Italian Earthquake
イタリア地震・死者は200人超す

イタリア地震:耐震強化「日本を見習え」

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9日、イタリア中部ラクイラ近郊で、地震により崩壊した教会前で迷い犬に餌をやる軍警察の職員=AP

 【ローマ藤原章生】イタリア中部地震で、多数の建造物が簡単に崩壊したことから、イタリア国内で、耐震強化などの面で「日本を見習え」との声が高まっている。背景には「国の無策が中部地震の惨事を広げた」との国民の不満がある。

 「日本はこうして打ち勝った」--。イタリアの有力紙レプブリカは8日付紙面で2ページにわたり日本での建物の耐震強化など地震対策を紹介し「イタリアは遅れている」と政府に早期対策を訴えた。

 記事は冒頭で耐震工学者、アレッサンドロ・マルテッリ・フェッラーラ大教授による「マグニチュード(M)7.5の地震が起きた場合、東京での死者は400人だが、南部カラブリア州では1万5000~3万2000人が犠牲になる」との試算を紹介した。

 「日本では、今回の中部地震程度(M6.3)では新聞記事にもならない」と極端な記述もあり「いまだに耐震建築基準の法律を実用化できていない我が国」を嘆く。記事では日本を模範例に、木造家屋や鉄筋コンクリートの建物を強化する建材や緩衝材などについて図入りで紹介した。

 イタリアは74年に初めて地震対策法が制定されたが、南部のシチリア、カラブリア州が対象だった。その後、北、中部での震災を経て、全土を危険度で4地域に分け耐震建築を義務づける改正法が03年に導入された。

 だが、地域差は激しい。76年に震災に遭った北部のフリウリ・ベネチア・ジュリア州では耐震建築がブームのように広がったが、中部や南部では新築でも1~3割ほど。今回の被災地ラクイラは、新しい公立病院や新庁舎も半壊しており、現在、行政による手抜き工事や「耐震偽装」が問題視されている。

 イタリア中部地震の死者は9日、少なくとも287人に達した。

毎日新聞 2009410日 1026分(最終更新 410日 1441分)


イタリア地震:人命救助、海外に支援求めず「我々だけで」

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イタリア中部、ラクイラの倒壊した建物の脇で、犬(右奥)を使い消息不明の少女を捜すイタリア山岳兵と災害救助隊員=2009年4月6日、ラクイラで藤原章生撮影

 【ローマ藤原章生】イタリア中部地震の救助作業を指揮するベルルスコーニ首相は7日の記者会見でオバマ米大統領からの支援の申し出を紹介したが、ニュータウン建設などでの協力を求め、人命救助での支援を暗に断った事を明らかにした。首相は生存者捜索で海外に協力を求めておらず「我々は強い国民だから十分足りている」と語る。だが、野党・民主党のフランチェスキーニ代表は「支援は素直に受けるべきだ」と異を唱えている。

 地震など災害やテロ爆破現場では、熟練者によるがれき除去作業が生存者救出のカギを握る。この分野では爆弾テロの頻発国イスラエルの機動力が高い。しかし、在イタリア・イスラエル大使館のラヘル・ファインメッサー報道官は8日、毎日新聞に「がれきでの救助専門家の派遣を再三イタリア政府に申し出たが断られた」と述べた。同報道官は「8日にはネタニヤフ首相がベルルスコーニ首相に電話で改めて協力を申し出て、外相同士も話し合った。だが、イタリア側は『専門家も隊員も十分いる』との返事で、残念ながら派遣は見合わせた」と話す。

 地震直後の6日昼、最も被害の大きいラクイラの市街では犬を連れたイタリア山岳兵と災害救助隊らが即席チームをつくり生存者を捜していた。だが、別の現場から生存者情報が入ると、全員が作業を中断し撤収する場面もあり、がれきの現場に詳しい専門家や人員が足りている状況ではなかった。

 ベルルスコーニ政権は、米国の申し出を「断った」とは明言しないが「外国の救助隊が入ると統率が難しいため、当初から求める考えはなかった」(首相府)という。ベルルスコーニ首相は7日の会見で「外国の連帯に感謝するが、救援隊を送らないよう頼んだ。我々は緊急事態を自分たちで対処できる」と唱え、「我々だけで」と国民を鼓舞するような発言が目立った。

 今回の地震の死者は260人に上った。

毎日新聞 200948日 2125分(最終更新 49日 1533分)


イタリア地震:「耐震基準を徹底できず」と被害地の村長

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サンタンジェロ村のビオンディ村長(左)とアブルッツォ州の経済発展担当、カスティリオーネ知事顧問=2009年4月7日午後3時ごろ、藤原章生撮影

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イタリア中部アブルッツォ州のサンタンジェロ村

 【サンタンジェロ(イタリア中部)藤原章生】「耐震基準を住民に徹底させることなどできない」。6日未明のイタリア中部地震で、中心広場がほぼ全壊したアブルッツォ州サンタンジェロ村のビオンディ村長(35)は疲れ切った表情で語った。人口500人の村は一瞬の家屋倒壊で17人の死者を出した。

 州都ラクイラの南東16キロにある村を7日午後訪ねた。崩落したのは17世紀建造の教会や住宅で、80年代以降に建てた家はひびが入るか半壊で済んだ。ただ広場でも16世紀の議事堂は無傷のままだ。「最近の修復で柱などを補強したためだ」と村長は言う。

 他の古い家屋を修復する考えはなかったのか。イタリアでは鉄筋やコンクリート材などで建物を強化する耐震基準が74年に導入され、08年まで数年おきに改正されてきた。

 「でも我々は基準に従わない。皆好き勝手に家を造り、将来を憂うタイプでもないから、徹底させるのは難しい。日本とは違うから」と村長。その時、州の経済発展担当、カスティリオーネ知事顧問が村の視察に来た。

 耐震建築について聞くと「日本人の9割がそれに従うとすれば、イタリア人は多分1割。実際、当局が指導しても守るのは3割もない」とまじめに言う。「ただ、こういう惨事があるとイタリア人は割と劇的に変わる。耐震という考えが急速に広がると思う」

 村の中心は立ち入りが制限され、住民は村外れの草原のテントや車で寝泊まりし、集団で自炊している。「まだ壊れた広場を見に行く気になれないんです」と言う70代の女性をはじめ、みな悲しそうな顔をしている。

 必要なものを聞くと、銀行員のメロニオさん(60)が「衣類も食糧も十分届いているから大丈夫」と答えた。「でも、もし日本人がくれるって言うなら……、やっぱり秩序と順法精神かな」と語った。

毎日新聞 200948日 1153分(最終更新 48日 1318分)


イタリア地震:震央近くの村ほぼ壊滅状態 警察隊ヘリ搭乗

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イタリア中部地震の被災地、ラクイラの中心街を上空から視察するイタリア国家警察隊員=国家警察隊のヘリから2009年4月7日午前9時50分ごろ、藤原章生撮影

 【ラクイラ(イタリア中部)藤原章生】救援活動の続くイタリア中部地震の被災地を視察するイタリア国家警察隊のヘリコプターに7日午前、同乗した。震央(深さ8.8キロの震源の地表点)から3キロほど離れた村、オンナはほぼ壊滅状態で、救援隊の姿もほとんどなく、生存者救出は見送ったようだ。ベルルスコーニ首相は「国民だけで対処できる」と海外援助を要請していないが、がれきからの救出作業は進んでいない。

 国家警察隊のヘリは午前9時半にラクイラ西方の空港から飛び、最も被害のひどい村オンナとパガニカ、ラクイラ市街の上空を30分ほど視察した。

 アペニン山脈の雪山が見下ろすラクイラ周辺には中世からの古い村々が散在する。大半は家屋の中が壊れたり、壁にひびが入ってはいるが家の原形をとどめている。しかしラクイラの東南東6キロにある人口350人のオンナは、周辺に比べ格段にひどい。災害救助隊によると、住宅の7割が全壊したという。壁職人などのルーマニア人ら移民が多く住んでいたという。

 オンナの被害は、揺れの激しさに加え、脆弱(ぜいじゃく)な家屋も一因のようだ。村は1944年、ナチス・ドイツ軍の侵攻で焼き尽くされた過去がある。村を再建したのは、建設資材が不足していた戦中戦後にかけての40年代。今後の調査が必要だが、それ以前、または50年代以降の建物に比べ強度が弱かった可能性がある。

 上空から見る限り、ラクイラ周辺では教会など18世紀以前の古い建物の崩壊が目立つが、20世紀半ばの建物もかなり壊れている。

 ベルルスコーニ首相は海外からの救援について「十分足りている」と表現したが、村々での捜索活動は活発ではない。

毎日新聞 200947日 2118


イタリア地震:
断層の規模、長さ20キロと解析…名古屋大

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イタリア中部地震でほぼ壊滅した村、オンナ。救助員の姿はほとんどなかった=イタリア国家警察隊のヘリから2009年4月7日午前9時40分、藤原章生撮影

 名古屋大地震火山・防災研究センターは7日、イタリア中部で6日に地震を起こした断層の解析結果を公表した。ずれた断層の規模は長さ約20キロ、幅約10キロで、約10秒かけて最大60センチ動いた。破壊は深さ1キロと極めて浅い場所にまで広がり、北から南に向かって進んだという。

 95年の阪神大震災と比べて、今回の地震のエネルギーの大きさは8分の1程度という。被害拡大の原因について、センターは「震源が浅く、大きくずれたため」と説明している。【石塚孝志】

毎日新聞 2009年4月7日 19時29分



イタリア地震:死者は100人に

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イタリア中部、ラクイラの市街地西方で全壊したアパートで救出作業をする災害救助隊=09年4月6日午前10時半、ラクイラで藤原章生撮影

 【ラクイラ(イタリア中部)藤原章生】イタリア中部で6日未明(日本時間同日午前)に発生した地震で、AFP通信などは死者数が100人に上ったと報じた。ロイター通信は、救助当局者の話として、5万人が家屋を失った可能性があると報じた。

 震源地はローマの北東約95キロで震源の深さは約10キロ。米地質調査所(USGS)によると、マグニチュード(M)6.3だった。AFP通信などによると、震源地に近い同国中部アブルッツォ州ラクイラなどで死者が出た。

 2009年4月6日


【イタリア地震:毎日新聞報道写真】

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