Uninsured Children
無保険の子どもたち


無保険:18歳以下の高校生も救済 来夏にも交付 厚労省

2009118 230

 親の国民健康保険(国保)の保険料滞納で生じた「無保険の子」問題で、厚生労働省は上限を「15歳以下の中学生」としてきた救済対象を、「18歳以下の高校生世代」にまで広げる方針を決めた。来年の通常国会に国保法の再改正案を提出し、来年夏にも導入する。今年4月実施の救済策で放置されていた、数千人規模の「無保険の高校生」に新たに保険証が交付されることになった。

 中学生以下の「無保険の子」には今年4月から、短期保険証(期限6カ月)が一律交付されている。同省は、「18歳未満の救済」を掲げていた民主、社民、国民新の3党が政権に就いたことなどから、高校生世代の救済についても検討。救済対象の人数などを把握するために、今月、市区町村を通じて初の全国調査を始めた。

 法改正の可否についても省内部で議論した。児童福祉法が対象年齢を「18歳未満」としている▽民主党がマニフェストで「高校の実質無償化」を掲げ、高校生の心身の健康確保が必要--などの観点から、来年の通常国会への法案提出を決めた。

 救済範囲は「18歳に達した年度の年度末まで」になる見込み。国保会計は市区町村が管轄しているため、新たな国庫負担(予算措置)は不要となる。

 「無保険の高校生」については昨年度、毎日新聞が全市区町村を対象に独自調査を実施。回答があった1103自治体のうち、少なくとも330自治体に4367人存在することが判明している。ただ、実数を把握していない自治体も多く、年内にもまとまる予定の国の全国調査結果が出るまでは正確な全体像は不明。厚労省は、人口比率などから割り出した推計値から、全国で7000人程度とみている。

 高校生世代の救済については、子育て支援や人道上の理由から、独自に救済に乗り出している自治体もある。札幌市が昨年12月、独自に保険証を交付したのをはじめ、毎日新聞の調査では、昨年度、全国155自治体(回答数のうち14%)が独自救済策を導入している。【平野光芳】


無保険の高校生:救済対象外、数千人存在 厚労省が調査へ

 親の国民健康保険(国保)の保険料滞納で生じた「無保険の子」問題で、厚生労働省は5日、昨年12月の国保法改正で救済の対象外とされた「高校生世代」の子どもの実態を全国調査する方針を決めた。「無保険の高校生世代」は全国で数千人規模存在するとみられているが、公式な調査は初めて。結果は年内にもまとまる見込みで、救済対象の拡大を求める声が一層高まりそうだ。【平野光芳】

 「無保険世帯」で暮らす、高校生世代の人数(今年9月時点)を全国の都道府県を通じて集計。国はその後、救済拡大の必要性を判断する。

 「無保険の高校生」については昨年度、毎日新聞が全市区町村を対象に独自に調査を実施。回答があった1103市区町村のうち、少なくとも330自治体に4367人存在することが判明したが、公的なものも含め、これ以外の全国調査は行われていない。

 一方、中学生以下の「無保険の子」については昨年9月、厚労省が初めて実態調査を実施。約3万3000人いることが判明し、昨年12月の国保法改正で今春から、滞納世帯でも通常の保険給付が受けられるよう、期限6カ月の短期保険証の交付が市区町村に義務化された。

 しかし、高校生世代については、民主党が昨年11月、社民、国民新と3党で救済対象を「18歳未満」とする改正案を提出したが、当時与党だった自民党が「親の滞納を助長する」などと難色を示し、対象外になった。

 今回の調査では、中学生以下の救済策についても、親が役所に受け取りに来ることができないなどの理由から、保険証が無保険世帯に届いていない実態についても調べる。こうした調査が行われるのも初めて。

 中学生以下の子どもへの保険証交付方法は市区町村の裁量に任されており、窓口交付などばらつきがある。それぞれの利点と問題点を分析して、確実に子どもに保険証を届ける方法を検討する方針。

毎日新聞 2009115日 1500


無保険の子:短期証発送へ 水戸市が来週にも

 国民健康保険税の長期滞納者に交付する短期保険証(短期証)が窓口に留め置かれ、水戸市の中学生以下の子供700人以上が無保険状態になった問題で、市は2日、短期証を郵送する方針を明らかにした。市民団体「水戸生活と健康を守る会」(中庭緋佐子事務局長)などがこの日、短期証の郵送を申し入れ、清水孝子保健福祉部長が「来週中に発送する準備を進めている」と回答した。

 市国保年金課によると、10月1日現在で子供727人を含む3454世帯分の短期証を留め置きにしていたが、同月末には、子供368人を含む2893世帯まで減ったという。同課は「(滞納世帯が)1カ月でこれだけ(窓口)相談に来たということ」と説明、来年4月の更新期にも短期証を窓口に取り置く考えを示唆した。【山内真弓】

毎日新聞 2009112日 2226


水戸市:子供731人が無保険「短期証」留め置き

 水戸市が国民健康保険税の長期滞納者に発行する短期保険証(短期証)を窓口に大量に留め置き、10月1日以降、中学生以下の子供731人が無保険状態になっている。短期証は納税を促すため窓口交付が原則で、滞納者が受け取りに来ないためだが「無保険の子」の一律救済を目指した4月施行の改正国保法は、中学生以下への短期証交付を市町村に義務付けており、無保険状態の放置は法の精神に反するとの批判が出ている。【山内真弓】

 同市では納税指導を強化した結果、短期証の発行が増え、4月現在で国保加入世帯の16.3%にあたる7210世帯(昨年比5・6倍)に6カ月更新の短期証を交付することになった。10月に更新を通知したが、3454世帯が窓口を訪れず、中学生以下727人分も含め取り置きになっている。さらに、保険証を返納させた世帯に交付する「資格証明書」の3世帯の子供4人も4月から短期証へ切り替わり、9月末で期限切れになった。

 こうした状態について、市民団体「水戸生活と健康を守る会」の中庭緋佐子事務局長は「明らかな改正国保法違反。無条件で保険証を郵送すべきだ」と主張。市国保年金課は「窓口に来れば短期証を渡す」と反論する。

 水戸市のとび職の男性(27)と妻(27)、子供3人の5人家族は、9月末で短期証の期限が切れた。男性は滞納した保険税を毎月1万5000円ずつ納付するという「分納誓約書」を来年交わす約束をし、ようやく更新された短期証を得た。妻は「滞納が悪いのは分かるけど、家賃やカードローンもあり国保まで払えない」と約束が守れるか心配する。

 厚生労働省国民健康保険課は、短期証の留め置きについて「交付できる状態なら改正国保法違反とは考えないが、あまりにも長い時間放置するのは望ましくない」としている。

 民間団体「大阪社会保障推進協議会」が、改正国保法施行後の5月現在で大阪府内43市町村を調査、回答のあった27市町村の中学生以下の子供計394人が短期証を受け取っていないと問題提起しており、水戸市の取り置き数はこの数字と比較しても突出している。

 ◇短期保険証


 国民健康保険税を一定期間滞納すると、窓口で分納誓約書の提出などを条件に6カ月や3カ月有効の短期保険証が交付される。分納ができないと保険証を返還し、完納するまでは資格証明書の交付を受けて医療機関での受診が全額負担となる。4月施行の改正国保法は資格証明書の交付を受けている世帯の子供の無保険を救済するため、中学生以下の子がいる世帯への6カ月の短期証交付を市町村に義務付けた。

毎日新聞 20091031日 230


新聞協会賞:「無保険の子」で受賞の記者が講演会 横浜で

Pasted Graphic
新聞協会賞受賞講演会で講演をする戸田栄・福井支局長=横浜市中区の日本新聞博物館で2009年10月17日午後2時0分、高橋直純撮影

 09年度新聞協会賞受賞記者講演会が17日、横浜市中区の日本新聞博物館であり、「無保険の子」救済キャンペーンで受賞した毎日新聞大阪本社の取材班代表、戸田栄・福井支局長(元社会部副部長)らが講演した。

 戸田支局長は独自に全国の市町村にアンケートを実施したことを紹介。わずか半年で国民健康保険法改正につながった成果について「本紙の報道をきっかけに、厚生労働省による全国調査や大阪市など大都市での独自救済の動きが進み、奇跡的なことが起きた」と喜びを語った。自治体ごとの基礎データがなかった点については「国は都合の悪いことを調べず、知らん顔をしているが問題はある。ジャーナリズムの新しい開拓分野になるのではないか」と締めくくった。

毎日新聞 20091017日 1936分(最終更新 1017日 2228分)




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