Elderly Care Services
わが国の高齢者介護は大丈夫か

介護保険の利用料増「容認」2割 保険料上昇の抑制策で
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 介護保険料の上昇を抑えるため、利用者の負担を増やすことを容認する人は2割だったことが20日、内閣府が公表した介護保険制度に関する世論調査で明らかになった。税金の負担割合の引き上げを求める人が4割超と最も多い。厚生労働省が打ち出した制度見直しの方向と相反する結果となった。

 調査は9月から10月にかけて、全国の成人5千人を対象に実施。3272人(65.4%)から有効回答を得た。

 現行のサービス水準を維持すると15年後の保険料が2倍近くになるとの試算を示し、保険料抑制のために取るべき手段を複数回答で聞いた。

 「公費負担割合の引き上げ」は43.1%で、「保険料負担増はやむを得ない」の35.7%が続く。40歳からの保険料の支払い年齢を引き下げることも29.1%の人が選んだ。これに対し、「利用料の引き上げ」は20.1%、「軽度者は全額自己負担」は15.6%、「サービス量の制限」は15.4%にとどまった。

 厚労省は次の制度改正に向けて、保険料上昇を抑えるため利用者の負担増や軽度者へのサービス削減の方策を示し、公費の負担増は先送りした。国民の理解を得るのは、容易ではなさそうだ。

 また、制度が導入されたことで、介護を取り巻く状況が「良くなった」と答えた人は51.3%と過半数に上り、「良くなったとは思わない」は28.8%だった。良くなった理由は、家族の負担が軽くなったことを挙げた人が54.8%で最も多かった。


介護保険の利用料増、高所得者は2割負担へ 厚労省方針
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 2012年度の介護保険制度改正に向けて、厚生労働省は19日、本格的な利用者の負担増に踏み切る方針を打ち出した。利用料に対する高所得者の自己負担を2割に引き上げ、サービスを使う際の利用計画(ケアプラン)づくりを有料化する。保険料の上昇を抑える狙いだが、それでも12年度には65歳以上の全国平均が5千円近くまで上がる。

 厚労省はこの日、制度改正を議論してきた社会保障審議会介護保険部会に、見直しの素案を示した。65歳以上の保険料は現在、全国平均で月4160円。同省は、現状のサービスを維持すれば12年度に5200円程度まで上昇するという試算を公表したうえで、5千円台への突入を回避するため、利用者に負担増を求める考えを明確にした。

 素案では、サービスのあり方や利用者負担を見直さないまま保険料が5千円を超えるのは望ましくないとの見解を提示。高齢者にも「所得に応じた負担を求めることが適当」として高所得者の自己負担を倍増することと、サービスの内容や日程などを記し、月1回の作成が必要なケアプランの有料化方針を示した。

 これまでの制度改正では、介護施設の部屋代や食費など一部の人を対象に負担を増やしてきた。今回の見直しでは、サービスの一律1割負担という制度の根幹が崩れる。さらに、ケアプランはサービスを受ける際に必ず必要となり、今回は在宅のすべての人を対象とした。これにより、負担増の流れは本格的に強まってくる可能性がある。

 厚労省は、負担を増やす高所得者の対象として、65歳以上の約15%を占める年収320万円以上(年金のみ)を想定。ケアプランの作成料は、他のサービスと同様に費用の1割程度(400円程度~1300円程度)にする案と、定額にする案がある。定額の場合、要介護者で1千円、より軽い要支援者では500円を念頭に置く。

 見直し案では、介護の必要度が高い人を優先させる方針も示した。比較的軽度な要支援者の自己負担を2割にする案も出したが、反発が強く導入は困難な見通しだ。ただ、将来的には掃除や調理などの生活援助サービスの縮小も含めて、軽度者の切り離しが進む可能性がある。

 一方、今回の見直し案では、公費負担を増やすことや、介護保険料を支払う対象年齢を現在の40歳から引き下げることなど、根本的な財源の確保策は先送りされた。

 厚労省は、民主党の意見も踏まえ、来月上旬にも制度見直し案の骨格を固め、来年の通常国会に関連法案を提出する予定だ。(中村靖三郎)


介護保険料、12年度は月額1千円増 厚労省試算
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 厚生労働省は19日、65歳以上の介護保険料が2012年度には全国平均で月額5200円程度になるとの試算を明らかにした。高齢化で利用者が増えることに加え、いまは税金で賄っている介護職員の処遇改善費用を保険料負担に切り替えることで押し上げられる。現在の平均4160円が1千円以上増える計算だ。

 ただ、同省は月額5千円を超える保険料負担は高すぎるとして、利用者の負担を増やすことで保険料上昇を抑える検討をしている。国や自治体で積み立てている介護保険用の基金を取り崩し、検討項目をすべて実施すれば、約350円下がって4850円程度になるという。12年度の制度改正に向けた論議を進めるため、同省が試算。19日午前、民主党の介護保険制度改革ワーキングチームで示した。

 保険料を抑えるには、高所得者や介護の必要な程度(要介護度)が低い軽度者の負担を増やす案が浮上。利用者はサービスの1割分を一律負担するが、年金だけで年収320万円以上の高所得者や軽度者の負担を2割に引き上げる。これにより、保険料は月20円ずつ下がる計算になる。

 また、いまは全額保険で賄われるサービスを受ける際に必要なケアプランの作成には、1千円程度の自己負担を徴収。特別養護老人ホームの相部屋を利用すると、月額5千円の部屋代を新たに求める。ケアプラン作成費分で20円、部屋代分で10円といった引き下げ効果があるとした。

 一方、40歳から64歳までの現役世代のサラリーマンの保険料は、このままだと現在より550円増えて平均で月4890円程度となる見通し。加入する医療保険の加入者数で決まっている負担割合を所得に応じた割合に切り替えると、平均的な大企業のサラリーマン(年収667万円)は、さらに285~428円増えるという試算も出た。

 厚労省は、この試算結果を踏まえ、どこまで利用者に負担増を求めるか検討。来月上旬にも制度見直し案の骨格を固め、来年の通常国会に関連法案を提出する。(中村靖三郎)

     ◇

 〈介護保険料〉 介護保険にかかる費用から利用者の自己負担分(1割)を除いた部分について、65歳以上が2割分、40歳から64歳までが3割分を保険料で負担する。残る5割は公費。65歳以上の保険料は原則として市区町村が決める。制度が始まった2000年度から3年ごとに見直され、次の改定は12年度。最初の3年間は全国平均で2911円だったが、09年度からは4160円になった。64歳までは、加入する医療保険によって異なる。保険料は毎年変わり、サラリーマンの場合、10年度は平均で月額4342円が徴収されている。00年度は2075円だった。



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