【中国・四川大地震:毎日新聞フォトリンク】

四川大地震:仮設住宅で相次ぐ流産

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父が埋まったままとみられる現場付近で死者を弔う紙銭を燃やして供養する娘の範書麗さん=中国・四川省の北川県で2009年5月11日、貝塚太一撮影

 【都江堰(中国四川省)浦松丈二】昨年5月12日に発生し、9万人近い死者・行方不明者を出した中国・四川大地震で、大きな被害に見舞われた四川省都江堰市の仮設住宅に住む被災者の流産や死産が相次いで報告されていることが12日、分かった。中国政府や地元衛生当局は調査に乗り出している模様だが、結果を一切公表しておらず、国内メディアに被災地での流産に関する報道を禁じるなど情報統制を強めている。

 地元医師らによると、同市人民病院では震災後、都江堰地区の妊婦100人余りの胎児が胎内で死亡していると診断された。関係者によると、別の病院では4月中旬までに43人が無事に出産したが、39人が流産や死産となった。同市の小学校のある学級では、子供を失った母親8人が再妊娠したが、7人が死産となり、無事に出産したのは1人だった。

 仮設住宅での健康被害を巡っては、05年8月に米南東部を襲ったハリケーン・カトリーナの被災地で、シックハウス症候群の原因となる化学物質ホルムアルデヒドの影響が報告されている。死産や流産とホルムアルデヒドを明確に関連づける疫学調査結果はなく、流産は心理的ストレスの影響との見方もあるが、都江堰の医師や被災者は仮設住宅から排出されるホルムアルデヒドの影響を指摘している。

 ホルムアルデヒドは建築材料の接着剤や合板などに含まれている。四川大地震の被災地には約62万棟の仮設住宅が建設されており、資材不足から粗悪な材料が使われているとの指摘も出ている。

 関係者によると、地元当局は4月中旬、国内メディアに被災地での流産に関する取材、報道、関連報道の転載を禁じる通達を出した。また、外国メディアに健康被害を訴えようとした被災者が当局に一時拘束される事態も相次ぐ。地元衛生当局が仮設住宅のホルムアルデヒド濃度との関連を調査したとされるが、詳しいデータなどは公表されていない。

 中国国家認証認可監督管理委員会の謝軍副主任は毎日新聞に対し、仮設住宅の健康被害について「報告を受けていない」とした上で、地元の強い要請を受けて都江堰、什※の両市に実験施設を設置し、復興プロジェクトに使われる建築材料の安全検査に乗り出したことを明らかにした。※は方におおざと

 ◇家族思いの父だった

 【北川(中国四川省)鈴木玲子】「家族思いの父だった」。中国・四川大地震で壊滅的な被害を受けた四川省北川県曲山地区で短大生の範書麗さん(19)は、今も行方不明の父、全新さん(当時40歳)への思いを語った。

 自宅は山を一つ越えた白果村にあったが、父が書麗さんと妹の書丹さん(12)の通学のために曲山に家を借り、母の唐輝さん(40)と4人で暮らしていた。周囲が出稼ぎに出ても、全新さんは「家族は一緒にいなくてはダメだ」と家具職人の仕事を続けた。

 書麗さんは11日、買い物に出た父が地震による建物倒壊に巻き込まれたとみられる場所で線香を手向けた。「卒業したら親孝行したいと思っていたのに」とつぶやいた。

毎日新聞 2009年5月12日 15時00分(最終更新 5月12日 15時00分)


記者の目:
四川大地震1年、被災者の声封じるな=浦松丈二

 9万人近い死者・行方不明者を出した中国・四川大地震の発生から、12日で1年になる。冷たい雨が降りしきる被災地で当時聞いた遺族たちの泣き声は、今も耳から離れない。かけがえのない家族や友人を一瞬で失った無念さ、時が経過しても消えない喪失感。だが、被災地を再訪して感じたのは、悲しみを抱えたままの被災者に追い打ちをかけるような息苦しさだった。

 四川省成都から車で約1時間半。都江堰市の新建小学校は地震で校舎が倒壊し、児童約680人のうち300人以上が死亡した。私が連絡を取った保護者は「取材を受けたいが今は難しい」と電話口で声を潜めた。前日、外国メディアの取材を受けた遺族が地元当局者に連行されたという。この保護者は「私たちは政府に校舎が倒壊した理由の説明を要求しているだけ。なぜ監視されなければならないのか」と早口で話した。盗聴を恐れているようだ。

 四川大地震では多くの学校や病院が倒壊し、地元政府と業者の癒着による手抜き工事が原因と遺族らは訴えた。発生直後に現地入りした私も、学校と病院の建物だけが狙われたように倒壊している惨状に驚かされた。四川省政府は「建設工事の質が原因で倒壊したケースは発見できなかった」と説明するが、第三者による客観的な原因調査は現在まで実施されていない。

 省政府が今月7日に初めて発表した学校での被災統計によると、校舎倒壊などで死亡した児童・生徒は5335人に上り、546人が障害を負った。わが子を失った親の心情は、察するに余りある。ましてや、一人っ子政策を続ける中国である。しかし、中国政府は、国内メディアに校舎倒壊問題を報道しないよう通達を出し、親たちには「見舞金」(6万~8万元=約84万~112万円)を渡して事態を収拾しようとしてきた。

 四川大地震は中国が威信をかけた北京五輪の年に起きた。同じ年の3月にはチベット自治区ラサなどで大規模な暴動が発生し、8月の五輪直前には新疆ウイグル自治区で治安当局者を標的にした襲撃事件が相次いだ。

 13億人の人口を抱える中国では、社会の安定が最も優先される。中国政府は震災が社会不安につながらないよう細心の注意を払ったのだろう。しかし、インターネットで情報が瞬時に伝えられる現在、強引な情報統制は、遺族をはじめ国民の政府に対する不信感を増幅させた。

 一方、この1年、被災地では80年代以降に生まれた「一人っ子世代」がボランティアとして活躍した。中国に根付き始めた非政府組織(NGO)も、救援、復興に積極的に参画した。伝えられた惨状の衝撃が市民の連帯意識を呼び覚ましたのだろう。

 昨年12月から倒壊校舎の被災者名簿をまとめている現代芸術家、艾未未さん(52)もその一人だ。自身のブログを通じてボランティアを募り、これまでに遺族約280人への聞き取り調査を実施してきた。艾さんは「だれが、どこで、なぜ死んだのか。国民には知る権利がある。知らなければ社会に参画できないのだから」と訴える。

 呼びかけに応えた大学生ら50人が四川省内外から被災地に入り、うち20人が一時拘束された。7回拘束されても活動を続ける若者もいる。これまでに集めた名簿は5000人分を超えた。最終的には四川省政府発表を大きく上回る見通しだ。草の根レベルで事実を明らかにしようとする動きは確実に広がっている。

 この記事を書いている最中、携帯電話が鳴った。都江堰の学校で子供を亡くした父親だという。私が艾さんの名簿を頼りに倒壊校舎のその後を取材していると聞き、成都まで訪ねてきたのだ。

 待ち合わせ場所には、少しやせた男性が現れた。あいさつを交わした直後、彼の携帯電話が鳴った。短いやりとりの後、青ざめた表情で「治安機関からの電話だ。『取材を受けるな』と言われた。家族に累が及ぶといけないので、帰らせてほしい」と申し訳なさそうに言う。詳しい事情を聴くこともできず、足早に立ち去る後ろ姿を見守るしかなかった。

 一人娘を亡くした彼はこの1年、校舎倒壊の原因を究明することが父親としての務めと信じて行動してきたのだろう。統制下にある国内メディアに失望し、わらをもつかむ思いで外国メディアと接触しようとしても、当局はなりふり構わず妨害する。それが被災1年の現実だ。

 だが、被災者の不信感や不満の表明を封じ込めることが、社会の安定に結び付くとは到底思えない。社会全体で被災者の思いを共有することが、復興への確かな道につながるはずだから。

毎日新聞 2009年5月12日 0時17分


中国:
初の防災白書を発表 早期警戒システム導入も研究

 【北京・浦松丈二】中国政府は11日、中国初の防災白書「中国の減災行動」を発表した。また、早期地震・津波警戒システムを導入するため、政府が研究を進めていることを明らかにした。

 防災白書は「政府、国民が減災に払った大きな努力を理解してもらう」ことを目的に災害の状況や国民の参加、国際協力などの方針を説明している。

 この中で、四川大地震では義援金や救援物資が国内外から760億元(約1兆円)相当寄せられたことを紹介。被災地入りしたボランティアが300万人を超えたほか、全国で1000万人以上が支援活動に参加したとしている。国際協力の項目では、日本やロシアなどから救助隊や医療チームが派遣されたことを紹介している。

 記者会見した中国地震局幹部は早期警戒システムについて「長年研究して試験的なシステムはできたが、実用化には時間がかかる」と述べた。

毎日新聞 2009年5月11日 20時55分


四川大地震:
実像生々しく…静岡大教授が写真集

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中国四川省で中学校の校庭に現れた地震断層=林教授提供

 中国・四川大地震の発生から1年を迎える12日、林愛明・静岡大教授(地震地質学)が、現地調査で撮影した被災状況などを収めた写真集を出版する。農地や道路に突然現れた高さ数メートルの断層や断層上に建てられて崩壊した建築物など、9万人近い死者・行方不明者を出した大地震の実像を生々しく伝えている。

 出版されるのは「四川大地震 中国四川大地震の地震断層と被害写真集」(近未来社、B5判112ページ、2800円)。研究チームは地震発生2日後に震源地に入り、現地の協力者も含め、延べ60日にわたって調査を続けてきた。写真集は、現地で撮影した約3000枚の写真の中から、図版と合わせて169枚を掲載している。

 断層上に建てられ地震で倒壊した建物や、断層から数メートル離れていたため崩壊を免れた校舎や民家などが紹介されている。また、地震発生後のがけ崩れでできたせき止め湖と湖底に沈んだ民家や、地震直後とその後の洪水で土砂に埋められた街の姿を比較した写真など、地震の2次被害の様子なども掲載された。

 林教授は「研究者の参考資料としてだけでなく、一般の人にも大地震の被害について考えるきっかけにしてほしい」と話している。【石塚孝志】

毎日新聞 2009年5月11日 15時00分(最終更新 5月11日 15時00分)


中国・四川大地震:
発生から1年、神戸・南京町で募金

 中国・四川大地震の発生から12日で1年になるのを前に、神戸市中央区の中華街・南京町で9日、同町商店街振興組合が募金活動に取り組んだ。観光客でにぎわう広場に募金箱を設置し、商店主らが「温かい気持ちを」と呼びかけた。

 同組合は昨年5月、四川大地震の発生を受けて、阪神大震災(95年1月)で中国から多くの支援物資を贈られた恩返しをしようと、観光客や商店に募金を呼びかけ、約400万円を集めた。同組合の曹英生理事長(52)は「1年が過ぎようとしているが、多くの人が記憶にとどめてほしい」と語った。

 大阪で阪神大震災を経験した神戸市東灘区の専門学校生、桑原悠さん(18)は「倒壊した小学校の復旧に活用してほしい」と、募金に協力した。募金は10日まで。

 同組合は四川大地震が起きた12日午後3時28分(日本時間)から追悼行事を行う。【村上正】

毎日新聞 2009年5月10日 大阪朝刊


四川大地震:
断層隆起、長さ285キロ 静岡大チーム調査

2009年5月8日 15時0分 更新:5月8日 15時0分

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四川大地震を起こした断層

 9万人近い死者・行方不明者を出した08年5月の中国・四川大地震を起こした断層の全体像を、林愛明・静岡大教授(地震地質学)の研究チームが明らかにした。四川省を南西-北東に走る「竜門山断層帯」の3本の断層が、約285キロも隆起していた。3本の断層が隆起した高さは平均2~4メートルで最大6.5メートルに達したことも突き止めた。千葉市で16日に始まる日本地球惑星科学連合大会で発表する。

 研究チームは、地震発生2日後から約10日間現地で調査、08年7月と9月にも被災地入りした。地表に現れた地震断層の分布形態や滑り量、地震被害に関するデータの収集・分析を進めた。

 その結果、竜門山断層帯にある4本の主要断層のうち、これまでに隆起が判明していた「映秀-北川断層」の一部約250キロと、ほぼ並行して延びる「灌県-安県断層」の一部約130キロに加え、映秀-北川断層に並行した「青川断層」の一部約50キロが動いていたことが新たに判明した。4本の断層はいずれも地下では一つにつながっていることが地震波の調査で分かっており、地表の断層の長さは東京-名古屋の直線距離に匹敵する約285キロと分析した。【石塚孝志】

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中国・四川大地震:
1年経過を前に名古屋で現地報告会 /愛知

 08年5月12日の中国・四川大地震からもうすぐ1年。被災者を支援しようと日中友好の象徴・パンダをかたどったタオルを作る「パンダタオルプロジェクト」の現地報告会が27日夜、名古屋大学環境総合館(名古屋市千種区)であった。

 プロジェクトは、NPO法人レスキューストックヤードが中心になり昨年始まった。時間の経過とともに被災が風化しつつあるため報告会を企画した。

 基調講演では、香泉郷光明村で救援活動を続けてきたNPO法人「CODE海外災害援助市民センター」の吉椿雅道さんが、仮設住宅建設や農作業を一緒にするうちに、現地の人が自分たちに食事を作ってくれたほか、岩手・宮城内陸地震を知って「日本にボランティアに行こうと思った」と言ってくれたエピソードを紹介。「ボランティアが入ることで元気になってくれた」と話した。また、被災地を観光名所化して立ち直ろうとする動きや、出稼ぎの仕事がなくなり、農村部の人が現金収入を得られなくなっている現状も報告した。【高橋恵子】

毎日新聞 2009年4月29日 地方版


四川大地震:
校舎や病院の95%、今年中に再建へ

 【北京・鈴木玲子】9万人近い死者・行方不明者を出した中国・四川大地震の復興について、四川省政府の魏宏副省長は8日、北京で記者会見し、再建が必要な校舎、病院のうち95%の完成を今年末までに目指すと述べた。

 山間部を中心にインフラ再建が遅れる一方、地元政府の住宅修繕費の流用をめぐって被災地で住民と警官隊の衝突が起こるなど、被災者の不満は募っている。魏副省長は「民生に関するインフラ再建を最優先にする」と強調し、理解を求めた。

 中国政府は今年、震災復旧資金として1300億元を追加計上している。再建が必要な住宅は農村部で126万戸、都市部で31万棟。住宅や農地を失った農民20万人のうち、08年末までに15万人が移転を終えた。

 地震では多くの学校校舎が倒壊し、多数の児童・生徒が犠牲になった。保護者らからは校舎の鉄筋数を減らすなど「豆腐渣(おから)工程」と呼ばれる不正工事の可能性が指摘されたが、魏副省長は「最大の原因は地震による倒壊だ」と強調、不正工事について言及を避けた。

毎日新聞 2009年3月8日 20時27分


中国・四川大地震:
震源地近くの村 「綿竹年画」傷癒えず 家失い、厳しい復興

 浮世絵版画に大きな影響を及ぼしたといわれる中国の民間絵画「中国年画」。9万人近い死者・行方不明者を出した四川大地震の震源地に近い四川省綿竹の「綿竹年画」は「中国四大年画」の一つに挙げられる。春節(旧正月、09年は1月26日)に向け、年画製作はこれからピークを迎えるが、地震の傷跡は深く、伝統文化復興の道は険しい。【綿竹で鈴木玲子】
 震源地・〓川(ぶんせん)県映秀地区から北東約80キロ。山間部に位置する棚花村は、綿竹年画の拠点として知られる。
 中国年画は民衆が慶祝や除厄などを願い、春節に家の門や室内に飾る絵で木版画が多い。明代後期から清代に最盛期を迎え、江戸時代に日本へ伝わったとされる。
 5月の震災前、棚花村の白壁や門前には色鮮やかな年画が描かれていた。だが、人口約1700のうち40人が死亡。ほとんどの家は全壊し、壁の多くの年画も崩れ落ちた。
 村ではここ数年、「伝統文化の年画を観光資源に」と地元政府の肝いりで、村を挙げて家屋の修繕が行われた。門前の年画が映えるようにするためだ。多くの被災者はその修繕費の借金も抱える。
 プレハブに造られた年画養成センターでは、女性11人が綿竹年画の特色である「刺しゅう年画」を製作していた。研修者は約40人。震災前から倍増した。家も畑も失い、生活再建のため新たな職を求める女性が目立つ。
 呉登慧さん(43)もその一人。縦1メートルの「福禄寿」の刺しゅう1枚を仕上げるのに1カ月以上かかる。工賃は400元(1元は約13円)。自宅再建には7万元が必要という。
 指導する付紹玉さん(32)は「復興のためにも職人を増やし、誇りある伝統文化を伝えていきたい」と話す。だが、貴重な資料を保存していた綿竹中心部の「綿竹年画博物館」は損壊が激しく、再開の見通しは立たない。
毎日新聞 2008年12月18日 東京夕刊

中国・四川大地震:
復興担当者、旧山古志村視察 生活再建に日本の技術学ぶ /新潟
 ◇旧山古志村など視察
 5月に四川大地震に遭った中国の復興担当者が17日、旧山古志村(長岡市)などを訪れた。7月末に続く2回目の来日で、中越地震の被災地などを視察した。約3年後の生活再建を目標に、日本の技術と知恵を学び取った。
 一行は、住宅・都市農村建設省の斉驥(せいき)副大臣を団長とする中国各地の官僚ら80人。市や国土交通省の説明を受けながら、旧仮設住宅や砂防えん堤、被災者集合住宅などを見て回った。
 今夏の視察団は復旧計画の策定を主な目的としていたが、地震後7カ月を経た今回は、被災者が暮らしの糧と笑顔を取り戻す「創造的復興」をどう進めるかが課題という。
 斉団長は「住民の方々が、将来に自信を持っていると感じられた」と満足げに語り、長岡市の森民夫市長は「中国の役に立てて喜ばしい。山古志を世界の災害関係者が学べる『復興の大学』にしたい」と話した。【根本太一】
毎日新聞 2008年12月18日 地方版

被災地から:
四川大地震半年/上(その1) 自分支えられない
 12日で発生から半年が過ぎた四川大地震の被災地。その現実や被災者の思いを探った。【北川(中国四川省)鈴木玲子、花岡洋二】
 ◇助かった命絶つ悲劇相次ぐ
 「復興事業や生活のプレッシャーがあまりにも大きい。もう自分を支えられない」
 中国全土が国慶節(建国記念日)の連休を満喫していた10月3日、北川県農業局幹部の董玉飛さん(40)が勤め先で首つり自殺した。弟あての遺書は心の傷を抱えたつらさがつづられていた。
 北川県は四川大地震で約2万人が犠牲となった。董さんも12歳だった一人息子を失った。県幹部の4割が亡くなったとされ、董さんは悲しみに暮れる間もなく、地震救済室の責任者として働き続けた。復興の兆しが見え始めたばかりの9月、豪雨が襲い、40人以上の命が奪われた。再建した県の施設も破壊された。
 董さんの自殺を巡り、地元紙は、前立腺の病気で一時入院し、健康面で再び子供をつくれないのを悲観した可能性も報じる。一方、四川大学華西病院心理衛生センターの馬渝根教授(63)は毎日新聞に「復興事業の成果が豪雨で押し流され、望みを失った可能性がある」と指摘した。
 避難生活や入院が長期化するなか、将来への見通しが立たない現実に直面し、自ら命を絶つケースも相次ぐ。10月18日には骨折で成都市の病院に入院していた都江堰(とこうえん)市の女性(59)が自殺した。体の痛みを訴えていたというが、専門家は「実際は心の痛みの表れ」と推測する。ある病院関係者は「当局から12月末で被災者リハビリセンターを終了させるという話があったが、自殺者が続き、この話は消えた」と明かす。
 華西病院では地震後、被災者ら約14万人に心理ケアを実施した。心理衛生センターの孫学礼教授(50)によると、ある被災地での調査では26%の患者にPTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性が確認された。PTSDの知識も普及しておらず、孫教授は「けがで受診して初めて心理的問題を抱えていると分かるケースも少なくない」と話す。
 極度の過労を重ねたためとみられる死亡例も続き、地元政府は職員の休日確保を指示。馬教授らは10月下旬、被災各地の公務員を対象に心理ケア講座を始めた。疲れ切った「心の復興」、そして「体の復興」は時の経過とともに、難しさを増す。
毎日新聞 2008年11月13日 東京朝刊

被災地から:
四川大地震半年/上(その2止) 今も癒えぬ喪失感
 ◇「子も家もなくし今後の保証もない」--都江堰・倒壊の中学校
 【都江堰(とこうえん)(中国四川省)花岡洋二】教師・生徒ら計284人が校舎の下敷きになるなどして死亡した都江堰市の聚源(じゅげん)中学校は今、約1・6ヘクタールもの空間がぽっかりと広がる。倒壊後、解体・撤去された教室棟1棟、寮2棟の跡地だ。
 周囲は静まり返る。我が子を亡くし、悲しみと怒りを募らせた親や、報道陣を阻止するため、配置されていた警官はもういない。金網に囲まれているが、2カ所が壊され、倒壊現場に入れる。わずかに残るコンクリート片に交じり、破れた教科書が落ちたまま。時おり親たちが訪れ、線香を上げていく。
 四川大地震では各地の小中学校の校舎が倒壊し、多くの子供が犠牲になった。当局は学校で「児童・生徒の死亡総数は不明」と説明。「『おから(手抜き)工事』による人災」と主張する遺族の声に応えていない。がれきにはさまれた手足の一部を切断した児童・生徒も少なくない。
 地元政府は遺族や負傷者に「救援金」や「保険金」の名目で金を支払い、解決を図ろうとする。だが、原因の徹底究明を求め受け取りを拒む者、生活に困り果てて金銭を受領する者など遺族側の対応はさまざまだ。
 聚源中に通う娘を亡くした父親は補償の一部として約1万元(約14万円)を受け取ったが「納得していない」と憤る。約100人の遺族が市教育局や校長、建設業者らを裁判に訴えることをあきらめていない。息子を亡くした別の父親も、毎月100元(約1400円)の保険金の支払いを打診されたが、少な過ぎると断った。「子供も家もなくし、今後の保証もないままだ」。父親は怒りの声を上げた。
 強硬姿勢を続ける一部の父母は、当局の手で一時拘束されたり、「法律勉強会」と称する会合に強制参加させられたという。別の遺族によると、救援金などは人により「格差」があり、約16万元(約224万円)が支払われた遺族もいる。
 生徒は崩壊現場から約1・5キロ離れた仮設校舎で授業を続ける。さらに別の場所で、新校舎の工事も始まった。完成予定の来年9月には学校は全面的に移転する。
 聚源中の卒業生で、元の学校前で理髪店を営む曽正祥さん(52)は地震前に撮った旧校舎の写真を見せてくれた。「男子生徒が校則に違反して伸ばした髪を切るためによく学校に呼ばれた。なじみの子らが亡くなり、緑豊かな校庭も消え、むなしい」。そう話すと悲しげに首を振った。
 ◇耐震基準、非公表のまま--報道封じ、国民的議論起きず
 ◇復興計画、学校・公共施設に重点
 【北京・浦松丈二】「震災救援活動は重大な勝利を収めた」。中国の温家宝首相は10月14日、北京で四川大地震災害対策総指揮部の会議を開き、中央政府による救援活動を総括。総指揮部を解散し、今後は震災復興に重点を置くことを決めた。
 政府の震災復興計画は、今後3年間で1兆元(約14兆円)の予算を投入し、被災地の生活、経済水準を地震発生前と同等、もしくはそれ以上に引き上げることが目標だ。その中の「重要建設項目」として「学校と病院などの公共施設」を挙げている。比較的新しい学校など数多くの公共施設が倒壊し、犠牲者拡大につながったためとみられる。
 復興計画の作成にかかわった中国の防災専門家によると、中国政府首脳は、日本などで学校や病院などの耐震強度が高く設計され、避難所として活用されていることに注目しているという。
 中国政府は6月、校舎や病院の耐震強度を引き上げるよう全国に通達を出したが、具体的な耐震基準は公表されていない。
 政府関係者は「中国には老朽化した校舎が数多く残っており、同じ基準で建て替えるのは難しい」と説明している。
 一方、我が子をなくした親たちは「校舎倒壊は手抜き工事が原因」と地元政府を批判して抗議活動を続けたが、耐震基準をめぐる国民的な議論にはつながっていない。
 これは中国当局が「校舎倒壊の抗議活動を報道しないように」と統制下にある国内メディアに通達を出したほか、海外報道機関に対しても現場で取材していた記者を相次いで拘束するなど封じ込めに動いたことが一因のようだ。
 四川大地震発生時、中国当局は国を挙げて8月の北京五輪の成功に取り組んでいた。政府批判につながる世論は事前にその芽を摘み取る方針が決まっていたといわれる。
 ◇少ない心のケア専門家--立正大准教授・小澤康司氏
 6月初旬と7月初旬の2回、臨床心理学者として成都と重慶を訪れた。住宅などインフラ面の復興もさることながら、被災者の心のケアの問題が重要。被害の規模に比べ、専門家があまりに少ないのが最大の課題だ。
 家の下敷きになり手足を切断した人や親を失った子どもなど、深刻なダメージを負ったケースではPTSD(心的外傷後ストレス障害)が多く見られた。安全で安心できる環境を整え、生活を守る場を確保することが大切で、学校などを核にしたコミュニティーの再生が必要だ。今後は復興支援に取り組むスタッフの過労や自殺を防ぐためのケアも大事だ。
 地震の発生から半年がたち、中国政府の被災地支援にも少し陰りが見える気がする。心のダメージの回復には中長期的な対応が重要だ。心のケアに取り組む専門施設や多くのスタッフが欠かせない。阪神大震災での貴重な経験を持つ日本への期待は大きく、継続的な支援が求められている。【聞き手・鵜塚健】
毎日新聞 2008年11月13日 東京朝刊

中国・四川大地震:
発生半年 悲しみなお
 【北川(中国四川省)花岡洋二】9万人近い死者・行方不明者を出した中国・四川大地震は12日、発生から半年が過ぎた。復興が進む一方、住民の心のケア、生活支援が急務になっている。
 壊滅的な被害を受けた北川県曲山地区は一帯が「地震博物館」として保存されることが決まり、行政施設などは約23キロ離れた場所に移転される。だが、住民の大半が少数民族チャン族で、故郷を離れる思いは複雑だ。地震後、曲山地区のがれきの中から164時間ぶりに救助された李明翠さん(61)は11日、地区を望む高台を訪れ、赤いスカーフを掲げながら救出作業に当たった人々への敬意を示した。
毎日新聞 2008年11月13日 東京朝刊

四川大地震:
北川県の被害地区一帯「地震博物館」に
 【北川(中国四川省)花岡洋二】9万人近い死者・行方不明者を出した中国・四川大地震は12日、発生から半年が過ぎた。物的な復興が各地で進む一方、被災住民の心のケア、生活支援が急務になっている。
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四川大地震:発生から半年 被災の子らパンダに笑顔
 【成都(中国四川省)鈴木玲子】中国・四川大地震の発生から12日で半年。成都市の四川大学華西病院には今も84人の被災者が入院している。このうち子供を含む16人が、市内にあるパンダの繁殖研究センターをこのほど訪れ、久しぶりの外出を楽しんだ。
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中国・四川大地震:
「関心を持ち続けて」 神戸学院大生の4人、被災地報告 /兵庫
 中国・四川大地震から半年を迎える12日を前に、被災地を訪ねていた神戸学院大防災・社会貢献ユニットの学生4人が11日、神戸市中央区の同大学ポートアイランドキャンパスで学生への報告会を開いた。4人は現地で撮影した写真やビデオを使って、中学生らの心に地震の影響が残っている現状に触れ「被災者が取り残されたという気持ちにならないように、同じ被災地の神戸などが関心を持ち続けることが大切だ」と訴えた。
 4人は、人文学部3年の大崎多恵さん▽河田のどかさん▽那須琢矢さん▽古岡麻衣さん。県立舞子高校環境防災科(垂水区)の生徒らと先月22日から同29日にかけ訪問した。
 報告によると、現地の中学校などの生徒らと交流を深め、神戸から持参した人形が喜ばれた。しかし、家族を失うなどつらい体験をした女子生徒50人に「眠れないことが多いか」「怖い夢をよく見るか」と尋ねると、全員が手を挙げた。また、現地の教師も地震の知識が乏しく、カウンセリングにも課題が多いという。このほか、現地では耐震性が十分な家は価格が高く、耐震性が不十分なまま自宅を再建するケースも多く、二重ローンに苦しむ人もいると紹介した。
 大崎さんは「社会の雰囲気からか、弱音を吐かない子どもは多く、素直に思いを表現できないまま成長するのではないかと不安に感じた。今後も神戸の復興の過程を伝え、四川の現状も日本で発信したい」と話した。【吉川雄策】
〔神戸版〕
毎日新聞 2008年11月12日 地方版

四川大地震:
発生から半年 傷跡残したままの被災地多く
 【北川(中国四川省)鈴木玲子】9万人近い死者・行方不明者を出した中国・四川大地震は12日、発生から半年となる。都市部では復興が進むが、農村部では再建の遅れが目立ち、傷跡を残したままの被災地も多い。

中国・四川大地震:
心のケア支援へ調査団 JICA兵庫、きょう派遣 /兵庫
 国際協力機構兵庫国際センター(JICA兵庫)は9日から1週間、中国・四川大地震の被災者の心のケアを支援するため、調査団を派遣する。中国の臨床心理士や看護師らに対して、どのような協力ができるかを調べ、具体的な支援に結びつける。
 県こころのケアセンターや兵庫教育大、県立大から、心のケアや災害看護の専門家4人を派遣。JICA兵庫からも職員が参加する。四川省の被災地で仮設住宅や学校などを訪問し、心のケアについて意見交換してニーズを把握する。四川省や中国政府の行政関係者とも支援を協議する。
 JICAと中国政府は今年7月、四川大地震の復旧・復興支援セミナーを北京で開催。阪神大震災の復興業務に携わった県や神戸市の職員らが参加するなど、両国間の関係作りを進めてきた。【川口裕之】
〔神戸版〕
毎日新聞 2008年11月9日 地方版

四川大地震:
経済損失13兆円 倒壊校舎「手抜き」認める
 【北京・大塚卓也】中国政府直轄で四川大地震の損失評価を進めている国家専門家委員会の馬宗晋主任は4日の記者会見で、地震に伴う経済的損失は8451億元(約13兆円)だったと明らかにした。住宅の損壊による損失が27.4%、道路・橋などのインフラが21.9%、学校・病院などの公共施設が20.4%を占めたと説明した。95年1月の阪神大震災で兵庫県は道路やビルなどへの直接被害額を約10兆円と試算している。

四川大地震:
発生から3カ月 1日150円の支給金が支え
 8万7000人以上の死者・行方不明者を出した中国四川大地震は12日、発生から3カ月が経過する。壊滅的な被害を受けた地域でも、プレハブの仮設住宅の建設が進み、テント生活から被災者が移り始めている。だが、多くが収入基盤を失い、1人当たり1日10元(約150円)の政府支給金が支えの日々だ。【※川(ぶんせん=中国四川省)大塚卓也】

四川大地震:
五輪開幕も集落の孤立続く
 【※川(ぶんせん)(中国四川省)大塚卓也】「北京五輪を祝い、家庭や地域を再建しよう」--。8万7000人以上の死者・行方不明者を出した四川大地震からまもなく3カ月。被災地へ通じる道路沿いは国家を挙げての祭典と大震災からの復興力を結びつける横断幕で埋め尽くされている。だが、一般車両の進入が禁止され、多くの集落は孤立が続く。被災地は8日、北京の高揚感が伝わらないまま五輪開幕日を迎えた。

四川大地震:
被災地で復旧への取り組み加速
 9万人近い死者・行方不明者を出した中国・四川大地震から12日で2カ月。被災地で復旧への取り組みが加速している。省都・成都から約150キロ、雅安パンダ保護研究センターでは6日、2匹の赤ちゃんパンダが誕生した。地震発生後初めて生まれたパンダの成長は復興を目指す人々を勇気付けているという。【中国総局】
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四川大地震:
最大の避難所閉鎖 全被災者に支援行き届かず
 【綿陽(中国四川省)西脇真一】中国・四川大地震の後、最大の避難所としてピーク時には約4万人の被災者が身を寄せていた綿陽市の九洲体育館が29日、閉鎖された。地震発生から49日が過ぎ、仮設住宅の建設が進むが、すべての被災者に支援が行き届いているとは言えない状態だ。
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四川大地震:
チャン族集落のシンボル、石塔は残った
 【成都(中国四川省)西脇真一】中国・四川大地震で特に被害の大きかった四川省中部は、石積みの技術にたけた少数民族チャン族の故郷でもある。綿陽市北部平武県のチャン族の集落を訪ねると、地震を何とか乗り越えた高さ20メートルはある石塔が、テント暮らしを続ける住民たちを優しく見守っていた。
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四川大地震:
ライス米国務長官が被災地視察
 【中国総局】中国を訪問中のライス米国務長官は29日、四川大地震の被災地・都江堰市を視察した。AP通信によるとライス長官は、サイクロン「ナルギス」被災地への外国による人的支援受け入れに消極的だったミャンマーと対比し、「復旧に向けて大変な努力がなされていることが分かる。中国が国際社会に助けを求めたのは良かった」と語った。
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四川大地震:
都江堰市の小中学校仮設校舎が完成 授業再開
 【都江堰(中国四川省)西脇真一】中国・四川大地震で被災した都江堰市で、小中学校の仮設校舎が完成し23日、一斉に授業を再開した。これまではテントなどで授業を行っていた。プレハブの新しい学び舎(や)には子供たちの歓声が響いたが、校舎倒壊で子供を亡くした親は複雑な心境でこのニュースを見守った。
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四川大地震:
成都で展示会…遺品や被災地の奮闘を紹介
 四川大地震の被災地・成都の建川博物館で、震災の記録写真や犠牲者の遺品など約7000点を集めた展示会が開かれている。館長の樊建川(はんけんせん)さんが「震災の悲惨さと被災地の奮闘ぶりを伝えよう」と、発生から1カ月の節目を機に今月12日から始めた。市民の関心は高く、1日で約1000人が来館したこともある。
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四川大地震:
阪神大震災の資料を駐日中国大使に贈呈
 「中国・四川大地震復興支援 兵庫神戸委員会」の貝原俊民代表(前兵庫県知事)が12日、95年の阪神大震災の教訓を中国語に翻訳した資料などを首相官邸で崔天凱・駐日中国大使に贈った。贈呈には福田康夫首相が立ち会った。
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四川大地震:
発生から1カ月 墓前に冥福祈る
 【都江堰(とこうえん=中国四川省)成沢健一】中国・四川大地震で肉親を失った遺族たちは12日、気持ちの整理がつかないまま地震発生から丸1カ月を迎えた。
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四川大地震:
阪神から8張り 支援のテント
 【都江堰(中国四川省)成沢健一】9万人近い死者・行方不明者を出した中国・四川大地震は12日、発生から丸1カ月を迎えた。テント不足が続く被災地では、阪神大震災(1995年)の経験を生かして工夫された日本製テントが高い評価を得ている。
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四川大地震:
この子の姿伝えないと 意志示した「手」
 【安県(中国四川省)成沢健一、綿竹(同)鈴木玲子】1枚の写真が見る人の心を揺り動かすことがある。中国・四川大地震で、倒壊した校舎の下敷きになりながら、ペンを握りしめたまま死亡した生徒の左手。この写真が5月19日の毎日新聞朝刊1面に掲載されると、さまざまな声が寄せられた。大地震発生から12日で1カ月になる。
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四川大地震:
被災者用テントが並ぶ倒壊した中学校校舎前
 四川大地震の震源地、四川省※川県映秀地区で、倒壊した映秀中学校校舎の前に並ぶ被災者用テント。軍のトラックで野菜が運ばれていた。※さんずいに「文」
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四川大地震:
与党議員の会、成都にテント300張り届ける
 【成都(中国四川省)西田進一郎】自民、公明両党の国会議員有志で作る「日中関係を発展させる議員の会」(会長=森喜朗元首相)のメンバー15人が8日、民間チャーター機で中国・四川大地震の被災地・成都市を訪れ、テント300張りやカップめん2000食などの救援物資を届けた。
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四川大地震:
せき止め湖の水位、排水後も上昇 緊張高まる
 【綿陽(中国四川省)鈴木玲子】中国・四川大地震の土砂崩れでできた北川県の巨大せき止め湖「唐家山ダム」の水位は、決壊を遅らせるため7日朝に排水を始めた後も上昇を続けた。増水によって排水路以外の堤の上部からも水があふれ出し、下流の綿陽市では、高台に避難した流域住民らの間で緊張が高まっている。
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四川大地震:
悲しみの時を止めたまま…広場の時計台
 【綿竹(中国四川省)鈴木玲子】四川大地震の被災地の一つ四川省綿竹市漢旺地区では、中心広場の時計台が地震発生時間の午後2時28分で時を止めている。現地報道によると、地元政府当局は時計台を震災モニュメントとしてこのまま保存することを検討している。
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四川大地震:
夢は国語の先生…学校再開、笑顔も少しずつ
 【都江堰(中国四川省)神澤龍二】中国・四川大地震の被災地、都江堰(とこうえん)市浜河区の避難所で、机にかじり付くように勉強する女の子の姿が目に留まった。
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四川大地震:
追加支援テント、成都へ
 中国・四川大地震の被災地への追加支援第2弾として、内閣府などが提供したテント計800張り(計78トン)が4日午前9時20分、日本航空チャーターの貨物機で成田国際空港を出発した。同日午後に成都に到着する。
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四川大地震:世界遺産も被災 道教の「聖地」青城山
 【都江堰(中国四川省)神澤龍二】中国・四川大地震で世界遺産に指定されている都江堰(とこうえん)の青城山も被災した。山中の寺院の大半が損壊し、がけ崩れが部分的に発生。同山は中国以外の世界に約5000人の信徒がいる道教の「聖地」として信仰されており、事態を重く見た世界中の信徒らが復旧に向け寄付金の訴えを始めた。
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四川大地震:決壊恐れ無人の街せき止め湖下流域 
 【綿陽(中国四川省)鈴木玲子】商店はすべてシャッターを閉じ、銀行やビルの前には積み上げられた土のう。巡回する警察車両だけが目立つ。中国・四川大地震でできた最大のせき止め湖、唐家山(とうかさん)ダム(四川省北川県)の下流域。ダムの強制排水を目前に、「ダム決壊」に備える街からは市民の姿が消えていた。
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四川大地震:唐山地震経験の上智大学院留学生が現地調査
 【都江堰(中国四川省)神澤龍二】約24万人と言われる死者を出した1976年の中国・唐山大地震(河北省)を経験した上智大大学院留学生、胡冬竹さん(36)が2日、四川大地震の震源地に近い都江堰(とこうえん)市で現地調査を始めた。「32年の時を経て、中国はどう変わり、どう危機を乗り越えるのか。被災経験のある自分だからこそ、見えるものがある」と語る。結果は報告書にまとめるという。
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四川大地震:助け合い、笑顔も
 【綿竹(中国四川省)鈴木玲子】四川大地震による被災地では、一部の被災者の仮設住宅への入居が始まっているが、大多数は依然テント暮らしが続いている。四川省綿竹市の2号陸橋避難所では2日正午過ぎ、被災者たちが一斉にプラスチック製のおわんを持って、食事の配給所前に列を作った。
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四川大地震:医療チームが帰国成田空港で解団式
 中国・四川大地震で政府が派遣した国際緊急援助隊医療チーム(田尻和宏団長)23人が2日、四川省成都市から北京を経由し、成田国際空港に帰国した。
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四川大地震:子供対象に予防接種 暑さで伝染病の拡大懸念
 【綿竹(中国四川省)鈴木玲子】四川大地震の発生から2日で丸3週間。避難所では生後8カ月から12歳までの子供を対象に、日本脳炎とA型肝炎の予防接種が始まった。長引く避難生活と連日30度を超す暑さのため、体力低下による伝染病の拡大が懸念されている。
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四川大地震:「パンダ基地」危機 観光客の激減で財政難
 【成都(中国四川省)神澤龍二】中国・四川大地震の影響で、ジャイアントパンダの生育研究施設「成都パンダ繁育研究基地」の研究継続が危ぶまれている。観光客の激減により、研究費の確保が難しくなっているからだ。同基地は研究費確保のため、世界中からの募金を呼びかけはじめた。
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四川大地震:炭鉱被害、火力発電所の停止など影響拡大
 【綿陽(中国四川省)庄司哲也】中国・四川大地震で、四川省や近隣の省内にある炭鉱の多くが被害を受け、一部の火力発電所が操業を停止するなど影響が広がっている。中国全土でも石炭備蓄量が減少。夏の需要期を前にエネルギー不足に陥る恐れも出ている。
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四川大地震:日本医療チーム、活動終え帰国へ
 【成都(中国四川省)神澤龍二】中国・四川大地震で日本政府が派遣した国際緊急援助隊医療チーム(23人)は1日、成都市の四川大学華西病院での医療活動の任務を終えた。5月22日の活動開始以降、救急治療や看護を行った被災者数は延べ約1000人。2日夜、帰国する。
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四川大地震:中国の「子供の日」、父母らが追悼集会
 【都江堰(とこうえん=中国四川省)鈴木玲子、綿陽(同)庄司哲也】中国・四川大地震で児童250人以上が死亡した都江堰市の新建小学校で、中国の「子供の日」の1日、亡くなった児童の父母や祖父母約400人が参加して追悼集会が開かれた。だれもが校舎倒壊でできたがれきに向かって子供の名前を叫び、泣き崩れていた。
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四川大地震:土砂撤去、昼夜なく 安県のせき止め湖
 【安県(中国四川省)庄司哲也】わずか数メートルの幅しかなかった川は、山から崩れ落ちた土砂でせき止められ、縦横数百メートルの湖になっていた。中国・四川大地震で安県肖家橋(しょうかきょう)地区に出現したせき止め湖。安昌(あんしょう)川の流れを完全に遮断した土砂の除去作業が昼夜兼行で続くが、あまりに多い土砂を前に誰もが途方に暮れていた。
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四川大地震:妊婦の駆け込み寺38の新しい命が誕生
 【什ホウ(中国四川省)大谷麻由美】中国・四川大地震の被災地の一つ、四川省什ホウ(じゅうほう)市にある羅漢寺で、地震発生の12日以降、妊婦が次々に運び込まれ、30日までに赤ちゃん38人が誕生した。1300年の歴史を持つ同寺は境内が広く、安全で静かなためで、境内のテント病院では、赤ちゃんの泣き声が響きわたっている。
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四川大地震:被災地の畑に「SOS」孤立住民が救助求め
 【成都(中国四川省)庄司哲也】山あいの畑に「SOS」--。四川大地震の被災地、四川省北川(ほくせん)県の禹里(うり)地区で、孤立した住民が救助を求め、書いたとみられる白い文字が浮かび上がる。新華社通信が上空から撮影し、30日に配信した。
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四川大地震:北川県政府、臨時役場を開設再生への一歩
 【安県(中国四川省)大谷麻由美】四川大地震で、住民3万人の半数が死亡・行方不明になった北川(ほくせん)県の政府が約150キロ離れた安県安昌地区に臨時役場を開設し、業務を再開した。「ここを地域再生への第一歩にしたい」。職員は夢を語る。
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四川大地震:長期間の避難所暮らし、体調崩す高齢者増え
 【綿陽(中国四川省)神澤龍二】29日で発生から18日目を迎えた中国・四川大地震。長期間に及ぶ慣れない避難所暮らしで、体調を崩す高齢者が増えている。「元の暮らしに戻れるのか……」。将来の展望も開けず、心と体の疲れはピークを迎えている。
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四川大地震:せき止め湖いつ決壊? 避難しても恐怖消えず
 【江油(こうゆ=中国四川省)庄司哲也】中国・四川大地震で出現した北川県の巨大せき止め湖、唐家山ダムの決壊の恐れが強まっている。下流に位置する江油市では低地の住民の多くが既に避難。市街地は、まるでゴーストタウンのようだ。高台で暮らす避難民は「いつ決壊するのか」と、おびえながら暮らしている。
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四川大地震:自衛隊機、中国派遣へ政府、要請受け
 政府は28日、中国の四川大地震の被災地にテントや毛布などの救援物資を輸送するため、国際緊急援助隊法に基づき、航空自衛隊のC130輸送機を近く中国に派遣する方針を固めた。中国政府の要請を受けた対応で、救援物資を日本国内から中国被災地の空港まで運ぶことを検討している。自衛隊部隊が中国に派遣されるのは初めて。海外での自衛隊の援助活動は06年のインドネシア・ジャワ島中部地震以来となる。
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毎日新聞【報道特集】中国・四川大地震
毎日新聞【写真特集】中国・四川大地震
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