Private Vehicle
生活保護と自家用車
生活保護停止の処分取り消し 慰謝料も、北九州市に福岡地裁
生活保護停止をめぐる訴訟の判決で、妻久子さんの車いすを押して福岡地裁に入る峰川義勝さんら原告側=29日午後0時45分
高齢や障害のため外出に不可欠な自家用車の売却を迫られ、拒んだところ違法に生活保護を一時停止されたとして、北九州市門司区に住む峰川義勝さん(68)と妻の久子さん(77)が同市の処分取り消しなどを求めた訴訟の判決で、福岡地裁の増田隆久裁判長は29日、処分は違法として取り消した上、市に慰謝料計60万円の支払いを命じた。
夫婦の弁護団は「妻はほとんど歩行ができず、夫にも心臓の持病があり、通院などの生活に車は欠かせない」と主張。判決理由で増田裁判長は「妻がタクシーや公共交通機関を利用することが困難であったことは明らか」と判断、自動車の所有は認めずに保護を停止した処分を違法とした。
さらに「保護停止の期間が7カ月強に及んだ。その間の生活は困窮し、食事を切り詰め、光熱費などを滞納する状況にまで至った」と指摘、1人30万円の慰謝料も認めた。
市側は「妻のリハビリは自宅近くの病院でも可能で、タクシー通院もできた」と反論していた。
判決によると、夫婦は2000年11月から生活保護を受け、直後から車の処分を迫られた。04年には文書指示を受け拒否すると、同年9月から翌年4月まで生活保護を停止された。
2009/05/29 14:11 【共同通信】
もっと知りたい ニュースの「言葉」
生活保護(2009年2月4日)憲法25条に規定された生存権の理念に基づき、最低限度の生活を保障し自立を支援する制度。国が定める最低生活費より収入が少ない世帯に差額分を支給する。生活費に当たる生活扶助のほか、住宅扶助や医療扶助、教育扶助などがあり、住む地域によって保護費の基準は異なる。費用は国が4分の3、地方自治体が4分の1を負担。暴力団組員などによる不正受給の一方、社会保障費抑制の流れの中で地方自治体が申請を受け付けないといった問題も指摘されている。
生活保護停止は違法 障害者夫婦「車は必要」 北九州市の過失認定 福岡地裁判決
2009年5月29日
15:12 カテゴリー:九州・山口
> 福岡
社会
高齢や障害のため通院などに必要だった軽乗用車の所有を理由に北九州市が生活保護を一時停止したのは違法だとして、同市門司区の峰川義勝さん(68)と妻久子さん(77)が処分の取り消しと慰謝料などを求めた訴訟の判決が29日、福岡地裁であった。増田隆久裁判長は市側の処分を取り消し、計60万円の支払いを命じた。
判決によると、夫婦は青果の露天商を営んでいたが、妻は2000年に骨増殖症と診断され入院。介護のため休業した夫も心臓病で入院や通院治療が必要になって生活に困り、同年11月から生活保護を受けていた。
市側は翌12月から「生活保護では自動車所有は認められない」として夫婦が仕事で使ってきた軽乗用車の処分を求め、04年6月には文書で指示。夫婦ともに歩行が困難で通院や買い物に自動車が不可欠だったため従わなかったところ、同年9月から約8カ月間、保護が停止された。
厚生労働省の課長通知では、障害者の通院に必要で公共交通機関の利用が著しく困難な場合など一定の要件を満たせば自動車所有を認めるとしており、判決は、夫婦のケースがこの通知の要件を満たしていると判断。「保護処分停止は相当性を欠く違法な処分で北九州市に過失があった」とした。
原告側は「障害者が日常生活を送り、社会参加するには自動車利用が不可欠。根拠なく制限する行政の運用は、人間らしい生活を送る権利を否定するもの」と主張。市側は「タクシー通院が可能で、車を所有できる要件を満たしていない」と反論していた。
=2009/05/29付
西日本新聞夕刊=
生活保護停止は違法=北九州市の処分取り消し-車利用の障害者夫妻勝訴・福岡地裁
北九州市の障害者夫妻が「生活に不可欠な車の利用を理由に生活保護を停止したのは違法」として、市に対し停止処分の取り消しや慰謝料計200万円の支払いなどを求めた訴訟の判決が29日、福岡地裁であった。増田隆久裁判長は「車の所有を認めるべきだった」として処分の違法性を認め、処分取り消しと慰謝料計60万円の支払いを命じた。
訴えていたのは、門司区の無職峰川義勝さん(68)、久子さん(77)夫妻。峰川さんは左足が不自由で心臓病を患っており、重度身体障害者の久子さんは主に車いすで生活している。
判決によると、峰川さんは久子さんの介護のため、露天商をやめて2000年11月から生活保護を受給していたが、門司福祉事務所から所有する軽自動車を処分するよう繰り返し指示された。夫妻が「障害のため通院や買い物など外出には車が不可欠」と従わずにいたところ、同事務所は04年8月、停止処分を決定し、翌9月から05年4月まで生活保護を停止した。
増田裁判長は、夫妻が車以外で通院などを行うことは極めて困難で、車の所有について厚生労働省が定めた要件を満たしていると判断。「直ちに保護を停止したのは違法な処分で、夫妻は食事を詰め、光熱費などを滞納する状況にまでなった」として、慰謝料の支払いを命じた。
北九州市保護課の守口昌彦課長の話 判決文をよく読んで、関係機関とも協議の上、対応を検討したい。(2009/05/29-16:11)
車所有で生活保護停止違法、障害者夫婦勝訴の判決
北九州市が自家用車を所有していることを理由に生活保護を停止したことは、憲法などに違反するとして、同市門司区の身体障害者の夫婦が同市を相手取り、処分取り消しや慰謝料など約252万円の支払いを求めた訴訟の判決が29日、福岡地裁であった。
増田隆久裁判長は「自動車以外の手段で通院などを行うことは極めて困難で、所有を認めなかった処分は違法」として夫婦の主張を認め、市の処分を取り消し、市側に60万円の支払いを命じた。
訴えていたのは、峰川義勝さん(68)と妻・久子さん(77)。
訴状などによると、峰川さん夫婦は北九州市内で青果の露天商を営んでいたが、夫婦ともに体調を崩し商売が続けられなくなった。このため、2000年11月から生活保護を受けるようになった。
夫婦は仕事用に軽乗用車を所有していたが、管轄する門司福祉事務所は「所有は認められない」として、車を手放すよう口頭や文書で指示。夫婦が応じなかったため、04年8月に保護停止処分を決め、約7か月間にわたり生活保護費を支給しなかった。市はその後、夫婦の生活困窮を理由に支給を再開した。
裁判で夫婦側は「病気の影響で体が不自由で、通院や買い物などに自動車が不可欠。市の処分は憲法や生活保護法の解釈を誤っている」と主張。一方、市は処分の正当性を主張して、夫婦側の請求を棄却するよう求めていた。
増田裁判長は市の処分取り消しに加え、「生活保護費の支給停止によって、夫婦は生活が困窮し精神的苦痛を被った」として慰謝料支払いも認めた。
(2009年5月29日
読売新聞)
車所持で生活保護停止「違法」 北九州市に慰謝料命令
2009年5月29日17時1分
車を持っていることを理由に生活保護を停止されたのは不当だとして、北九州市門司区の無職峰川義勝さん(68)と重度身体障害者の妻(77)が、市に停止処分の取り消しと慰謝料200万円などを求めた訴訟の判決が29日、福岡地裁であった。増田隆久裁判長は「妻は自動車以外での通院は極めて困難で、市は所有を容認すべきだった」などとして、処分は違法と認定。処分を取り消し、市に慰謝料計60万円の支払いを命じた。
訴状などによると、峰川さん夫婦は野菜の露天商を営んでいたが、妻が背中や手足などの痛み、しびれが広がる難病にかかり、00年3月に入院して手術を受けた。峰川さんも心臓病などで働けなくなり、夫婦は同年11月から生活保護を受給した。
市の担当者は翌月から、「自動車を所有すると生活保護は認められない」として、峰川さんの軽乗用車を処分するよう繰り返し指示し、04年8月には保護を停止。しかし妻が同市内の病院にリハビリに通うため、車は手放せなかったという。市は05年4月、「夫婦の急迫を考慮する必要がある」として生活保護を再開した。
裁判で峰川さん側は「障害者の妻に車が必要なのは明らか。正当な理由のない今回の処分は違憲で、生命の危機にさらされた」と主張。これに対し市は、事実関係をほぼ認めたうえで、「車の所有を認められるケースには当たらない」と反論していた。
厚生労働省によると、生活保護受給者の自動車の所有を巡っては、今回の処分当時、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に住む障害者の通院利用などに限って、許されていたという。しかし、08、09両年度の保護課長名通知で運用が緩和され、現在では障害者でなくても、公共交通機関の利用が難しい地域の通勤、通院などの目的では所有が認められているという。