地震(04年)での揺れはあまり大きくなかった。

 ただ、情報が必要な震源付近で、小規模地震が都合よく起こる保証はない。新指針を踏まえ、同原発を襲うと予測される揺れの新たな策定に反映させようと、東電は同原発周辺の地下構造を探査したが、地震動の専門家は「中越沖地震の大きな揺れを、地下構造探査だけで事前に正確に予測するのは難しかったのではないか」と語る。

 入倉孝次郎京都大名誉教授(強震動地震学)は「各原発に置かれた地震計で得られる観測波形は揺れを予測する上で重要。今後、地震の発生数が増えると共に、情報量も増えてくるため、広く公開すべきだ」と指摘する。

毎日新聞 2008年6月29日 東京朝刊


東京電力:
来年大幅値上げも 基準価格改定、燃料高転嫁を容易に

 東京電力は26日、発電コスト全体を見直す「本格改定」を9月をめどに実施し、電気料金を見直すと発表した。燃料費負担の増加を料金に反映させる際の「基準燃料価格」を引き上げ、高騰が続く原油価格を料金に転嫁しやすくする。実際の料金は年内は据え置く方向だが、来年1月以降大幅値上げされる可能性が出てきた。改定は06年4月以来で、7月に経済産業省に届ける。
・・・

毎日新聞 2008年6月27日 東京朝刊


東京電力:
料金改定 原発停止・原油高で決断 「経営努力で吸収できず」

 東京電力が2年ぶりとなる電気料金の「本格改定」に踏み切ることを決めたのは、昨年7月の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原子力発電所の運転停止に原油価格の急騰が重なり、経営の屋台骨が揺らぎかねないと判断したためだ。改定により原油価格の高騰を電気料金に上乗せしやすくなり、燃料費の負担増に苦しむ他の電力各社でも追随する動きが広がりそうだ。【谷川貴史】
・・・

毎日新聞 2008年6月27日 東京朝刊


中越沖地震:
柏崎刈羽原発安全性問題 技術委8月中開催へ 2小委平行線で/新潟
 ◇論議中断の可能性

 東京電力柏崎刈羽原発の安全性について県に助言する技術委員会は、8月中をめどに委員会の会合を開催する方針を固めた。技術委の下では現在、「地質・地盤」問題と「設備健全性、耐震安全性」問題に関する小委員会が開かれているが、議論は平行線。小委の論点を一度整理し、技術委に上げる見通し。技術委の判断次第では小委の議論を中断する可能性も出てきた。【渡辺暢】

 県は昨年の中越沖地震を受けて、技術委の体制を強化した。委員会下部に二つの小委を設置し、出された意見を参考にして、技術委が具体的な助言をまとめる計画だ。技術委の助言は、原発再開について、県などが了解するかという問題にも大きく影響する。

 しかし、小委では、原発の安全性に疑問を持つ委員と容認する委員との間で、議論がかみ合わない状況が続いている。23日開かれた「地震、地質・地盤に関する小委員会」でも、委員同士が激しく衝突。委員長の山崎晴雄・首都大学東京大学院教授は「どこかで線を引かないといけないが、新しいデータを取る方法もない。私自身は東電は結構データを出していると思うし、いったん(上部委員会に両論併記で)上げるしかないのでは」と話す。

 関係者によると、技術委で「小委員会でこれ以上の議論の発展はない」と見なされた場合、小委開催を中断する可能性もある。そうなった場合、発言の機会を失う小委委員からの反発も予想される。

毎日新聞 2008年6月24日 地方版


柏崎刈羽原発:
立石教授「安全重視の評価を」--県技術委小委 /新潟

 東京電力柏崎刈羽原発の安全性について県に助言する県技術委員会の「地震、地質・地盤に関する小委員会」の第5回会合が3日、新潟市内で開かれ、先月発表された新たな基準地震動について議論した。立石雅昭・新潟大教授は、東電による断層の評価について反論。「現時点では両者の相違は埋まらない」と、より安全を重視した評価を求めた。

 立石教授は、「変動地形学的な立場からみれば、(震源断層とされているF-B断層より北東に)断層がある可能性は否定できない」と主張。東電はこれらの手法を採用していないとして、「(東電との)視点の相違は現時点では埋まらない。だからこそ、現時点では安全サイドに立って評価すべきだ」と述べた。【渡辺暢】

毎日新聞 2008年6月4日 地方版


柏崎刈羽原発:
東電、県技術委小委に基準地震動を説明 議論、また物別れ /新潟

 東京電力は27日、柏崎刈羽原発の耐震設計の基準となる新たな基準地震動について、県の技術委員会「地震、地質・地盤に関する小委員会」や地元自治体に説明を行った。議論は従前通り、反対派と容認派の委員とで対立。小委員会の意見取りまとめは、活断層の評価について「両論併記」する論点整理にとどまる可能性が高まった。

 説明会は県庁で開かれ、東電の新潟県中越沖地震対策センター職員が算定の根拠となる活断層の長さや地盤構造について、調査方法などを解説した。

 説明会後、委員長の山崎晴雄・首都大学東京教授が「一つのモデルとして納得は出来る」と評価した。一方、立石雅昭・新潟大教授は「(震源断層とされるF-B断層が)34キロかどうかも議論中で、もっと長くみるべきだ。今後も小委員会で議論していく」と批判した。山崎教授は「(小委員会の)片方は確たる証拠もないまま、断層が長いと主張している。このまま物別れに終わって結論はまとまらないだろう」と話した。【渡辺暢】

毎日新聞 2008年5月28日 地方版


社説:
柏崎刈羽原発 ここだけが特殊とは限らない

 建設時の想定に比べ、5倍の揺れを想定する必要があるという。新潟県の柏崎刈羽原発について東京電力がまとめ、経済産業省の原子力安全・保安院に提出した報告書の内容だ。

 柏崎刈羽原発では、昨年7月の中越沖地震で実際に「想定外」の揺れが記録された。それだけでも市民の不安は大きいが、かつての想定の5倍とは驚くような値だ。

 いったいなぜ、これほどの開きが生じたのか。

 原発の耐震指針は06年に28年ぶりに改定されている。全国の電力会社など事業者は、これを基に既存の原発施設の再評価を進めている。柏崎刈羽原発も新指針を基に再評価してきたが、その際に中越沖地震の観測データを踏まえるよう、求められていた。

 その結果、揺れの大幅な引き上げにつながる複数の要素が明らかになった。第一に、中越沖地震の震源断層と思われる活断層を設計時に想定していなかった。これとは別に、連動して動く可能性のある三つの断層を別々に評価していた。

 加えて、地盤の構造に揺れを増幅する特徴があることも明らかになったという。震源から出る波が重なり合う現象や、地層が波状に曲がった褶曲(しゅうきょく)構造による増幅効果だ。

 東電は当時の知見ではわからなかったという。しかし、最新知見による見直しを定期的に行うべきだったのではないか。

 今回の結果は、他の原発にとっても人ごとではない。柏崎刈羽以外の全国の原発も、新指針に基づく再評価で、想定される揺れを軒並み引き上げている。ただ、これまでの報告では、補強工事の必要はないと結論付けている。安全に余裕を持たせて設計してあるのでだいじょうぶという理由からだ。

 だが、今回の柏崎刈羽のケースをみると、それで安心はできない。揺れを増幅する地下の構造は柏崎刈羽に特徴的なものと東電はみるが、別の場所にも同様の効果を生む構造がないとは限らない。柏崎刈羽が特殊だったとの思い込みは避けるべきだ。その上で、必要な補強工事をためらうべきでない。

 柏崎刈羽を含め、原発の耐震性の再評価は国がチェックする。ここでも、電力会社の報告をうのみにするのではなく、責任を持った評価を尽くしてほしい。

 東電は6月から補強工事を始めるという。しかし、中越沖地震による影響の点検も、まだ終わったわけではない。今回の報告書の妥当性も、補強工事の妥当性も、国の評価で覆される可能性は残されている。

 原発にも地震にも、不確かなリスクがつきまとう。柏崎刈羽に限らず、非常に大きな揺れに見舞われる可能性のある場所で原発運転を続けるべきなのか。そういった根本的課題も含め慎重な検討が欠かせない。

毎日新聞 2008年5月24日 東京朝刊


中越沖地震、活断層の過小評価 耐震性、信頼揺らぐ--他原発でも同じ例

 新潟県中越沖地震の震源だった可能性が指摘されている海底の断層について、柏崎刈羽原発建設時に「活断層でない」としていた東京電力が、活断層だったことを認めた。活断層の過小評価は、耐震設計の信頼性を根底から揺るがす事態だ。

 活断層が過小評価されていた例は他にもある。今年3月の能登半島地震では、北陸電力が三つに分かれているとしていた断層が一体となって動いて発生した。同社はこのうち1本については「活断層ではない」としていたが、専門家からは「通常なら1本のつながった活断層として評価する」との声が上がっていた。中国電力島根原発を巡っても、同社が長さ10キロとする原発近くの宍道断層について、広島工業大の中田高教授が「長さは20キロ」との調査結果を発表している。

 毎日新聞が昨年、全国の原発周辺にある活断層のうち、国の地震調査研究推進本部(推本)の調査対象になった17断層について、電力会社の調査結果と比較したところ、15断層で電力会社の方が想定地震を小さく見積もっていた。柏崎刈羽原発に近い長岡平野西縁断層帯についても、推本の調査ではマグニチュード(M)8の巨大地震が想定されたが、東京電力の想定はM6・9だった。

 原発が想定外の揺れに襲われる事態は、東北電力女川原発で03年と05年の2回、能登半島地震で志賀原発、中越沖地震で柏崎刈羽原発と、既に4回に達した。各電力会社は今、昨年9月に改定された国の原発の耐震指針に基づき、耐震性のチェックを進めているが、活断層の過小評価を繰り返すことは許されない。十分に安全側に判断して耐震性の評価を進めない限り、国民の原発の耐震性への不安は解消できない。【鯨岡秀紀】

毎日新聞 2007年12月6日 東京朝刊
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