for Children in Haiti
ハイチの子どもたちへ
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Haiti Earthquake
ハイチ大地震(速報)

ハイチ大地震:オバマ夫人が視察 単独で初外遊
2010年4月14日 19時19分
 ミシェル・オバマ米大統領夫人は13日、大地震に見舞われたハイチの首都ポルトープランスを訪れ、震災のつめ跡が生々しく残る市内を視察した。ロ イター通信が伝えた。大統領夫人の立場で初の単独外遊としてメキシコに向かう途中の電撃訪問。ハイチ復興への米国の関与をアピールする狙いがありそうだ。
 夫人は、バイデン米副大統領のジル夫人とともにハイチを訪れ、同国のプレバル大統領の案内で地震で被害を受けた大統領府などを視察。被災児童施設 では、子供たちから歌での歓迎を受け、一緒に絵を描くなどした。
 ヘリコプターで空中から見た光景について、ミシェル夫人は「(地震の)破壊力はすさまじい」と話した。
 夫人は13日夜、メキシコ市入りし、15日までの日程で市内の博物館や大学を視察、学生らと意見交換する。(共同)
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ハイチ大地震:
52億ドル超の拠出を表明 復興支援国会合

2010年4月1日 11時3分

 【ニューヨーク山科武司】今年1月の大地震で22万人以上の死者を出したハイチへの復興支援国会合が31日、米ニューヨークの国連本部で開かれ、約60の国や国際機関が、今後2年間に総額52億6000万ドル(約4921億円)超の支援を表明した。

 米国のクリントン国務長官は11億ドル余(約1028億円)の拠出を表明。既に医療・衛生分野などで7000万ドル(約63億円)の支援を表明済みの日本は、岡田克也外相がさらに3000万ドル(約28億円)を追加すると表明した。のべ300万人への感染症対策などを重点的に行う。

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ハイチ大地震:
3000万ドル追加支援を表明 岡田外相

 岡田克也外相は31日午前(日本時間同日夜)、国連本部で開催のハイチ復興支援国会合に出席した。1月の大地震で壊滅的な打撃を受けたハイチ復興に向け、3000万ドルの追加支援を表明。既に発表済みの7000万ドルと合わせ、日本の支援総額は1億ドル(約93億円)となる。政府は、仮設住宅建設や感染症対策などに力を入れる方針だ。

 会合はハイチ政府の要請で国連と米国が共催。潘基文国連事務総長、クリントン米国務長官、ハイチのプレバル大統領のあいさつに続き、各国が支援額を表明。(共同)

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ハイチ地震:PKO20人が帰国
ハイチ大地震:防衛省技官が耐震判断 3人、陸自に同行

毎日新聞 2010年3月31日 19時51分(最終更新 4月1日 0時18分)


岡田外相:
ハイチ訪問へ 3月20日に被災地を視察

2010年3月18日 19時23分

 外務省は18日、岡田克也外相が19~22日の日程で、1月に大地震に見舞われたハイチを訪問すると発表した。20日(現地時間)にポルトープランス入りし、被災地を視察する。国連平和維持活動(PKO)として派遣されている陸上自衛隊の宿営地を訪れるほか、プレバル大統領と会談する。31日に米ニューヨークで開かれるハイチ支援国会合に向け、復興支援策を検討する。

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ハイチ大地震:
死者は22万人…復興支援会合で報告

2010年3月18日 10時34分 更新:3月18日 10時57分

 カリブ海のドミニカ共和国で開かれているハイチ大地震の復興支援会合で、主催国の同共和国政府は17日、地震の死者が22万2570人だったと報告した。算定の詳しい根拠は不明。スペイン通信が伝えた。

 死者数をめぐってはハイチのプレバル大統領やラセグ文化・情報相が異なる数字を発表、情報が錯綜(さくそう)している。

 会合ではまた、31万928人が負傷し、ほかに869人が行方不明になっていることも報告された。被害総額は77億5000万ドル(約7000億円)余り。130万人がテントなどへの避難を強いらた。同会合は、今月31日にニューヨークの国連本部で開かれる国際会議の準備会合。国連当局者は16日、復興などに今後3年間で115億ドルが必要になるとの見通しを示した。(共同)

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ハイチ地震:
PKO防衛省技官、国連事務所を耐震診断

2010年3月12日 10時21分 更新:3月12日 11時10分

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ハイチで建物の耐震診断を行う防衛省の技官=同省提供

 ハイチ復興支援の国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊に同行している防衛省の技官3人が12日、首都ポルトープランスの空港隣接地にある国連の事務所(鉄筋コンクリート平屋建て約570平方メートル)の耐震診断を行った。国連の要請によるもので、同省技官が海外の被災地で耐震診断を行うのは初めて。

 防衛省によると、耐震診断したのは1級建築士の技官3人。建物の損傷具合を目視で確認しながら測定器で強度や傾斜などを測定した。今後約1カ月かけて復興支援を主導する国連の宿泊所などを対象に耐震診断を行う。

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米大統領:
雨期前の被災者支援が重要 ハイチ大地震で

2010年3月11日 11時28分

 【ワシントン草野和彦】オバマ米大統領は10日、ハイチのプレバル大統領とホワイトハウスで会談し、大地震で20万人以上が死亡したハイチの復興について協議した。オバマ大統領は会談後の記者会見で、「二次的な災害を防ぐのが課題だ」と述べ、ホームレス状態のまま、本格的な雨期を迎えようとしている被災者への支援が重要との認識を示した。

 人口1000万人足らずのハイチでの被災規模について、オバマ大統領は人口約3億人の米国にあてはめ「800万人近くが死亡し、1億人が突然、家や食べ物、飲料水を失ったようなもの」と例えた。「こんな大惨事に単独で立ち向かえる国などない」と述べ、国際社会の継続的な支援の必要性を強調した。

 プレバル大統領も「降雨被害で先週15人が死亡したばかりだ」と危機感をあらわにした。さらに「ハイチから教訓を引き出さなければならない」と述べ、国際的な災害救援態勢の構築を訴えた。今月31日にはハイチ復興の支援国会議が国連本部で開催される。

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ハイチ地震:
PKO20人が帰国

 ハイチ地震の復興支援のため国連平和維持活動(PKO)に参加した陸上自衛隊の国際救援隊第1陣のうち約20人が10日、成田国際空港に帰国した。残り約180人も第2陣約350人に順次業務を引き継ぎ、今月下旬に帰国する。

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毎日新聞 2010年3月10日 20時17分


ハイチ大地震:
防衛省技官が耐震判断 3人、陸自に同行

2010年3月3日 2時41分 更新:3月3日 2時41分

 ハイチ復興支援の国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊に、建物の耐震診断ができる技官1人が同行している。国連の要請によるもので、さらに4日出発の2次隊第2陣とともに2人を派遣する。防衛省の技官が海外の被災地で耐震診断を行うのは初めてで、地震国・日本の特徴を生かした支援活動が展開される。

 同省によると、3人はいずれも1級建築士で、うち2人は地震後の建物の危険度を判定する応急危険度判定士の資格を持つ。診断対象は、復興支援を主導する国連のハイチ安定化派遣団の事務所や宿泊所など。ハイチの建物は日本に比べ鉄筋量が少ないといい、損傷具合を目視で確認しながら、測定器で強度や傾斜などを測り、国連にデータを報告する。3月中旬ごろから約1カ月かけて行う。

 一方、家が倒壊しテント暮らしを強いられた被災者には仮設住宅が建設される予定で、陸自がその整地作業にあたる見込み。【樋岡徹也】

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ハイチ大地震:
「手術用機器の整備が急務」日赤チーム報告

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被災した赤ちゃんを診察する岡村医師(左)=ハイチの首都ポルトープランスで2010年2月4日(米赤十字社提供)

 大地震で被災したハイチの首都ポルトープランスに派遣されていた日本赤十字社の医療チーム第1班の5人が23日、東京都港区の日赤本社で帰国報告会を開いた。仮設診療所での約3週間の治療活動を振り返り、「重症患者を搬送できる病院が不足しており、手術用機器の整備が急がれる」などと訴えた。

 5人は整形外科医の岡村直樹さん(34)=熊本赤十字病院、看護師の関塚美穂さん(40)=名古屋第二赤十字病院=らで、地震発生から4日後の1月17日に日本を出発。1万5000人程度が暮らす避難民キャンプに隣接するテント型診療所で、1日100人前後の患者を診療し、皮膚移植手術や感染症の予防接種も実施した。

 今月21日に帰国した岡村さんは「傷口の消毒が不十分な状態で縫合を受けた患者もいて、地震発生直後の混乱がうかがえた。症状に応じた丁寧な治療が必要だと感じた」。関塚さんは「キャンプは水道やトイレの不足が深刻で、感染症が発生すると一気に拡大する恐れがある」と今後の課題を指摘した。

 ハイチでは現在、日赤が派遣した医師や看護師ら22人がポルトープランスと激震地レオガンを拠点に活動しているという。【福永方人】

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ハイチ大地震:雨期に備え緊急支援要請 プレバル大統領
ハイチ大地震:陸自医療援助隊の100人帰国し解組式

毎日新聞 2010年2月23日 19時36分(最終更新 2月23日 23時44分)


ハイチ大地震:
雨期に備え緊急支援要請 プレバル大統領

2010年2月22日 11時1分

 【プラヤデルカルメン(メキシコ東部)庭田学】大地震に見舞われたハイチのプレバル大統領は21日、当地で開かれたメキシコとカリブ共同体・共同市場の首脳会議で、「ハイチでは雨期が始まりつつある」と述べ、屋外生活を強いられている被災者への緊急支援を求めた。

 プレバル大統領は会議の冒頭「屋外で寝起きし、悪天候の影響を受ける150万人の救済を急ぐ必要がある。既に何度か雨が降り、人間的な生活が不可能な状態になっている」と訴えた。大統領は確認された遺体が20万人を超えたとし、「犠牲者は30万人に達するかもしれない」との見方を示した。また、国土の再建方針について「首都一極集中ではない適切な国の立て直しが必要だ」と語った。

 また、会議開催国メキシコのカルデロン大統領は「兄弟国ハイチの人々への支援を会議の最優先議題とする」と表明した。

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ハイチ大地震:
陸自医療援助隊の100人帰国し解組式

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疲れた顔に笑みをのぞかせながら、編成解組式に向かう国際緊急医療援助隊員ら=広島県海田町の陸上自衛隊海田市駐屯地で2010年2月18日、矢追健介撮影

 大地震で大きな被害を受けたハイチに派遣された陸上自衛隊の国際緊急医療援助隊約100人が18日帰国し、広島県海田町の海田市駐屯地で編成解組式があった。

 同隊はハイチの首都から西約40キロのレオガンの看護学校敷地内で、先月23日から医療活動を実施。延べ2954人を診療した。当初1週間は骨折などの外傷が多かったが、その後は発熱や下痢、不眠といった症状を訴える人が増えたという。同隊隊長の白川誠1等陸佐は「現地はがれきが残り、道路も元通りではない。復興に向けてまだまだやることがある」と話した。隊員の夫、小原英輝さん(35)を、3人の子どもと出迎えた妻麻里子さん(34)は「不安でしたが、元気そうな顔で安心しました」と笑顔だった。

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記者の目:13日間の命とハイチ大地震=梅村直承

毎日新聞 2010年2月18日 21時23分(最終更新 2月18日 22時33分)


ハイチ大地震:
各国合計600億円の寄付…国際赤十字会長

 国際赤十字・赤新月社連盟(本部・ジュネーブ)の近衛忠※会長は18日、ハイチ大地震の災害支援について、これまでに各国赤十字社の合計で約600億円の寄付が集まったことを明らかにした。今後は中長期的な支援が課題になると述べた。

 近衛氏は「状況は好転しつつあるが、ハリケーンのシーズンが控えている。大きいものが来ればテントでは耐えられない」と強調。また、「義手・義足を含め、緊急医療後のケアをする仕組みができていない」と指摘した。今後は国連などと調整し、赤十字として中長期的な支援にも参加する考えだ。近衛氏は昨年11月に会長に就任。1月中旬にハイチを訪問し、各国の赤十字関係者を激励した。【米村耕一】※火の右に軍

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ハイチ大地震:3月に国連で支援策を協議

毎日新聞 2010年2月18日 21時19分(最終更新 2月19日 1時43分)


記者の目:
13日間の命とハイチ大地震=梅村直承

 私は2万人以上の被災者と国連ハイチ安定化派遣団の部隊員約100人が衝突した現場の真ん中に立っていた。ハイチ大地震から13日がたった1月25日、首都ポルトープランスの大統領宮殿前の避難キャンプで食料の配布を国連が行った。われ先に食料へ進む被災者同士が押し合い大混乱となった。妊婦が卒倒し、高齢者は倒され、けがをする。武装した部隊員が被災者をけりつけ、殴り、鎮圧に乗り出した。装甲車の上から向けるレンズ越しに少年の姿が見えた。父親に肩車になり懸命に食料へ手を伸ばしていた。突如、目の前で部隊が威嚇発砲し、少年の目に恐怖が浮かぶ。おびえた表情のまま少年は再び手を伸ばし、大きな声をあげた。悲しい瞳が脳裏に焼きつく。

 犠牲が出ると判断したのか、国連部隊は鎮圧をあきらめ退去した。残り少なくなった食料に群衆が殺到する。地面にこぼれた麦を手ですくい、服の中に入れる。ののしり合いながら、米の袋をちぎれるほど引っ張る。大地震が最悪の貧困「直下」で起こったのだと、まざまざと見せつけられた思いがした。

 被災地に到着したのは地震から5日後。初めに目にしたのは道端に放置された遺体だった。毎日のように死者の尊厳が無視される場面を見た。洗濯をする女性の横で燃やされる遺体。一面がれきと化した商店街では、中に残る遺体が放つ激しい異臭を気にもせず、略奪をする被災者が後を絶たなかった。

 首都の北25キロにあるティタンエンには埋葬地があった。国道沿いの広大な平野に、重機で無造作に掘られた巨大な穴が点在していた。夜になると、遺体を満載したトラックが訪れ、身元も確認されないまま5万人以上が埋められているのだという。むき出しの遺体も何十体と見た。盛り土にあおむけで空を見上げる遺体。折り重なる数体には、無数のハエがまとわりついていた。近隣住民は見向きもせず、共に運ばれてくるがれきから金に換えるための鉄骨を抜き取っていた。あまりに荒涼とした光景に、写真を撮ることもできず立ち尽くした。

 私は、22万人以上の死者・不明者を出したインド洋大津波(04年)で甚大な被害を受けたスリランカに、発生から3日後に入った時のことを思い出していた。被災者は配られる食料のために長時間並び、手にすれば礼を言っていた。人々が助け合い、遺体をがれきから掘り出す姿を何度も見た。48人が犠牲になった小学校では、浜辺にささやかな墓が作られていた。そこには死者へのいたわりがあった。

 同じ史上最悪の災害で推定23万人が犠牲になったハイチでは、なぜ人は物資を奪い合い、死者をいたわることができないのか。ハイチには不幸な歴史がある。植民地支配を終えても残る大きな貧富の格差。繰り返される暴政やクーデター。度重なるハリケーンの被害。それらが、貧困から抜け出す希望を人々から奪ったように思えてならない。

 被災者のすさんだ姿を撮りながら、自分の無力さを感じていた。この国に何か貢献できるのか。そんな時にフレディちゃんに出会った。地震が起こった日に7カ月目の早産で生まれた小さな赤ん坊だった。困難なテント生活の中、真新しい産着に包まれた姿に、母親のスーズさんの愛情を感じた。この子が生きる姿が、震災から立ち上がるハイチの希望と重なるのではないかと、祈るようにシャッターを切った。しかし、次の日に小さな命のともしびは消えた。わずか13日間の命だった。スーズさんの涙に考えを正された。容易に貢献はできない。ハイチの人々の生きる姿を愚直に写真で伝えるしかできはしないのだと。

 食料へ必死に手を伸ばしていた少年は、無事でいるだろうか。同じように苦しむ多数の子どもたちが「あきらめない社会」に、ハイチは復興し、生まれ変わってほしい。14日間の取材を通じて、私にできることはわずかだと痛感した。しかし、世界がハイチの惨状を知る手助けを微力ながら続けたい。我々が注ぐ目は復興の手助けになるはずだ。かの地に再び立つことができたら、できるだけ多くの人にカメラを向けたいと強く思う。(東京写真部)

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毎日新聞 2010年2月17日 0時01分


ハイチ大地震:
NGO代表の医師、メールで「感染症心配」

2010年2月16日 15時0分 更新:2月16日 15時34分

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日赤の仮設診療所で被災者を診察する小沢さん=ハイチ友の会提供

 ハイチを支援するNGO(非政府組織)「ハイチ友の会」代表で医師の小沢幸子さん(35)=山梨市立牧丘病院勤務=が、大地震で23万人が死亡したと推定されるハイチで医療支援を続けている。現地から友の会事務局に電子メールで手記を寄せた小沢さん。「集団予防接種の意義を理解してもらう難しさも感じています」と記している。

 手記によると、小沢さんが日本赤十字社の医療チームの一員として現地入りしたのは、地震から2週間後の1月26日。まず首都ポルトープランスの仮設診療所で1日65~120人の患者を診察した。当初は骨折などの外傷が多かったが、最近は風邪や下痢などの症状や、糖尿病など慢性疾患への対応も求められるようになった避難キャンプではジフテリアや破傷風など感染症の流行が懸念されたため、今月6日からは集団予防接種を始めた。しかし、副作用を恐れるハイチ人が多く、思うように接種が進まないという。

 現在はポルトープランスの西約15キロで、より震源に近いレオガンで活動。小沢さんはレオガンの印象を「建物の7割が倒壊し、まるで空爆を受けたかのよう」と書いている。

 小沢さんは公用語のクレオール語を話せるため、通訳を介さず問診ができる。緊張した表情だった患者も、公用語で話しかけると笑顔になるという。

 小沢さんは慶応大在学中の95年、ボランティアとしてハイチへ渡航したのをきっかけに友の会を設立。現地の医療の脆弱(ぜいじゃく)さに衝撃を受け、山梨医科大(現山梨大医学部)に入り直して医師になった。以降、たびたび現地入りして雇用創出や就学支援の活動を続けている。「長期的支援について提案したい」という。【曹美河】

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ハイチ:
学校の壁が突然崩落、子供3人死亡

2010年2月16日 10時53分 更新:2月16日 11時58分

 【メキシコ市・庭田学】AP通信によると、ハイチ北部カパイシアンで15日昼(日本時間16日未明)、学校の校舎の壁が突然崩れ落ち、子供3人が死亡した。1月12日の大地震で被災した首都ポルトープランスから約130キロ離れており、地震との関係は不明。現地では校舎崩壊時に、激しい雨が降っていたという。

 ハイチでは08年11月、首都付近で二つの学校が相次いで崩落。3階建ての校舎が崩落した現場では、生徒ら100人近くが犠牲になった。いずれもずさんな建築が原因と指摘されている。

 ハイチは3月から雨期に入る見通しで、大地震による約120万人の屋外避難者への影響や、土砂崩れなどの2次災害も懸念されている。

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ハイチ大地震:
復興支援活動の候補地視察 陸自PKO

 ハイチ大地震の復興支援のため国連平和維持活動(PKO)に携わる陸上自衛隊の国際救援隊が14日、首都ポルトープランスで活動候補地の病院など2カ所を視察した。

 同病院の倒壊した建物には今も約60人ががれきの下に埋もれたままになっているという。

 救援隊第1陣の隊長、山本雅治1等陸佐は「3階建ての建物がここまでぺしゃんこにつぶれており、悲惨な状況だ。一つの候補地として考えられる」としながらも、現在、重機が3台しかなく「作業を開始する上で十分な態勢ではない」と述べ、早期に本格的な作業は開始できないとの見通しを示した。

 同日視察したもう一つの候補地は被災者のキャンプ地近くの川で、ヘドロの除去作業が検討されている。(共同)

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ハイチ大地震:「生存者捜索打ち切り」 13万人首都脱出

毎日新聞 2010年2月15日 19時46分


ハイチ大地震:
国内各地の教会でミサ 多くの死者を追悼

 ハイチ大地震から1カ月がたった12日、同国各地の教会でミサが行われ、国民は21万人を超えるともされる死者を追悼した。首都ポルトープランスではプレバル大統領らが出席して追悼式典が行われた。政府はこの日を服喪の日として休日にした。

 地震で大きく損壊し、今も閉鎖されているポルトープランスの大聖堂の前にある広場で行われたミサでは、亡き人を思う沈痛な表情の市民が神に祈りをささげた。涙をぬぐう女性や、ひざまずいて祈りの言葉を口ずさむ男性の姿も見られた。

 美容師の女性イラメン・テレマックさん(27)は「多くの人が亡くなったので、神に助けを求めた。私が死ななかったのは神のおかげ」と語った。元警官の男性マニュエル・ピエールさん(37)は「私と妻が生きていることを神に感謝した。誰も助けてくれない。神にすがらざるを得ない」と話していた。

 ポルトープランスの大学構内で行われた追悼式典には大統領のほか宗教指導者らが出席。ロイター通信によると、大統領は「痛みは言葉で表現できないほど激しいが、ハイチ再建のために涙をふこう」と国民に呼び掛けた。(共同)

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ハイチ大地震:PKO派遣の自衛隊員 羽田などから出発

毎日新聞 2010年2月13日 20時37分


ハイチ大地震:
発生1カ月 被災者の住宅問題が深刻化

2010年2月12日 21時10分 更新:2月13日 0時41分

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ハイチの首都ポルトープランスに設けられた急ごしらえの避難キャンプで、テントから外をのぞく地震被災者の子供たち=2010年2月11日、AP

 ハイチは12日、推定死者約23万人を出した大地震の発生から丸1カ月を迎えた。首都ポルトープランスを中心に屋外で避難生活をする被災者約123万人は、3月中に到来する雨期を心配し、住宅問題が深刻化している。一方、がれきの撤去はいまだに手つかずの所が多く、国連平和維持活動(PKO)で復興支援のため現地入りした陸上自衛隊員の目にも、相当困難な現場と映っているようだ。

 「今朝、雨が降った。とにかく家が要る。小さくていいから、家が必要なんだ!」。首都西部ビソトン地区の避難キャンプでリーダー役の教師、マミさん(38)は11日、毎日新聞の電話取材に悲鳴に近い声をあげた。

 未明から早朝にかけ、首都圏の一部地域で震災後初めて強い雨が降った。キャンプは丘陵中腹の大学キャンパスにあり、約1万2000人が布やビニールの手製テントを張り、地べたで寝起きする。

 降雨時、避難民は粗末なテントからぬれない所へとさらに避難したという。マミさんは「食糧や医療の支援はあるが、住宅がないので厳しい。被災者は仕事も金もなく、家の再建など今は到底不可能だ」と訴えた。

 ハイチで活動する米国の非政府組織(NGO)「ケア」も11日、「支援は雨期との競争だ」との声明を発表。防水シートの配布と保健衛生対策を急ぐ必要性を強調した。スタッフのバビスター氏は「3月からの問題は雨に尽きる。このままでは被災者がずぶぬれで暮らすことになる。河川近くに避難している人々にとっての対策も必要だ」と指摘した。

 ハイチでは雨期を経て、6~7月からハリケーンシーズンも到来する。森林が乱伐され荒廃した国土はもともと水害に弱い。地震で緩んだ地盤が降雨でさらに崩れ、2次災害を招く可能性がある。

 一方、被災地は広域にわたりながらも重機が少なく、復興作業は依然、遅々としている。

 「建物の倒壊は想像以上に多く、時間がたったのにそのままで、震災の痛手を強烈に感じている。復旧には相当な時間がかかるだろう」。陸上自衛隊1次隊の岡亮(とおる)2等陸佐は、電話取材に現地の印象を語った。

 1次隊は約200人編成で、8日以降、順次現地入り。首都を拠点に仮設住宅建設のための整地や、倒壊した建物のがれき撤去などに当たる。地震国・日本の技術力への期待は大きいが、日常的な道路混雑や暑さなど困難にも直面している。

 同隊は雨期対策としてテントが密集する避難キャンプの整地なども行う予定で、迅速な活動が求められている。【メキシコ市・庭田学、社会部・樋岡徹也】

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ハイチ大地震:
発生から1カ月 震災孤児に人身売買の懸念

2010年2月12日 20時34分 更新:2月13日 1時11分

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首都ポルトープランスで、被災者支援の慈善団体が運営する食堂で食事をとる子供たち=2010年2月10日、ロイター

 大地震の発生から1カ月を経たハイチで、震災孤児らの人身売買や違法な養子縁組への懸念が高まっている。国連児童基金(ユニセフ)は孤児らの登録作業を進めているが、全体の把握にはなお時間がかかる見込み。ハイチ政府は違法な子どもの連れ出しを阻止するため監視を強化。一方、貧しさから子どもを手放さざるをえない家庭もあり、貧困問題が子どもの安全に暗い影を落としている。

 国連によると、ハイチは全人口約900万人のうち約45%が18歳以下。ユニセフは、震災以前にも年間2000人以上の子どもが人身売買の被害に遭っていたとみる。震災後、ユニセフ広報官は「子どもが国外に連れ去られたという報告が増えている」とロイター通信に懸念を表明した。

 ハイチでは先月、プロテスタント系団体に所属する米国人10人が不正に12歳以下の子ども33人を隣国ドミニカ共和国に連れ出そうとしたとして、身柄拘束される事件が起きた。AP通信によると、米国人らは33人を「孤児」と主張したが、少なくとも20人に親がいることが判明。泣きながら「私は孤児じゃない」と訴える子もおり、ハイチのベルリーブ首相は「違法な連れ出しだ」と激怒した。

 だが、米国人らは「善意のつもりだった」と訴え、子どもの親も「施設で教育も受けさせるし、会うこともできると約束されたので引き渡した」と証言。ハイチの裁判所は11日、米国人らの保釈を認めた。

 統計によると、ハイチからは毎年1000人前後の子どもが養子縁組で外国に渡っている。国民の半数が1日1ドル以下で暮らす生活水準では、海外の裕福な家庭で育ててもらう方が子どもにとって良いと考える親も多い。

 ユニセフは毎日新聞の取材に「外国に行けばより良い機会が待っていると信じ、人身売買の危険に気付かない親や子が多い。外国への養子縁組は、関係機関の調査によって、子どもの利益になると判断された場合にのみ検討されるべきだ」と話している。【隅俊之】

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ハイチ大地震:
死者は23万人に スマトラ沖大地震に並ぶ

2010年2月10日 10時26分 更新:2月10日 12時40分

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壊れた水道管からあふれる水で洗濯する人々=ポルトープランスで、梅村直承撮影

 【メキシコ市・庭田学】ハイチ政府は9日、大地震による死者が23万人に達したと明らかにした。AP通信が伝えた。約23万人が犠牲になった04年のスマトラ沖大地震・インド洋大津波に並ぶ災害となった。既に埋葬されて政府が把握していないケースもあり、犠牲者数はさらに増える可能性もある。

 ハイチでは1月12日、首都ポルトープランス近郊を震源にマグニチュード(M)7.0の大地震が発生した。

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記者の目:
ハイチ大地震 国造り支援へ=吉富裕倫

 ハイチの震災(1月12日発生)を取材するため、地震の4日後から約10日間、首都ポルトープランスと周辺の被災地を訪れた。政府機関など首都機能は壊滅し、市民らは国際社会の支援なしには生き残ることすらできない状況だった。もともと政情不安で貧しい国だけに、災害支援にとどまらず、長期的視点に立って国造り支援へとつなげることが必要だと実感した。

 屋根が崩れてぺしゃんこになった民家で、折れた石造りの門柱が2本。それぞれ約1.5メートルの高さで残っていた。その1本に男性がのみを打ち込んでいる。撤去しようとしているらしい。ひと振り、またひと振り。なかなか砕けない。ショベルカーがあれば、たちまち終わる作業を延々と続ける男性に、損壊の大きさに比べ、対処の手だてが乏しいこの国の実情を象徴的に見た思いがした。

 ハイチは中南米、カリブ海の最貧国とも、西半球の最貧国とも呼ばれる。約960万人の人口の半数以上が1日1ドル(約90円)未満で暮らす絶対的貧困層だ。

 米フロリダ国際大学のエドゥアルド・ガマーラ教授(政治学)によると、ハイチでは肌の色の濃さによって、富裕層と貧困層の二つの階級に大別できる。1804年にフランスから独立した世界最初の黒人国だが、人口の約1割がヨーロッパ人と黒人の混血で、色の薄い黒人とその子孫が政治や経済を支配し、残り9割の肌の色の濃い国民は満足な教育も受けられず低所得のままだという。

 私は夜間の治安の悪さを考え、隣国のドミニカ共和国のホテルから連日ハイチに入って取材したが、やむを得ずハイチ国内に宿泊した時もある。そこは裕福な通訳の親族宅で、柱の据え付け部分に耐震バネを入れた特別仕様の住宅だった。コンクリートブロックを積み重ねただけでもろくも崩壊した多くの家と比較し、格差の大きさに驚いた。

 避難所で地震から4日過ぎても、アルコール消毒などけがに対する初歩的な手当てすら受けられない被災者を見て胸が痛んだ。貧困層は耐震設計など考えもしない脆弱(ぜいじゃく)な住宅で揺れの直撃を受けただけでなく、医薬品やラジオを聞くための電池など、被災後の混乱に適切に対処する物資も情報も得られなかった。

 小学校はほとんどが私立で、貧しい子だくさんの家庭は子供を学校へ通わせられない。学齢児童の半数しか小学校に行かず、大人の4割は読み書きすらできない。学校に行けない子供たちの中には、住み込みの家事手伝い「レスタベック」として働かされる場合があり、「子供奴隷」という別称があるほど虐待の危険にさらされている。

 残念ながら国の指導者たちは政争に明け暮れ、1日6時間程度しか電気が来ない送電網など、国民に対する基本的なインフラ整備すら実現できていない。

 度重なるハリケーン被害に見舞われたハイチの状況を改善しようと、国際社会は積極的にハイチ支援に取り組んできた。国連は04年の反政府勢力による武力衝突をきっかけに駐留部隊を派遣し、治安の確保と警察の育成に努めた。日本政府も食料援助や小学校の増改築など教育、医療援助を行ってきたが、08年には食料不足から暴動が起きるなど、基本的な問題の解決には至っていない。

 昨年春に実施されたハイチ上院選の投票率はわずか11%だ。政争への嫌悪、貧困から来る無関心、無気力感が広がっていることが見て取れる。

 こうした中で起きた震災は、多大な犠牲者を出した一方で国民の間に助け合いの機運も生み出している。ある富裕層の男性は、宗教や所属している組織と関係なく、自腹でパン工場を動かすためディーゼル油を購入して寄付し、焼き上がったパンを無料で避難所の被災者に配った。格差で分断されたハイチ社会で、これまでこうした動きは見られなかったという。

 ガマーラ教授は「震災はハイチ国民が分裂を乗り越え、一つにまとまって国を発展させる大きなチャンスでもある」と指摘した。

 国連機関や国際NGO(非政府組織)、米国など主要国は、食料、医療、テントなど最低限必要な物資を被災者に行き渡らせるべく努力している。一方、私が取材した被災者たちは「政府職員は物資を横流しするかもしれない。支援は政府を通さないで」と役人の汚職に警戒感を示した。

 緊急援助の時期を脱した時、国連を中心とした国際社会がハイチ政府に支援を継続し、再建の方向について真剣に協議することが必要だ。世界中の人々がハイチに目を向けている今こそ、支援をより実りのあるものにできると期待したい。

 (ロサンゼルス支局)

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毎日新聞 2010年2月10日 0時12分


ハイチ大地震:
陸自の重機 成田を出発

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アントノフ225型機に積み込まれる重機=成田空港で2010年2月9日(陸上自衛隊提供)

 ハイチの復興支援で陸上自衛隊が使う重機を運搬する、ウクライナの大型輸送機「アントノフ」が9日夜、成田空港を出発した。防衛省によると、同省がアントノフをチャーターするのは初めて。

 アントノフは同日午前、成田に到着。派遣部隊は地震被災者の仮設住宅建設のための整地やがれき撤去などにあたる予定で、機首部分を開け、約2時間半かけてブルドーザーや大型トラック、ダンプなど約100トン分を積み込んだ。【樋岡徹也】

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毎日新聞 2010年2月9日 20時43分(最終更新 2月9日 21時31分)


ハイチ大地震:
陸自隊員34人が首都に到着 PKO1次隊

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ポルトープランスに到着した陸上自衛隊の1次隊=2010年2月7日、AP

 大地震に見舞われたハイチの復興支援のため国連平和維持活動(PKO)に派遣される陸上自衛隊の1次隊34人が8日未明(日本時間)、首都ポルトープランスに到着した。1次隊は災害やテロ、紛争地での国際平和協力活動で中心的な役割を担う陸自の「中央即応集団」を中心に約200人で編成。米マイアミから順次入国し、ポルトープランスを拠点に被災者の仮設住宅建設のための整地やがれきの撤去などにあたる。

 約1カ月後には、陸自の北部方面隊を中心とする約350人の2次隊が現地入りし、活動を引き継ぐ。派遣期間は11月末までの約10カ月。【樋岡徹也】

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毎日新聞 2010年2月8日 11時06分(最終更新 2月8日 11時55分)


ハイチ大地震:
PKO派遣の自衛隊員 羽田などから出発

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笑顔でハイチ派遣PKO隊員を見送る家族ら=羽田空港で2010年2月6日、三浦博之撮影

 大地震に見舞われたハイチの復興支援のため、国連平和維持活動(PKO)に派遣される陸上自衛隊の1次隊が6日夜、現地に向け羽田空港などから出発した。これに先立ち、隊旗授与式が東京・市ケ谷の防衛省で行われた。

 1次隊は、災害やテロ、紛争地での国際平和協力活動で中心的な役割を担う陸自の「中央即応集団」を中心に約200人で編成。同日午後に行われた授与式では、隊長を務める山本雅治1等陸佐に北沢俊美防衛相から隊旗が手渡された。この後、鳩山由紀夫首相が「困った人がいれば助けるのが人の世のあるべき姿。『命を守る国・日本まさにここにあり』ということを世界に示してもらいたい」と訓示した。

 羽田空港では出発前、隊員の家族らが「体に気を付けて」「無事任務を果たしてください」などと声をかけていた。取材に応じた山本隊長は「日本人の誇りと誠意を持ってハイチの方々の復興支援に全力で努める」と決意を述べた。

 1次隊のうち約160人は6日夜、政府専用機などで日本を出発。早ければ8日未明に現地入りし、首都ポルトープランスを拠点に避難民の仮設住宅建設のための整地や倒壊した建物のがれき撤去などに当たる。約1カ月後には、陸自の北部方面隊を中心に約350人の2次隊が現地入りし、活動を引き継ぐ。派遣期間は11月末までの約10カ月。【樋岡徹也】

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毎日新聞 2010年2月6日 19時18分(最終更新 2月6日 19時56分)


EU:
外交力強化に苦慮 ハイチ支援遅れなど「失点」続く

 【ブリュッセル福島良典】新基本条約「リスボン条約」で機構改革した欧州連合(EU、加盟27カ国)が外交力の強化に苦慮している。1月のハイチ大地震では支援外交の初動が遅れ、オバマ米大統領からは5月に予定されていた米EU首脳会議を袖にされるなど、外交面で「失点」が続いている。背景には、リスボン条約で想定していた対外的な「EUの顔」の一本化がうまく機能していない事情がある。

 EUは世界の主要国と定期的に首脳会議を開催し、協力関係の深化に努めている。欧州諸国が秋波を送るオバマ米政権との間では、昨年4月(プラハ)と11月(ワシントン)に米EU首脳会議が開かれ、今年は5月下旬にマドリードで開催が予定されていた。

 だが、オバマ大統領は昨年の会議の成果に「感銘を受けなかった」(フィナンシャル・タイムズ紙)とされ、今回の欠席で、会議自体が秋以降に延期される見通しが強まっている。米国務省のクローリー次官補(広報担当)は欠席理由に絡み、「リスボン条約で欧州が機構改革中である」点を指摘した。

 リスボン条約でEUには「大統領」に相当するファン・ロンパウ欧州理事会常任議長が誕生した。だが、行政府・欧州委員会も対外関係を取り扱い、半年交代の議長国制度も残る。このため、EUトップとしてロンパウ議長、バローゾ欧州委員長、今年前半の議長国スペインのサパテロ首相が居並ぶ「3頭体制」が生まれ、混乱を呼んでいる。

 一方、リスボン条約で新設された「外相」のアシュトンEU外務・安全保障政策上級代表は「最初の試験」となったハイチ大地震への対応で批判を浴びた。欧州諸国はハイチへの主要援助国。だが、クリントン米国務長官が震災直後に現地に飛んだのに対し、アシュトン氏は「私は医師でも消防士でもない」と欧州にとどまり、欧州議会で「存在感がない」との声が噴出した。

 新欧州委員に就任する予定のバルニエ欧州議員(フランス)は災害救援にあたる「欧州市民保護部隊」を新設し、EUと加盟諸国の連携を強化するよう提唱している。外交活動や人道支援で加盟国の足並みをそろえ、欧州としての一体性を打ち出すことができるか、新体制EUにとっての試金石だ。

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毎日新聞 2010年2月6日 18時20分


ハイチ大地震:
復興支援PKOに自衛隊派遣 閣議決定

 政府は5日、大地震に見舞われたハイチの復興を支援する国連平和維持活動(PKO)に自衛隊を派遣する実施計画を閣議決定し、北沢俊美防衛相が派遣命令を出した。陸自の施設部隊約350人が11月末まで、がれきの撤去や道路補修などに当たる。PKO協力法に基づく派遣で、今回が7回目。92~93年のカンボジア(約600人)、02~04年の東ティモール(約680人)に次ぐ自衛隊の大規模海外派遣となる。

 派遣部隊の1次隊は災害やテロ、紛争地での国際平和協力活動で中心的な役割を担う陸自の中央即応集団を中心とした約200人で編成。6日から順次、現地に向かう。約1カ月後には、北部方面隊を中心にした約350人の2次隊が現地入りし、活動を引き継ぐ。

 現地には、ブルドーザーや軽装甲機動車など約150台を持ち込み、護身用に小銃や機関銃なども携行。ブルドーザーなどの重機は、チャーターしたロシアの大型輸送機「アントノフ」で輸送し、首都ポルトープランスを拠点に、幹線道路の復旧や避難民向けの仮設住宅整備にあたる。

 ハイチでの救援活動としては、自衛隊の国際緊急医療援助隊(約100人)がレオガンで被災者の治療を続けている。【樋岡徹也】

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ハイチ大地震:死者20万人超す 倒壊家屋にまだ多数

毎日新聞 2010年2月5日 19時20分


ハイチ大地震:
死者20万人超す 倒壊家屋にまだ多数

 地震で大きな被害が出たハイチのベルリーブ首相は2日、政府の集計で死者が20万人を超えたことを明らかにした。ハイチ政府はこれまで、死者は20万人に上る可能性があるとしていたが、今も倒壊家屋の下に埋まっている遺体が多数あり、死者数がさらに増えるのは確実だ。スペイン通信が伝えた。(サントドミンゴ共同)

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毎日新聞 2010年2月3日 10時20分


ハイチ大地震:
「ウィ・アー・ザ・ワールド」再録で救済

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1日、「ウィ・アー・ザ・ワールド」収録のために米ロサンゼルス市内に集まったバーブラ・ストライサンドさん(中央)ら著名歌手たち=AP

 【ロサンゼルス支局】米国の著名な歌手や俳優70人以上が1日、ロサンゼルスのスタジオに集まり、1985年にアフリカの飢餓救済のために作られ、世界的ヒットとなった「ウィ・アー・ザ・ワールド」リメーク版を収録した。

 ハイチ大地震の被災者救済が目的で、同曲をプロデュースしたクインシー・ジョーンズさんが呼びかけ、マイケル・ジャクソンさん(昨年6月死去)とともに作曲を担当したライオネル・リッチーさんらが賛同して実現。収録にはセリーヌ・ディオンさん、バーブラ・ストライサンドさんら大物が顔をそろえた。ロイター通信によると、マイケルさんの代役は妹のジャネット・ジャクソンさんが別収録で務めるという。

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ハイチ大地震:生活用水不足 洗濯は破裂した水道管の水で

毎日新聞 2010年2月2日 20時25分(最終更新 2月2日 21時10分)


ハイチ大地震:
生活用水不足 洗濯は破裂した水道管の水で

 大地震に見舞われライフラインが寸断されたままのハイチでは、破裂した水道管から流れ出る水で洗濯をしたり体を洗ったりする被災者の姿が目立っている。支援による飲料水はほとんどの被災者に届くようになったが、生活用水は不足したままだ。

 首都ポルトープランスの病院前の歩道には澄んだ水が流れ、まるで小川のようになっていた。地震で破裂した水道管から大量の水があふれているのだ。大勢の女性たちがここにしゃがみ込み、洗濯をしていた。

 しかし、水の流れ着く先は、大量のゴミとほこりがたまり、不衛生な状態だ。水の流れに小便をする男性もいた。【ポルトープランスで庭田学】

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毎日新聞 2010年2月1日 19時52分


全豪テニス:
70万ドルをハイチに寄付…大会主催者

 テニス・全豪オープンの大会主催者は31日、フェデラーらが今大会開幕前日の1月17日に行ったチャリティーマッチや、選手が提供したラケットのオークションの売上金などをもとに、ハイチ大地震の被災者へ約70万ドル(約6300万円)を寄付すると発表した。(共同)

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毎日新聞 2010年1月31日 22時29分


ハイチ大地震:
町の4割が倒壊 孤立のジャクメルに入る

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10日以上も陸路の交通が遮断されていたジャクメルの町。被害のつめ跡が残っている=ハイチ・ジャクメルで2010年1月30日午前9時40分、梅村直承撮影

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ジャクメルの位置

 ハイチ大地震で道路が寸断され、10日以上孤立していたポルトープランス南西約50キロの町ジャクメルに30日入った。全体の約40%にあたる家屋約5000棟が倒壊。1000人以上の死者が報告されている。ジャクメル都市部の人口はおよそ4万人で、1万人以上が避難生活を送っているという。

 ジャクメルはカリブ海をのぞむ町だ。25日ごろに陸路が復旧したせいか、市場はにぎわうなど日常の光景が戻りつつある。だが、各所で響くがれき撤去の重機の大きな音は、生々しく残る地震の傷跡を見せつけていた。

 駐留する国連部隊のカナダ軍はこれまで2000人以上の負傷者を手当てした。同軍の広報官は「被災者に安心してもらえるように努力を続けたい」と語った。【ジャクメルで梅村直承】

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毎日新聞 2010年1月31日 21時01分(最終更新 1月31日 21時35分)


ハイチ大地震:
自衛隊の援助隊100人で医療活動

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被災者の治療にあたる自衛隊の医療援助隊員=ハイチ・レオガンで2010年1月27日、梅村直承撮影

 【ポルトープランス庭田学】大地震で多数が被災したハイチで、自衛隊の国際緊急医療援助隊が激震地レオガンで活動を続けている。23日から医療活動を開始し、4日間で約160人を診察した。27日には約30人の隊員が到着。計約100人で被災者の治療にあたっている。

 同援助隊によると、地震による骨折などで受診する被災者も依然として多いが、内科的な患者が増えつつあるという。白川誠隊長は27日、「震災の被害は非常に大きい。被災者の方々の目線で頑張りたい」と話した。

 自衛隊は、国際協力機構(JICA)の国際緊急援助隊の医療チームの活動を引き継いだ。

 一方、日本赤十字社は首都ポルトープランスに診療所を開設。医師5人を含む計15人が活動している。

 診療所は被災者が屋外生活をする大規模な避難所に隣接しており、避難所の巡回もしている。被災地では医療体制が崩壊しているため、地震による負傷者の手当てだけでなく、あらゆる患者に対応できる態勢にしているという。

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毎日新聞 2010年1月30日 13時02分(最終更新 1月30日 15時48分)


ハイチ大地震:
国際医療チームが成田空港に帰国

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国際緊急援助隊医療チーム解団式で隊員らにあいさつする二石昌人団長(右端)=成田国際空港で2010年1月29日、斎川瞳撮影

 ハイチ大地震の被災地へ派遣されていた外務省職員や医師、看護師らの国際緊急援助隊医療チーム25人が29日、成田国際空港に帰国。16日に出発し、首都ポルトープランスの西40キロのレオガン市で、534人を治療した。

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バンクーバー市:ハイチ支援に五輪の垂れ幕を市民に販売へ

毎日新聞 2010年1月30日 1時22分(最終更新 1月30日 2時25分)


バンクーバー市:
ハイチ支援に五輪の垂れ幕を市民に販売へ

 冬季五輪開幕を控えるバンクーバー市は28日、ハイチ大地震への義援金を集めるため、市内の道路に掲げた五輪の垂れ幕3000枚を市民に販売する方針を固め、2月2日の市議会に提案することを発表した。

 市が用意した垂れ幕は6000枚あり、承認されれば半分を地震の支援用に回す。価格は少なくとも1枚100カナダドル(約8500円)で、購入者に大会終了後に届ける。(共同)

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毎日新聞 2010年1月29日 17時26分


ハイチ大地震:
相撲協会が義援金

 日本相撲協会は28日、ハイチ大地震の義援金として500万円を送ることを決めた。

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毎日新聞 2010年1月28日 19時18分


ハイチ大地震:
中央分離帯に被災者の小屋

2010年1月28日 11時0分 更新:1月28日 11時44分

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中央分離帯に作られた被災者のテント=ポルトープランスで2010年1月27日午後2時16分、梅村直承撮影

 【ポルトープランス庭田学】大地震が襲ったハイチの首都ポルトープランスで、道路の中央分離帯に約100軒の小屋が建ち並んでいる。トタンや布、ビニールシートで作られた粗末な小屋の被災者たちは、車が激しく行き交う中で騒音とほこりを浴び、劣悪な環境での暮らしを強いられている。

 避難生活の長期化に伴い、下痢やせき、頭痛を訴える被災者が増えており、健康状態が懸念されている。

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ハイチ大地震:
16歳少女15日ぶり救出

2010年1月28日 10時25分 更新:1月28日 10時50分

 【メキシコ市支局】ハイチ大地震で27日、首都ポルトープランスの崩落した民家から、16歳とみられる少女が発生から15日ぶりにフランスなどの救助隊によって救出された。ロイター通信が伝えた。少女は、崩れた壁とドアのすき間で発見された。足を負傷しているが、意識ははっきりしている。水や食料をどう補給していたのかは不明だ。国連によると、これまでに130人以上ががれきの下から救出された。

 一方、AFP通信によると、プレバル大統領は27日、これまでに約17万人の遺体が収容されたと語った。

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ハイチ大地震:
PKOで調査チームを派遣 政府

 ハイチ大地震復興支援のための国連平和維持活動(PKO)への自衛隊派遣に向け、政府は27日、陸上自衛官2人と内閣府国際平和協力本部職員1人による調査チームを現地に派遣した。

 政府はPKO協力法に基づき、陸上自衛隊の施設部隊など約300人規模で派遣する方針。調査チームは道路や建物の被害状況を確認して施設部隊の活動に必要な機材の情報収集などに当たる。

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毎日新聞 2010年1月27日 21時35分(最終更新 1月27日 22時53分)


ハイチ大地震:
ゴルフ場に被災者5万人 米軍が管理

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約5万人の被災者が避難しているゴルフ場=ハイチ・ポルトープランス近郊で、梅村直承撮影

 【ポルトープランス吉富裕倫】ハイチ大地震の被災者約5万人が首都ポルトープランス近郊の高級ゴルフ場「ペチョンビル・クラブ」に避難している。米軍がオーナーから借り受けて管理。最大規模の避難所として、各コースはテントで埋め尽くされている。

 「建物倒壊の危険がない安全な場所」と、デュポン・ローズミシェルさん(30)は、地震直後に隣の市から家族で身を寄せ、テントで赤ちゃんを出産した。

 米軍はヘリコプターで物資を輸送し、毎日8000~1万2000食と20万~30万本の飲料水を用意。配布時には長蛇の列ができる。食品や日用品の市も立ち、被災者の一大生活拠点となっている。

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ハイチ大地震:ギャングの街キリック 武装兵士パトロール
ハイチ大地震:助け合う市民 ボランティアの動き広がる

毎日新聞 2010年1月27日 21時15分(最終更新 1月27日 21時51分)


ハイチ大地震:
ギャングの街キリック 武装兵士パトロール

2010年1月27日 20時35分 更新:1月27日 20時43分

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国連ハイチ安定化派遣団に参加したスリランカ軍がパトロールした夜のキリック地区=2010年1月25日、ハイチのキリックで吉富裕倫撮影

 【ポルトープランス吉富裕倫】治安悪化を懸念し午後6時以降の外出禁止令が出ているハイチ大地震の被災地キリックで25日、国連駐留部隊の夜間パトロールに同行した。ギャングが根城にしている同地域でも、子供たちが余震を恐れ、路上など屋外で寝ていた。

 国連の青いヘルメットと防弾チョッキを着用し、迷彩服姿で銃を持つスリランカ軍兵士のチームに同行した。

 街灯もなく月明かりと懐中電灯だけが頼り。住民が集団で路上にマットを敷いたり、テントを張って寝ている場所に立ち寄る。部隊は毎日20回、歩いて巡回するという。

 キリックは首都ポルトープランス近郊にあり、殺人や人身売買を行うギャング組織の根拠地の一つ。震災後に刑務所から脱走した囚人のうち約100人が同地区に戻ってきたとされるが、今のところ犯罪などは起きていないという。

 兵士の一人は「ギャングが武装兵士を襲うことはない」と話し、国連部隊のパトロールが治安の要になっていると指摘した。

 被災者の中には歌や踊りで励まし合う人たちがいる一方、廃虚となった住宅街では、取り残された犬たちの鳴き声が響いていた。

 国連の派遣団は17カ国からの駐留部隊約7000人と警官約2100人の計約9100人。警察活動の中心を担っているが、派遣団の広報官は「脱走囚を逮捕したり、被災者同士のトラブルを防ぐには、もっと多くの人員が必要だ」と語った。

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ハイチ大地震:助け合う市民 ボランティアの動き広がる

2010年1月27日 11時57分 更新:1月27日 18時48分

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避難所でおそろいのTシャツを着て活躍している「市民アクション」のメンバー=ポルトープランスで2010年1月25日、梅村直承撮影

 【ポルトープランス庭田学】12日の大地震発生から2週間がたったハイチで、ハイチ人自身が被災者のためのボランティア活動に乗り出している。ボランティアの大半は自らも被災して路上で避難生活を送っているが「みんな被災者、助け合いたい」と支援物資の配布作業の手伝いや、被災者キャンプの清掃などに取り組んでいる。略奪や暴動などが報道されているハイチだが「共生」への希望も見え始めた。

 被災者が多く生活する首都ポルトープランス中心部の広場では、おそろいの黄色いTシャツ、黄色い帽子のボランティア団体「市民アクション」のメンバーの姿が目立つ。胸には、公用語の一つクレオール語で「きずな」と大きく書かれている。スポーツ省に所属する団体で、20代の若者が中心。震災前から社会奉仕活動をしている若者で、避難所では支援物資の配布作業などを手伝っている。暗くなりがちな被災者キャンプの中で、その笑顔は輝くようだ。

 だが、ボランティアの大部分も被災者だ。約30人のメンバーに屋外で避難生活を送っている人はいるかとたずねると8割が「ほとんどみんなだよ」と言いながら手を挙げた。

 避難所での活動には約650人が参加する予定だったというが、被災しているために来られないメンバーもいるという。

 メンバーのオーベンスさん(25)は「活動は国のため。みんなが被災者なのだから、助け合うことが必要だ」と話す。パプリトさん(23)は「ハイチには教育やインフラなど何もかもが足らない。ボランティア活動が少しでも役に立てばいい」と話す。

 公園や広場など避難生活者が集中する路上には、ごみが山積みになり、悪臭を放っている。ごみ収集車が時折作業をしているが、追いつかない状態だ。26日朝には、おそろいの緑のTシャツを着た女性3人のボランティアが、ほうきで道路を清掃している姿も見られた。

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社説:
ハイチPKO 復興に日本の経験を

 政府は、ハイチ大地震の復興支援のために、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づく陸上自衛隊約300人の派遣と、7000万ドル(約63億円)の無償資金拠出を決めた。PKOでの自衛隊派遣は、カンボジア(92年)、東ティモール(02~04年)に次ぐ大規模なものとなる。

 国連安保理の国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)への増派決議を受けた措置だ。派遣される施設部隊は、がれき撤去や道路補修などインフラの復旧活動に当たる。活動内容は日本が得意とする人道復興である。今回の政府の決定を歓迎する。部隊には、安全対策に留意しつつ活動に全力を挙げてもらいたい。

 ハイチは、20世紀後半から独裁政権の悪政や軍事クーデター、武力衝突が相次ぎ、西半球の最貧国に転落した。政府に十分な統治能力はなく、04年から展開するMINUSTAHが治安維持などを支えてきた。

 今回の大地震は首都や周辺地域に壊滅的被害をもたらした。大統領宮殿をはじめ政府庁舎は大部分が倒壊して行政機能がまひし、被災者救助や食料供給なども米国をはじめ海外からの支援頼みとなった。被災者は約300万人と推定され、15万人以上の遺体を収容、数十万人が路上生活を続けている。水や食料、医療など基本的な生存条件も十分に確保されず、国際支援が必須である。

 同国では地震前から反政府デモが頻発し、地震後には一層の治安悪化が伝えられる。しかし、鳩山政権は、武力紛争には当たらず、停戦合意などを条件とする「PKO参加5原則」には反しないと判断した。

 日本のPKO要員は現在、中東のゴラン高原など3地域で計39人に過ぎず、国連加盟国中85番目にとどまっている。民主党内には国連中心の国際貢献活動参加に積極的な意見が強い。鳩山政権が自衛隊派遣を即決したのは、こうした事情に加え、インド洋からの自衛隊撤収という事態を踏まえて、人的貢献を国際的に印象づける狙いがあったのだろう。

 また、米国は、裏庭とみなすカリブ海に位置する旧占領国ハイチと深い関係を持つ。同国の復興に積極関与することが、普天間移設問題などでぎくしゃくする日米関係改善への一助になるという考えもあるとみられる。

 復興支援について、関係国閣僚級会合では、少なくとも10年間の関与が必要だという認識が示された。政府機能も不十分な実情を勘案すれば、建国にも似た作業が必要になりそうだ。ワルストロム国連事務総長特別代表(防災担当)は、日本に期待する支援として耐震技術提供や災害復興の経験伝授などを挙げた。地震国・日本の特徴を生かした長期的視野に立つ支援が求められている。

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毎日新聞 2010年1月27日 2時37分


ハイチ大地震:
7歳児が支援呼びかけ、義援金が殺到 英国

2010年1月26日 21時1分 更新:1月26日 21時11分

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24日、ロンドンでサイクリングし、ハイチ大地震の被災者への募金を訴えるチャーリー・シンプソン君=AP

 【欧州総局】ハイチ大地震の被災者を救おうと、英国の7歳の少年が24日、ロンドン市内をサイクリングして募金を訴えたところ、共感した市民から義援金が殺到。25日までに10万ポンド(約1440万円)以上も寄せられ、話題となっている。

 少年はチャーリー・シンプソン君。AP通信によると、被災地の映像に驚いたチャーリー君は、資金集めのためロンドンの公園を自転車で周回することを計画。ウェブサイト上に「ハイチのみんなのために、食料や水、テントを買うお金を集めたい」と記し、約8キロのサイクリングで協力を訴えた。当初の目標額は500ポンド(約7万2000円)だったが、英紙がチャーリー君の行動を取り上げ、義援金が一気に集まった。

 ブラウン首相は短文の交流サイト、ツイッターに「7歳の子の資金集めの取り組みへの反応に驚いた」と書き込んだ。チャーリー君の母親は「急な金額の伸びで信じられない」と話しているという。

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ハイチ大地震:
国連部隊が威嚇発砲 配給で住民と衝突

2010年1月26日 11時42分 更新:1月26日 18時14分

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国連部隊員が威嚇発砲を行う中、配給される食料を得ようと前に詰め寄る被災者たち=ハイチのポルトープランスで2010年1月25日午後3時33分、梅村直承撮影

 【ポルトープランス庭田学】ハイチ大地震の被災者に25日、これまでで最大規模の食料配布が実施された。首都ポルトープランスの大統領宮殿前では約2万人が列を作ったが、食料を求めて先を争う人々と警備の国連駐留部隊が衝突し、負傷者が出る騒ぎとなった。

 大統領宮殿近くの公園には数万人が避難生活を送っており、この日は米国から送られた大量の米などが配られた。被災者は当初、整然と列に並び、順番に米を受け取っていた。しかし、配布が進むに連れて興奮した一部の人々が列に割り込もうとし、警備にあたっていたウルグアイの国連部隊約100人と押し合いになった。

 「落ち着け」と制止する国連部隊に対し、被災者からは「食料をくれ」との怒声が飛ぶ。混乱が拡大する中、国連部隊側は突然、銃を空に向けて威嚇発砲を始めた。さらに列を乱す人々を警棒で殴ったり、催涙スプレーをかけるなどした。

 発砲音に驚いた群衆は一瞬静まったが、再びもみ合いに。国連部隊に警棒で殴られ、ひじから血を流した男性は「あいつら(国連部隊)がしたことを見たか。オレたちには食料が必要なんだ」と叫んだ。現場では米を被災者同士が奪い合う光景も見られた。

 ハイチに駐留する国連部隊は中南米諸国を中心にした多国籍部隊。被災者からは「地震後、国連部隊は我々に何もしてくれない」といった不満の声が募っている。

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ハイチ大地震:
3月に国連で支援策を協議

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25日、ハイチ大地震の復興支援を話し合う閣僚級会合で黙とうする(左から)ハイチのベルリーブ首相、カナダのハーパー首相、クリントン米国務長官=AP

 【ニューヨーク小倉孝保】ハイチ大地震の復興支援を話し合う閣僚級会合が25日、カナダ・モントリオールで開かれ、具体的な支援策をまとめるための国際会議を3月にニューヨークの国連本部で開催することを決定した。

 支援国会合にはハイチのベルリーブ首相、クリントン米国務長官、クシュネル仏外相のほか、欧州連合(EU)、国連、世界銀行など約20カ国・機関の代表が出席。日本からは武正公一・副外相が参加し、復興支援のため総額約7000万ドル(約63億円)の拠出を表明した。

 ベルリーブ首相は「30秒でハイチは国内総生産(GDP)の60%を失った。今後、最低でも5~10年といった長期にわたる支援を必要としている」と訴えた。

 また、国際緊急支援にあたる非政府組織(NGO)「オックスファム」は、ハイチに対する外国の債権が放棄されるべきだと主張した。国連によると、潘基文(バン・ギムン)事務総長も債権放棄を支持しており、今後協議されるとみられる。

 一方、国連は25日、現地で平和維持活動にあたっていた安定化派遣団の死者が82人にのぼり、行方不明は53人と発表した。

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毎日新聞 2010年1月26日 11時26分(最終更新 1月26日 12時51分)


ハイチ大地震:
緊急支援47%相当額集まる 国連所長

 国連人道問題調整事務所(OCHA)のホームズ所長は25日、ハイチ大地震に関し、国際社会に要請した緊急支援5億7500万ドル(約520億円)のうち、これまでに47%相当額が集まり、さらに1億2000万ドルの支援が表明されたと明らかにした。ハイチ支援の閣僚級会合が開かれているモントリオールで記者団に語った。

 ホームズ所長は「もちろん(要請額)全額が必要だ。今後、必要額を見直すが、1年後には、はるかに多い額が必要になるだろう」と指摘。このような状況下で、日本政府が表明した7000万ドルの支援は「非常に有益だ」と述べ、感謝の意を示した。(モントリオール共同)

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毎日新聞 2010年1月26日 10時23分(最終更新 1月26日 10時26分)


ハイチ大地震:
PKOで陸上自衛隊を派遣 政府が方針

2010年1月25日 21時7分 更新:1月25日 23時37分

 政府は25日、首相官邸で与党党首級による基本政策閣僚委員会を開き、ハイチ大地震の復興支援のため現地での国連平和維持活動(PKO)に自衛隊を派遣する方針を決めた。PKO協力法に基づく派遣で、陸上自衛隊を約300人規模で派遣する方針で、92年のカンボジア(約600人)、02~04年の東ティモール(約680人)に次ぐ自衛隊の大規模海外派遣となる。

 19日に国連安全保障理事会が国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)に対して要員3500人を増派する決議を採択、加盟国に新たな要員派遣を要請したのを受け、政府が派遣を検討、与党各党が了承した。

 政府は既に外務省職員や医師、看護師ら24人を国際緊急援助隊医療チームとして派遣。国際緊急援助隊法に基づき陸自の医官ら医療援助隊やC130輸送機による輸送部隊など計約180人も派遣している。新たに派遣するのは陸上自衛隊の施設部隊で、治安維持活動には携わらず、がれきの撤去、道路補修など復旧活動に取り組む見通し。

 MINUSTAHは04年に始まり、各国から約9000人の要員が派遣されているが、日本は参加していなかった。地震前から反政府市民デモが頻発し、地震後一層治安が悪化しているが、「武力紛争とは言えない」(防衛省幹部)として派遣に停戦合意の成立などを条件とするPKO5原則に反しないと判断した。ただし、自衛のため最小限の小銃などの携帯は検討する。

 また、政府は大地震被害復興支援のため日本として7000万ドル(約63億円)を拠出することを決めた。25日にカナダで開かれるハイチ支援国会合で表明する。【野口武則】

 ◇米国との関係改善も視野に

 政府が国連平和維持活動(PKO)で8年ぶりに大規模な陸上自衛隊部隊の海外派遣を決めたのは、ぎくしゃくする米国との関係改善を促すと同時に、PKOの実績を積み国際社会での日本の存在感をアピールできるとの判断からだ。日米と国連という日本外交の両翼を広げる「絶好のタイミング」(政府関係者)との指摘もある。

 陸自部隊を派遣するハイチは日本からは地球の裏側にあたるが、米国にとっては「裏庭」に位置する旧占領国。大地震発生時、ハワイ滞在中だったクリントン国務長官が予定を変えて急きょ帰国するなど対応に追われた。米軍普天間飛行場移設問題で日米関係が冷え込む中、ハイチでの「目に見える支援」は実質的には米国の側面支援となり、日米関係を立て直す一助になるとの計算もあるようだ。

 一方、国際社会向けでは、今月15日にテロとの戦いの一環として実施していた海上自衛隊のインド洋での給油活動を終了させたばかりで、人的貢献に後ろ向きとの国際社会の指摘をこれによって埋め合わせることもできるとの読みがある。

 民主党は衆院選マニフェスト(政権公約)で「国連の平和維持活動等に参加して平和の構築に向けた役割を果たす」と明記。公約実現への姿勢をアピールする格好の機会となるとの判断もあった。自衛隊の海外派遣に慎重な社民党も「地震の復興支援」との大義名分があり「紛争に巻き込まれたら撤退」などの条件を付けただけですんなり了承した。

 岡田克也外相は「PKO法改正に踏み切ってでも自衛隊の海外派遣への積極姿勢をアピールしたい」とPKO5原則見直しに言及しており、今回の派遣を布石としたい思惑も透けて見える。【仙石恭】

 ◇ことば・PKO5原則

自衛隊が国連平和維持活動(PKO)に参加する条件として、92年に成立したPKO協力法に定められた。(1)停戦合意が成立(2)紛争当事者が日本の参加に合意(3)中立的立場を厳守(4)基本方針が満たされない場合は撤収できる(5)武器使用は命の防護のための必要最小限に限る--の5点。岡田克也外相は昨年10月、積極的な国際貢献のために憲法の枠内で5原則の見直し検討を外務省に指示している。

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ハイチ大地震:
学校再開「見通し立たず」…ユニセフ

2010年1月25日 20時43分 更新:1月25日 20時50分

 【ポルトープランス吉富裕倫】大地震に襲われたハイチでは、学校を束ねる教育省ビルの崩壊などで、全国の小学校が今も閉鎖されたままだ。ハイチ政府と協議している国連児童基金(ユニセフ)は24日、毎日新聞の取材に「学校再開に向けた確たる見通しは立っていない」と述べた。

 ユニセフのロシャン・カディビ広報官によると24日現在、首都ポルトープランス一帯で90%、南西部で60%の学校施設が全壊または一部損壊し、5~14歳の約50万人に影響が出ていると推計されているという。

 学校再開に向けた被災状況調査だけで、少なくともあと2週間はかかる見通し。カディビ広報官は、校舎の被災に加え「多くの親たちが(余震による倒壊を恐れ)子供をコンクリート造りの学校に通わせることを渋っている」と指摘。地震への恐怖感が授業再開の障害になっていると述べた。

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ハイチ大地震:
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Pasted Graphic
避難所で行われたミサで犠牲者に祈りをささげる被災者ら=ポルトープランスで2010年1月24日午前9時54分、梅村直承撮影

 【ポルトープランス庭田学】「アーメン! アーメン!」。大地震で多くの被災者が出ているハイチの首都ポルトープランス中心部の広場で24日、キリスト教のミサが行われ、参加した約1000人が震災からの復興を祈った。

 プロテスタント系のキリスト教団体が行った。会場の広場は被災者の避難場所にもなっている。ミサの参加者たちは歌い、踊りながら両手を天にかざし復興を祈っていた。牧師は「地震で亡くなった人もいる。私たちは涙も流した。けれども、生きていることを神に感謝しよう」と呼びかけた。

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毎日新聞 2010年1月25日 11時54分(最終更新 1月25日 13時34分)


ハイチ大地震:
「生存者捜索打ち切り」 13万人首都脱出

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23日、倒壊した店のがれきの下から救助される男性(中央)=AP

 【ポルトープランス庭田学】国連人道問題調整事務所(OCHA)は、ハイチ政府が22日午後4時(日本時間23日午前6時)で生存者の捜索・救助段階を終了した、と宣言したことを明らかにした。新たな生存者の救出がほとんどなくなっているための措置とみられる。

 国連によると、ピーク時には67チーム計1918人の国際救助隊が活動し、21日までに132人が救出された。AP通信によると、ラセグ情報相は24日、これまでに15万人以上の遺体を収容したと語った。一部の救助隊は活動を続けているが、今後の国際支援は約300万人の被災者への食糧支援や仮設住宅の建設、インフラ復旧など復興支援に重点が移ることになる。

 国連によると、ハイチ政府は地震の影響を受けていない地方に親類らがいる被災者は、首都ポルトープランスを離れるよう勧めており、これまでに政府支援で約13万人が首都を脱出した。国連食糧農業機関(FAO)は、首都や南部ジャクメルなど主な被災地から地方へ脱出する人は約100万人に達すると推計している。

 約900万人の総人口のうち約半数は地方に暮らすが、うち8割は1日1ドル以下での生活を強いられており、地方へ流出した被災者への食糧支援なども課題になる。

 ◇20台男性救出 コーラ飲み待つ

 一方、ポルトープランスで23日、20歳代の男性が倒壊した食料雑貨店のがれきの下から国際救助隊により救出された。健康状態に問題はないという。

 男性はホテル1階にある店のレジ係として働いていた。地震の揺れで壁が崩れ始めた直後に机の下に飛び込み、閉じ込められた小さな空間で、店にあったコーラを飲んで救助を待ったという。男性は「今が昼か夜なのかも分からなかった。自分は生き延びるのだ、ということだけを考えていた」と語った。

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ハイチ大地震:一部の銀行再開 被災者が長蛇の列
ハイチ大地震:がれき脇の葬儀

毎日新聞 2010年1月24日 20時58分(最終更新 1月25日 0時42分)


ハイチ大地震:
「救援自体が混乱」国際赤十字会長が帰国

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ハイチから帰国した日本赤十字社の近衛社長=成田国際空港で2010年1月24日午後5時29分、斎川瞳撮影

 ハイチ大地震の被災地を訪れていた近衛忠※国際赤十字・赤新月社連盟会長(70)=日本赤十字社社長=が24日、成田国際空港に帰国した。会見で「街中がれきの山で異臭に包まれている。がれきの下にはまだ多くの人が埋まっている」と被害の深刻さを語った。

 近衛会長によると、現地の空港はボランティアスタッフや世界中から届く救援物資でパンク状態にあり、「救援自体が混乱し、さばき切れていない」という。国際支援の強化を目的に13日に日本を出発。被災者が搬送された病院などを回り、各国の赤十字スタッフらを激励した。

 また、ハイチや隣国ドミニカ共和国の大統領と面会し、「復興計画の策定を急がねばならない」と危機感を強めたという。日赤は24日午後、さらに6人の医療スタッフをハイチに派遣した。【斎川瞳】

 ※は火へんに「軍」

毎日新聞 2010年1月24日 20時53分(最終更新 1月24日 20時56分)


ハイチ大地震:
一部の銀行再開 被災者が長蛇の列

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再開した銀行に無理やり入ろうとする人たち=ハイチのポルトープランスで2010年1月23日午後2時23分、梅村直承撮影

 【ポルトープランス庭田学】ハイチの首都ポルトープランスで23日、一部の銀行が営業を再開した。多くの被災者が当面の生活費を得るために銀行に殺到し、終日、長蛇の列ができた。

 国外からの送金受け取りができる首都中心部の銀行では、被災者らが早朝から列を作った。だが受け付けが追いつかず、6時間以上並ぶ人も。閉店まで約1時間半になっても約150人が列をなし、大勢が銀行のドアをたたいたり、強引に入ろうとして混乱した。一部の銀行では、国連駐留部隊が警備した。

 自宅が全壊し路上で避難生活を送っているというパトリックさん(49)は「食べ物を買うお金がないので、米国やフランスの親類からの送金を受け取りに来た。でも、行列が長すぎて順番が回ってきそうにない。朝から並んでいるのに……」と落胆した様子だった。

毎日新聞 2010年1月24日 20時11分(最終更新 1月24日 21時54分)


ハイチ大地震:
自衛隊医官ら現地入り 仮設テントで治療

 ハイチ大地震の被災地で医療支援活動を行う自衛隊の緊急医療援助隊の第1陣34人が23日、首都ポルトープランス西方のレオガンに到着した。既に現地で活動中の国際協力機構(JICA)などの医療チームに合流し、活動を開始。JICAの撤収後は活動を引き継ぐ。

 自衛隊員らはレオガン到着後、仮設テントの医療施設でJICAと協調し患者の治療を行った。

 援助隊は医官や連絡調整官ら104人で構成。第1陣は米フロリダ州マイアミから航空自衛隊のC130輸送機を使用し空路ハイチ入りした。(共同)

毎日新聞 2010年1月24日 0時50分


ハイチ大地震:
がれきのそばで、葬儀ひっそりと

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地震発生から10日を経てやっと開かれたシモーヌ・アルシミさんの葬儀。道の真ん中に花束が置かれた質素なものだった=ポルトープランスで2010年1月22日、梅村直承撮影

 【ポルトープランス吉富裕倫】ハイチ大地震で被災した首都ポルトープランス近郊デルマで22日、倒壊家屋の下敷きになって死亡したシモーヌ・アルシミさん(74)の葬儀がひっそりと行われ、ひつぎには伝統の花輪ではなく通常の花束がささげられた。遺族は路上のがれきのそばに集まった後、近くの教会へ移動し賛美歌を歌い、遺体を見送った。

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毎日新聞 2010年1月23日 21時02分(最終更新 1月23日 21時51分)


ハイチ大地震:
国連と米国、緊急支援の役割分担で合意

 【ニューヨーク小倉孝保】ハイチ大地震で国連と米国は22日、緊急支援の役割分担について合意した。米軍がハイチで国連指揮下に入らないまま空港を管理するなどしたため、混乱があり国際支援団体から不満があがっていた。

 合意では、治安維持と復興の責任は、一義的にはハイチ政府にあるとしたうえで、国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)がハイチ政府支援の責任を負う、と規定。そのうえで、米軍は米軍指揮下のまま国連の活動を支援するという。

 米国のライス国連大使は声明で「この合意によって、ハイチにおける米国と国連の活動が公式なものとなり、今後、数週間の活動は協力的に行われる」と述べた。

 MINUSTAHは軍人、警察合わせて現在、約9000人。これを今後、最大1万2651人まで拡大するが、MINUSTAH自体が被害を受け十分な活動に入れない状況が続いている。一方、米軍はすでに1万3000人が展開し空港なども管理下においている。

 こうした中、フランスに本部を置く国際ボランティア組織「国境なき医師団」は20日、空港の利用を米軍に阻止されたと非難するなど国際支援団体が米軍に対する不満を募らせたため、国連が現地での役割分担について米政府との合意を急いでいた。

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毎日新聞 2010年1月23日 19時05分


ハイチ大地震:
国連総会が支援要求決議案を採択

 【ニューヨーク小倉孝保】国連総会は22日、ハイチ大地震で速やかな復旧・復興支援を求める決議案を採択した。▽国連加盟国と国連の全関係機関、国際金融・開発機関が速やかに継続的で適当な復旧・復興支援を行う▽国際社会が国連からのハイチ緊急支援要求にできるだけ早期に対応する--ことなどを求めた。

 決議案は日本、オーストラリアやブラジル、ドミニカ共和国などが共同で提出した。

 一方、潘基文(バン・ギムン)事務総長は同総会で演説し、国連の優先課題として、(1)救助や必要品配給など人道支援(2)治安維持(3)経済やインフラ回復などの復興への対応--の三つをあげた。また、事務総長は国連の犠牲者が70人になり、146人が行方不明になっていることを明らかにした。

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毎日新聞 2010年1月23日 19時02分


ハイチ大地震:
ユニセフ、子供700人を保護

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避難所の子どもたち。たくさんの身寄りの無い子どもが保護されたという=ポルトープランスで2010年1月22日、梅村直承撮影

 【ポルトープランス吉富裕倫】国連児童基金(ユニセフ)は22日、ハイチ大地震で家族らとはぐれた17歳以下の子供をこれまでに約700人保護したことを明らかにした。

 ユニセフは親が亡くなるなど家族と別れた子供が犯罪に巻き込まれることを防ぐため、地震発生後3日目から地元の民間団体と協力して、保護者のいない子供がいないか調べている。

 保護した子供は3カ所の施設に氏名を登録して預けられ、今後、親族を探したうえで、定住先が検討される。他の被災都市でも同様の活動を広げていく。

 ハイチには大地震前に38万人の孤児がいたと推計(07年)されており、ユニセフのカディビ広報官は「地震による孤児は何年もかけて解決していかなければならない問題だ」と話した。

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毎日新聞 2010年1月23日 18時10分(最終更新 1月23日 21時50分)


ハイチ大地震:
首都の病院に、今なお負傷者が次々に搬送

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貧困層が住むシテソレイユの病院。屋外に仮設されたテント病棟で泣き続ける、足の一部を失った男の子=ポルトープランスで2010年1月21日、梅村直承撮影

 【ポルトープランス庭田学】ハイチを襲った大地震から22日で10日がたった。首都ポルトープランスの各病院では、今なお負傷者が次々に搬送されている。

 首都北西部の貧困地区シテソレイユにあるショスカル病院。右足の一部を失った少年が、中庭に臨時に設営されたテント病棟の下で涙を流していた。

 ここ数日、ハイチの気温は30度を超える。テント病棟で患者に付き添う人々は、段ボール紙であおぎ、少しでも苦しみをやわらげようとしていた。

 同病院に支援に入っている「国境なき医師団」のファレス医師(エジプト)は「患者は次々にやってくるので現在の人数はわからない。300~400人ではないか」と話していた。

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毎日新聞 2010年1月23日 11時23分(最終更新 1月23日 12時22分)


ハイチ大地震:
死者11万1499人を確認…ハイチ内務省

2010年1月23日 11時10分 更新:1月23日 11時25分

 【ポルトープランス吉富裕倫】ハイチ内務省は22日、大地震で死者11万1499人が確認されたとの声明を発表した。AFP通信が伝えた。

 声明によると、負傷者は19万3891人に上り、地震で家を失った被災者60万9000人以上が約500カ所の臨時キャンプに収容されている。

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ハイチ大地震:
84歳の女性らを救出 被災から10日ぶり

2010年1月23日 11時1分 更新:1月23日 12時28分

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22日、地震発生からほぼ10日ぶりに救出され、ポルトープランス市内の病院に収容された84歳の女性=AP

 【ポルトープランス庭田学】ハイチ大地震に襲われた首都ポルトープランスで22日、84歳の女性と22歳の男性が倒壊した住宅から救出された。被災からほぼ10日ぶりで、AFP通信などは「奇跡的な救出」と報じた。

 同通信によると、女性が助かった現場では息子らが21日午前、自宅跡でうめき声に気付いた。約20時間、家族や友人らが素手で掘り続け、助け出した。女性は極度の脱水状態のうえ、胸部を負傷して意識はなく、病院で治療を受けている。

 22歳の男性は、イスラエルの捜索隊が助け出した。男性はイスラエル軍の開設した臨時診療所に運ばれ、同軍は「容体は安定している」との声明を出した。

 現地の国連広報担当者によれば、がれきから救助される例は日ごとに減っており、海外からの捜索隊の撤退が相次いでいる。

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ハイチ大地震:
発生から10日 支援届かず

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全壊した大統領宮殿の前で風にたなびく半旗=ポルトープランスで2010年1月21日午後0時16分、梅村直承撮影

 カリブ海の島国ハイチは22日夕(日本時間23日朝)、大地震の発生から丸10日を迎える。地震に首都ポルトープランスを直撃されたハイチ政府は、いまだに被害の実態をつかめず、国際社会からの緊急支援も行き届かない状態が続く。人口の8割が1日2ドル以下で生活する米州の最貧国の復興には、中長期的な視点に立脚した、災害に強い国づくりへの支援がカギとなりそうだ。【ポルトープランス吉富裕倫、庭田学、外信部・隅俊之】

 首都にある大統領宮殿の三つのドームは大地震で無残に崩れ落ちた。完全にまひしたハイチの政府機能を象徴する。震源から首都までわずか約25キロ。政府17省庁ビルのうち、木造の社会福祉省を除くすべての建物が倒壊した。

 ラセグ情報相は政府を人体に例え、「国の頭が切断された」と話す。

 地震直後、がれきの撤去に不可欠なブルドーザーなどの重機や、被災者搬送用のバスは全く機能しなかった。プレバル大統領や閣僚が国際機関と連携し、震災対策に本格的に乗り出したのは、震災から2日後の14日になってからだった。

 ハイチ政府は現在、平屋の小さな司法警察ビルを仮庁舎にしている。情報省に割り当てられたスペースは、庭の木の下に設けられた数メートル四方の一角だけ。地震発生から10日たった22日も政府機能はダメージを受けたままだ。

 ハイチ政府に代わって被災者の救助などにあたったのは、国連機関や各国からの救援隊だった。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、19日現在、世界各国から52チーム計1800人余が現地入りしている。

 しかし、政府の機能不全は国際社会の救援活動にも暗い影を落とした。本来なら、外国の救援隊は被災地の政府と情報を共有し、避難所に適した空き地や救助活動に使う道路などを選定する。ところが、今回は地震でハイチ政府がほとんどの重要記録を失い、職員の多くも被災。政府と国連の調整も不可能な状態に陥った。

 OCHAの報道官は「政府だけでなく(ハイチ国内の)国連施設も被災し、大きなダメージを受けた」と説明する。

 政府機能まひで、10万人とも20万人とも言われる犠牲者数の把握も困難だ。

 確認された遺体は約8万5000~9万人。だが、これは首都の犠牲者だけで、他の激震地の犠牲者は含まれていない。首都ですら、今も多くの遺体ががれきに埋まったままだ。

 東京都内で22日に会見した国連の赤阪清隆・広報担当事務次長は「被害ははっきりと数字で把握できる状態にはなく、全体の死者・負傷者数はかなり大まかな数字にとどまっている」と語った。

 ◇食料品高騰 貧困層に打撃

 「私らのような貧乏人の生活は、地震でますますひどくなった」。自宅が全壊したブルエンさん(49)一家8人は、ポルトープランス中心部の公園で肩を寄せ合いながら避難生活を送っている。「地震の前でも1日1食がやっとだった。地震後に食料の値段が上がり、今は1日1食も難しい」と言う。18歳の息子を失ったが、悲しむ暇もなく生きるのに精いっぱいだ。

 地震後、コメなどの食料品は1.5~2倍に高騰。ハイチの貧しい人々を支援する米国のNGO(非政府組織)「ケア」のペレラ氏は「地震の影響をもっとも受けているのは、蓄えのない貧困層」と話す。米国生まれのハイチ人で被災者支援のボランティアとして活動しているスーカーさん(35)は「米カリフォルニア州で94年にほぼ同規模の地震が発生した時、犠牲者は約60人。ハイチの死者がこれほど多いのは、貧困と粗末なインフラが原因だ」と断じる。

 食料援助などの緊急支援は今後、中長期的な復興支援に切り替わっていく。国連開発計画の村田俊一・東京事務所代表は「社会インフラをしっかり復興させることが重要。緊急支援と中長期的な復興支援を同時に行う必要がある」と指摘するが、国連が緊急支援に必要とする約5億7500万ドル(約520億円)のうち、22日までに集まったのは36%の約2億800万ドルに過ぎない。

 ハイチではこの200年間大きな地震はなかったが、毎年のようにハリケーン被害が続いてきた。これまでも、ハリケーンに襲われるたびに道路や港湾の修復を繰り返してきた。このため、国連国際防災戦略事務局の松岡由季・兵庫事務所代表は「地震の復興にはハリケーン対策も盛り込み、災害に強い社会へ立て直していくことが不可欠」と指摘する。

 独裁時代の後遺症に長く苦しんできたハイチだが、近年は治安が向上し、民間投資も増大するなど政治の安定化と経済発展が進みつつあった。ハイチを再び不安定な状態に逆戻りさせないためにも、中長期的な視点に基づく復興計画が必要とされている。

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毎日新聞 2010年1月22日 20時46分(最終更新 1月22日 21時30分)


ハイチ大地震:
被災者40万人移送計画 首都から郊外へ

 【ポルトープランス庭田学】ハイチ政府は21日、大地震で家を失った被災者のうち、約40万人を首都ポルトープランスから郊外に設置するキャンプ村に移送する計画を明らかにした。AP通信が伝えた。

 国際移住機関(IOM)によると、21日現在でポルトープランス市内で少なくとも50万人が家を失い、447カ所に分散する急造のテントで暮らしている。水の支給を受けているのは、そのうち3カ所のみだという。

 テント生活は衛生上の問題があり、医療関係者は過密状態の中で疫病が拡散する危険性を指摘している。ハイチのロンシャン大統領補佐官は「郊外への被災者の移送は1週間から10日以内に始まる」と見通しを語った。

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毎日新聞 2010年1月22日 11時52分(最終更新 1月22日 13時24分)


ハイチ大地震:
ドミニカから兵士150人受け入れ

 【ニューヨーク小倉孝保】大地震被災に苦しむハイチ政府は、隣国ドミニカ共和国から兵士150人を国連の治安要員として受け入れることを決めた。国連が21日明らかにした。ドミニカ共和国からハイチへ送られる緊急支援物資の安全確保が狙い。ハイチとドミニカ共和国は歴史的に緊張状態にあったため、ハイチ政府の対応が注目されていた。

 また、国連は、ハイチ大地震によって職員61人の死亡が確認されたと発表した。いまだに約180人が行方不明になっており、死者は増える見通しだ。

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毎日新聞 2010年1月22日 11時02分


ハイチ大地震:
公園に廃材使って小屋 避難者たくましく

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完成した「小さな家」の前で洗濯をするシェリーヌさん。家の中ではテレビがついていた=ポルトープランスで2010年1月21日、梅村直承撮影

 【ポルトープランス庭田学】大地震で壊滅的な打撃を受けたハイチの首都ポルトープランスで、避難場所の公園などに廃材を使った小屋が建てられ始めている。生き延びるために苦心するハイチの人たちのたくましさが垣間見える。

 全壊した大統領宮殿そばの公園では21日、マルセルさん(35)手作りのピラミッド形の「小さな家」がほぼ完成していた。2日前には骨組みだけだったが、今ではトタンの壁で覆われ、一家3人が寝起きできる。

 約2メートル四方の家は狭いが、発電機が備えられ、扇風機からテレビ、電灯、アイスボックスまである。避難生活としては他の被災者よりも快適そうだ。妻シェリーヌさん(32)は「玄関」の前で洗濯をしながら雑貨を販売していた。

 「私はエンジニアだからね。これくらいは簡単だよ」と、マルセルさんは得意げな笑顔を見せた。「近所」の避難者たちもマルセルさんにならって廃材で小屋を建て始めている。

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毎日新聞 2010年1月22日 10時41分(最終更新 1月22日 13時25分)


ハイチ大地震:
生後15日、無傷で 5歳、11歳も救出

2010年1月21日 21時9分 更新:1月21日 22時47分

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19日、地震発生から1週間が過ぎたポルトープランスで、がれきの下から救出された子供と、歓声をあげるレスキュー隊=ビデオ映像から、ロイター

 【ポルトープランス庭田学】発生から1週間が経過したハイチ大地震で、乳児や子供の奇跡的な救出劇が相次いでいる。南部ジャクメルでは生後15日の女児の生存が確認され、首都ポルトープランスでも5歳の男児と11歳の女児が救出された。生き埋め被災者の「生存の限界」とされる72時間を大きく上回る生存情報は、救助関係者らの励みになっている。

 米ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)によると、ジャクメルで19日救出されたのは発生当時は生後8日目で、2階にいたエリザベートちゃん。母親が一時1階に降りた直後に地震が起き、ベッドとともに家が崩れ落ちたが、無傷だった。約1週間、水や食事なしで過ごした生命力に、母親は「神の慈悲だ」と声を震わせた。

 CNNテレビによると、ポルトープランスでも20日、がれきの下から親類の手で5歳の男児が救出された。脱水状態で「のどが渇いた」と何度も訴えたという。母親は死亡し、父親は行方が分かっていない。

 またAFP通信によると同日、崩れた建物のがれきの中から11歳の女児が近所の人々によって救出された。食事を取れなかったためやせ細り、泣いていたという。

 生存が相次いでいる理由として、比較的暖かい日が続いていることなどが指摘されている。国連によると、がれきの下から救出された被災者は90人を超えた。

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ハイチ大地震:
豪華船が相次ぎ寄港 ジェットスキー楽しむ

2010年1月21日 21時5分 更新:1月21日 21時46分

 【欧州総局】ハイチ大地震で懸命の救援活動が続くなか、被災地の首都ポルトープランスから約100キロ離れた同国北部のリゾート地の海岸に、米国のクルーズ船3隻が相次いで寄港し、下船した観光客数千人がジェットスキーなどを楽しんでいる。被災者感情に配慮して下船しない客もいるが、運航会社は「復興の手助けとなる」と正当化し、議論を呼んでいる。英ガーディアン紙が報じた。

 同紙によると客船は「ロイヤル・カリビアン・インターナショナル」が運航。北部ラバディーのプライベートビーチをハイチ政府から借りていて、地震前からの計画通り15、16、19日に別々の船が寄港した。同社は地震後、寄港で生じる利益分と100万ドルの寄付を表明し、救援物資も運んだ。

 2隻目の乗船客のうち約2800人は下船し、警備された海岸で遊んだが、約400人は下船を拒否した。一方、同社のゴールドスタイン社長はブログで、従業員雇用による経済効果を強調した。

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ハイチ大地震:
脱走囚か ブラジル軍の武器略奪

 【ポルトープランス吉富裕倫】ハイチ大地震の救援部隊としてハイチ入りしたブラジル軍の武器庫が襲撃され、保管されていた銃が奪われたことが20日分かった。地元ラジオが報じ、国連も事実を確認した。

 奪われた銃の数などは不明。ハイチでは震災後、数千人の囚人が脱走しているとされ、襲撃したのはこれら囚人の一部とする見方が有力だ。

 ポルトープランス周辺では連夜のように銃声が相次ぎ、住宅が襲撃されたり、日常的に略奪が行われている地域がある。

 商店街が軒並み倒壊した市内のポルタイサンジョセフ地区のマカジュ通り付近では、残された商品を盗むため約1000人が物色。それぞれの仲間同士で盗品を分け合う姿が見られた。
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毎日新聞 2010年1月21日 20時03分


ハイチ大地震:
日本郵政、義援金送付無料に

 日本郵政グループは21日、ハイチ大地震の災害被災者支援のため、日本赤十字社などが集めている災害義援金の現金書留郵便料金や振込手数料の無料化を始めたと発表した。

 郵便料金が無料になるのは、日本赤十字社(〒105-8521 東京都港区大門1の1の3 「ハイチ地震」救援金窓口)あての義援金で、個人からの差し出し分のみ。封書の表面に「救助用郵便」と明記する。2月12日受け付け分まで。

 振込手数料が免除になるのは、▽日本赤十字社=口座番号00110-2-5606、通信欄に「ハイチ地震」と記載▽財団法人日本ユニセフ協会=同00190-5-31000、通信欄に「ハイチ」と記載▽24時間テレビ=同00160-5-2400、通信欄に「ハイチ地震」と記載--の3団体。日赤は2月12日まで、ほか2団体は当面の間。ただし、郵便局窓口での申し込みのみで、ATMでの振り込みは有料扱い。

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毎日新聞 2010年1月21日 19時40分


ハイチ大地震:
被災者、国連部隊と押し問答も 治療求め

Pasted Graphic
けがをしている娘を抱え国連兵士に治療を求め詰め寄る被災者の夫婦=ハイチ・ポルトープランスで2010年1月20日午前9時38分、梅村直承撮影

 【ポルトープランス庭田学】大地震で深刻な被害を受けたハイチの首都ポルトープランスの国際空港近くにある援助物資の集積所には毎朝、大勢の人が食料配布を期待して集まっている。

 集積所内には医師もおり、20日朝には治療を求める負傷者の姿も。しかし、診察は少人数にしか対応できず、門の前で警備の国連部隊員と被災者が押し問答になる場面もあった。国連部隊は周辺の道路を封鎖して混乱が生じないよう警戒している。

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毎日新聞 2010年1月21日 12時03分(最終更新 1月21日 12時06分)


ハイチ大地震:
救援物資、大人に交ざり短い手を懸命に伸ばし大声あげる子

Pasted Graphic 3
長びく避難所生活で疲れが見える子どもたち=ハイチ・ポルトープランスで2010年1月19日、梅村直承撮影

 子どもの泣き声が色とりどりのテントから聞こえてくる。大地震から1週間以上がたったハイチの首都ポルトープランス。空き地や公園に点在する被災者の避難所では子どもたちにも疲れが見え始めている。

 救援物資にできた長蛇の列で、大人たちに交ざり短い手を懸命に伸ばし大声を上げる子どもたち。少しでも多く手に入れようと、もらった水とクッキーをシャツのなかに隠し再び並び直す姿もあった。

 けがをして動けない子どもも多い。国際的な支援が続いているが、避難所は無数にあり支援は行き渡らない。今でも首都内の病院には次々と子どもの患者も運ばれ、前の路上で横になっている。

 子どもたちが生まれ育った家に、いつか戻る日があることを祈ってやまない。しかし、復興のめどはまったくたっていない。<写真・文 梅村直承>

【毎日新聞東京社会事業団】被災にあった方々へ愛の手を。ハイチ地震救援金を受け付けています
NTTコミュニケーションズの電子マネー「ちょコム」でも受け付けます

 2010年1月21日


ハイチ大地震:
国連職員の犠牲者49人 不明は300人

2010年1月21日 10時41分 更新:1月21日 11時15分

 【ニューヨーク小倉孝保】国連は20日、ハイチ大地震での国連職員の犠牲者が49人、行方不明者が約300人になったことを明らかにした。各国からの緊急援助隊が19日までに救助した市民は計121人になっている。

 また、国連によると、世界食糧計画(WFP)のジョゼット・シーラン事務局長が21日から2日間の日程で現地を訪問し、ハイチ政府などと食料の緊急支援について協議する。WFPはこれまでポルトープランスを中心に約20万人に対して約100万パックの食料を配給しているが、現地では食料を受け取れない市民の不満が募っている。

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ハイチ大地震:
M6.1の余震 発生後で最大規模

2010年1月20日 21時44分

 米地質調査所(USGS)によると、20日午前6時(日本時間同午後8時)すぎ、ハイチの首都ポルトープランスの西南西約60キロを震源とするマグニチュード(M)6.1の地震があった。12日に発生したハイチ大地震の余震としては最大規模。(共同)

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日本ハイチ友好議連:
支援方針を確認

 超党派の日本・ハイチ友好議員連盟(会長・谷垣禎一自民党総裁、11人)は20日、国会内でハイチ大地震への対応を協議し、議連の新規会員を募って会費を義援金にあてる方針を確認した。メンバーが個々の人脈を生かして業界団体にも支援を呼びかける。谷垣氏は同日、議連に10万円を寄付した。民主党が被災地に派遣している調査団から帰国後に報告を聞き、議連としての支援策も検討する。

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毎日新聞 2010年1月20日 21時00分


ハイチ大地震:
両親死亡の2歳児…親友引き取るが公園生活

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ハイチ大地震で孤児となったナビアソンちゃん(手前)。引き取ったナオミさんは両親の死を伝えていない=ハイチの首都ポルトープランスで2010年1月19日、吉富裕倫撮影

 【ポルトープランス吉富裕倫】「ママ、パパ」--。ハイチ大地震で両親を失い、首都ポルトープランスの公園で生活する男児ナビアソン・デスティンちゃん(2)は、時々両親の所在を尋ね、泣くという。ナビアソンちゃんのように震災で親を失った孤児がどれほどいるのか、実態の把握はこれからだ。

 ナビアソンちゃんがどのように震災を生き延びたのか、詳細はわからない。ナビアソンちゃんの両親の親友、ナオミ・ジャンさん(22)が地震2日後の14日、安否を確認するため家に駆け付けたところ、ナビアソンちゃんは、近くの路上で泣いていた。ナオミさんの顔を見ると自ら歩み寄ってきたという。

 自動車部品販売業の父、青果小売業の母の元に生まれたナビアソンちゃん。近所に住んでいたナオミさんは1カ月以上預かったこともある。ナオミさんは迷わず引き取った。

 両親の行方をナビアソンちゃんから聞かれると「お父さんとお母さんはキャンディーを買いに行ったのよ」と説明し、死を伝えていない。ナビアソンちゃんが納得せず、泣くこともある。

 ナオミさんも地震のため自宅の土地が地滑りを起こして家に帰れず、家族と公園で暮らす生活だ。「他に親族が分からなければ、学校にも行かせ、自分の子供と同じように育てていきたい」とナビアソンちゃんの幸せを願う。と同時に「自分たちの生活も将来どうなるか全く分からない」とため息をついた。

 市内の孤児院メゾン・ド・ルミエールのロバート・テイラーさん(44)によると、まだ市当局や援助機関からの震災孤児の受け入れ要請はないという。「孤児になった子供のほとんどは路上で生活しているだろう。ここではあと数人しか受け入れられない。震災孤児はこれからの大きな問題だ」と話した。

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毎日新聞 2010年1月20日 20時08分(最終更新 1月20日 23時35分)


ハイチ大地震:
治安の悪さ、自由な救出活動阻む

2010年1月20日 19時0分 更新:1月20日 23時54分

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軍隊の援護を受け活動するフランスのレスキューチーム=ハイチ・ポルトープランスで2010年1月19日、梅村直承撮影

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ポルトープランスの港湾地区の倉庫周辺をパトロールする国連部隊=2010年1月14日、庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学】ハイチ大地震で、駆けつけた国外からのレスキュー隊などが、同国の治安問題から自由な救出活動を制限されている。慢性化しているハイチの治安の悪さが、行方不明者捜索の障害になっている。

 複数の関係者によると外国のレスキュー隊などは、ハイチに駐留する平和維持活動(PKO)のための国連部隊の警備を伴わなければ、被災地での活動が許可されないという。

 被災者たちが外国人のレスキュー隊員たちに支援物品を要求するなどの混乱が発生したり、隊員が犯罪に巻き込まれたりすることを防ぐためだという。

 フランスなどのレスキュー隊のように、自国の軍人が責任をもって警備に当たる場合は、自由な活動を許可されているらしい。

 コロンビアは約300人をハイチに送り込んでいる。しかし、コロンビアの消防士は「我々には被災地でもっとやるべきことがあるが、それを自由にやらせてもらえないのが悔しい」と話した。身元確認を専門にするチリの警察官は「治安が悪いことは理解しているが、我々の活動は制限されており、非常にもどかしい気持ちだ」と語った。

 一方、犬と一緒に行方不明者捜索を続けているウルグアイ陸軍の一人は、「我々自身に危険があってはならない。国連部隊の警備は必要だし、自由な活動の制限はやむを得ない」と話していた。

 ハイチの地震後、世界各国のレスキュー隊が同国に入った。がれきの下から生存者を救出するなど、一定の成果を上げた。一方、ハイチの被災地では、地震後に略奪行為が横行するなど、治安がさらに悪化する可能性が指摘されている。

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ハイチ大地震:
支援協議の国際会議に米国務長官が出席へ

 米国務省は19日、ハイチ支援を協議するため25日にカナダのモントリオールで開かれる国際会議にクリントン国務長官が出席すると正式に発表した。(共同)

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毎日新聞 2010年1月20日 18時44分


ハイチ大地震:
日本の専門料理店で募金 客から支援の声

2010年1月20日 12時38分 更新:1月20日 12時43分

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カフェ・ハイチ本店に設置された募金箱=東京都新宿区西新宿1の同店で2010年1月19日午後4時55分、小泉大士撮影

 約300万人が被災したとされるハイチ大地震の被災者を支援するため、国内唯一とされるハイチ料理専門店「カフェ・ハイチ」(本店・東京都新宿区)が、募金活動を始めた。「商売でお世話になっているハイチのために力になりたい」と、首都圏7店舗に募金箱を設置し、集まった義援金はハイチ大使館(港区)に贈る。

 同店は74年、新宿駅南口近くにオープン。今では川崎市など首都圏に7店舗、札幌市に1店舗ある。店を運営する「ハイチ物産」(新宿区)の槍原(うつぎはら)光弘社長(64)は学生時代に札幌市のハイチ料理店でアルバイトし、同国の風物に魅せられた。卒業後、ハイチに渡り、日用品の貿易に携わった。帰国後に料理店を開店。店内ではハイチ音楽を聴きながら、ハイチ風のコーヒーやドライカレーを味わえる。歴代の大使も常連で、元大統領も来店したことがあるという。

 中米カリブ諸国のうち、キューバやジャマイカの料理店は日本国内でも多いが、ハイチはなじみが薄く、料理店はカフェ・ハイチの店以外ほとんど見当たらないという。

 募金のきっかけは、地震があった13日夜、来店したハイチ人の留学生が「店で募金活動はしないのか」と店員に尋ねたことだった。香りがよく苦みの少ないコーヒーを好む全国のファンからも「支援したい」と電話が相次いだという。店員仲間たちが「ぜひお役に立ちたい」と募金することにした。

 コーヒー豆などを輸入している現地のエージェントは音信不通だったが、16日に米国在住の家族を通じ無事が確認された。ハイチ物産の玉置進専務(64)は「陽気なハイチの人たちがあんなにショックを受けている姿を見るといたたまれない。外国の救援活動が行き届かない地域や周辺のスラム街などへの支援を手助けできれば」と話す。【小泉大士】

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ハイチ大地震:
国外脱出へ長い列 英語などで「助けて」

2010年1月20日 11時47分 更新:1月20日 16時28分

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ドミニカ共和国側への入国を今かと待つハイチの人々=ヒマニ検問所のドミニカ側から2010年1月19日午前9時15分、梅村直承撮影

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路上に立ち助けを求めるプラカードを掲げる被災者たち=ハイチ・ポルトープランスで2010年1月19日午後1時37分、梅村直承撮影

 【ポルトープランス吉富裕倫、庭田学】救援の遅れるハイチ大地震の被災地で、自国を見切り、国外へ脱出を試みる被災者が増えている。ドミニカ共和国との国境にあるヒマニ検問所や首都ポルトープランスのカナダ大使館では19日、長い行列ができた。

 家族15人中父母ら12人が死んだという男性ジョシン・リジェンさん(24)は、パスポートもないままヒマニ検問所で入国許可を申請した。「家もなくなりドミニカで仕事を探すしかない」と祈るような思いだ。

 首都のカナダ大使館にも数百人が殺到。システムダウンでビザを発給できず、カナダ在住の家族から呼び寄せる手紙があれば、入国を認めることにしたからだ。

 並んでいた女性、ジャクリーン・フェリスマさん(59)は「何もかも破壊され、ものすごいストレス。数カ月だけでもハイチを離れたい」と話した。

 一方、屋外生活をする被災者が、仏語などの公用語以外の英語やスペイン語で「助けてほしい」などと書いた看板が目立っている。ハイチ政府が頼りにならないため、外国政府や外国救援部隊に窮状を訴える格好だ。

 「SOS」との文字と矢印を記した看板に導かれて歩くと、約200メートル先に被災者約1000人が避難する空き地があった。学生のブレーズさん(32)は「政府は私たちがここに避難していることを知らない。私たちには水も食料も援助もない」と訴えた。

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ハイチ大地震:
AMDA代表ら被災者支援に出発

2010年1月20日 11時17分

 国際医療救援団体「AMDA」(本部・岡山市)の菅波茂代表(63)と朴範子医師(38)は20日、ハイチ大地震の被災者支援のため出発した。関西空港からドミニカ共和国の首都・サントドミンゴを経て被災地入りする予定。

 15日に出発した先発チームは首都・ポルトープランスから約60キロ北のサンマルクで、カナダの民間団体や現地NGOと救援活動を始めている。菅波代表は「サンマルクに残っている病院施設での手術と、ドミニカとの国境地帯での巡回診療が中心になると思う」と話した。

 義援金は郵便振替(口座番号01250・2・40709、口座名「特定非営利活動法人アムダ」、通信欄に「ハイチ地震」と記入)で受け付ける。【椋田佳代】

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ハイチ大地震:
国連職員を追悼 NY本部で集会

2010年1月20日 10時51分 更新:1月20日 11時28分

Pasted Graphic
ろうそくを手に追悼する潘基文事務総長(左)=AP

 【ニューヨーク小倉孝保】現地のトップ職員が死亡するなどハイチ大地震での国連の犠牲が史上最大になる中、ニューヨークの国連本部で19日、亡くなった職員を追悼する集会が開かれた。

 本部1階のロビーで開かれた集会には、国連職員や各国外交団が参列して黙とう。潘基文(バン・ギムン)事務総長が哀悼の意を示した後、参列者は本部ビル外側の広場に集合し国連の半旗の下、ろうそくの火を持って、静かに追悼した。

 ハイチ大地震では国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)の代表であるアナビ事務総長特使(チュニジア)やナンバー2のダコスタ副代表(ブラジル)らが死亡している。

 一方、国連安全保障理事会は19日、現地の平和維持活動(PKO)要員を約3500人増やす決議案を全会一致で採択した。潘事務総長が治安を確保するため安保理に要求していた。

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ハイチ大地震:
子供の未来に支援を…教育NGOの女性訴え

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現地の学校の写真を手に語る山田カリンさん=横浜市中区で2010年1月17日、隅俊之撮影

 ハイチ大地震では多数の学校も被害を受けた。横浜の非政府組織(NGO)「ハイチの会セスラ」(高岡美智子代表)が支援する首都ポルトープランス近郊の慈善学校でも、教員が犠牲になり、何人かの生徒はいまだに安否不明だ。ハイチ出身で同会顧問の山田カリンさん(46)は「全員が無事でいてほしい。国の未来を担う彼らに教育の機会を与え続けたい」と話している。

 カリンさんは96年に来日し、日本人の夫と結婚。姉のマリクレールさんが86年に設立した慈善学校「セスラ」を支援するため、03年にNGOをつくった。ポルトープランスの北東約12キロの町ボンレポスにある同校では、公立校の授業料を払えない3~19歳の約300人が読み書きを学んでいる。マリクレールさんによると、水や食料が不足する中、学校は再開できず、校庭は近所の住民らの避難場所になっているという。

 カリンさんは「地震で両親を亡くした子供も多い。子供たちが自立して生きていけるよう支援してほしい」と訴えている。【隅俊之】

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毎日新聞 2010年1月19日 21時06分(最終更新 1月19日 21時59分)


ハイチ大地震:
「住む場所もない」…救援届かぬ震源地

2010年1月19日 21時3分 更新:1月19日 22時9分

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崩壊した自宅の前で息子のロレンゾちゃんにお乳をあげるフィロジェンさん。災害に負けず子どもを懸命に育てている=ハイチのオランジェで2010年1月18日、梅村直承撮影

 【オランジェ(ハイチ南部)吉富裕倫】ハイチ大地震から19日で1週間。ガソリン供給の再開など復興作業が始まった都市部に対し、山間部の被災者は「誰も助けに来てくれない」と孤立感を深めている。首都ポルトープランスから南西へ約25キロ。震源の真上にある集落オランジェを18日、報道機関として震災後初めて訪ねた。

 「地面が割れるのが見えた。この世の終わりが来たと思った」。小学校教師のフランツォ・ルイさん(22)は12日夕、すさまじい地鳴りと突き上げるような揺れに襲われた。妻フィロジェンさん(20)から入浴していた生後3カ月の長男ロレンゾちゃんを受け取ると、3人で裏山の頂上を目指し駆け上がった。

 幸い3人にけがはなかったが、ルイさんの自宅裏手の土砂は崩れ、コンクリートと石で造られた壁も崩壊した。震災後は山崩れを恐れ、平地にむしろを敷いて寝ている。

 ルイさんの受難は地震だけではなかった。2年前にはハリケーンに襲われ、河川のはんらんによって穀物畑を流されてしまった。ルイさんは「洪水の被害に遭っても、自宅に住むことはできた。でも、今は住む場所もない。ハリケーンで財産を失い、地震ですべてを失った」と途方に暮れる。

 オランジェへ行くには、自動車用道路の終点からオートバイのタクシーに乗り換えて約30分走り、さらに何度か徒歩で川を渡り、渓流沿いの山道を上らなければならない。道中、所々で山の斜面が滑り落ちて地肌をさらしていた。

 記者がオランジェにたどり着いた時、ルイさんは保存してあった食料を取りに、崩壊した自宅に戻ったところだった。ルイさん夫妻は「米の値段が高騰して買えない」「赤ちゃんのためにきれいな水がほしい」と避難生活の悩みを訴える。だが、自動車用道路から遠く離れた地に、車で巡回している援助機関の手は届かない。

 ピーナツ栽培を主要産業とするオランジェには、数棟ずつ民家が点在。人口は5585人だ。震源の真上で激震にさらされたにもかかわらず、低層の簡易な木造建築が主体だったため、今のところ死者や重傷者は確認されていない。

 集落の小屋には、近くの集落で足を負傷し、運び込まれた100歳の女性、ロバンナさんがいた。娘のシェリーさん(54)と孫の2人は地震と同時に家から外へ飛び出して無事だったが、ロバンナさんは倒れた壁ごと外へ放り出された。近所の人に頼み、担架でオランジェの息子の家へ運んでもらった。

 被災前は歩いたり話したりできたが、今は意識不明の寝たきりだ。医療機関の巡回はない。時折、うめき声を上げる母の姿に、シェリーさんは「早く治療を受けさせたい」と表情を曇らせた。

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ハイチ大地震:
日本人医師奮闘 手術に診察、息つく暇なく

2010年1月19日 15時0分 更新:1月19日 15時0分

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病院を訪れた患者に応対する小田医師=ポルトープランスの国立総合病院で2010年1月18日、庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学】ハイチ生まれで同国に住む日本人、小田むっくあか医師(31)が、大地震に見舞われた首都ポルトープランスの病院で、被災者の治療に奮闘している。小田さんは「命を救うために医師としての責任を果たしたい」と話している。

 小田さんの父はハイチ人、母は大阪府富田林市出身の日本人。小田さんはハイチ生まれで、この国で暮らしてきたが、国籍は日本だ。

 外科医として、ポルトープランス中心部の国立総合病院で働き、今月12日の大地震直後から、休む間もなく被災者の手術や診察を続けている。地震発生時について小田さんは「私も地震にびっくりして、自分の家族のことを心配した。だが、すぐに働き始めた」と振り返った。

 在留邦人21人のうち在ハイチの日本大使館が17日朝、最後に無事を確認できたのが小田さんだった。地震後の目まぐるしい忙しさの中、大使館員との接触が遅れたためだ。

 18日、病院を訪れると、小田さんは次々に運び込まれる患者から患者へと診察をして回り、息をつく暇もない様子だった。基本的な日本語と母語のフランス語に加え、英語、スペイン語も堪能なので、外国からの医療支援スタッフとチームを組んで治療に当たっていた。また、病院職員らに新しい担架の使用方法を教えるなど、エネルギッシュに駆け回っていた。

 小田さんは、ハイチを襲った大地震を「本当につらい出来事だ」と言いつつ、「私は患者のためにベストを尽くしたい。すべての人を助けたい」と決意を語る。この日、クリントン元米大統領が同病院を訪問。「ハローとあいさつをしたよ」と少しだけ笑顔を見せた。

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ハイチ大地震:結核やエイズ患者悪化を懸念
ハイチ大地震:日本医療チームが活動始める


ハイチ大地震:
結核やエイズ患者悪化を懸念

 大地震による交通網の遮断が長期化することで、ハイチに多い結核やエイズの患者の症状悪化も懸念されている。政府の国際緊急援助隊医療チームの一員として現地入りした長崎大熱帯医学研究所の山本太郎教授(国際保健学)が指摘した。

 山本教授は03年7月から9カ月間、現地でエイズの母子感染予防について研究した経験がある。

 山本教授によると、ハイチでは成人の5~10%がエイズウイルス(HIV)に感染しており、「薬の服用が途絶えると、薬が効かない耐性ウイルスや耐性菌が出現する可能性が高い」と警告している。【林田七恵】

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ハイチ大地震:
日本医療チームが活動始める

2010年1月19日 11時15分 更新:1月19日 14時1分

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足をけがした被災者の医療活動にあたる日本の国際緊急援助隊医療チーム=ハイチのレオガンで2010年1月18日、梅村直承撮影

 【レオガン(ハイチ南部)吉富裕倫】ハイチ大地震で日本の国際緊急援助隊医療チーム25人が18日、首都ポルトープランスの近郊レオガンの看護学校にテントを設置し、被災者への治療活動を始めた。レオガンは震源に近く、約90%の建物が損壊したとみられる激震地区。100人を超える患者らが次々と訪れ、医師4人、看護師7人を含むスタッフは昼休み返上で手当てにあたった。

 運び込まれた女性のローズベリン・サンルイさん(18)はX線検査で骨盤骨折が判明。母親(49)は「専門的な判断をしてもらい感謝している」と話す。

 二石(ふたいし)昌人団長は「被害は思ったより深刻だ」と述べた。派遣チームは今後約2週間滞在して治療にあたる。

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ハイチ大地震:
クリントン元米大統領が視察

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ハイチ国立総合病院を視察に訪れたクリントン元大統領=ポルトープランスで2010年1月18日、庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学】国連ハイチ担当特使を務めるクリントン元米大統領は18日、ハイチ大地震の被災状況と救援活動を視察するため、首都ポルトープランスを訪れた。約1500人の被災者が治療を受ける国立総合病院を訪問。元大統領は、負傷した患者が今も次々に運ばれ、治療を受ける様子を時間をかけて視察した。

 元大統領は娘のチェルシーさんを同行。自らが運営する慈善団体「クリントン財団」を通じて医薬品の他、夜間も医療活動ができるように発電機を提供すると約束した。

 元大統領は16日、ホワイトハウスで会見し、ブッシュ前大統領とともに、ハイチ復興支援のための「クリントン・ブッシュ・ハイチ基金」設立の責任者になると発表した。

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毎日新聞 2010年1月19日 11時13分(最終更新 1月19日 12時45分)


ハイチ大地震:
国連、3500人追加派遣へ 治安確保で

2010年1月19日 10時46分 更新:1月19日 10時48分

 【ニューヨーク小倉孝保】ハイチ大地震で国連の潘基文(バンギムン)事務総長は18日、国連平和維持活動(PKO)部隊に警察官1500人、軍人2000人の計3500人を追加派遣するよう国連安全保障理事会に要請した。PKOの国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)では現在、警官、軍人合わせて約9000人が活動しているが、地震を機にした物資不足や略奪などで治安が十分確保できない状況にあり、増強を決断した。

 安保理での協議後、事務総長が記者団に明らかにした。事務総長は17日に現地を視察。支援を被災者に行き届かせるための課題として、治安の悪化など「ボトルネック(障害)」を取り除き、援助受け入れの調整態勢を整えることを挙げ、PKO要員の早急な増強が必要だと判断したと説明した。

 国連平和維持活動担当事務次長のアラン・レロイ氏によると、増員でハイチ警察を補強し、支援活動の警護にあたる。資機材の中継地である北部の港のほか、ドミニカ共和国とハイチの首都ポルトープランスとを結ぶ主要輸送路や、物資の配布拠点に配置される。

 AFP通信などによると、救援物資の配給の遅れなどから被災者の焦りが募り、暴力事件や商店の略奪行為が首都では増えているとの報告もある。

 安保理は19日にも、要員増強を認める決議案を採択するものとみられる。

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ハイチ大地震:
スラム住民の生活直撃 危険地に家屋密集

 【ポルトープランス吉富裕倫】「お金がないからここに住むしかなかった」。ハイチ大地震で崩壊したポルトープランス市内のスラム地区に住む女性、ニンダ・シラクさん(23)は、コンクリートブロックの壁が崩れ落ちた自宅でぼうぜんとつぶやいた。政府が危険地域とみなす急斜面の一帯はほぼ全壊。震災は貧困世帯を直撃した。

 シラクさんの自宅は、切り立った急斜面に住宅が密集するメニリ地区にあった。トイレも電気も水道もない、12平方メートルの小部屋2室に親族9人の生活。屋外の共用トイレを使い、水はバケツで運んできた。キッチンはなく、石炭で火をおこして料理を作っていた。

 メニリ地区は70年代、政府が住宅の建てられない危険地域に指定することをいったん決めた国有地。だが法律が施行されないまま、勝手に地主だと主張する人たちが土地を売り始めた。住宅に適した他の私有地に比べ、半額から4分の1の価格で家が建てられた。

 親族のうち、働き手は小売商の母と屋台で総菜を売るシラクさんだけ。2人の月収計約6000グールド(約1万5000円)しかない一家にとって、他の土地は選択肢になかった。

 同地区の小売店経営の女性、エルビー・ピエールさん(42)も自宅が倒壊し、避難所暮らし。22歳と16歳の娘2人を震災で失った。「急斜面でも自分の家は岩の上だから大丈夫だと思っていた。でも砂地の上でも岩の上でも危険な場所だった」と嘆く。

 斜面に石を積み上げ土台を作り、コンクリートブロックとトタン屋根の住宅が重なるように建つ同地区では、雪崩のように住宅が崩壊した。10年以上住むジョー・ジョネルさん(31)によると、住民数百人のうち約60人が死亡したという。

 政府関係者によると、ハイチには日本の建築基準法にあたる法律は事実上なく、誰がどんな建物を建設しようが行政のチェックは全くないという。

 ジョネルさんは「メニリに住んでいるのは貧しい地方から都会に働きに来た人々。危険な場所でも、お金がなければ必要に応じて住むしかない」と話した。

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毎日新聞 2010年1月18日 21時25分


ハイチ大地震:
被災者救援で「外交戦」展開 米国や中国

 ハイチ大地震を巡り、米国や中国などが熱い「支援外交」を展開している。中南米諸国との関係改善などを目指すオバマ米政権は、空母や病院船に加え1万人規模の軍部隊の派遣に乗り出すなど、内外に存在感を誇示。中国も、ハイチと外交関係を持つ台湾に対抗するかのように、援助の規模を積み増している。震災支援の舞台裏を探った。

 ◇米、威信をかけた大部隊を派遣

 「米国史上最大の救援活動の一つだ」--。オバマ米大統領は16日、ホワイトハウスでブッシュ前大統領やクリントン元大統領と並んで演説し、米国の威信をかけてハイチ支援に臨む決意をこう表現した。地理的に近く、多くの自国民が暮らすハイチに手厚い支援を提供することで、強い指導力を示す一方、中南米における米国の存在感を改めて誇示する狙いもありそうだ。

 オバマ大統領は14日、1億ドル(約90億円)の支援を発表。15日には、ヘリコプター19機を搭載した米原子力空母「カール・ビンソン」がハイチ沖に到着した。約1万人の米陸軍空挺(くうてい)部隊なども18日までにハイチに展開する。断交中のキューバからは、負傷者搬送のため領空通過の承認も取り付けた。

 20世紀前半に米軍占領下にあったハイチには地震前、約4万5000人の米国人が居住。国務省によると、震災によってこれまでに15人の死亡が確認された。地震発生から3日目の素早い支援発表には、05年に米南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」を巡る、ブッシュ前政権の対応の遅れへの反省が込められている、と米メディアは伝えている。

 また、オバマ政権にとって、中南米諸国との関係改善は重要な外交課題になっている。キューバやベネズエラといった反米諸国から関係改善の期待が寄せられたオバマ政権だが、ホンジュラスで起きたクーデターの仲介に失敗するなどして、急速に信頼感を失いつつある。

 一方、カリブ海地域で経済的な影響力を強めているのが中国だ。今回も国交のないハイチにいち早く救助部隊を派遣するなど存在を印象付けており、米国との間でしのぎを削る構図になっている。【ワシントン草野和彦】

 ◇存在感を増す中国

 中南米での影響力拡大を目指す中国は、ハイチへの支援を巡り、台湾との間でも激しい外交戦を繰り広げている。

 台湾に先駆けて救助部隊を派遣し、100万ドル(約9000万円)の緊急援助を表明した中国に対し、台湾は援助額を500万ドル(約4億5000万円)に積み増すなどして巻き返しを図っている。

 中国外務省によると、50人の救助部隊がハイチ時間の14日未明、救援物資20トンや救助犬などとともに被災地に到着。地元住民の救出や診療を開始した。

 国連平和維持活動(PKO)部隊の中国人隊員の被災や、四川大地震の経験などもあるが、将来的にはハイチとの国交樹立につなげたい思惑とみられている。

 一方、台湾の救助部隊は13日に出発したが、ハイチの交通網が地震で寸断されたため、隣国ドミニカ共和国に足止めされ、現地入りは中国の救助部隊より丸2日遅れた。

 援助の規模を巡っては、台湾は地震直後に50万ドルの支援額を表明。中国が100万ドルを提示したため、対抗上、急きょ500万ドルに増額した。だが、中国もその後、3000万元(約4億円)相当の緊急援助物資の提供を決めたため、総額では5億円近くとなる中国が台湾を一歩リードした格好だ。

 台湾が外交関係を持つ世界23カ国のうち、12カ国は中南米に集中している。馬英九総統は劣勢を巻き返すため、今月27日に中米ホンジュラスでの新大統領就任式に合わせ、ドミニカ共和国に立ち寄り、総統自ら支援物資を届ける計画だ。

 中台は関係改善の流れで、外交関係の奪い合いも「休戦中」だが、中国がハイチでの救援活動で活躍すれば、中米における台湾の存在感は相対的に低下しそうだ。

 中国は04年からハイチでのPKO活動に警察部隊を派遣。地震前には148人が滞在していたが、うち8人が地震で犠牲になった。【台北・大谷麻由美、北京・浦松丈二】

◇主要国・地域と国際機関のハイチへの主な支援◇
  国別の金額は国連人道問題調整事務所などまとめ。国際機関は毎日新聞まとめ
米国 1億ドル(災害救援チーム、空母、病院船、陸軍部隊、海兵隊を派遣)
中国 540万ドル(救助部隊派遣)
台湾 500万ドル(同)
豪州 約900万ドル
日本 532万ドル(テントなどの援助物資や無償資金協力)
ノルウェー 約500万ドル
英国 約170万ドル
世界銀行 1億ドル
国連 1000万ドル
世界保健機関 遺体運搬のための専門家派遣
国際赤十字社 遺体袋を搭載した飛行機を派遣
世界食糧計画 200万人分を目標に6カ月間の食糧支援
国連児童基金 物資運搬、親とはぐれたり親を亡くした子どもたちの保護

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毎日新聞 2010年1月18日 20時51分(最終更新 1月18日 22時24分)


ハイチ大地震:
自衛隊派遣準備を指示 防衛相

 ハイチ大地震の救援活動のため、北沢俊美防衛相は18日、国際緊急援助隊の自衛隊部隊の派遣準備をするよう各幕僚長らに指示した。地震による被害が依然として極めて深刻な状況のため、防衛省は医療分野などの自衛隊派遣について準備を始めた。平野博文官房長官は同日午後の会見で、追加支援の規模について「70~80人か、確定していないがそれぐらいの規模だと思う」との見解を示した。

 また、国際協力機構(JICA)などの医療チームを18日未明、米マイアミからハイチまで運んだ航空自衛隊のC130輸送機はその後、ハイチにいた米国人の被災者34人を乗せて米国に戻った。【樋岡徹也】

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毎日新聞 2010年1月18日 20時50分(最終更新 1月18日 21時23分)


ハイチ大地震:
「日本の経験を伝えて」…国連防災担当

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ハイチの被災状況について話すマルガレータ・ワルストロム国連事務総長特別代表=東京都千代田区の外務省で2010年1月18日午後4時41分、花岡洋二撮影

 来日中のマルガレータ・ワルストロム国連事務総長特別代表(防災担当)が18日、東京都内で毎日新聞の単独インタビューに応じ、ハイチ大地震について、緊急支援と並行して災害に強い国づくりを含む長期的視野に立った復興計画策定への国際支援をすぐに始めることの重要性を説いた。特に、「神戸(など阪神大震災の被災地)が長期間をかけてコミュニティーを再建した経験を伝えてほしい」と訴えた。

 特別代表は、ハイチ大地震を「知りうる限りで史上最悪の条件がそろった災害」と表現。08年のハリケーン被災から間もない▽貧困国▽内政の混乱▽環境(森林)破壊▽高失業率▽弱い教育システム--などの悪条件の下で、国際機関と政府の機能が破壊され、甚大な被害を招いたと指摘した。一方で、発生から数日間まひしていた救援などの中央指揮系統は「機能し始めた」という。

 現状では仮設住宅の建設と医療機関の再建が急務で、水や食料、避難所、安否確認、埋葬など基礎的な緊急ニーズに対する支援は「今後6~12カ月必要だ」と述べた。

 約960万人(07年推定)の人口に占める被災・死亡率の高さも今回の特徴で、復興を難しくしそうだという。それでも住宅再建などの自助努力はすぐに始まるため、「政府は15~20年後に向けた最初の復興プランを、数カ月以内に立てることを目指すべきだ」と語った。3月にも開かれる国際支援会議で、復興支援問題を重視するよう訴えた。

 日本に期待する貢献策として、▽耐震技術▽資金▽災害復興の経験--の提供を挙げた。【花岡洋二】

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毎日新聞 2010年1月18日 20時19分(最終更新 1月18日 20時44分)


ハイチ大地震:
遺体の山、尊厳なく 廃棄物に交じり

 美しい山並みを背にした草原の一角に、ダンプカーが2台、立て続けに現れると、荷台を上げて無造作に多くの遺体を下ろした。16日、大地震の発生から5日目を迎えたハイチの首都ポルトープランス郊外。あちこちに被災地から運ばれた遺体の山ができていた。死者数は全体で20万人に上る恐れがあり、増え続ける犠牲者らの遺体は、死者の尊厳もなくうち捨てられていた。

 遺体はひつぎや袋に入っているわけでもなく、被災現場の家具など廃棄物と交じって運ばれていた。炎天下、変色し壊れた人形のように不自然な形で折り重なっている遺体から、腐乱臭が広がる。案内してくれた地元住民が鼻と口を覆いながら「もう行っていいか」と記者に尋ねた。

 そこから車で5分ほどの距離の小高い草原の一角では、7人の男女が22歳の女性、アンドリン・ブスケさんの埋葬を終えたところだった。この日、倒壊した自宅から遺体で見つかったという。

 兄スナックさん(23)によると、ブスケさんは妊娠8カ月、結婚が間近だった。地震のあった12日は、家で恋人が来るのを待っていた。

 「他人への愛に満ちていて、恋人をとても愛していた」。スナックさんらは、おなかの子供とともに帰らぬ人となったブスケさんをしのんだ。

 スナックさんらは遺体に土をかぶせた後、その上に石を並べ、ブスケさんの名前や十字架を赤いペンで石に書いた。「ちゃんとした墓に入れるお金はないからね」

 しかし、たとえ質素でも、遺族の手で埋葬され墓標があるのは、恵まれた犠牲者だ。

 ブスケさんの埋葬を手伝った地元の農業チバトン・ルイスピエールさん(24)によると、この地域には、ダンプカーで運ばれて捨てられる身元不明遺体の集積地が3カ所ある。

 ブスケさんの墓から、陽光の下で輝くカリブ海に向かって数十メートル歩いたところで、ルイスピエールさんが足を止めた。「ここにはもう25、26台のダンプが来たかな。600人ぐらい埋まっているよ」(共同)

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ハイチ大地震:日本人全員の無事確認

毎日新聞 2010年1月18日 12時11分


ハイチ大地震:
国連の食料配布に被災者が殺到

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避難所で食料の配布を受ける少女=ハイチ・ポルトープランスで2010年1月17日、梅村直承撮影

 地震で壊滅的な被害を受けたハイチの首都ポルトープランス。国際空港近くの広場では、国連が実施した食料の配布に大勢の被災者が殺到した。混乱を避けるため、国連軍兵士が広場への入場を規制。やっと食料を手にした被災者たちはほっとした表情を見せていた。一方、広場の外では配給を受けられなかった200人以上の市民が大声で抗議していた。【ポルトープランス梅村直承】

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毎日新聞 2010年1月18日 11時50分(最終更新 1月18日 12時32分)


ハイチ大地震:
JICA医療チームが到着 本格救援開始へ

2010年1月18日 11時48分 更新:1月18日 12時55分

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17日、自衛隊機でハイチ入りしたJICAの国際緊急援助隊の医療チーム=ポルトープランスの国際空港で2010年1月17日、庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学】大地震で20万人とも言われる犠牲者を出したハイチに17日午後(日本時間18日未明)、日本の国際協力機構(JICA)の緊急援助隊医療チーム25人が到着した。首都ポルトープランスの西約30キロにあるレオガンの看護学校を拠点に、18日から支援活動を開始する。

 医師や看護師から成る医療チームは、航空自衛隊のC130輸送機で米フロリダ州の米軍基地を経由して到着した。二石昌人団長は「日本も国際社会の一員としてハイチの人々を助ける責任を果たす必要がある。一生懸命頑張りたい」と話した。

 レオガンは人口約10万人。震源から約10キロと近く、建物の80~90%が損壊したと言われるなど、壊滅的な被害を受けた。負傷者が満足な治療を受けられない状態が続いている。医療チームは約2週間支援活動を行う予定だ。

 日本政府は米国政府の要請を受け、ハイチに到着した自衛隊機で、米国人被災者30人余を米フロリダ州へ運んだ。

 一方、国連の潘基文(バン・ギムン)事務総長も17日、ポルトープランスに入った。地震で全壊し、生存者の救出活動が続く国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)本部ビルを視察。また、数千人の被災者が野営する大統領宮殿前の広場を訪れ、人道援助物資の早急な供給を約束した。

 AFP通信によると、震災の復興を目指す支援国会議が25日、カナダのモントリオールで開かれる。

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ハイチ大地震:
ガソリンスタンド再開 怒鳴り合う市民も

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ガソリンスタンドの給油機の前で言い争う人たち=ハイチ・ポルトープランスで2010年1月17日、梅村直承撮影

 【ポルトープランス吉富裕倫】ハイチ大地震で被災した首都ポルトープランスなどでは17日、ガソリンスタンドが徐々に再開した。だが、市民が殺到して騒然とする光景も見られた。

 近郊のペチオンビル市では、バケツやポリタンクを手にした市民約200人がスタンドに駆け付け、6台の給油機の前で「おれが先だ。早く給油しろ」などと怒鳴り合った。

 ガソリンは地震後の数日間はヤミで高値で売られていたが、スタンドの価格は通常通りだったという。

 政府は約2カ月分の備蓄を確保し、18日から被災を免れたスタンドのほとんどが再開するという。

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毎日新聞 2010年1月18日 11時23分(最終更新 1月18日 12時41分)


ハイチ大地震:
政府が非常事態宣言 埋葬者は7万人

2010年1月18日 11時14分 更新:1月18日 12時0分

 【ポルトープランス庭田学】大地震で未曽有の被害を受けたハイチ政府は17日、今月末までの非常事態を宣言した。AFP通信が伝えた。これまでに埋葬された犠牲者は約7万人に上るという。

 また、新華社通信(電子版)によると、警察当局などは17日、首都ポルトープランスに午後6時以降の外出禁止令を出した。食料不足などから略奪行為が続発する中、治安の一層の悪化を食い止める狙いがある。

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ハイチ大地震:
日本人全員の無事確認

2010年1月18日 11時2分

 ハイチの大地震の後、連絡が取れていなかった現地在住の日本人男性が無事であることが17日、関係者の話で分かった。これで日本人全員の無事が確認された。

 この男性は医師。母親が日本人、父親がハイチ人で、日本国籍を保有。地震発生直後から、ポルトープランスの病院で被災者の治療に当たっていたという。

 外務省海外邦人安全課によると、昨年10月時点で在留届が出ていた日本人は計20人で、地震後、この男性の安否だけが確認されていなかった。(共同)

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ハイチ大地震:
物資届かず治安悪化 商店から略奪も

2010年1月18日 2時31分 更新:1月18日 2時31分

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略奪した商品を奪い合う人々=2010年1月16日、庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学】ハイチは17日、大地震発生から6日目を迎えた。救援物資の配布が進められているものの、推計約300万人といわれる被災者の大半には行き届かず、一部では不満を募らせた市民らが、崩壊した商店から物品を略奪する状況になっている。

 首都ポルトープランスで商店が並ぶマカジュ通り。白昼の16日午後3時ごろ、崩れた3店舗の最上階にある倉庫に人々が群がっていた。倉庫からシーツや時計、バッグなどを奪いだし、路上に集まった数百人に次々に投げる。商品の奪い合いも起きた。約30分後、到着した地元警察官が威嚇発砲すると、人々は逃走。けが人はなかった。

 AFP通信によると、17日にはポルトープランスの市場で、商品を略奪していた群衆に向け警官が発砲。男性1人が頭に銃弾を受け死亡した。被災者の不満の高まりとともに、治安の悪化が懸念されている。

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ハイチ大地震:
震源地近郊のレオガン 消毒治療すらできず

2010年1月17日 21時2分 更新:1月17日 21時8分

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地震から4日たっても治療を受けられず、右太ももの痛みを訴える少女=ハイチ南部レオガンで2010年1月16日、吉富裕倫撮影

 【レオガン吉富裕倫】ハイチ大地震の震源地に近く、建物の80~90%が損壊したとされる都市レオガン。地震から5日目の16日になっても、負傷した住民は治療を受けられず、痛みを訴えていた。「政府を通した援助では市民に届かない」と行政の腐敗を批判する声も聞かれた。

 レオガンは首都ポルトープランスから西へ約30キロの海沿いにあり、震源からの距離は約10キロ。

 2階建て以上の建物の被害が多い首都に比べ、1階建ての建物の多くが倒壊し、揺れの直撃を受けた深刻さがうかがえる。

 空き地にシーツなどで仕切りや屋根を設け、マットを敷いた一角で、負傷者ら約70人が寝泊まりしている。近所の人たちが助け合って買う水や食料で生き延びている。

 発生時、2階から飛び降りようとして右足を負傷した女性、ローズマリー・ポールさん。けがが重く、屋根のある小さな乗り合いバス用トラックをベッド代わりにしている。歩けないが診察してもらえず、骨折かどうかも分からない。擦りむいた部分は化膿(かのう)し、虫がたかっていた。「地震から4日たつのにアルコール消毒一つしてもらえない。とても痛い」と、つらそうに寝返りを打った。

 がれきが当たり背中の右に5センチ大の擦り傷を負ったクローディニア・ピエールちゃん(3)も治療を受けられず、傷がいえない。夜も痛みで眠れないという。

 家も職場も同時に失ってしまったエンジニア、ルイス・クローデルさん(38)は「政府に援助物資を渡しても誰かが横流しして被災者のところには届かない。08年のハリケーン災害の時もそうだった」と話し、援助機関が直接支援の手を差し伸べてくれるよう訴えた。

 在ハイチ日本大使館によると、17日に国際協力機構(JICA)が当地の空港に到着する予定で、レオガンで救援活動を始める計画を立てているという。

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ハイチ大地震:
政府の医療チーム、C130輸送機で派遣へ

 ハイチ大地震の救援活動のため、防衛省は航空自衛隊のC130輸送機で、日本政府が派遣する国際緊急援助隊医療チームを運ぶことを決めた。北沢俊美防衛相が17日、命令を出した。

 医療チームは外務省職員や医師、看護師ら24人。防衛省は自衛隊による空輸隊を約20人で編成し、18日未明に米マイアミからハイチまで医療チームを輸送する。約10人で統合連絡調整所を設置し、現地で関係機関との連絡調整に当たる。

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ハイチ大地震:斜面の家、滑り落ち 被害拡大の一因に

毎日新聞 2010年1月17日 19時53分


ハイチ大地震:
インド洋津波、阪神大震災の遺児が街頭募金

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街頭で募金を呼びかけるラフマットさん(右から2人目)=JR有楽町駅前で2010年1月17日、袴田貴行撮影

 ハイチ大地震の被災者に支援の手を差し伸べようと、04年のインド洋大津波で親を亡くし「あしなが育英会」の支援で日本の大学に通う学生らが17日、JR有楽町駅(東京都千代田区)前で街頭募金を行った。神戸市のJR元町駅前でも、育英会の支援を受ける阪神大震災の遺児が同時に募金を行い、合わせて約40万円が集まった。

 大津波で母と兄を亡くし、育英会の支援で早稲田大国際教養学部に通うインドネシア人、ラフマットさん(20)らの呼びかけで実現した。東京ではエイズで両親を失ったウガンダ人留学生や、自殺で親を亡くした日本人学生ら約20人が募金箱を片手に支援を訴えた。

 募金は今春、育英会の奨学生で作る「心の癒し使節団」が現地に届ける。ラフマットさんは「ハイチへ行って遺児たちに自分の体験を語り、一人じゃないんだということを伝えたい」と話している。

 育英会では郵便振替(00190・9・559337)などによる募金も行っている。【袴田貴行】

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毎日新聞 2010年1月17日 19時49分(最終更新 1月17日 20時32分)


ハイチ大地震:
国連派遣団代表と副代表の死亡確認

2010年1月17日 18時53分

 【ニューヨーク小倉孝保】ハイチ大地震で国連は16日、行方不明だった国連ハイチ安定化派遣団の代表であるアナビ事務総長特使(チュニジア)とナンバー2のダコスタ副代表(ブラジル)の死亡を確認したと発表した。国連は平和維持活動(PKO)に精通したベテラン職員2人を一度に失ったことになる。

 アナビ特使については地震直後、ハイチ大統領が死亡したと発表していたが、国連は未確認としてきた。2人の遺体は、首都ポルトープランスの派遣団本部ビルのがれきの下から見つかったという。

 潘基文(バンギムン)事務総長は、「深い悲しみを感じる。彼らは平和のために命をささげた」との声明を発表した。

 アナビ特使は、カンボジアでの国連活動にも従事したPKOの専門家で、ハイチに平和を構築する使命に強い熱意を持っていたという。また、ダコスタ副代表は、約40年の国連職員としての経歴のうち長期間、PKO関連に携わった。

 ほかに派遣団のコーツ警察本部長代理などの死亡も確認され、国連職員の犠牲者は約40人になった。

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ハイチ大地震:
NGO「ハイチの会」ら募金活動 名古屋

 ハイチ大地震を受け、同国での支援活動を行っているNGO「ハイチの会」(事務局・名古屋市瑞穂区、中野瑛子代表)の会員が中心になり、約20人が16日、名古屋市中村区の名古屋駅前で災害支援募金を呼び掛けた。

 会は86年設立、農業支援を中心に、農村の小学校での給食支援など活動を続けている。会員の市川隆之さん(38)らが「今すぐできることを」と街頭に立った。市川さん自身も99、08年の2回、ハイチを訪問しており、それだけに「多くの人の援助を」と訴える。

 同会は9日から首都のポルトープランス近くの山林で植林作業を始めており、5人(うちハイチ人3人)を派遣していた。16日昼に全員の無事が判明した。このうち愛知県春日井市の熊谷雄一さん(33)が日本大使館の車で隣国のドミニカ共和国まで避難、近く帰国の予定という。中野代表は「無事がわかりほっとした。多くの人が募金してくれてありがたい。皆の気持ちをハイチに届けたい」と話す。

 一方、名古屋第二赤十字病院(名古屋市昭和区)の臨床工学技士、山田悌士さんと看護師、関塚美穂さんがハイチに派遣されることになり16日、同病院で壮行会が行われた。2人は17日に出国、約1カ月、医療支援に携わる。【黒尾透】

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毎日新聞 2010年1月17日 2時13分


ハイチ大地震:
30万人が自宅失う 国連発表

2010年1月16日 20時1分

 【ジュネーブ伊藤智永】国連人道問題調整事務所(OCHA・本部ニューヨーク、ジュネーブ)は15日、ハイチ上空からの視察結果などをもとに、震災状況を発表した。被災地は人口280万人の首都ポルトープランスを中心に、約350万人が住む地域に及んでいた。ひどい場所では50%の建物が倒壊しており、約30万人が家を失ったという。

 現地では生き埋めになった被災者の救出作業が最優先課題になっている。欧米や隣国ドミニカ共和国などが相次いで救助隊を派遣しており、広報担当者は「救出チームの人員はこれで十分なはずだ。むしろ医師の数が足りない」と話している。

 また、救出活動とともに、多数の遺体の処置が大きな問題になっている。気温が高く、疫病の発生なども懸念されている。

 一方、世界食糧計画(WFP・本部ローマ)も15日、被災者200万人分を目標に今後6カ月間、食糧支援を行う方針を明らかにした。資金として米国から既に2000万ドルが提供されたほか、インターネットを通じて世界中から個人の寄付金も集まりつつある。担当者は「燃料や水がないので、調理せずにすぐに食べられる物が必要だ」と話している。

 国連児童基金(ユニセフ・本部ニューヨーク)では、地震で親とはぐれたり親を亡くした子供たちを保護するため、登録リストの作成を始めている。

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ハイチ大地震:
斜面の家、滑り落ち 被害拡大の一因に

2010年1月16日 19時59分 更新:1月16日 22時22分

Pasted Graphic
ポルトープランスで崩壊した店舗などが入った建物=ハイチで2010年1月14日、庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学】ハイチ大地震による土砂崩れで多数の家屋が崩壊した首都ポルトープランスのボアパタタ地区。震災から4日目の15日、斜面に建てられた家々の多くは、谷に滑り落ちるように崩れていた。1万人近くの住民のうち、4分の1が犠牲になったとも言われている。急な斜面に地震を想定しないまま家屋を密集させたことが、被害拡大の一因になったようだ。

 「地下で爆弾が爆発したようだった。ブォーンという音とともに、地面の中から何かが飛び出してきたのかと思った」。ボアパタタ地区に住むブレスさん(70)は12日夕の地震発生時の様子をこう振り返る。体を前後左右に激しく揺さぶられて立っていられなくなり、気がついたら周囲の建物が崩壊していたという。ブレスさんは息子(18)や妹ら親族3人を失った。

 ボアパタタ地区には中流家庭の家屋が建ち並んでいた。見た目は比較的しっかりした建物のようでも、倒壊家屋のブロック造りの柱からのぞく鉄筋は貧弱で、揺れに弱い急斜面の家を支えるには不十分だったようだ。尾根に上がると、ほとんどの家が谷側に滑り落ちていた。

 尾根近くのザモールさん(21)の家も完全に崩壊した。10人家族の一家は幸運にも全員が下敷きを免れ、無事だった。しかし、急斜面に建てられた隣家では3人が死亡したという。

 尾根にあったキリスト教系の私立小学校では地震発生時、校舎内に児童や教師らがいた。校舎の屋根が崩れ落ち、一部の児童は逃げ遅れた。校長のマネサ・ワンさん(27)は崩れた校舎の前で、「全校児童200人のうち20人が死んでしまった。このがれきの下にまだ誰かが下敷きになっているかもしれない」と話した。

 生き残った住民の多くは、斜面を登り切ったボアパタタ山の頂付近で避難生活を送る。自宅を失い、家族4人で肩を寄せ合う女性のチャーレイズさん(14)は、「今、何が必要か」との問い掛けに、水、食料、衣類、薬と続けて、最後に「家が欲しい」とつぶやいた。

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ハイチ大地震:
米原子力空母が到着 救援本格化

 【ワシントン草野和彦】ハイチ大地震の救援について、オバマ米大統領は15日、ヘリコプター19機や飲料水の製造装置を搭載した原子力空母カール・ビンソンが同日朝、ハイチ沖に到着したと発表した。また、国務省によると、機能が低下している首都ポルトープランスの国際空港を米国管理下で運用することでハイチ政府と合意。12日の被災後、本格的な救援態勢がようやく整う見通しとなった。

 空母は米軍の救援活動の拠点になり、ヘリコプターで飲料水や食糧、支援物資を被災地まで運ぶ。クローリー国務次官補(広報担当)によると、首都の空港では1日90便の着陸が可能になると期待されているという。

 オバマ大統領は16日、ブッシュ前大統領、クリントン元大統領をホワイトハウスに招待し、ハイチ復興に向けた米国の支援のあり方について協議する。前大統領と元大統領は既に連名で、救援金を募るウェブサイトを設置している。

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毎日新聞 2010年1月16日 19時53分


ハイチ大地震:
仏、支援の国際会議開催へ 米などと共同で

 【パリ福原直樹】ハイチの旧宗主国フランスは15日、米国などと共同で3月にもハイチ支援の国際会議を開くことを明らかにした。また、ハイチに対するフランスの債権の一部400万ユーロ(約5億2000万円)を放棄すると表明、各国にも同様の行動を求めた。サルコジ仏大統領は数週間内にハイチを訪問する考えだ。

 仏大統領府によると、国際支援会議には米仏両国のほか、ブラジルやカナダなどが参加する見通し。

 フランスは17世紀後半から約1世紀の間、ハイチを植民地化。今でも仏語がハイチの公用語のひとつであるなど、両国の結びつきは強い。仏政府によると、ハイチにはフランス人約1500人が居住していたが、地震後、うち60人が行方不明になったという。

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毎日新聞 2010年1月16日 19時43分(最終更新 1月16日 19時44分)


ハイチ大地震:
米スポーツ界が支援 ウッズも検討

 ハイチ大地震の被災者支援に向け、米国の各スポーツ団体は15日、相次いで寄付を表明した。AP通信が伝えた。プロフットボールのNFLは米国赤十字などを通じて、プロバスケットボールのNBAは選手会と共同で国連児童基金(ユニセフ)を通じて、ともに100万ドル(約9100万円)を寄付すると決めた。大リーグ機構(MLB)は既にユニセフを通じて100万ドルを寄付すると発表している。

 ツアー出場の無期限自粛を表明している男子プロゴルフのタイガー・ウッズも、救援活動への支援を検討している。

 NBAの元スター選手のアロンゾ・モーニング氏らはハイチ入りし、救援活動に参加。現役選手のドウェイン・ウェード(ヒート)らとともに支援基金を設立するという。(共同)

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毎日新聞 2010年1月16日 12時41分


ハイチ大地震:
食糧略奪、囚人脱走も

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ポルトープランスの空港近くに設置された非常線を通過しようとパスポートを示す米国人ら=AP

 【ポルトープランス庭田学】ハイチ大地震で首都ポルトープランスでは15日、各国の救援活動が本格化したが、支援物資が被災者に行き渡らない事態となっている。情勢が混乱を極めているうえ、受け入れ能力が不足しているためで、被災者からは支援の遅れに対する不満の声も高まっている。

 ポルトープランスの国際空港では同日、救援物資を積んだ輸送機が続々と到着する一方、多くの米国人が米軍機で母国へ脱出しようと空港に押し掛け、大混乱した。

 AP通信によると、空港にはこれまで米仏などの救援機60機以上が到着。しかし、滑走路は1本だけで、さらに駐機スペースや補給燃料がなく、救援機が着陸を断念するケースもあった。空港ターミナルは天井や壁の一部がはがれ落ちるなどの被害を受けた。また、周辺の道路はがれきであふれ、物資を届ける要員や方法が決まらず、被災者の手元に物資が届くのに時間がかかっている。

 空港には15日、オランダのレスキュー隊員63人も到着し、グループに分かれて被災地に散っていった。フォンデンベルク隊員は「地震発生直後にオランダを出発したが、空港の受け入れ能力の問題で到着が遅れた。今日も着陸するのに1時間半も上空を旋回した。一人でも多くの生存者を救うため、早く救出活動に取りかかりたい」と話した。

 一方、被災者の間では一部にしか支援物資が届かないため不満が高まっており、15日にはポルトープランスにある世界食糧計画(WFP)の食糧備蓄庫が略奪にあった。AP通信によると、WFPはハイチ国内でこの備蓄庫を含め約1万5000トンの食糧を保管していたが、広報官は「(略奪で)どれだけのものが盗まれたか、まだ分からない」と語った。

 また、AP通信によると、国際赤十字の広報官は15日、倒壊したポルトープランスの刑務所から囚人約4000人が逃げ出したと語った。市内では国連ハイチ安定化派遣団の部隊が頻繁にパトロールしているが、広報官は「住民の怒りは少しずつ高まっているようだ」と懸念を漏らした。

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34カ国外相会合:
アジアと中南米がハイチ再建支援

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FEALAC外相会合開会式に臨む鳩山由紀夫首相(右)と岡田克也外相=都内のホテルで2010年1月16日午前9時39分、尾籠章裕撮影

 アジアと中南米の計34カ国の外相らが幅広い協力関係の構築を目指す「アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)」第4回外相会合が16日午前、東京都内のホテルで開幕した。

 17日まで開かれ、環境問題や経済危機対策などで連携して対処することをうたう「東京宣言」が採択される。

 開会のあいさつで鳩山由紀夫首相は、ハイチ大地震の犠牲者への哀悼の意を示し、参加国外相に救難支援を呼びかけた。ハイチ再建に向け協力する外相声明も出された。

 FEALACは99年に創設され、アジアから日本、中国、韓国、インドネシアなど15カ国、中南米からブラジル、アルゼンチン、メキシコなど18カ国で構成される。今回、モンゴルが新たに加盟する。【中澤雄大】

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ハイチ大地震:
死者20万人に 「生存の限界」経過

2010年1月16日 10時44分 更新:1月16日 12時30分

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ほぼ全壊した大統領宮殿前の広場で、避難生活を送る人たち=ハイチのポルトープランスで2010年1月14日、庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学、ニューヨーク小倉孝保】ハイチを襲った大地震で、ビアンエメ内相は15日、既に約5万人の遺体を収容し、死者は約20万人に達する可能性があると語った。ロイター通信が伝えた。ハイチでは12日の地震発生後、生き埋め被災者の「生存の限界」とされる72時間が過ぎ、人的被害の拡大が懸念されている。最近の自然災害としては、約23万人の死者を出した04年のスマトラ沖大地震・インド洋大津波に次ぐ規模になる可能性が出てきた。

 国連は15日、ハイチで約300万人が被災しており、食糧など緊急援助のため約5億6200万ドル(約510億円)が早急に必要として資金の拠出を呼びかけた。

 各国がこれまでに表明した援助資金は計3億6000万ドル(約327億円)にとどまっているという。また、15日現在で現地の国連職員の死者数は37人に上った。

 国連幹部は死者が最終的に約100人になるとの見通しを示しており、国連史上最悪の被害になるという。

 国連報道官は15日、潘基文(バン・ギムン)事務総長が17日にハイチを訪問すると発表した。また、クリントン米国務長官は16日に被災地を視察する。

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アルゼンチン外相:
ハイチ大地震「日本と合同で支援」

 来日中のアルゼンチンのタイアナ外相は15日、毎日新聞と会見し、大地震の被害を受けたハイチに対し、「日本と合同の労働者支援プログラムを拡大し、復興支援に役立てたい」と述べた。同プログラムは日本の資金でアルゼンチンの農業・畜産専門家をハイチに派遣し、果樹栽培や養鶏などの方法を労働者に教えている。

 外相はまた、「ハイチのアルゼンチン軍移動診療施設は、地震後も稼働している数少ない医療機関だ」と指摘。医師や医薬品などを積んだ2機目の特別機を15日に飛ばす方針を確認した。

 一方、外相は自国の経済情勢について「外貨準備の一部を使い、国債を償還することで債務支払い能力を証明することに何の問題もない」とも述べた。フェルナンデス大統領は国債の償還に外貨準備を充てることに反対した中央銀行総裁を解任している。

 外相の来日は6年ぶり。15日に岡田克也外相と会談するほか、16、17日に開かれるアジア中南米協力フォーラムに出席する。アルゼンチン企業30社が外相に同行した。【國枝すみれ】

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毎日新聞 2010年1月15日 21時55分


ハイチ大地震:
「生存の限界」迫る 海外救援隊、活動困難

2010年1月15日 20時41分 更新:1月15日 22時22分

Pasted Graphic
12日、ハイチの首都ポルトープランスで倒壊した建物=AP

 【ポルトープランス庭田学】大地震が直撃したハイチでは、生き埋め被災者の「生存の限界」とされる発生後72時間が、15日夕(日本時間16日早朝)に迫った。海外からのレスキュー隊が救出活動を本格化させたものの、被害は甚大な上、ハイチ政府による初動の救援活動がほとんど機能しなかったため救出は難航している。

 首都ポルトープランスでは、発生直後から現地警察や消防による組織的な救援活動はほとんどみられない。職員自身も被災したからとみられるが、政情不安のハイチでは、警察は普段から正常に機能していない。現地に駐留する国連ハイチ安定化派遣団の広報官は14日、「現地に警察官の姿がまったくない。消えてしまったかのようだ」と懸念を表明した。

 ポルトープランスは平野部と丘陵地に分かれる。急斜面に密集する貧困層の家屋の被害は著しく、広範囲にわたって土砂崩れでつぶれている。基礎が脆弱(ぜいじゃく)な建物が多かったために被害が拡大し、さらに倒壊した建物で道路は寸断されて重機も足りない。市内では、住民がスコップを手に自力で大きながれきをかき分けている。

 AP通信によると、崩れ落ちた自宅のがれきの下から14日、9歳の女児の遺体が運び出された。数時間前まで泣き声が聞こえていた。だが、レスキュー隊は来ず、母親代わりの女性は「警察も、誰もいない」と憤った。

 14日の段階で埋葬された犠牲者は7000人とされ、ハイチ赤十字社は死者を4万5000~5万人と推計。生き埋めになりながら生存している人も多数いるとみられるが、発生から72時間を過ぎると生存率は著しく低下する。

 14日までに米国、フランス、中国、スペインなどから救援隊がポルトープランス国際空港に到着。国連の潘基文(バンギムン)事務総長は同日、「最初の72時間が非常に重要だ。既に48時間が過ぎようとしている。我々はできるだけ多くの命を救わねばならない」と語り、各国にさらなる緊急支援を求めた。

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ハイチ大地震:
暗闇、余震…泣き叫ぶ子供たち 心の傷深く

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ポルトープランスのサンダミアン小児病院の庭で、地震発生から2回目の夜を明かした子どもたち=2010年1月14日、庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学】大地震に襲われたカリブ海のハイチで、地震の恐怖で心に傷を負った子供たちへのケアが必要になっている。首都ポルトープランスの小児病院では13日夜から14日朝まで、暗闇の中で恐怖にうなされる幼い子供たちの泣き声が一晩中響いていた。

 首都のサンダミアン小児病院。崩れ落ちた病棟の前庭に約150人の患者らが避難し、屋外での療養を強いられていた。半数は子どもだ。コンクリートの地面には血痕が残る。

 「ママ! ママ!」。左足を負傷して搬送されてきた10歳ほどの女の子が叫び続ける。母親らしき女性が抱きしめているが、「ギャー」などと意味不明の叫び声をあげる。頭をけがした10歳前後の男の子は、マットレスに横たわっても眠れない様子で、「オウオウ」と叫びながらこぶしを宙に突き上げた。14日未明には大きな余震があり、大人たちにも動揺が広がった。

 病院職員のファドゥルさんは「子供たちは地震の後、ずっと何かを恐れているようだ。心のケアが必要だ」と話す。だが、医師や看護師は緊急の外科治療に手いっぱいで、心のケアは後回しにされているようだ。

 阪神大震災など大災害では、被災の恐怖や家族の死亡に伴うストレスが子供たちのPTSD(心的外傷後ストレス障害)につながった。国連児童基金(ユニセフ)によると、ハイチは18歳以下が人口の46%を占める。災害弱者としての「子供」への対応が今後、重みを増しそうだ。

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毎日新聞 2010年1月15日 20時38分(最終更新 1月16日 1時19分)


ハイチ大地震:
政府、医療チームを派遣

2010年1月15日 20時25分

 岡田克也外相は15日の記者会見で、ハイチ大地震支援のため、国際緊急援助隊の医療チームを派遣すると発表した。16日に出発する。医師、看護師のほか外務省、防衛省、国際協力機構(JICA)の職員ら二十数人を予定している。米マイアミまで民間機で移動し、マイアミからハイチまでは航空自衛隊のC130輸送機を使う。C130輸送機は、演習のため米国に派遣中で、北沢俊美防衛相は15日、折木良一統合幕僚長に準備命令を出した。

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ハイチ大地震:
首都は震度7以上の激しい揺れ…震度を推計

2010年1月15日 19時2分 更新:1月15日 20時12分

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震度7以上の激しい揺れに見舞われたハイチの首都ポルトープランス。手作業で救出作業が行われていた=2010年1月14日、庭田学撮影

 独立行政法人情報通信研究機構などは15日、ハイチの地震による震度分布を推計し発表した。震源の真上は震度6強、壊滅的な被害を受けた首都ポルトープランスは、阪神大震災に匹敵する震度7以上の激しい揺れに見舞われたことが分かる。

 NASA(米航空宇宙局)が人工衛星やスペースシャトルから観測した地形データと、米地質調査所の震源情報を基に推計した。【石塚孝志】

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ハイチ大地震:
「生きているぞ」16歳少女救出

2010年1月15日 15時0分 更新:1月15日 15時0分

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大地震のあったハイチの首都ポルトープランスで44時間ぶりに救出されたベルレールさん=2010年1月14日、庭田学撮影

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14日午前2時、ポルトープランスの小児病院の庭では地震で負傷した乳児の傷の縫合手術が行われた=庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学】「やったぞ、動いている! 生きているぞ」--。未曽有の大地震被害が出ているカリブ海の島国ハイチの首都ポルトープランスに入った。発生から約44時間後の14日午後(日本時間15日未明)、16歳の少女ががれきの中から救出される姿を見た。だが、被災地には多くの遺体が放置されたままで、生存者に対する救助活動は遅れている。

 全壊した家屋から救出されたのは、ベルレールさん(16)。14日午後1時10分、消防隊や救援隊ではなく、近所の人や親族らが手作業でコンクリートの天井に穴を開け、助け出した。生存が確認されると、集まった大勢の人が歓声を上げ、拍手がわき起こった。

 ベルレールさんは、学校の制服姿で足などに擦り傷があるが、意識ははっきりしていた。この建物では、既に7人が死亡、さらに2人が生き埋めになっているとみられ、救出作業が続けられた。

 ポルトープランス市内では、多くの建物が崩壊。ドーム部分が崩れ落ちた大統領宮殿の周辺の被害が特に目立っていた。大統領宮殿から200メートル離れた場所では、崩落した建物に押しつぶされた乗用車の中に、茶色い髪の女性がハンドルに手をかけたまま死亡していた。車の近くには、動かなくなった性別不明の腕だけが、がれきの下から見える。しかし、巨大ながれきを取り除く重機も人々の姿も見当たらない。

 既に埋葬された犠牲者もいるが、遺体が路上に放置されたままのケースも目立つ。遺体のそばで泣き叫んでいる女性を指し、男性は「家族が死んだんだ。そっとしてあげてくれ」と話した。

 遺体には、多くのハエが止まっている。日中の気温は約27度。街にはほこりと悪臭が漂っている。記者がインフルエンザ用のマスクをしていると、多くの市民が「私にもマスクを分けてくれないか」と声をかけてきた。

 記者は地震発生から丸1日を過ぎた13日深夜、ドミニカ共和国との国境からカトリック教会系団体のライトバンに乗りポルトープランスに到着した。同団体が運営する小児病院の建物には亀裂が入り、システムはダウン。乳幼児ら入院患者は全員、庭に避難し、野戦病院のようだった。夜が明けるまで子供たちの泣き声が続いた。

 地震で負傷した人々も搬送され、庭の臨時診療台では、翌午前2時ごろ、足や頭に裂傷がある1歳ごろの女児の縫合手術が行われた。病院関係者の話では、特に貧しい地区で被害が大きいという。

 同病院のアーティー医師は「医薬品はどんどん使われており、今後不足する可能性がある」と語った。

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ハイチ大地震:
救援態勢に支障 WFP20人不明

 【ジュネーブ伊藤智永】世界の最貧国の一つといわれるハイチでは、大地震前から国連各機関が人道支援活動に従事していたが、14日までにそれらの被災状況が一部明らかになった。地震後の救援態勢作りにも支障をきたしている。

 世界食糧計画(WFP)は、首都ポルトープランスで活動していた職員70人のうち20人が消息不明で、他の職員も多くが負傷した。13日から首都の南西50キロ離れたジャクメルの空港にいた約3000人の被災者に食糧の配給を始めたが、首都へはとりあえず2400人分を軍の護送で運搬する準備中という。

 WFPのスポークスマンは「我々の食糧備蓄をすべて活用できても、賄えるのは2~3週間分。さらに数日間は陸続きのドミニカ共和国から購入するつもりだが、その後は3カ月分の食糧調達に1億ドルの経費が見込まれる」としている。

 国際赤十字は14日、ジュネーブの本部から11人の専門家を派遣。地震前から活動していた9人と合流し、救援態勢を組む。地震前には現地スタッフ約60人と約1700人の協力要員がいたが、そのうち何人が活動に参加できるかは不明だ。

 また、世界保健機関(WHO)によると、ハイチ国内で少なくとも八つ、隣国のドミニカでも二つの病院が壊滅的な被害を受けたため、負傷者の手当てに支障が出ており、地震発生から3日間に医療機関で治療を受けた人は、600人余にとどまっているという。

 国連児童基金(ユニセフ)は、ハイチが「18歳以下が46%を占める世界でも最ももろい人口構成の国」であると指摘。同基金の輸送機で13日に50万ドル、14日には340万ドル相当の物資を運んだ。

 一方、平和維持活動に当たっていた国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)の建物には、地震発生当時50~100人の職員がいたとみられ、100人以上の職員の消息が依然不明という。同派遣団は、各国職員500~600人、現地職員1200人で編成されていた。

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毎日新聞 2010年1月15日 11時46分(最終更新 1月15日 12時15分)


ハイチ大地震:
7000人埋葬 死者5万人推計

2010年1月15日 11時28分 更新:1月15日 13時26分

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ポルトープランスで倒壊した建物。がれきの下には遺体が残されたままだった=2010年1月14日、庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学、ワシントン小松健一】ハイチのプレバル大統領は14日、大地震により既に犠牲者7000人を埋葬したと述べた。ハイチ赤十字社は、死者を4万5000~5万人、住居を失うか負傷した被災者を約300万人と推計した。ロイター通信によるとポルトープランスの病院わきに遺体が約1500体積み上げられている。ハイチ赤十字社も遺体を収容する袋が底をついた。

 オバマ米大統領とサルコジ仏大統領は14日電話協議し、関係国による支援会議を開催することで合意した。

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ハイチ大地震:
在留邦人の無事確認

2010年1月15日 11時4分 更新:1月15日 12時55分

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玄関付近の外壁が落ちて亀裂が入ったハイチの日本大使館が入っていたビル=2010年1月14日、庭田学撮影

 【ポルトープランス庭田学】大地震が発生したハイチの首都ポルトープランスにある日本大使館のビルは14日、損傷がひどく、使用禁止になっていた。大使館員たちは、館員のマンションに避難。地震発生から丸1日後の13日には、在留邦人21人のほぼ全員の無事を確認したという。

 日本大使館によると、日本人の女児6歳が、家屋が半壊したため、打撲程度の負傷をした。日本国籍保持者3人と連絡がつかないが、うちカトリック教会の日本人シスターは震源から離れた街に在住しているという。

 また、ハイチ人を父に持つ兄妹のうち、兄は医師で無事ならば負傷者らを治療する活動をしているとみられる。妹は国外にいる可能性がある。

 大竹庄治・臨時代理大使によると、地震発生当時、館員は全員大使館内で執務中だった。館内のロッカーがばたばたと倒れ、「床が抜けるか、天井が落ちるか。みんな死を覚悟した」と振り返るほどの大きな揺れだったという。

 大竹氏が住む官舎は2階部分が1階部分を押しつぶし、完全に崩落。大竹氏は「幸い私は単身赴任で家に誰もいなかったから助かった」と話した。

 日本大使館が入っている8階建てビルには、ブラジル、アルゼンチンなどの大使館もあったが、今後崩壊する恐れがあるとして、建物内や周辺道路への立ち入りは禁止に。警備員は「崩れてくるぞ。近寄るな」と通行人らに注意していた。

 大竹氏は「死者数など正確な被害状況は不明のままだ。通信状態が悪く、日本やドミニカ共和国ともなかなか連絡が取れない。住民が暴徒化する可能性もあり、夜間の外出に気をつけなければならない」と話していた。

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ハイチ大地震:
衛星写真を公開 JAXA

2010年1月15日 10時50分 更新:1月15日 12時29分

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(左)大統領宮殿など中心部を上空から14日に撮影した画像。中央丸印が大統領宮殿。中央左の囲みは被害にあった市街地(右)同じエリアを07年6月に撮影した画像=JAXA提供

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は14日、大地震の直撃を受けたカリブ海の島国ハイチの被災地を上空から撮影した衛星写真を公開した。約700キロ上空を飛び、主に陸上を観測する陸域観測技術衛星「だいち」が、同日撮影した。

 大きな被害が出た首都ポルトープランスの大統領宮殿付近では、07年6月撮影の写真と比べ、周辺の市街地は、崩壊した建物のがれきのようなもので白っぽく写っている。JAXA地球観測研究センターによると、衛星写真では、倒壊した建物も屋根が写ることが多く、通常、被害の判別は難しい。今回は市街地全体で被害状況が分かるため、「被害が非常に大きいことが示唆される」としている。【奥野敦史】

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ハイチ大地震:
国連スタッフ死者36人に

2010年1月15日 10時32分

 【ニューヨーク小倉孝保】ハイチの地震で国連は14日、現地で平和維持活動などにあたる国連スタッフの死者が計36人になったことを明らかにした。負傷者は73人になっている。

 現地の責任者が国連本部とつないだビデオで述べた。死者の内訳は、警察4人、軍人19人、事務職員13人の計36人。現地責任者は、「悲しいことだが、これからも遺体が発見されるはずだ」と述べた。

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ハイチ大地震:
大リーグ機構が9200万円寄付

2010年1月15日 10時14分 更新:1月15日 12時26分

 【ニューヨーク小坂大】米大リーグ機構(MLB)は14日、ハイチ大地震の被災者に向けて100万ドル(約9200万円)の義援金をユニセフ(国連児童基金)を通じて寄付することを明らかにした。MLB公式サイトではファンにも寄付を呼びかけている。各球団のトップチームにハイチ出身選手はいないものの隣接するドミニカ共和国の出身者は多く、選手レベルでの支援も検討されている。

 また、全米プロバスケットボール協会(NBA)のフィラデルフィア76ers(セブンティシクサーズ)の公式サイトによると、同チーム所属で、NBAの選手唯一のハイチ出身、サミュエル・ダレンバート選手(28)も、15日の試合前にユニセフへ10万ドル(約920万円)を寄付すると表明した。

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余録:
ハイチ大地震

 カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島は、その西3分の1をハイチ、東をドミニカ共和国が占める。昔、島の特徴を国王から聞かれたある提督は1枚の紙をくしゃくしゃに丸めて広げ、それを指して言った。「陛下、これがイスパニョーラ島でございます」▲実際、島は海抜2000メートル級の峰が連なる中央山脈をはじめ、いくつもの険しい山脈が入り組む複雑な地形をなしている。しわくちゃになった紙のような地勢は、それを太古からの時間の中で作り上げた巨大な力のせめぎ合いを連想させる▲そんな力の一つが突然目を覚ましたのか。ハイチの首都近郊を震源とするマグニチュード7の大地震だ。複数のプレート(岩板)がせめぎ合うこの一帯だが、ハイチには約200年間大地震はなく、ひずみが蓄積されていたとの見方もある▲被害の大きい首都からは、がれきの下で聞こえる泣き声や、路上に放置された子供の遺体、夜も雷鳴のようにとどろくビル崩壊音など、凄惨(せいさん)な報告が伝えられる。政府要人からは被災者は300万人、死者は10万人以上との推測も出ている▲独裁や政情混乱、米州最貧国という経済・社会の惨状に苦しむ国民を襲った大規模地震だ。「山の向こうはまた山」はうち続く苦難を国土の姿になぞらえたハイチのことわざだ。貧者や弱者をことさらさいなむ災害の無慈悲には言葉を失う▲しわくちゃな紙のような島といえば「どこかと似てるな」と思い当たる方もいよう。そう、この地震列島の住人こそまずハイチの人々の苦難に敏感であっていいはずだ。米欧各国や中国はすでに被災地へ救援隊を派遣している。私たちもなすべきことをせねばならない。

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毎日新聞 2010年1月15日 0時04分


ハイチ大地震:
各国が支援表明 救援活動始まる

 【ニューヨーク小倉孝保、ヒマニ庭田学】大震災に遭ったハイチに対し、国際機関や各国政府は13日、相次いで緊急支援を表明した。主な支援額は世界銀行の1億ドル(約92億円)のほか、国連1000万ドル、オーストラリア930万ドルなど。

 一方、中国の救助隊60人が14日、チャーター機で現地到着するなど、外国からの救援活動も始まった。米国は海兵隊や陸軍部隊を数千人規模で派遣することを検討している。

 国連事務総長のハイチ問題特使を務める米国のクリントン元大統領は14日、米ワシントン・ポスト紙(電子版)への寄稿で、「ハイチ国民の3分の1に当たる300万人が支援を必要としている」との見方を示し、「米州史で最大の人道的緊急事態」の救済を呼びかけた。

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ハイチ地震:被災状況調査に日赤が参事派遣

毎日新聞 2010年1月14日 21時40分


ハイチ大地震:
日本政府、500万ドルの緊急無償資金協力

 日本政府は14日、ハイチ大地震の緊急支援として、ハイチ政府に対し500万ドル(約4億6000万円)の緊急無償資金協力と、テントなど3000万円相当の緊急援助物資を供与することを決めた。また、医療支援チームの派遣を検討するため、同日、外務省、防衛省、国際協力機構(JICA)の職員らによる緊急調査チームを派遣した。

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毎日新聞 2010年1月14日 20時47分(最終更新 1月14日 20時58分)


ハイチ大地震:
「早く助けて」被災者野ざらし 飲み水なく

2010年1月14日 19時42分 更新:1月14日 20時29分

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13日、ハイチの首都ポルトープランスの公園に集まる被災者=AP

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13日、ハイチの首都ポルトープランスの公園に集まる被災者=ロイター

 【ヒマニ(ドミニカ共和国西部)庭田学】野ざらしのまま肩を寄せ合う被災者の群れは、「屋根のない難民キャンプ」と化している。大地震に襲われたハイチからの情報によると、米州の最貧国は機能停止に陥り、首都ポルトープランスでは被災2日目の13日夜になっても満足な収容施設はなく、飲み水さえ手に入りにくい状態が続いている。「誰か、早く助けてくれ」。飲まず食わずで援助を待ち望む人々の悲痛な声が満ちている。

 13日夜、首都中心部のシャンドマルス広場。AFP通信によると、着の身着のまま集まった被災者らは、救援機の飛来を待ちわびて空を見上げていた。水や食料はまったく足りない。排せつ物のにおいが立ちこめる通りには遺体が積み上げられ、がれきの下には手つかずの遺体ものぞく。

 「助けてくれる国が無くなってしまったんだ」。男子大学生は崩壊した大統領宮殿に目をやる。独裁時代が続いたハイチでは社会インフラ整備が遅れ、民政移管後も後遺症を引きずる。大地震は脆弱(ぜいじゃく)な政府をあっけなく機能停止に追い込んだ。

 公務員の男性は「24時間、誰も水一杯さえ届けてくれない」と嘆く。ある男子学生はスーパーから米と水を盗んだと明かした。多くの被災者が、広場の噴水の汚れた水で渇きを癒やしている。

 AP通信は、一部の地域で食料の略奪が起きたと報じた。公衆衛生の専門家は感染症の拡大リスクを懸念している。最優先の捜索・救援活動に加え、今後は治安・衛生面への対応も迫られそうだ。

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ハイチ大地震:
「国が存在しないような状況」代表大使会見

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ハイチのボード代理大使=東京都千代田区の日本外国特派員協会で2010年1月14日、花岡洋二撮影

 大地震に襲われたハイチのボード代理大使が14日、東京都内の日本外国特派員協会で緊急会見した。本国からの公式情報は全くなく、電話で前日話した現地の友人から「破壊されて、もはや国が存在しないような状況だ」と聞かされたという。14日は現地と電話が一度も通じず、電子メールの返信もない。親族らの安否も分からず、インターネットで聞ける地元ラジオや英BBCテレビ、隣国ドミニカ共和国や米国の友人から情報収集していると、悲痛な表情で説明した。

 ハイチはハリケーン被害にたびたび遭っている。地震は最大でマグニチュード3程度がまれにあるぐらいで「地震に対し、事前にどう準備し、事後にどう立ち向かうか誰も知らない」という。日本から医薬品と飲料水の輸送、災害医療や救助の専門家派遣などが準備されていることに感謝し、さらなる支援を呼びかけた。「帰国せず、日本からの援助の調整に全力であたる」と話した。【花岡洋二】

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毎日新聞 2010年1月14日 19時27分(最終更新 1月14日 21時21分)


ハイチ大地震:
国際医療救援団体、医師ら派遣

 ハイチで発生した地震を巡り、国際医療救援団体「AMDA」(本部・岡山市)は14日、現地の被災者支援のため、鈴木梓調整員(31)とニティアン・ヴィーラバグ調整員(41)を派遣した。15日に成田空港で沖縄県在住の渡久地宏文医師(62)と合流し、日本時間の17日に到着する。現地でAMDAカナダ支部の看護師も加わり、緊急医療支援を行う。

 倒壊した建物など、がれきの粉じんによる呼吸器系の疾患に対応するため、マスクや簡単な措置を行う医療器具類を持ち込み、情報収集を行う。鈴木調整員は「被災地のニーズを把握し、どのような医療活動ができるか調査する」と話した。

 義援金は郵便振替(口座番号01250-2-40709、口座名「特定非営利活動法人アムダ」、通信欄に「ハイチ地震」と記入)で受け付ける。【椋田佳代】

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毎日新聞 2010年1月14日 19時16分


ハイチ大地震:
自転車王者のアームストロング選手が援助

 世界最高峰の自転車のロードレース、ツール・ド・フランスを7度制したランス・アームストロング選手(米国)が14日、自身の慈善団体を通じてハイチ大地震の被災者らに25万ドル(約2300万円)を援助したことを明らかにした。

 大会出場のためにオーストラリアを訪れた同選手はハイチについて「ここ数年の政治的混乱や貧困に続いて今度は地震が起き、ひどい状態だ。世界全体が何かをしなければいけない」と話した。(AP共同)

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毎日新聞 2010年1月14日 17時45分


ハイチ大地震:
各国が支援急ぐ 米は空母を派遣

2010年1月14日 12時57分 更新:1月14日 14時23分

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ハイチへの派遣が決まった米空母「カールビンソン」=AP

 【ワシントン小松健一、ヒマニ(ドミニカ共和国)庭田学】大地震の発生から一夜明けたハイチでは、時間を追うごとに甚大な被害状況が明らかになりつつある。地元の救急医療体制がほぼ壊滅状態とみられる中、米欧各国や国際機関、非政府組織(NGO)などは現地での緊急援助活動を急いでいる。

 オバマ米大統領は13日、「迅速で組織的かつ積極果敢な救援活動にあたるよう政府に指示した」と述べ、行方不明者の救出活動と緊急支援に取り組む姿勢を強調。災害救援チームに加え、米空母を現地へ差し向けるとともに、海兵隊の現地派遣も検討するなど、04年のインド洋大津波以来の大規模な支援に乗り出した。

 ハイチには約4万5000人の米国人が滞在し、負傷したり連絡の取れない米国人が多数いる模様だ。オバマ大統領は「生存者を救い、惨事を拡大させないために最初の数時間、数日が決定的に重要だ」と語った。

 米政府によると、ハイチの空港滑走路は使用可能だが、管制機能がダウンしているため、救援機を多数受け入れることが難しい。このため、カリブ海や中南米を所管する米南方軍のフレーザー司令官は13日、管制機能などインフラ復旧を支援するとともに、空母「カールビンソン」にヘリコプターを積載し、14日から現地で空輸支援にあたる方針を明らかにした。

 また、国連平和維持活動のハイチ安定化派遣団(約9000人)本部が壊滅状態になったことを受け、フレーザー司令官は治安状況について「相当な懸念がある」と指摘。救援と治安維持を目的に2000人規模の海兵隊派遣を検討していることを明らかにした。

 一方、AP通信によると、米赤十字社の報道担当者は「現地にある(米赤十字社の)医療品は底をついた。新たな物資を送っているが、到着がいつになるかは分からない」と述べた。また、町のいたる場所に積み上げられている遺体の処理が問題となっており、世界保健機関(WHO)は遺体撤去のため専門家を派遣。国際赤十字社は遺体袋を積載した飛行機を出発させた。

 ハイチの旧宗主国フランスは13日、がれき撤去の専門家65人と行方不明者の捜索犬6頭を派遣。カナダ軍の偵察部隊やイスラエル軍の救援部隊、アイスランドなどの捜索救援隊も派遣された。キューバは、既存のハイチ国内の野戦病院でこれまでに数百人の被災者の治療にあたったことを明らかにし、「国境なき医師団」は被害を受けた病院の近くにテントを張り、数百人を治療したという。

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ハイチ大地震:
首相「犠牲者10万人超も」 救援進まず

2010年1月14日 11時35分 更新:1月14日 13時8分

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地震により多くの建物が崩壊したハイチの首都ポルトープランス(13日撮影)=ロイター

 【ヒマニ(ドミニカ共和国西部)庭田学、ニューヨーク小倉孝保】マグニチュード7.0の大地震に直撃されたカリブ海の島国ハイチのベルリーブ首相は13日、米CNNテレビの取材に対し、犠牲者は10万人を超す可能性があると述べた。また、プレバル大統領は同テレビに「(数字は)分からない。5万~3万人とも聞いた」と話した。いずれも根拠は示していないが、12日の地震発生から一夜が明け、首都ポルトープランスを中心に未曽有の被害が明らかになりつつある。

 被災地では、救援に必要な重機や医療資材が不足し、救援活動は難航している。ロイター通信などによると、首都では病院、学校、教会などが軒並み崩壊。学校脇には子供の、路上には男女の遺体が積み上げられている。

 各地では夜通しで、素手と懐中電灯を使ってがれきの撤去、救助作業が行われた。中心部のホテル駐車場に負傷者が集まっているが、本格的な治療行為は行われていない模様。また首都では刑務所が壊れ、受刑者が逃走したとの情報もあり、治安悪化も懸念される。

 生存者もぼうぜん自失の様子だ。倒壊建物から脱出した、ほこりまみれの女性が泣き叫びながら通りを歩いている。遺体を一つ一つのぞき込み、親族らを捜す人たちも大勢いる。また広場には数千人が集まり、賛美歌を歌って励まし合っている。

 首都の東約60キロにあるドミニカ共和国の国境の町ヒマニには、ハイチ側から多数の負傷者が搬送されている。救援物資もドミニカ側の国境まで陸路で運ばれ、ハイチ領内に空輸されている。

 一方、国連は13日、平和維持に当たっていた国連ハイチ安定化派遣団(約9000人)の本部倒壊で、隊員16人の死亡を確認したと発表した。国籍別では、ブラジル11人▽ヨルダン3人▽アルゼンチン1人▽チャド1人。また、プレバル大統領は派遣団のアナビ特別代表(チュニジア)の死亡を発表した。隊員約150人が行方不明で、死者が増えるのは確実だ。AP通信によると、ハイチのミオ大司教の死亡も確認された。

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◇なぜ起きた◇ハイチ大地震:プレート境界、ひずみ蓄積
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ハイチ大地震:死者は数千人に上る見通し…プレバル大統領


米国務長官:
豪など歴訪を中止 ハイチ大地震に対応

 【ワシントン小松健一】ハワイに滞在中のクリントン米国務長官は13日、ハワイから出発予定だったパプアニューギニア、ニュージーランド、オーストラリアへの歴訪を中止すると発表した。ハイチ大地震への対応にあたるためで、クリントン長官は直ちにワシントンに戻る。

 3カ国への訪問は改めて日程を調整するという。

 クリントン長官は12日に岡田克也外相と会談した後、19日までの日程で歴訪に出発する予定だった。しかし大地震を受けて、出発時間を延ばし、フランス、ブラジル、カナダなどの外相と電話で支援態勢を協議していた。

 今後、国際的な支援の枠組みを話し合う必要性が高まったことに加えて、ハイチで被災した米国人約4万5000人の救援も緊急の課題となったことで歴訪を取りやめたとみられる。

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毎日新聞 2010年1月14日 10時54分(最終更新 1月14日 11時21分)


ハイチ大地震:
最貧国を直撃 長い独裁、防災に遅れ 国連部隊被害、治安悪化の恐れも

 【メキシコ市・庭田学】西半球の最貧国ハイチの首都ポルトープランスを直撃した大地震は、独裁時代の無策による脆弱(ぜいじゃく)な社会インフラや防災対策の立ち遅れによって、近年にない大被害をもたらした。治安維持のため駐留している国連部隊にも被害が及んでおり、被災者支援の遅れなどで不満が募れば、食糧高騰に伴う08年4月の暴動のような社会的混乱に陥る可能性もある。

 20世紀後半以降、独裁政権が相次いだハイチでは、民政移管とクーデターが繰り返されるなど、今も独裁の後遺症を引きずっている。米ソ冷戦時代に軍事独裁政権を経験した他の中南米諸国が90年代以降、民主主義を定着させたのとは対照的に、ハイチ国民はいまだにその恩恵を受けていない。このため、防災対策も立ち遅れており、ハリケーンが直撃するたびに大きな被害を出してきた。

 08年秋には暴風雨で約800人が死亡。道路や橋などが破壊されたほか、農作物も大打撃を受け、15万人が数カ月の避難生活を余儀なくされた。同じハリケーンに遭いながら、陸続きの隣国ドミニカ共和国に比べて深刻な被害が出る傾向にある。

 今回の地震では、電話などの通信網がほぼ壊滅したほか、AFP通信によると大統領宮殿や国会、省庁まで損壊した。

 また、食糧供給も不安定な状態だ。08年4月にはコメなどの価格高騰によって暴動が発生し、死者を出すなど、社会の不安定さを改めて露呈していた。

 ハイチには04年以降、ブラジルやチリなど主に中南米諸国からの要員で構成される国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が駐留し、治安の維持に目を光らせている。今回の地震では派遣団本部の建物も大きく損壊し、下敷きになったり、連絡がつかなくなった要員も出ている。

 ハイチの治安は他の中南米諸国に比べても悪いため、警察能力の低下に伴い治安情勢が一層悪化する可能性も指摘されている。

 AP通信によると、欧州の民間支援団体は昨年3月、「ハイチ国民の生活が改善されないと、治安がさらに悪化する」と指摘。食料不足などの貧困問題が、市民の暴徒化などの社会不安につながっていると指摘していた。

 フランスの植民地だったハイチは、フランス革命(1789年)の影響を受け、1804年に中南米カリブ諸国で最初に独立した。19世紀にはドミニカ共和国に軍事侵攻するなど国力を誇った時期もあったが、独裁政権が相次いだ20世紀後半から国土は荒廃。米州の最貧国に転落した。多くのハイチ人が貧困から逃れるためドミニカ共和国に不法入国する事態となっている。

 米国の研究者、ジャレド・ダイアモンド氏は著書「文明崩壊」の中で、ハイチ荒廃の原因について、1957年から86年まで続いたデュバリエ父子による独裁政治を挙げる。独裁者が私腹を肥やすことに終始したため、インフラ整備は放置された。この無策によって自然災害に脆弱な社会構造になってしまったというわけだ。ドミニカ共和国にも独裁政権時代があったが、インフラ整備は進められ、ハイチだけが中南米カリブ海諸国で取り残された。

 ◇前回は18世紀、地殻にひずみ蓄積

 今回の大規模地震を起こした断層が震源となった地震は18世紀半ばまでさかのぼる。カリブ海では、複数のプレート(岩板)が複雑にせめぎあう場所に位置するため、マグニチュード(M)6~7規模の地震が繰り返し起きているが、ハイチは地震発生の空白域になっていた。また、地震のタイプは阪神大震災と似ていることが分かった。

 カリブ海に東西に並ぶドミニカ共和国、ハイチ、ジャマイカの各島国は北米プレートとカリブプレートの境界付近にある。ドミニカでは1946年に発生したM8・1の大地震で約100人が死亡した。ジャマイカでは1907年にM6・5の地震で約1000人が死亡した。

 しかし米地質調査所によると、ハイチ周辺では最近の数十年間には大きな地震は起きていない。東京大地震研究所が文献を調べたところ、今回と同じ震源地での地震は1751年だった。同研究所の大木聖子助教(地震学)は「ハイチはしばらく地震が発生していない。いわば地震の空白域だった」と話し、地殻に地震を起こすひずみが蓄積していたとみられる。

 一方、地震の規模は95年の阪神大震災のM6・9(米地質調査所調べ)とほぼ同じM7・0だった。今回の震源の深さが約10キロだったのに対し、阪神大震災は16キロ。地震の発生メカニズムも、地盤が主に左右にずれる横ずれ断層という点も共通している。被害が拡大した理由は、大都市直下で発生したために、多数の建物が崩壊し、多くの死傷者が出たとみられる。

 日本地震工学会は被害の実態と原因を探るため、調査団を派遣する予定だ。浜田政則会長(早稲田大教授)は「現地映像を見ると、鉄筋コンクリート造りの建物が多く崩壊している。途上国で起きた地震被害の典型で、建物の耐震性が低かったのではないか」と話す。【石塚孝志】

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ハイチ地震:首都「壊滅的な被害」 家失い路上に数千人

毎日新聞 2010年1月14日 東京朝刊


ハイチ大地震:
死者は数千人に上る見通し…プレバル大統領

2010年1月13日 21時34分 更新:1月14日 1時19分

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12日、ハイチの首都ポルトープランスで倒壊した建物=AP

 【メキシコ市・庭田学】カリブ海の島国ハイチで12日夕(日本時間13日朝)に発生したマグニチュード7.0の地震で、プレバル大統領は13日、米マイアミ・ヘラルド紙に、死者が数千人に上るとの見通しを示した。数千人ががれきの下敷きになっているとの情報もあるが、捜索は難航している。国連の潘基文(バンギムン)事務総長は同日、国連本部で「すべての国に支援を呼びかけたい」と述べた。

 また、国際赤十字(本部・ジュネーブ)の広報担当者は同日、首都ポルトープランスを中心に被災者が300万人に達するとの推計をAP通信に明らかにした。全人口の3割強に相当する。被害状況の把握には24~48時間かかるという。

 国連ハイチ安定化派遣団(約9000人)本部も大破。アナビ特別代表らが行方不明だ。

 ロイター通信によると、派遣団のブラジル軍から多数の行方不明者が出て、4人以上が死亡。中国とヨルダンも部隊から死者や不明者が出たという。

 また、フランス政府当局者によると、首都で観光客に人気のモンタナ・ホテルが崩壊、約200人が行方不明。13日までに赤十字のほか、フランスやイタリアなどが捜索、医療団の派遣を決めた。

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ハイチ大地震:
プレート境界、ひずみ蓄積

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中南米付近のプレート

 今回の大規模地震を起こした断層が震源となった地震は18世紀半ばまでさかのぼる。カリブ海では、複数のプレート(岩板)が複雑にせめぎあう場所に位置するため、マグニチュード(M)6~7規模の地震が繰り返し起きているが、ハイチは地震発生の空白域になっていた。また、地震のタイプは阪神大震災と似ていることが分かった。

 カリブ海に東西に並ぶドミニカ共和国、ハイチ、ジャマイカの各島国は北米プレートとカリブプレートの境界付近にある。

 ドミニカでは1946年に発生したM8.1の大地震で約100人が死亡した。ジャマイカでは1907年にM6.5の地震で約1000人が死亡した。

 しかし米地質調査所によると、ハイチ周辺では最近の数十年間には大きな地震は起きていない。東京大地震研究所が文献を調べたところ、今回と同じ震源地での地震は1751年だった。同研究所の大木聖子助教(地震学)は「ハイチはしばらく地震が発生していない。いわば地震の空白域だった」と話し、地殻に地震を起こすひずみが蓄積していたとみられる。

 一方、地震の規模は95年の阪神大震災のM6.9(米地質調査所調べ)とほぼ同じM7.0だった。また、今回の震源の深さが約10キロだったのに対し、阪神大震災は16キロ。地震の発生メカニズムも、地盤が上下に動くタイプというより、主に左右にずれる横ずれ断層という点も共通している。

 被害が拡大した理由は、大都市の直下で発生したために、多数の建物が崩壊し、多くの死傷者が出たとみられる。

 日本地震工学会は被害の実態と原因を探るため、調査団を派遣する予定だ。浜田政則会長(早稲田大教授)は「現地映像を見ると、鉄筋コンクリート造りの建物が多く崩壊している。途上国で起きた地震被害の典型で、建物の耐震性が低かったのではないか」と話す。【石塚孝志】

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毎日新聞 2010年1月13日 20時07分(最終更新 1月13日 23時36分)


ハイチ大地震:
最貧国を直撃…長い独裁、防災に遅れ

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13日、ポルトープランス大学で、崩壊した建物に体を挟まれ、助けを求める男性=テレビ映像から、ロイター

 【メキシコ市・庭田学】西半球の最貧国ハイチの首都ポルトープランスを直撃した大地震は、独裁時代の無策による脆弱(ぜいじゃく)な社会インフラや防災対策の立ち遅れによって、近年にない大被害をもたらした。治安維持のため駐留している国連部隊にも被害が及んでおり、被災者支援の遅れなどで不満が募れば、食糧高騰に伴う昨年4月の暴動のような社会的混乱に陥る可能性もある。

 ◇国連部隊被害…治安悪化の恐れも

 20世紀後半以降、独裁政権が相次いだハイチでは、民政移管とクーデターが繰り返されるなど、今も独裁の後遺症を引きずっている。米ソ冷戦時代に軍事独裁政権を経験した他の中南米諸国が90年代以降、民主主義を定着させたのとは対照的に、ハイチ国民はいまだにその恩恵を受けていない。

 このため、防災対策も立ち遅れており、ハリケーンが直撃するたびに大きな被害を出してきた。

 08年秋には暴風雨で約800人が死亡。道路や橋などが破壊されたほか、農作物も大打撃を受け、15万人が数カ月の避難生活を余儀なくされた。同じハリケーンに遭いながら、陸続きの隣国ドミニカ共和国に比べて深刻な被害が出る傾向にある。今回の地震では、電話などの通信網がほぼ壊滅したほか、AFP通信によると大統領宮殿や国会、省庁まで損壊した。

 また、食糧供給も不安定な状態だ。昨年4月にはコメなどの価格高騰によって暴動が発生し、死者を出すなど、社会の不安定さを改めて露呈していた。

 ハイチには04年以降、ブラジルやチリなど主に中南米諸国からの要員で構成される国連ハイチ安定化派遣団(MINUSTAH)が駐留し、治安の維持に目を光らせている。今回の地震では派遣団本部の建物も大きく損壊し、下敷きになったり、連絡がつかなくなった要員も出ている。ハイチの治安は他の中南米諸国に比べても悪いため、警察能力の低下に伴い治安情勢が一層悪化する可能性も指摘されている。

 AP通信によると、欧州の民間支援団体は昨年3月、「ハイチ国民の生活が改善されないと、治安がさらに悪化する」と指摘。食料不足などの貧困問題が、市民の暴徒化などの社会不安につながっていると指摘していた。

 フランスの植民地だったハイチは、フランス革命(1789年)の影響を受け、1804年に中南米カリブ諸国で最初に独立した。19世紀にはドミニカ共和国に軍事侵攻するなど国力を誇った時期もあったが、独裁政権が相次いだ20世紀後半から国土は荒廃。米州の最貧国に転落した。多くのハイチ人が貧困から逃れるためドミニカ共和国に不法入国する事態となっている。

 米国の研究者、ジャレド・ダイアモンド氏は著書「文明崩壊」の中で、ハイチ荒廃の原因について、1957年から86年まで続いたデュバリエ父子による独裁政治を挙げる。独裁者が私腹を肥やすことに終始したため、インフラ整備は放置された。この無策によって自然災害に脆弱な社会構造になってしまったというわけだ。ドミニカ共和国にも独裁政権時代があったが、インフラ整備は進められ、ハイチだけが中南米カリブ海諸国で取り残された。

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毎日新聞 2010年1月13日 20時03分(最終更新 1月14日 2時19分)


ハイチ大地震:
日本赤十字社スタッフ 被災調査で現地へ

 大地震に襲われたハイチの被災状況を調べるため、日本赤十字社は13日、監査室参事の白田尚道氏(56)を首都ポルトープランスに派遣した。現地スタッフらと約2週間、情報収集にあたる。日赤は救援チームの派遣準備を進めているという。

 白田氏は05年スマトラ島沖地震などでも救援活動に従事。成田国際空港で出発前、「発展途上国なので衛生状態などが心配。被害はさらに拡大すると思う」と話した。

 また、日赤は救援活動の支援金2000万円を国際赤十字に寄付した。【斎川瞳】

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毎日新聞 2010年1月13日 19時15分(最終更新 1月13日 20時02分)


ハイチ地震:
首都「壊滅的な被害」 家失い路上に数千人

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12日、ハイチの首都ポルトープランスで、地震で倒壊した建物の下から救出される住民のビデオ映像=ロイター

 【メキシコ市・庭田学】夕闇が迫る街のあちこちに広がるがれきの山。その下からは助けを求める生存者の悲痛な声が漏れている--。カリブ海の最貧国ハイチを襲った大地震。首都ポルトープランスからは「壊滅的な被害」(駐米ハイチ大使)を受け、途方にくれる人々の様子が伝えられた。

 現地では被災直後から固定電話、携帯電話ともに不通となり、被害状況の把握は困難だ。かろうじて伝えられた一部映像によると、一般家屋や商店だけでなく、政府庁舎やホテルなども崩壊するなど大きな被害を受けている。自身も負傷し、血まみれになった医師はAFP通信に対し、「死者総数が分かるころには、数百人規模になっているだろう」と述べた。

 ロイター通信によると、人々はパニック状態となり、がれきの下から生存者を引きずり出そうとしたり、行方不明となった家族を捜している。倒壊した建物の多くは、コンクリートブロックを積み上げただけの脆弱(ぜいじゃく)な構造だったとみられる。

 米CNNテレビ(スペイン語版)は、被災地が雲のような粉じんで覆われている様子を高台から撮影した映像を流した。AP通信によると、今回のような大規模な地震はハイチでは過去200年以上なかったという。

 長年の政情不安と貧困のため、ハイチでは建築基準の整備などが手付かずのままだった。08年11月には首都近郊で3階建ての学校が突然崩壊し、生徒ら100人近くが死亡した。手抜き工事が原因と言われている。

 停電のため、真っ暗になった夜の街角には、家を失った数千人もの人々が路上やがれきの上に座り込んだり、さまよい続けた。現地に駐在する米政府の援助関係者は、CNNテレビに「道路にがれきが散乱し、身動きができない状態だ。人々は余震のたびにおびえている」と話した。

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毎日新聞 2010年1月13日 13時16分(最終更新 1月13日 13時26分)


地震:
カリブ海のハイチでM7.0 数千人が下敷きか

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12日、ハイチの首都ポルトープランスで、地震で倒壊した建物の前を逃げ惑う住民ら=AP

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ハイチの首都ポルトープランスの位置

 【メキシコ市・庭田学】カリブ海の島国ハイチで12日午後4時53分(日本時間13日午前6時53分)ごろ、マグニチュード(M)7.0の地震があった。震源に近い人口約200万人の首都ポルトープランスでは、大統領宮殿など政府庁舎を含む多くの建物が倒壊。米CNNテレビ(スペイン語版)によると、火災が多数発生している。地元の医師はAFP通信に数百人が死亡した可能性があると述べた。一方、現地に駐在する米国の援助団体関係者はロイター通信に、数千人ががれきの下敷きになっている可能性があると指摘し、「数百人の死者というのは非常に控えめな見通しだろう」と述べた。

 米地質調査所によると、震源はポルトープランスの南西約15キロで、震源の深さは約10キロと極めて浅い。M5.0を超える余震が10回以上続いている。

 AP通信によると、ハイチで平和維持活動を展開する国連ハイチ安定化派遣団(約9000人)の本部が深刻な被害を受けた。同国に展開する他の国連機関の建物も大きな被害を受けており、国連は「多くの職員が行方不明になっている」との声明を出した。ハイチ国内の通信事情は極めて悪くなっており、被害状況の把握が困難な状況だ。

 隣国のドミニカ共和国にある日本大使館によると、ハイチの在留邦人は外交官を含めて約20人。ポルトープランスの日本大使館が邦人の安否確認を進めている。日本大使館の建物も壁に亀裂が走るなどの被害が出た。大使館への通話も断続的にしかできていないという。

 オバマ米大統領は12日、「ハイチの人々を支援する用意」を表明した。ハワイを訪問中のクリントン米国務長官は、軍事・民生双方の人道援助を実施すると述べた。

 周辺諸国には津波警報が出されたが、間もなく解除された。

 理科年表によると、ハイチで起きた大地震による被害の記録はないが、周辺国では、1907年に西隣のジャマイカでM6.5の地震があり、1000人が死亡した。また東隣のドミニカ共和国では、1842年に死者4500人の地震があったほか、1946年8月にM8.1とM7.9の大地震が相次いで起き、100人の死者が出た。

 【ことば】ハイチ

 人口約900万人のカリブ海の島国。17世紀にフランスの植民地となったが、1804年に独立し、世界で初めての黒人国となった。人口の8割が1日当たり2ドル以下で生活する米州の最貧国。91年の軍事クーデターなど政変が続き、国連が04年から平和維持活動を展開している。

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毎日新聞 2010年1月13日 9時08分(最終更新 1月13日 13時10分)


地震:
カリブ海のハイチでM7.0

 米地質調査所(USGS)によると、カリブ海のハイチで12日午後4時53分(日本時間13日午前6時53分)、マグニチュード(M)7.0の地震が発生。AP通信によると病院が崩壊した。(メキシコ市・共同)

毎日新聞 2010年1月13日 9時00分





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