グループホームは入所施設じゃないだろう
大阪府「グループホームの入所施設化」の問題
〜グループホームを入所施設にするな!〜
この間、大阪府において「30人規模のグループホームが建てられる問題」が生じてきました。
金剛コロニー(社福 大阪府障害者福祉事業団)が現在、府内各地に、日中活動と同じ場所に「10人×3棟」の形で30人分のグループホームを建てていこうとしています。
このような形、規模での「グループホーム」はもはやグループホームとは呼べません。誰が見ても「入所施設」です。
大阪府に対して、再三、見直すよう働きかけてきましたが、府は一向に見直そうとせず、本日、抗議行動を行うことになりました。みんなで強く、問題を訴えていきましょう!!
1.経過
●5年前のことから…
金剛コロニーは、今から40年前(1970年)にできた定員850人の日本最大の入所施設です。駅から6キロも離れた山の中にあり、20年以上の入所者が60%、30年以上の入所者が40%もおられるという長期入所の状態が続いており、様々な施設の問題を象徴する施設でした。
ちょうど5年前の2004年、大阪府の財政難を背景にして、金剛コロニーなど府立3施設の再編計画が持ち上がりました。金剛コロニーの再編計画は当初、府内各地に新たに入所施設を建てていって、そこに現入所者を移行させるという計画でした。
その再編計画に対して、障大連は「これ以上、入所施設を作るな!」と猛反発し、長期入所者が多かったこともあり、「入所者はこのままでは一生施設の状態になってしまう」「施設収容を続けるな」と問題を訴えました。
そうした反対運動の結果、金剛コロニーなど府立施設を「段階的・計画的に解消していく」ことになり、「入所施設ではなく、日中活動やグループホームを分散させて作っていく」という方針に大きく転換させました。(資料㈰
5年前の大阪府との確認文書)
今回の「30人規模のグループホーム」建設は、5年前の確認を反故にして、「入所施設建設に逆戻り」するに等しい問題です。
●この間の状況は…
この間、府立施設再編に伴って「地域移行支援センター」というグループホームづくりを進める補助制度ができ、地域団体も一緒に金剛コロニー等からの地域移行に取り組んできました。しかし、地域移行支援センター1カ所で20人、30人分のグループホーム(以下GH)をつくるという、当事者とは初対面の地域団体にとっては非常に厳しい形にされてしまいましたが、がんばって一つずつ物件を見つけて作ってきました。
金剛コロニー(以下、事業団と略)は、2006〜2011年度の5年間で400名の移行を進める計画で、今そのまっ最中です。府内5区域に「日中活動と相談支援の地域生活支援拠点施設」を一つずつ建て、その周辺にGHを分散させて作っていくという計画で、今まで3つの地域生活拠点施設が作られています。コロニーからの地域団体での受け入れの場合、自分たちで物件を捜して賃借しなければならなかったのに比べ、事業団ではすべて「府から土地(府有地)を無償譲渡、建設費も補助される」という手厚い形です。(資料㈪㈫
金剛コロニー再編方針)
【地域生活支援拠点施設】
既設 ・2006年7月 泉州区域 「ワークさつき」(泉大津市) 保健所跡地を利用
・2008年4月 南河内区域 「きらら」(河内長野市)
保健所跡地を利用
・2009年4月 中河内区域 「おんど」(松原市)
府営住宅跡地を利用
今後 ・2011年4月? 豊能三島区域 茨木市
府営玉櫛住宅を利用
・北河内区域でも…
高槻市・枚方市では設置を断った。
最初の2つまではそのようになっていましたが、今年4月にできた松原市の「おんど」は「日中活動と同じ敷地に10人×3つのGH」という入所施設と同じような形で作られてしまいました(後で知りました)。(資料㈬
松原市「おんど」)
そして、現在、茨木市や北河内区域でも、同じ形で作る計画が水面下で進められていることがわかり、大阪府に対して抗議・要求をしはじめました。(大阪府への11月要求書)
2.グループホームについて
●グループホームの歴史と考え方
グループホームは、地域基盤が非常に乏しかった20年前から、集団管理された入所施設での生活の反省に基づき、「施設とは違ったふつうの暮らし」をめざして作られてきました。
GHは制度上も入所施設の一形態ではなく、あくまでも「住まい」「居宅」という位置づけです。「4〜5人の小規模な形態」「家庭的な雰囲気」を大事にし、共同生活ではあっても「個別の介護や支援」を最も重視し、ヘルパー利用や上乗せ補助などの制度が整えられてきました。
一軒家やマンション、アパート等の物件確保や改造に苦労し、あるいは多額の借金を背負って新築してきました。また、地域からの言われなき差別、反対運動を受けながらも、住まいとして地域にとけ込むことで地域の人との関係を作り、地域を変えてきました。
まさに「地域でのあたりまえの暮らし」を作っていくために「苦闘の歴史」を持っています。そうした奮闘を経て、多くの障害者が長い在宅・施設での生活から抜け出して、やっとの思いで自立生活を実現してきたのです。
●国のグループホームの基準では…
国のGHの指定基準(設備基準)では、主に以下の3つの要件が定められています。
・㈰ 新設は10人以下 (既存の通勤寮などをGHにする場合のみ20人まで可能)
・㈪ 日中・夜間を通してサービス提供する施設や病院の敷地外
・㈫ 住宅地やそれと同程度に地域住民との交流を確保される地域
GHは「地域でのあたり前の暮らし」を目指してつくられてきた経過から、今まで4〜5人のホームがほとんどでしたし、国の基準は「4〜7人まで」でした。
それがこの間、厚労省が自立支援法で「ミニ施設化」「効率化」をめざしたために㈰のように「10人規模」まで認められるようになってしまいました(国基準を4〜5人に戻すことが必要)。
㈪は日中活動と分けるなど、日中・夜間を通して丸1日同じ場所で過ごさないことを尊重した規定です。
「10人×○棟」という形が認められるかどうか、という規定はありませんが、国基準を素直に読めば当然「できるだけ小さな規模」であり、これらの形が認められて良いはずはありません。
「10人×○棟」の形態が認められるならば、当然40人、50人…100人規模といくらでも可能となり、線引きができなくなってしまいます。併設を認めず10人までとすべきです。
(20人、30人規模の問題は、最近の高齢者の無認可施設や貧困ビジネスなどにも共通する傾向であり、営利目的で当事者を多く集め管理することによる問題も発生しています。)
また、GHはこの間、消防法や建築基準法で「GHは施設」と誤解されたため、過度な消防設備整備や建築基準が求められたりして、あちこちの現場で混乱を生じてきました。
今回のような建設計画について厚労省は、「法制度のこの趣旨を充分ふまえて、自治体が適切に判断すべき事柄」としています。大阪府などの自治体レベルでどのように判断するかが問われる問題であり、「重大な分かれ道」に今、立っていると言えます。
3.私達が考える問題点
●グループホームは入所施設じゃない! グループホームを入所施設にするな!
㈰GHの人数や形は問題ではないのか?
府は「GHの形や規模は問題ではない。10人×3つであっても、入所施設ではなくGHとして運営していけばよいではないか」と言います。
しかし、「10人×3棟、日中活動と併設」などの形は、誰が見てもGHではありません。入所施設です。これまでのGHの形とは全く違い、むしろ「入所施設の分舎化」(ユニットに分けた入所施設)の形と同じものです。
そもそも日中活動と同じ所に30人分のGHを併設しようとするのは支援体制の都合であり、「効率化」が目的です。その効率化の最たる形が、少ない人手で多くの障害者に対応する入所施設です。目的が入所施設と同じ「効率化」である以上、入所施設化するのは明らかです。
もちろん、10人でも4〜5人規模であっても運営によっては施設化してしまう問題があり、施設化しないように運営することはどのGHにとっても必要なことです。しかし、少なくとも同一敷地内での30人規模のものは誰が見ても施設であり、「グループホーム」として運営していくことは不可能であると考えます。
職員の意識も、ハコに頼る、介護の合理化に走る、などの状況に陥るのは、これまでの入所施設の運営実態を見れば明らかです。
「効率化」を前提とした30人規模の「入所施設」がGHの名で作られることは、到底耐えられません。「GHのこれまでの理念や歴史を大きく損なう問題」であると捉えています。
㈪府の土地が広く確保できたから、こんな形にした?
府は最近では「支援の効率化が目的ではない。都市部では用地・物件確保や改造が難しい。今回は府の土地が広く確保できたから一緒に建てるんだ」「GHや日中活動を塀や柵で区切ればいい」としています。(資料㈭
府グループホーム設置の要件)*最近急に出してきた資料
私達は「一切何も建てるな」と言ってるわけではありません。日中活動や相談支援を建てるのはいいですが、そこにGHまで一緒に建てたら入所施設と同じになる、と反対しています。入所施設にしないために、泉大津などの最初の形のようにGHを分けて設置すべきです。府有地の有効活用と言うなら、GH以外の社会資源(高齢者の日中活動なども可)や、空いた土地の売却を考えれば済む話ではないですか。
こんな形では地域の人からも「入所施設」としか見られません。入居者も「あそこの施設の人」と呼ばれ、一人の住民として名前を覚えてもらったり、関係を作ったりできません。
また、GHの入居者は長い施設生活や親元での在宅生活からやっと抜け出して、自立生活を始めています。みんな、「自分には自立生活は無理とずっと思ってきたが、自分も自立生活できた」と言っています。GHが入所施設化していくと、「GHは施設と同じ」「自立生活ではない」と言われるようになります。それはGHで暮らす当事者の思いを痛くふみにじる行為であり、絶対に認めるわけにはいきません。
●入所施設から場所を移すのが地域移行じゃない!
「施設からの地域移行」は、国・府の障害福祉計画の最重点課題とされています。これまでの施設生活で入所者は、「外出もできない、お金を使ったことがない、電車に乗ったことがない、時間をどう使えばいいかわからない、信号機を見たことがない…」などの実態が数多くあります。
これら「人としてのあたりまえの生活」が経験ができてこなかったことは、決して本人の障害のせいではありません。一般社会から分け隔てられ、集団管理された入所施設の中で、人としての生活が保障されなかった、という問題であり、社会全体に責任がある問題です。
施設からの地域移行取り組みでは、そうしたことの反省に立ち、一人ひとりの経験の取り戻しや、「自分の生活づくり」を大事にしてきました。大阪府でも昨年独自に「地域移行推進指針」が策定され、個別の移行支援計画の作成など、個別ニーズを尊重して地域移行を進めることが重視されてきたはずです。
しかし、今回のような30人まとめての移行は、「施設から場所を移すだけの移行」であり、「生活づくりを重視した地域(生活)移行」とは呼べないものです。新たな場所での暮らしも、職員の意識も「これまでの施設生活の延長」となってしまうでしょう。
●府は事業団にはなぜ手厚い?
金剛コロニーからの地域移行については、5区域のすべてにおいて府営住宅や府保健所の土地が事業団に対して無償譲渡されています。府(施設福祉課)は「府立施設なので、その施設再編に際して府が土地を用意するのはあたりまえ。府議会での了解ももらっている」と言います。
しかし、府有地の活用については府議会でも簡単に確認されただけのようで、地域の団体・事業者に対しても府や市から事前に説明もありませんでした。また、府有地活用や事業委託で最近あたりまえになってきている競争入札やプロポーザル等の形での事業者選択も全くありません。どう見ても「府主導の密室性」「事業団に対するお手盛り」の感がぬぐえません。
また、府立施設からの地域移行について、地域団体でもこの間、地域移行支援センター事業の枠でグループホーム設置、地域移行に取り組んできましたが、地域団体にはこのような用地提供は一切ありませんでした。敷金・改造費の面でも苦労してきたところです。
●人権侵害を断ち切るためにも…
入所施設は「住宅地にない」「昼も夜も同じ場所で完結した生活」「少ない人手で大人数に対応」などの構造的な問題から「密室化」しやすく、今なお全国各地で暴行、金銭横領などの人権侵害が問題となっています。
大阪府内では2001〜02年に、入所施設で暴行、性的虐待などの人権侵害が相次ぎ問題となり、当時、金剛コロニーでも、「両足を持って逆さ吊りにした」という人権侵害が明るみに出ました。
金剛コロニーは巨大すぎたために、今も人権侵害の情報が後を絶ちません。しかし、最近では表面化することもない状況です。金剛コロニーでは「事業団で職員による不祥事が連続して発生しており、これ以上不祥事を起こさないための再発防止策に早急に取り組む必要がある」として、今年、「改革推進外部委員会」が開かれています。(資料㈮
事業団の改革推進外部委員会)
これら人権侵害は入所者にとっては耐えられないことであり、決して許されるものではありません。しかし、それを職員個人の問題として捉えていては一向に解決しません。施設の構造、体質の問題として捉え、外部の協力も得て組織全体で変えていかなければならない問題と言えます。
そのためにも、「30人のGH」という施設生活の延長ではなく、個別支援を重視した地域生活支援を学びなおし、一人ひとりの生活づくりをベースにした意識改革が必要であり、少なくとも「少人数単位でのGHづくり、日中活動と分けた形」を選ばなければならないと考えます。
4.まとめ
以上のように、今回の動きは、グループホームの理念と歴史をつぶし、地域移行をも変質させてしまうという、今後の障害者福祉の方向を左右する重大な問題であり、5年前の府立施設再編問題の確認をも反故にする問題であることから、私達は決して容認することはできません。
(大阪府への12月要求書)
グループホームが入所施設にされないよう、地域移行しても施設生活の延長のようにならないよう、共に闘いましょう!
▼ ▼ ▼
住宅地内に確保した同一敷地内に、複数のGH等を設置する場合の要件
・住宅地と同程度に地域住民との交流の機会が確保されること。
・公道から各共同生活住居に直接出入りできること。
・共同生活住居が他の事業所(日中系サービス事業所など)の建物と塀、柵などで区分されていること。
・共同生活住居が他の事業所(日中系サービス事業所など)の建物と共用する構造になっていないこと。
・日中系サービス事業所の隣接地にGH・CHを建設する場合は、GH・CHの利用者の意向を尊重し、隣接する日中系サービス事業所の利用を強制してはならない。当該事業所以外の事業所が利用できるよう配慮すること。
障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運
営に関する基準第140条による立地基準
・指定共同生活介護に係る共同生活住居は、住宅地又は住宅地と同程度に利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保される地域にあり、かつ、入所により日中及び夜間を通してサービスを提供する施設(以下「入所施設」という。)又は病院の敷地外にあるようにしなければならない。
<解釈通知>
指定共同生活介護事業所の立地については、利用者に対して、家庭的な雰囲気の下、指定共同生活介護を提供するとともに、地域との交流を図ることによる社会との連帯を確保する観点から、入所施設や病院の敷地内に立地されるのではなく、住宅地又は住宅地と同程度に家族や地域住民との交流の機会が確保される地域の中に立地されることについて、都道府県知事が確認することを求めたものである。
この場合、開設及び指定申請時においては、都市計画法(昭和43年法律第100号)その他の法令の規定や、土地の所有関係により一律に判断するのではなく、指定共同生活介護事業所を開設しようとする場所の現地調査等により、周辺の環境を踏まえ、地域の実情に応じて適切に判断されるべきものである。
▼ ▼ ▼
2009年12月16日
大阪府知事 橋下 徹
様
大阪府福祉部長 高木
哲夫 様
同障害福祉室長 道井 忠男
様
同地域福祉推進室長 井上 博司
様
「グループホームの入所施設化問題」に対する要求書
障害者の自立と完全参加をめざす大阪連絡会議
貴職におかれましては、障害者の自立と社会参加の推進に向け日々ご尽力のことと存じます。
この間の「日中活動と同一敷地内での10人×3棟のグループホーム設置」の問題につきまして、問題整理の上、改めて要望させて頂きます。
これまで府立施設の再編については、今から5年前に問題となり、「府内各地に入所施設を建設する」との当初の方針を見直し、「日中活動とグループホームを分散させて整備していく」ことを確認し、その後「地域生活支援拠点施設」として日中活動や相談支援を建設し、その周辺にグループホームを確保していくという方針となっていました。しかし、大阪府障害者福祉事業団(以下、事業団)で今年設置された松原市の「おんど」では府営住宅の用地を活用して、60人分の日中活動と10人×3棟のグループホームが併設されることになり、今、茨木市でも同じ形態で設置がめざされています。
一方、グループホームはこれまで、効率化のため集団管理された施設生活の反省に基づき、「施設とは違ったふつうの暮らし」をめざして作られてきたため、「4〜5人の小規模な形態」「個別支援」を重視してきました。「ミニ施設化」がめざされたこの間の障害者自立支援法の下でも、「新設は10人以下」と明確に規定されており、複数棟の併設が認められているものではありません。
府はこの間、「大阪など都市部では用地・物件の確保が困難であり、今後の移行者は重度障害者が多く物件改造も困難。松原や茨木では府有地を広く確保できたためこのような形態とした。あくまでグループホームとして運営するので入所施設ではない」と主張しています。
「グループホームとして運営する」といくら言っても、松原や茨木での計画のように何十名の日中活動と30人規模のグループホームを同じ所に設置すれば、それだけの規模、形態のものは、当事者のみならず誰が見ても明らかに「住まいではなく入所施設」です。
事業団のグループホームはこれまで夜間支援体制がほとんどなく、ヘルパー利用等の個別支援もない形で運営されてきました。いくら「用地が確保できたこと」を理由にしようと、「運営・支援の効率化」を目的として、一カ所に集めようとしていることは明らかです。
重度障害者が多いならなおさら個別支援を重視しなければならないはずですが、一カ所に多く集めて効率化を図ろうとすることこそ「入所施設の発想」であり、その運営も「施設生活の延長」にならざるを得ません。物件確保や改造も近隣の賃貸物件や改造助成を活用すればよいだけで、地域団体では当然、そのようにしてグループホームを設置してきました。
また、この間急に府が示した「グループホーム設置の府独自要件」では、国の3つの指定基準の内、㈰「住宅地で地域住民との交流確保」、㈪「日中・夜間を通してサービス提供する施設・病院の敷地外」の2要件のみを示し、こちらが最も訴えてきた㈫「新設は10人まで」とする基準の解釈をあえて避け、「本設置計画は国基準を満たしている」としています。しかも、「10人×複数棟」の形態を認めた上で、「グループホームや日中活動を塀や柵で区分すればよい」としています。これでは当然、40人、50人の設置でも歯止めがなくなり、今後も運営の効率化を目的にした「グループホーム」が次々と建設されてしまうことにもなってしまいます。
この解釈要件は従来、グループホームが「入所施設ではなく住まい」「自立生活の場」として守ってきた理念を、府自らが放棄する重大な問題であるため、到底認めることはできません。
私達は今回の設置計画に対して、「一切何も建てるな」と求めてきたのではありません。事業団が当初、泉大津などで作ってきた形と同様に、グループホームは分散させて別に確保し、グループホームの理念、形態をしっかりと守るべきであると主張してきました。しかし、今回の議論過程において、府が事業団一法人に対して、府有地を次々と無償提供するだけでなく、なぜ30人分のグループホーム設置を前提として、事業団擁護のために基準解釈や理念まで歪曲しようとしているのか全く理解できません。これはあまりに不自然であり、「不適切な関係」と見られても仕方のない問題です。
そこまでして事業団の「自立民営化」を急ぎたい理由は果たして何でしょうか。府の財政難が理由であるならば、今回の設置計画でも、府有地には日中活動を建設しグループホームは近隣の府営住宅や賃貸物件を借り、余った用地は売却して他事業を展開した方がよほど有効と言えます。
また、金剛コロニー等で不祥事(権利侵害)が多発していることも関係しているのであれば、なおさら事業団が「自立」できるようにするために、グループホームを分散させて個別支援を原則とした地域生活支援を学び直し、従来の施設体質から脱却していかなければ、今後も当事者は救われません。
また、今回の設置計画は、「入所施設ではなく、地域で共に生きる」とするノーマライゼーションの理念にも反するものであり、府が2003年に策定した「第3次大阪府障害者計画」における「人が人間(ひと)としてふつうに暮らせる自立支援社会づくり」「入所施設建設中心の障害者福祉からグループホーム等を活用した地域での小規模な居住の場の拡充に、施策の展開方向を転換します」との記述からも明らかに逸脱し、逆行したものと言えます。
以上のことから以下、再度要求いたします。
1.大阪府として、障害者グループホームの「入所施設ではなく住まい」「自立生活の場」としての理念と未来を守るために、今後においてグループホームは多くとも「1用地1カ所10人まで」とし、併設しない、日中活動や高齢者ホーム等との合築を行わないこととすること。
その旨を指定基準解釈として明文化し、事業者指導課、法人指導課も含めて府全体のルールとすること。
2.茨木での設置計画については、すみやかに「日中活動と同一敷地内での10人×3棟のグループホームの設置計画」を見直し、グループホーム部分は近隣に分散させて設置すること。
3.今後も4〜5人規模でのグループホームの設置が促進できるよう、整備費・改造費や運営費に対する補助を行うとともに、グループホームの拡充方策について検討を重ねること。
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「入(にゅう)所(しょ)施(し)設(せつ)のようなグ(ぐ)ル(る)ー(ー)プ(ぷ)ホ(ほ)ー(ー)ム(む)に反(はん)対(たい)します」
金(こん)剛(ごう)コ(こ)ロ(ろ)ニ(に)ー(ー)からの地(ち)域(いき)移(い)行(こう)という名(な)の元(もと)に、松(まつ)原(ばら)市(し)で10人(にん)のグ(ぐ)ル(る)ー(ー)プ(ぷ)ホ(ほ)ー(ー)ム(む)が、日(にっ)中(ちゅう)活(かつ)動(どう)と同(おな)じ場(ば)所(しょ)に3棟(とう)、建(けん)設(せつ)されました。さらに、茨(いばら)木(き)市(し)などでも、同(おな)じようなものが建(た)てられていく計(けい)画(かく)が浮(ふ)上(じょう)しているということです。これは明(あき)らかに形(かたち)を 変(か)えた「入(にゅう)所(しょ)施(し)設(せつ)」であり、グ(ぐ)ル(る)ー(ー)プ(ぷ)ホ(ほ)ー(ー)ム(む)とは、決(けっ)して呼(よ)べないものだと思(おも)います。
こうした形(かたち)を認(みと)めれば、障(しょう)害(がい)者(しゃ)のグ(ぐ)ル(る)ー(ー)プ(ぷ)ホ(ほ)ー(ー)ム(む)も、多(おお)くの高(こう)齢(れい)者(しゃ)グ(ぐ)ル(る)ー(ー)プ(ぷ)ホ(ほ)ー(ー)ム(む)のように、施(し)設(せつ)化(か)してしまうのではないでしょうか?
金(こん)剛(ごう)コ(こ)ロ(ろ)ニ(に)ー(ー)などの府(ふ)立(りつ)施(し)設(せつ)の再(さい)編(へん)問(もん)題(だい)では、大(おお)阪(さか)府(ふ)内(ない)のいろいろなところに、入(にゅう)所(しょ)施(し)設(せつ)を建(けん)設(せつ)するという大(おお)阪(さか)府(ふ)の方(ほう)針(しん)に対(たい)して、私(わたし)たちは強(つよ)く反(はん)対(たい)してきました。その結(けっ)果(か)、グ(ぐ)ル(る)ー(ー)プ(ぷ)ホ(ほ)ー(ー)ム(む)や日(にっ)中(ちゅう)活(かつ)動(どう)の整(せい)備(び)という方(ほう)向(こう)に転(てん)換(かん)したのではなかったのでしょうか? しかし、今(こん)回(かい)の動(うご)きは、グ(ぐ)ル(る)ー(ー)プ(ぷ)ホ(ほ)ー(ー)ム(む)の形(かたち)を取(と)っているとはいえ、入(にゅう)所(しょ)施(し)設(せつ)そのものです。コ(こ)ロ(ろ)ニ(に)ー(ー)で長(なが)く過(す)ごしてきた人(ひと)たちが、ただ、場(ば)所(しょ)を変(か)えて、新(あたら)しい施(し)設(せつ)生(せい)活(かつ)をはじめる、ということでしかありません。
地(ち)域(いき)移(い)行(こう)支(し)援(えん)セ(せ)ン(ん)タ(た)ー(ー)では、コ(こ)ロ(ろ)ニ(に)ー(ー)などの施(し)設(せつ)入(にゅう)所(しょ)者(しゃ)の暮(く)らしの場(ば)を、各(かく)地(ち)にグ(ぐ)ル(る)ー(ー)プ(ぷ)ホ(ほ)ー(ー)ム(む)を作(つく)り、分(ぶん)散(さん)させ確(かく)保(ほ)してきました。そのような地(じ)道(みち)な努(ど)力(りょく)を通(とお)して得(え)られるものこそ、本(ほん)当(とう)の意(い)味(み)での地(ち)域(いき)生(せい)活(かつ)です。今(こん)回(かい)のような大(だい)規(き)模(ぼ)なグ(ぐ)ル(る)ー(ー)プ(ぷ)ホ(ほ)ー(ー)ム(む)という形(けい)態(たい)では、入(にゅう)所(しょ)施(し)設(せつ)と変(か)わらない、管(かん)理(り)された暮(く)らしが続(つづ)くだけでは ないでしょうか?これでは、5年(ねん)前(まえ)に確(かく)認(にん)した「入(にゅう)所(しょ)施(し)設(せつ)ではなくグ(ぐ)ル(る)ー(ー)プ(ぷ)ホ(ほ)ー(ー)ム(む)を」とする方(ほう)針(しん)に明(あき)らかに反(はん)しています。
私(わたし)たち、ピ(ぴ)ー(ー)プ(ぷ)ル(る)フ(ふ)ァ(ぁ)ー(ー)ス(す)ト(と)大(おお)阪(さか)は、今(こん)回(かい)のようなやり方(かた)に、強(つよ)く反(はん)対(たい)します。
▼ ▼ ▼
「改革推進外部委員会」の提言
改革推進外部委員会
委員氏名
委員長
上原
健嗣
氏(弁護士:理事)
委
員
稲垣
博之
氏(金剛コロニー寮連絡協議会代表:評議員)
委
員
大村
多美江
氏(明光ワークス保護者会会長:評議員)
委
員
三田
優子
氏(大阪府立大学人間社会学部准教授:第三者委員)
委
員
佐野
正幸
氏(弁護士:第三者委員)
委
員
杉村
和子
氏(高齢者総合ケアセンターまつばらセンター長
:第三者委員)
委員会開催日
第1回
平成21
年1月28
日(経過説明・意見交換)
第2回
平成21
年2月14
日(中間まとめ)
第3回
平成21
年3月17
日(提
言)
設置目的
(1)事業団内で職員による不祥事が連続して発生しており、これ以上不祥
事を起こさないための再発防止策に早急に取り組む必要がある。
(2)事業団による職員研修や注意喚起に鋭意努めてきたが、結果として不
祥事が発生している。
(3)事業団外部から、事業団の不祥事防止策の具体的な提言を受け不祥事
の根絶を図る。
事業団取り組み状況を検証・評価し、必要に応じて再度提言を行う。
今後に向けて
(1)
職員の意識改革
①事業団理念のもと福祉専門職員としての使命感について、正規職員・非正規職員問わず、全職員が再認識するよう周知
徹底する。
②利用者・家族・第三者の視点から職員に対する評価を受けるシステムを確立し、対等関係を認識させるとともに、評価
が処分に反映されることを周知徹底する。
③社会人としてのマナーや常識を身につけるため、サービス業などの異業種の民間法人での実地研修や、また、異業種の
外部講師による研修を実施する。
④グループワークによる率直な話し合いを行い、これを公表することにより全職員が日頃の気づきなど問題意識の共有化
を図る。
⑤職員に文書などでわかりやすく事業団の現状(不祥事発生、自立民営化、第二期指定管理等)を説明し、危機意識を全
職員が共有する。
(2)開かれた施設の阻害要因の打開
①第三者委員からの意見をその場限りにしないため、公聴会以外に具体的な活用システムを構築する。
②不祥事案及び処分状況を積極的に情報開示し、開かれた施設とする。
③施設間の連携・情報伝達を強化し、相互の先進的な取り組みを共有することにより施設運営の充実を図る。
④職員から提案や意見を述べることができるシステムを構築し、閉鎖性体質からの脱却を図る。
⑤施設長が中心となり各職場で具体的な年度目標などを設定するとともに、その成果を発表するなどして、チームワーク
を育成する。
(3)不祥事・不適切行為の未然防止
①職場(職員間・施設間)のコミュニケーションを促し、風通しの良い職場環境のもと事案発生の根絶を図る。
②利用者の嗜好・人間関係などを再調査し、反省点を見出した上で、利用者の目線に立って支援方法の再点検を行う。
③職員の時間的余裕を創出し、利用者支援の充実や職員の意思疎通を促進する。
④過去の不祥事を第三者の視点から再検証し、多角的な視点から防止策を構築する。
⑤不祥事案に関して職員による徹底的な話し合いを行い、発生事案の原因究明を行う。
⑥第三者サービス評価や自己評価を継続して実施し、常に組織の緊張体制を保つ。
(4)万一の対応
①事案概要及び処分内容の公表基準を確立し、情報開示を図る。
②不祥事現認職員の報告義務の明確化により、事案処理の迅速化に努める。
③処分を含めた事案処理に利用者の意見を取り入れ、一方的な見地からの処理を行わない。
提
言
○利用者の尊厳を守り、利用者・家族・府民から選ばれ信頼される
事業団を目指す。
○職員の意識改革及び組織の危機管理体制の構築を喫緊に図る。
○第二期指定管理者を受託するにふさわしい事業団に体質を
改善する。
事業団が目指すべき方向性
http://www.sfj-osaka.net/contents.html/images/gaibuiinkaiteigen.pdf