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障害者の移動介護費「大田区の減額は違法」東京地裁判決

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 障害者の外出に付き添う介助者をつけるための「移動介護費」の支給額を、東京都大田区が減らしたことの是非が問われた訴訟で、東京地裁は28日、減額処分を取り消す判決を言い渡した。岩井伸晃裁判長(川神裕裁判長代読)は、区の措置について「裁量権の範囲を超えており、違法だ」と述べた。

 訴えていたのは、脳性まひで身体障害1級の認定を受けている鈴木敬治さん(58)。鈴木さんは2003年度までは月147時間までの外出が移動介護費(通院医療を含む)の支給対象として認められていた。ところが、区は04年度から障害者一律に月32時間を上限と決めた。鈴木さんはまず、この措置の取り消しを求めて05年に提訴。06年の地裁判決は請求を退けたが、区の措置を違法と認めた。これを受けて区は07年に鈴木さんへの支給対象時間を月113時間に引き上げたが、鈴木さんは当初認められていた147時間が必要だとして08年、改めて地裁に提訴した。

 この日の判決は「障害者が外出する時間は千差万別だ」と述べ、移動介護費の対象時間について「それぞれの障害者ごとに調査し、合理的裁量の範囲で個別に判断するのが相当だ」との判断を示した。

 そのうえで、鈴木さんが毎月少なくとも147時間外出していると指摘。これを認めなかった区の判断は「考慮すべき事項を考慮せず、社会通念に照らして妥当性を欠く」と非難した。

 判決後に会見した鈴木さんは「障害者に対して正しい判断をしてくれました。これから区と話し合いで(対象時間を)解決します」と語った。(浦野直樹)


移動介護加算:支給減額は「裁量権を逸脱」東京地裁

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判決後に弁護士と共に記者会見し、喜びを語る鈴木敬治さん(左)=東京・霞が関の司法記者クラブで2010年7月28日、和田武士撮影

 障害者自立支援法に基づいて支給される「移動介護加算」を巡り、脳性まひなどで車いす生活をしている東京都大田区の鈴木敬治さん(58)が「実際の外出時間より少ない時間分しか認められなかった」として、区の支給決定処分取り消しなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁は28日、処分を取り消した。岩井伸晃裁判長(川神裕裁判長代読)は「区は考慮すべき事項を考慮せず、処分は妥当性を欠く」と述べ、違法性を認定した。

 移動介護加算は、障害者が外出時に介護者を依頼するための費用。旧身体障害者福祉法でも同趣旨の支給があったが、06年4月の障害者自立支援法施行で根拠法が変わった。支給量は自治体の判断に委ねられている。

 鈴木さんはマラソンなどの社会参加活動のため、旧法に基づき月124時間分の支給を認められていた。区が04年度以降、原則月32時間以内(後に42時間分)とする上限を設けたため提訴した。

 東京地裁は06年11月、根拠法が変わったため訴えを却下したが「個別事情を十分考慮せずに支給を激減させており違法」と指摘。その後、区側は上限を廃止したが90時間分しか認めず、鈴木さん側が改めて提訴した。

 岩井裁判長は外出記録などを基に「少なくとも114時間は社会参加のための外出。通院分などをあわせて毎月147時間の外出を認めることも可能だ」と指摘。90時間分しか認めなかった06年9月▽113時間までとした06年10月~08年2月と09年3月~今年2月の決定を「裁量権を逸脱しており違法」と認定した。区への賠償請求などは退けた。

 判決後に会見した鈴木さんは「判決は正しい判断。区と話し合って解決したい」と語った。代理人の藤岡毅弁護士は「上限を設定している自治体は多数あるとみられる。ケースワーカーらが障害者の生活実態を把握し、適切な支給をするようにしてほしい」と期待を寄せた。大田区障害福祉課は「対応は判決内容を十分検討のうえで決める」とのコメントを出した。【和田武士】

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毎日新聞 2010728日 2047分(最終更新 728日 2118分)


知的障害者「基礎年金」:継続就労で相次ぐ減額や支給停止

201024 150分 更新:24 150

 知的障害者が受給する障害基礎年金で、継続して就労できていることなどを背景に、不支給や支給停止、減額とされる例が相次いでいることが分かった。旧社会保険事務局が「障害が軽くなった」と判断したためだが、関係者からは「知的障害者の就労は、本人や周囲の大変な努力で成り立つことが多く、障害が軽くなったわけではない。就労継続を理由に年金を認めないなら自立を遠ざける」と批判の声が出ている。

 兵庫県宝塚市の小原冷子さん(58)の長男(32)は、重い知的障害を抱えながらもアルバイトを続け、現在は牛乳店で働く。20歳から障害基礎年金1級を受給してきたが、07年11月、2級に減額された。通知書に「障害の程度が変わったため」とあり、社保事務所からは「仕事が3年続いているから」と言われた。職場の同僚の支えが必要な状態に変わりはないが、不服申し立ては退けられた。

 このため小原さんや仲間の親が調べると、兵庫県内だけで06~08年、障害が軽度になったとして障害基礎年金を6人が停止、7人が減額されていた。就職したり、就労後数年たった人が多かった。

 働く知的障害者が暮らす滋賀県甲賀市の通勤寮(07年閉鎖)では03~05年度、従来なら支給を認められていた程度の寮生5人の支給が認められなかった。だが、支給を求めて寮生以外の1人とともに大津地裁に提訴した後の07~08年、6人中5人が再申請すると、一転して認められた。訴訟で国側は「(1度目と2度目の申請の間に)日常生活能力が低下した」と主張したが、先月19日の判決は全員の当初の不支給決定を取り消した。国側は控訴しなかった。

 社保庁は昨年7月、社保事務局に「就労で一律に障害年金が支給されなくならないよう総合的判断が求められる」と通知した。しかし、小原さんは昨年末にも、自宅から作業所などに通う知的障害者2人の家族から、支給停止や減額をされたとの相談を受けた。通知した当時の担当者と厚労省年金局は「個々の認定の是非に言及したわけでない」と説明する。

 知的障害者や家族で作る「全日本手をつなぐ育成会」の大久保常明常務理事は「あいまいで検証できない認定の仕組みを見直すべきだ」と話す。【野倉恵】

 【ことば】障害基礎年金

 最重度の1級から3級に分かれ、等級は日本年金機構(旧社会保険庁)の認定医が判定する。1、2級しか受け取れず、3級と判定されると支給停止になる。支給額は1級が月額約8万3000円、2級が約6万6000円。身体障害については、1級は「両眼の矯正視力の合計が0.04以下」などと具体的基準が示されているが、知的障害を含む精神障害については「身体機能の障害と同程度以上と認められる程度のもの」とされ、「認定側の主観で大きく結論が変わる」との批判もある。

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裁判員裁判:障害ある候補者に手話通訳手配せず 高知

2010120 2334分 更新:121 031

 高知地裁は19日に始まった同地裁で初めての裁判員裁判の裁判員選任手続きで、聴覚障害者を裁判員候補者として呼び出しながら、手話通訳者を手配していなかったことが分かった。この障害者は事前に「手話通訳が必要」と地裁に通知していたが、地裁が見落としたという。この障害者は最終的に裁判員から漏れ、地裁は手話通訳者の手配漏れについて障害者に謝罪した。

 同地裁によると、呼び出し状を送付したのは昨年11月末。障害者は同封されていた事前質問票の「手話通訳が要る」との欄にマルを付けて返送した。地裁は質問票を数人でチェックしたが、見落とし、選任手続きは筆談で対応した。障害者は「裁判所が嫌いになった」という内容のメモを職員に示したという。

 高知地裁総務課は「迷惑をかけて申し訳ない。今後はこういうことがないようチェック体制を強化したい」と話している。【黄在龍】

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裁判員候補者:聴覚障害者に手話通訳者手配せず 高知地裁

2010120 1346

 高知地裁は19日に始まった同地裁で初めての裁判員裁判の裁判員選任手続きで、聴覚障害者を裁判員候補者として呼び出しながら、手話通訳者を手配していなかったことが分かった。この障害者は事前に「手話通訳が必要」と地裁に通知していたが、地裁が見落としたという。この障害者は最終的に裁判員から漏れ、地裁は手話通訳者の手配漏れについて障害者に謝罪した。

 同地裁によると、呼び出し状を送付したのは昨年11月末。障害者は同封されていた事前質問票の「手話通訳が要る」との欄にマルを付けて返送した。地裁は質問票の回答を数人でチェックしたが、見落とし、選任手続きの面談は筆談で対応したという。

 最高裁によると、聴覚障害者が裁判員候補者となった場合の対応について法的な取り決めはないが、各地裁には「配慮すべきだ」と指導。同地裁は、候補者から要望があった場合は高知県聴覚障害者協会から手話通訳者などを派遣してもらうよう事前に取り決めていたという。

 高知地裁総務課は「十分に対応できず、ご本人にも県聴覚障害者協会にも迷惑をかけて申し訳ない。今後はこういうことがないようチェック体制を強化したい」と話している。【黄在龍】

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障害者支援:低所得者向け負担軽減策、実現危うく

20091217 150

 障害者自立支援法で福祉サービス利用に原則1割の自己負担を求めていることに関し、長妻昭厚生労働相が同法廃止までの措置として打ち出した低所得者向け負担軽減策の実現が危ぶまれている。来年度予算の折衝で財務省が難色を示しているためだ。障害者からは「政治が変わっても、障害者の生活は変わらないのか」と不安の声が上がっている。

 長妻厚労相は就任直後、同法廃止と4年以内の新制度導入を表明。同法は、障害が重くサービスが必要な人ほど負担がかさむ「応益負担」を求めるが、福祉サービス対象者約51万人の75%は市町村民税非課税世帯だ。11月公表の実態調査では、同法施行後に非課税世帯の9割で負担が月平均8452円増えていた。長妻厚労相は当面の措置として来年度、非課税世帯の利用料を無料化する方針で、約300億円の財源が必要と見積もるが、見通しが立っていない。

 重度の身体障害で車椅子を利用する広島県廿日市市の秋保喜美子さん(60)は作業所に通い、織物などで月3000~4000円の工賃を得る。非課税世帯だが、同法施行で、ほぼゼロだった施設やホームヘルプの利用料が月2万4600円必要に。前政権時代に軽減措置が2回実施されたが、昼食代などを含めると月3000円を負担する。「1000円、2000円が私たちには大きい。工賃が消え、蓄えに回せず、不安です」と訴える。

 重い知的障害と身体障害を抱え、入所施設で暮らす埼玉県川口市の新井育代さん(30)も、負担は食費なども含めると施設分だけで同法施行前の1.5倍の月約5万円。月1万7000円のおむつ代などもあり、母たかねさん(63)は「月約8万円の障害基礎年金では足りない。施設も経営が圧迫されている」と話す。

 秋保さんも新井さんも、支援法を違憲と訴える集団訴訟の原告に名を連ねる。「健常者と同じように暮らすための支援は、『益』ではなく当然」との思いからだ。原告弁護団長の竹下義樹弁護士は「財政難はわかるが、それでも財源を組み替えられるか、政権交代の意味が問われる」と指摘する。【野倉恵】

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難病:「保育園に」署名提出へ 東京・立川

20091216 1045分 更新:1216 142

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両親とスキンシップする明奈ちゃん=東京都立川市で

 全身の筋力が低下する難病「脊髄性筋萎縮症(せきずいせいきんいしゅくしょう)」のため、東京都立川市から公立保育園への入園を断られている女児(3)の両親が16日午後、受け入れを求める約4万2000人分の署名を市に提出する。女児はたんの吸引などの措置が必要で、市は「職員体制が整っていない」との理由で受け入れを拒否してきた。両親は「難病の子供が普通に保育を受けられる環境を整えてほしい」と訴えている。【袴田貴行】

 署名を提出するのは立川市の会社員、横平貫志さん(33)と妻裕子さん(32)。長女の明奈(みいな)ちゃんは生後8カ月で脊髄性筋萎縮症と診断され、人工呼吸器を付け車椅子で生活している。手足がわずかに動くのみで、普段は顔の表情や目の動きなどで意思疎通をしている。

 両親は07年と08年、市に保育園への入園を求めたが「吸引をする看護師が必要」などとして受け入れを拒否された。

 従来、たんの吸引は医療行為とされ、実施できるのは医師や看護師のみとされてきた。ところが実際には、家庭や介護施設で日常的に吸引行為が行われてきた実態を受け、厚生労働省は03年以降、範囲を拡大。介護職員、養護学校教員などについて、医師の指導を受けることなどを条件に認めた。しかし、保育園や幼稚園については「基準や範囲があいまい」と指摘されている。

 NPO法人「人工呼吸器をつけた子の親の会」(大阪府箕面市)によると、保育園などに通おうとしても「新たな看護師の確保が難しい」との理由で断られるケースがほとんどだという。

 同会の折田みどり・事務局長は「本来、きちんと研修さえ受ければ、看護師だけではなく保育士や教員でも、たんの吸引はできる。保育や教育現場の戸惑いを解消するためにも抜本的な法整備が必要。難病の子供が地域の子供たちと一緒に過ごせる環境を整えてほしい」と呼び掛けている。

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阿久根市長:ブログの差別記述「謝罪考えず」 議会で議論

20091214 2316分 更新:1215 08

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竹原信一市長

 鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(50)がブログで「高度医療が障害者を生き残らせている」などと差別的な記述をした問題が、14日の市議会で議論となった。謝罪や撤回を求める議員の質問に、市長は「メディアが大騒ぎして誤解を生んでいる」と新聞やテレビなどの報道を逆に批判。「訂正や謝罪は考えていない」と繰り返した。傍聴席で見守った障害者団体関係者からは、改めて怒りや失望の声が漏れた。

 一般質問で3市議がブログ問題をただした。「全国から抗議が殺到しており、阿久根のイメージを悪くした責任は重い」との追及に、市長は「私の書いた一部分だけが取り上げられ、(世間が)情緒的な反応をしている」と反論。別の議員は「市長の記述で実際に傷ついた人がいる」と繰り返し謝罪を要求したが「私に賛成するメールも来ている。謝罪すれば私の活動が制限され、この問題がタブー視される」と拒否。さらに別の議員が「記述の内容は明らかに障害者への差別ではないか」と指摘すると、「それはあなたの曲解だ」と反発した。

 傍聴席は満席で、1階や2階のモニター画面でも多くの市民や障害者団体の関係者らが答弁を聞いた。

 長女(53)が重度障害者という鹿児島県出水地区手をつなぐ育成会連合会の伊尻幸雄会長(75)は「娘は障害者だが、私の宝。一生懸命に育てているのに一言の謝罪もないとは、もうものを言う気力もない」。5歳の長男に脳性まひの障害がある西平良将さん(36)は「市長には障害者の実態を見てほしい。でも、この人には響かないでしょう。むなしいだけです」。知的障害者らでつくる「県手をつなぐ育成会」の別府則夫副理事長(73)も「ブログの内容は誰が読んでも差別的。答弁に誠意がまるでなく、あぜんとした」と、憤りを通り越してあきれていた。

 「差別的記述」に対しては全国から抗議が殺到。鹿児島県身体障害者福祉協会など7団体が11日、「撤回と陳謝」を求めて来庁したほか、多くの障害者団体が抗議声明を出している。鹿児島県議会は非難決議、阿久根市議会は謝罪要求決議をする方針で、抗議の動きが広がっている。【馬場茂、福岡静哉、村尾哲】

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障害者:負担軽減求め国会内で原告ら集会

 障害者が福祉サービスの原則1割を負担する障害者自立支援法は違憲とする集団訴訟の原告らが10日、当面の負担軽減と法の即時廃止を求め、国会内で緊急集会を開いた。集会では、心臓疾患と知的障害を抱える長男(20)がいる福岡市の敷島篤子さん(52)が「親が死んだ後の子供の生活はどうなるのか」と話し、負担軽減を訴えた。長男の負担は作業所利用料など毎月2万円弱という。

 長妻昭厚生労働相は、同法廃止と4年内の新制度導入を表明している。

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福祉避難所:指定自治体4分の1 阪神大震災の教訓どこに
阿久根市長:ブログに障害者への差別的記述、議会が追及へ

毎日新聞 20091210日 2307


福祉避難所:指定自治体4分の1 阪神大震災の教訓どこに

2009126 230分 更新:126 230

 災害時に介助が必要な高齢者や障害者らを受け入れる「福祉避難所」を指定している自治体が、全国で4分の1しかないことが厚生労働省の調査で分かった。指定した自治体がゼロの県もあった。福祉避難所は阪神大震災で必要性が指摘されたが、震災から15年を前に災害弱者が置き去りにされている状況が浮き彫りになった。【遠藤孝康】

 福祉避難所は、地震や水害時に高齢者や障害者らを受け入れる公民館や学校などの公共施設や民間の福祉施設。阪神大震災でこうした弱者が孤立した経験などから、厚生省(当時)が97年6月、全国の自治体に通知を出して指定を推奨した。

 しかし、全国で相次いだ豪雨災害や新潟県中越地震では、高齢者らに被害が集中。特に中越地震ではストレスによる死や車内避難でのエコノミークラス症候群が相次ぎ、対応の不備が問題になった。

 国は04年以降、災害弱者対策を強化。厚労省は昨年6月、バリアフリー化▽介護用品などの備蓄▽健常者より広い生活空間の確保など、福祉避難所の設置・運営ガイドラインをまとめた。「小学校区に1カ所程度の指定が望ましい」とした。

 調査は今年4月、全国の1777市町村(3月末当時)と東京23区を対象に実施。指定している市区町村は429(23.8%)だった。指定済み市区町村の割合は静岡県の89.2%が最多。ゼロの群馬、岡山両県をはじめ、北海道の3.3%など、13道県が1割以下だった。

 田中淳・東京大教授(災害情報論)は「福祉避難所だけでなく、実効的な支援ができる施設と人の整備が必要」と指摘している。


阿久根市長:ブログに障害者への差別的記述、議会が追及へ

2009123 1443分 更新:123 1453

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阿久根市の竹原信一市長

 鹿児島県阿久根市の竹原信一市長(50)が自身のブログに「高度医療が障害者を生き残らせている」と、障害者に差別的な記述をして波紋を広げている。

 記述は11月8日付。医師不足解消策として勤務医の給与増額が議論されていることを批判する中で「高度医療のおかげで以前は自然に淘汰(とうた)された機能障害を持ったのを生き残らせている。結果 擁護施設に行く子供が増えてしまった」(原文のまま、以下同)と記述。さらに「『生まれる事は喜びで、死は忌むべき事』というのは間違いだ」と持論も展開した。

 さらに翌9日付では、自身の発言を批判する読者のメールを紹介したうえで「慎重さを欠く見解に見えたかもしれない」と記述。だが「高度医療が多くの人々に高い精神性を追求せざるを得ない機会を与えているのは現実だ」と持論を続けた。

 竹原市長のブログは「やめさせたい市議」実名アンケートなど、たびたび物議を醸した。木下孝行市議は「障害者やその家族に配慮のかけらもない」と批判。14日の12月議会一般質問で追及する構えだ。

 知的障害者の家族でつくる「全日本手をつなぐ育成会」(本部・東京都、会員約30万人)の大久保常明・常務理事は「命の価値に軽々しく差をつけ、優生思想にもつながる危険な考えだ。障害の有無に関係なく生きる権利を否定しており、公人の意見とはとても思えない」と強く反発している。【馬場茂、福岡静哉】

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障害者虐待防止法:成立に暗雲 政局余波で頓挫4年

 野党側が法案を提出し民主党も趣旨に賛意を示している障害者虐待防止法は、国会の会期末が迫ったことでその成立が危ぶまれている。与野党は4年以上前から立法化に取り組みながら、政局の余波で頓挫を繰り返してきた。虐待を受けた障害者が国などに損害賠償を求めている裁判では、国側が「(裁判で争われている)関係法に障害者を特別に扱う規定はない」などと主張。障害者や支援者は防止法の早期成立を切実に願っている。【野倉恵】

 「自分と同じような目に遭っている人を助けたい」。今月22日、東京都内で開かれた防止法を考える会合で、奈良県大和高田市の湯浅勇さん(54)は参加者約100人を前に訴えた。

 知的障害を抱える湯浅さんは、81年から26年間勤めた家具製造販売会社(倒産)で社長らに長年、給与や障害年金を横領された。「頭ごなしに怒鳴られたり、大勢の仲間が殴られたりした」。年金の被害総額は1000万円以上。元社長は刑事事件で実刑が確定したが、湯浅さんは元同僚と共に被害回復を求めて国や自治体、元社長らを相手取り損害賠償請求訴訟を闘っている。

 その裁判に提出した書面で国側は「(湯浅さんら労働者からの被害の)申告で労働基準監督機関に監督権行使の義務が生じるものでない」「労働基準関係法で事業所への監督について知的障害者を特別に扱う規定はない」などと主張した。

 湯浅さんたちを中心になって支えてきた県内の知的障害者施設の渡辺哲久施設長は「虐待が表面化しても法律がないことを理由に行政が動かない現実がある。『虐待は絶対許されない』と明記し、役所に対応を義務づける法律が不可欠だ」と強調する。

 障害者虐待防止法は04年の福岡の知的障害者施設での暴行事件を機に、05年に自民、民主、公明各党が法案作りを模索。しかし、郵政解散で流れ、08年も提出が検討されたが福田康夫首相の退陣で立ち消えに。09年7月には与野党がそれぞれ法案を提出し、ほぼ同じ内容だったことから協議が始まり成立の可能性もあったが、衆院解散で廃案となった。今国会では25日、自公などが法案を衆院に改めて提出。民主党も「党派を超えて成立を目指す」との意向だが、会期末という時間切れが近づいている。

 ◇ことば 障害者虐待防止法


 7月に当時の与野党がそれぞれ提出した障害者虐待防止法案は、いずれも虐待を身体的、性的、心理的、経済的な虐待および放置(ネグレクト)と定義。家庭内、施設内、職場の虐待を対象とする。発見者に通報を義務付け、通報を受けた行政機関は立ち入り調査や被害者の一時保護、行政処分などを行い救済や再発防止に当たるとしている。

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毎日新聞 20091128日 2104分(最終更新 1128日 2238分)


自立支援法:施行後に障害者負担増87%平均8518円

 障害者の福祉サービス利用に原則1割の自己負担を課す障害者自立支援法施行前月の06年3月と今年7月を比べたところ、87.2%の障害者が負担増となったことが厚生労働省の調査でわかった。鳩山内閣は4年以内に新制度を設計し同法を廃止する方針。

 札幌、川崎など5政令市の身体障害者、知的障害者ら1827人を対象にサンプル調査した結果、1593人が負担額が増えた。負担の平均増加額は8518円。市町村民税非課税の低所得者では、1551人中1452人(93.6%)で負担が増え、平均増加額は8452円。特に、家庭で介助が必要なホームヘルプサービスでは負担額が126円から2240円に、自宅から通う通所施設利用では75円から6355円にはね上がった。

 また、通所や入所で授産施設で働く625人のうち、負担額が工賃を上回る人の割合は法施行前が31.4%だったのに、施行後は52.5%。施行前は工賃が負担額を1651円上回っていたが、施行後は7097円下回った。

 鳩山政権で初めて行われた実態調査で、長妻昭厚生労働相は「予想以上に負担が増えた方が多かった。来年度予算で負担軽減をしなければならない」と話した。【野倉恵】

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毎日新聞 20091126日 2240


障害者雇用率:企業で過去最高 「法定」達成は半数以下

 厚生労働省は20日、障害者の雇用状況(今年6月現在)を発表した。民間企業の雇用率は前年より0.04ポイント上昇し、過去最高の1.63%となった。一方、法定雇用率(1.8%)を達成した企業は、45.5%(前年比0.6ポイント増)にとどまった。

 障害者雇用促進法は、従業員56人以上の民間企業や国などに障害者の雇用を義務づけている。厚労省は「解雇率も大変厳しいが、大企業で採用自体は定着している」と分析している。

 一方、国では、内閣と衆参の法制局が1.37~1.47%で法定雇用率(2.1%)を下回った。それ以外では社会保険庁が1.79%と同様に下回った。

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毎日新聞 20091121日 1032


阪神大震災:けがなどでの障害者 少なくとも183人に

 阪神大震災(95年1月)によるけがなどが原因で身体に障害が残った「震災障害者」が、最大の被災地・神戸市で少なくとも183人に上ることが19日、同市の集計でわかった。震災後の生活環境悪化などが原因の人や、精神などに障害を負った人は含まれておらず、実際はさらに多数とみられる。震災障害者について国や自治体は、自然災害で障害を負った人が対象の「災害障害見舞金」が被災地全体で63人に支給されたとしか把握していない。震災障害者を取り巻く問題解明への一歩となる可能性がある。

 183人は男性75人、女性108人。既に亡くなった人も含んでいる。調査は震災が発生した95年1月17日以降、同市で身体障害者手帳を取得した人を対象に実施。申請時に提出された診断書の「疾病・外傷発生年月日」が「95年1月17日」となっている人と、障害を負った原因として「震災」と明記している人が計約260人おり、このうち診断書の記載内容から、震災による外傷で障害を負ったことが明確だと判断できた人を集計した。

 障害の内容は、肢体不自由169人▽臓器などの内部障害7人▽視覚障害4人▽聴覚障害3人。居住場所別では、東灘区52人▽兵庫区26人▽灘区24人▽長田区21人▽須磨区18人--などだった。障害の等級別では4級が最多で48人、次いで2級41人。最も重度の1級は22人。被災時の年齢は生後2カ月~93歳で、60歳代が50人と最も多く、70歳代が41人と続いた。

 総務省消防庁によると、震災による重傷者は1万683人。しかし、追跡調査は行われておらず、その後の実態は不明なままになっている。【川口裕之】

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毎日新聞 20091119日 1500


雇用調査:知的障害者の正社員割合、37.3%に減少

 厚生労働省は13日、08年度障害者雇用実態調査の結果を公表した。非正規雇用が多い短時間労働者の割合が増える一方、正社員の割合は知的障害者で37.3%と、03年度の前回調査に比べ13.3ポイントも減少した。

 調査は5年に1度実施されている。今回は従業員5人以上の7500事業所を対象にし、5511事業所と従業員1万4382人から回答を得た。

 週20時間以上30時間未満で働く短時間労働者の割合は▽身体障害者14.7%(前回比6.7ポイント増)▽知的障害者13.2%(同10.4ポイント増)▽精神障害者24.8%(同20.4ポイント増)で、どの障害でも増加した。

 一方、正社員の割合は、身体障害者で64.4%と4.1ポイント減り、精神障害者でも46.7%と1.5ポイント減少した。精神障害者を中心に働く機会は増えているが、雇用の状態は不安定化している様子が浮かんだ。

 個人調査で、将来への不安について「ある」と答えた割合は53.3~83.3%(複数回答)に達した。【東海林智】

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毎日新聞 20091113日 2217分(最終更新 1114日 953分)


障害者:「団結して仕事守ったぞ」 組合結成し解雇撤回

 「団結して仕事を守ったぞ」。人材派遣会社「フォーラムエンジニアリング」(東京都港区)の製めん事業部で働いていた知的障害を持つ労働者24人が、会社から解雇を通告されたのに対し、労働組合を結成して交渉、解雇を撤回させた。不況が深刻化する中、障害者の解雇が広がっており、組合員は12日に厚生労働省で会見し「雇用は守れる。障害者解雇の広がりに歯止めをかけたい」と訴えた。

 24人は半年ごとに契約を更新する有期雇用で働いてきたが、会社側から10月、事業部閉鎖と期間満了での雇い止めを通告された。会社は不況の影響と、同社の障害者雇用率(従業員数に対する障害者の比率)が2.7%で、24人を解雇しても法定雇用率(1.8%)を上回ることなどを理由に挙げたという。

 このため、「障害者を一人の人として扱わず、数字や物のように扱っている」と、製めん事業部で働く正社員のスタッフ3人とともに「全国一般東京東部労組フォーラムエンジニアリング支部」(間殿友加利委員長)を結成した。労組結成を通告し、団体交渉を申し入れた際、会社側に障害者雇用の社会的意義や重要性を訴えた。これを受け、会社側は今月11日、事業部閉鎖の撤回と雇用維持を労組に伝えてきた。

 間殿委員長は「グループホームや寮に住んでいる仲間は職を失えば生活できなくなる。多くの人々の支援で雇用を守れて本当にうれしい」と話した。組合員は次々に「これからも仕事を頑張る」などと喜びを語った。

 厚生労働省によると、08年度に解雇された障害者は07年度の約1・8倍の2774人に達し、今年度も例年を上回るペースで解雇が増えている。結成をサポートした東京東部労組の須田光照書記長は「障害者への解雇の嵐が吹く中、みんなで立ち上がれば雇用は守れることを示せたのは大きい」と話している。

 同社の広報担当は「組合の指摘に、企業の社会的責任も改めて認識し、業務体制の再考をするため提案を撤回した」と話している。【東海林智】

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知的障害者施設:1部屋に男女10人 福岡県が調査へ
点字器:途上国に寄贈日本盲人会連合など
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毎日新聞 20091112日 1937


知的障害者施設:1部屋に男女10人 福岡県が調査へ

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障害者ら10人が1室で生活する知的障害者更生施設「瑞穂学園」=反田昌平撮影

 福岡県赤村の知的障害者更生施設で、入所者の男女約10人が同じ部屋で寝起きし、厚生労働省令の居室定員4人以下を大幅に超える状態になっていることが関係者の話で分かった。約10人の名札は他の居室に分散して張られ、県の調査にも利用実態を隠していた。施設側も不適切な居室利用を認めている。同施設では他にも入所者を巡る問題が浮上しており、県は5日午後にも、障害者自立支援法に基づき立ち入り調査する。【障害者施設取材班】

 施設は約60人の軽度から重度の知的障害者らが入所する「瑞穂学園」(石田八重子園長)。施設関係者らによると、同園1階にある「リハビリ室」には、重度の障害や高齢でトイレなどの介助が必要な50~80代の計約10人(うち男性1人)が生活。室内には簡易トイレが三つ置かれ、固定した仕切りもなく、見える状態で男女が共同利用しているという。省令では、男女の居室を別にすることも定められている。

 同園によると、リハビリ室で暮らす約10人は、別の4人以下の居室入り口に名札だけ張られており、外見上は定員基準を満たしているように見せていた。県が今年6月末に施設の利用状況について調査した際も、園側はリハビリ室の居室使用を説明していなかった。

 毎日新聞の取材に対し、同園の副園長らは省令違反を認め「簡易トイレは夜間だけ室内に置いている。重度の障害者を個室などに分けた場合、(職員が)見渡せるか問題がある。職員がものすごく必要になり、対応できない」と釈明した。

 一方、福岡県障害者福祉課は「10人まとめて同じ部屋で支援するのは、他に例がない。簡易トイレの異臭などで利用者が苦痛を感じていたら、虐待にあたる可能性もあり、施設の対応が適切だったか早期に調査し確認したい」としている。

 ▽東洋大の高山直樹教授(社会福祉学)の話 園の現状は、人権より運営上の都合が優先され、利用者が人間らしい生活を送るという、本来の目的をないがしろにしていると言わざるを得ない。

英訳

毎日新聞 2009115日 1152分(最終更新 115日 1750分)


Psychiatric care home admits to forcing 10 residents to sleep in single room

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The Mizuho Gakuen psychiatric care home in Akamura, Fukuoka Prefecture. (Mainichi)

A Fukuoka Prefecture psychiatric care home has admitted to forcing 10 residents to sleep in a single room, well above the government limit of four.

Mizuho Gakuen, located in the village of Akamura, managed to conceal patients' living conditions by sticking their name tags on other doors, even fooling a prefectural investigation. The institution is now being investigated again, under the Independence Support Law for People with Disabilities.

The 10 or so patients, aged between 50 and 90, were forced to sleep in a "rehabilitation room." The room also contained three simple toilets, with no partitions for privacy. The patients were among the more severe cases at the home.

"The toilets were only put there at night," the home's director said. "If we put the more severe cases in separate rooms it became too difficult to look after them all. We don't have enough staff, and there was no other choice."

The Fukuoka Prefectural Government's Handicapped Welfare Division said: "For 10 people to sleep in the same room is unprecedented ... this could constitute mistreatment, and we wish to determine whether the home's approach was suitable."

Click here for the original Japanese story

(Mainichi Japan) November 5, 2009








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