98 Airports in Japan
増える空港、かさむ赤字


増える空港 かさむ赤字/1 狭い国土に98

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写真は国内で98番目に開港した静岡空港。福岡に向け最初の飛行機(下)が出発した=6月4日

 6月に静岡空港がオープンし、日本の空港は98になった。2010年には茨城空港が開港する予定だ。ところが旅客の数は頭打ち。航空会社の日本航空と全日本空輸は、もうからない路線を廃止したり便数を減らしたりしている。地方に空港をつくったはいいが、その多くが赤字をかかえている。

 ◇国内で空港建設ラッシュ


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 2005年から来年まで、国内で空港建設が続いている。05年に中部国際空港(愛知県)、06年に神戸空港(兵庫県)、北九州空港(福岡県)などがオープンし、今年6月に静岡空港が開港した。来年の茨城空港で、わが国の空港は99を数える。

 国土面積に占める空港の数はイギリス、ドイツに次いで世界第3位。1万平方キロメートルあたりの空港数は2.6で、航空先進国のアメリカ2.0をしのぐ。

ニュースがわかる 2009年9月号


増える空港 かさむ赤字/2 「飛行機が来ない!」悲鳴あげる空港

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ピーク時には飛行機がならぶ関西国際空港。実は路線の廃止や減便が深刻だ

 国土交通省(国の役所)によると、2008年の国内線の旅客数は2.8%減の9289万人、国際線は7.5%減の1643万人だった。航空会社の経営はきびしく、日航は08年度下期に26路線を廃止・減便し、09年度にも12路線をリストラする。全日空も09年度に10路線ほど廃止・減便する見こみだ。飛行機が来ない空港はお金も入ってこない。苦境にある例を見てみよう。

 ◇1兆1200億円もの借金 関西国際空港(大阪府泉佐野市)


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 日航と全日空は、関西国際空港(関空)で国内外を結ぶ6路線を11月にも廃止・減便すると発表した。

 関空は、関西地域を支える国際空港として1994年にオープン。海上に空港島をつくるなど大規模な工事を行い、1兆1200億円もの借金をかかえた。空港の収入は、航空会社が支払う飛行機の着陸料などでまかなう。関空は借金返済のため着陸料を高く設定したので、航空会社からさけられて飛行機が遠のいている。

 特に国内線の減少は深刻で、前の年度に比べ29%も減る見こみ。国際線でも、日航のイギリス・ロンドン便が3月に廃止となり、アメリカやヨーロッパへの国内航空会社による直行便はなくなってしまった。

 ◇利用客数 予測を下回る 大館能代空港(秋田県北秋田市)


 大館能代空港は1998年オープン。利用者を47万5000人と予測したが、99年度の利用者はその3割に過ぎない15万1100人だった。旅客数は低迷し、2008年の利用者は12万1028人と前年度比11.8%の大幅ダウンに苦しんでいる。東京便2往復、大阪便往復が飛んでいるが、6月の利用者は9217人で9年ぶりに1万人を下回った。飛行機には平均で定員の4割ほどしか乗っていない。

 ◇日航便すべて廃止 福島空港(福島県玉川村)


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福島空港1階ロビーにある「空の駅」。飛行機が来ないと人影がとだえる=3月18日

 福島空港は2月、日航が関西国際空港、伊丹空港(兵庫県、大阪府)、那覇空港(沖縄県)を結ぶ3路線をすべて廃止した。ロビーでは地元の「空の駅」が名産品を売っているが、がらんとしている時間が長い。開港は1993年。利用者128万人と予測されたが、実際には99年度の75万人をピークに2007年度51万人、08年度43万人と下がり続けている。現在は全日空の北海道・新千歳便、伊丹便などが残っている。

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増える空港 かさむ赤字/3 がんばって旅客を増やしている空港もある

 どうしてこんなに多くの空港ができたのでしょう?

 空港建設は1960年代の高度成長期から拍車がかかったんだ。飛行機の利用はのびる一方と信じられていたし、不況の時も公共事業としてどんどん進められた。

 でも、今や日本の経済成長は伸び悩んでいますし、人口も減る傾向ですよ。

 空港建設は長い時間がかかる。計画したころと完成時とでは、世の中の状況ががらりと変わってしまう場合があるのさ。でもばく大なお金と人手をかけているから、途中でやめることがなかなかできないんだ。計画を押し進めた結果が、狭い日本に98もの空港さ。

 ◇能登空港 8割近い搭乗率を達成

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開港5年の記念品を受け取る搭乗客=能登空港で2008年7月

 鉄道廃止と人口減に悩む石川県能登半島で、開港6年を迎えた能登空港ががんばっている。東京・羽田空港との1日2往復便があるだけだが、5年目の搭乗率(飛行機に旅客が乗っている率)は65.4%。国内線では60%が合格ラインといわれ、運航する全日空と取り決めた目標62%を上回った。

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2003年に開港した能登空港

 実は、能登空港は全日空と「搭乗率保証」という決めごとを結んでいる。目標の搭乗率を下回った場合は、県と地元の輪島市などが全日空にお金を払い、上回れば逆に全日空からお金をもらえるというものだ。

 県は観光PRに全力を注ぎ、搭乗率は1年目に79.5%を達成。全日空から約9700万円を受け取った。

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・能登半島……本州中央部の日本海に突き出た半島。大部分が石川県に属する。輪島の朝市や和倉温泉など、観光スポットが多い。

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増える空港 かさむ赤字/4止 進む空の国際化 アジアの中心空港どこに

 経済が急成長しているアジアの国々は、国の戦略として空港整備を行い、特に国際空港を充実させている。滑走路を増やす一方で着陸料を安くし、競争力では日本の空港をしのいでいる。そのため路線数が多く、日本からの旅客も乗りつぎにアジアの空港を利用するケースが増えている。

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 ◇世界の空港ベスト3 アジア勢が独占


 イギリスの調査会社が行った「2009年度世界の空港満足度ランキング」で、韓国の仁川国際空港が1位に選ばれた。2位は香港国際空港、3位はシンガポールのチャンギ空港と、アジア勢が上位を占めた。

 ◇アジア屈指の国際空港 韓国・仁川


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世界的に評価が高い韓国の仁川国際空港

 2001年開港。最初は滑走路2本だったが、08年に3本に増やした。07年は旅客数こそ3142万人と日本のライバル成田空港より413万人少なかったが、貨物取り扱い量は255万5580トンと34万トン上回った。

 ◇世界最大級 でも格安 タイ・スワンナプーム


 2006年開港し、ターミナルビルは世界最大級を誇る。総事業費は約4200億円と格安で、約6400億円の中部国際空港、2兆円以上でも完成しない関西国際空港に比べ差は歴然。着陸料を安くおさえ、国際競争を有利に進めている。

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【おすすめの本】
「図解でよくわかる空の交通 空港大図鑑」(PHP研究所・編、PHP研究所)
「日本全国飛行機旅行 旅客機・空港ものしり大図鑑」(中村浩美・監修、昭文社)
「校外学習くらしをまもる くらしをささえる 空港」(塩浦信太郎・文・絵、岩崎書店)
「世界の空港~Airports」(ピーピーエス通信社)

【関連リンク】

国土交通省・航空
国土交通省東京航空局
「空港について学ぼう! 富士山静岡空港のおはなし」
能登空港




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