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どうなる? 高速道路


どうなる? 高速道路/1 全国にのびる約1万キロ

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 人やモノを運ぶ大動脈・高速道路の話が、よくニュースに登場する。今年3月に休日の「1000円乗り放題」が実施されたかと思えば、新政権を発足させた民主党は高速利用の無料化を打ち出している。日本列島を南北や東西に結ぶ高速道路網は約1万キロ。政権交代で、高速道路の人やモノの流れが大きく変わるかもしれない。

 高速道路は、正式には高規格幹線道路という。自動車だけが通行することができ、一般の道路とはインターチェンジ(IC)などでつながる道路のこと。通行には料金がかかる。東名高速道路や名神高速道路などに代表される高速自動車国道と、一般国道の自動車専用道路がある。高速自動車国道は1万1520キロ、一般国道自動車専用道路は2480キロの計1万4000キロが計画され、その68%、9499キロが完成している(2009年8月現在)。

ニュースがわかる 2009年11月号

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 民主党は高速道路を無料にする理由として、(1)生活や企業活動に必要な費用が安くすむ(2)地域間の交流が活発になり、経済が元気になる--などをあげている。実施にあたっては、2010年度に交通量の少ない地方の高速道路からスタート。以後、都市部でも順次、無料区間を拡大していく考えだ。ただし、大都市近郊の区間や首都高速道路(東京など)、阪神高速道路(大阪、兵庫など)はこれまで通り、有料となる見通し。

 ◇環境への影響は?


 高速無料化で車の利用が増えると、ガソリンの消費量ものび、二酸化炭素(CO2)排出量の増加につながることを心配する声が強い。一方、車から出るCO2は渋滞の影響が大きいともいわれる。混雑した一般道路から高速に車が回れば、一般道路の渋滞が少なくなり、排出量は減るとの見方もある。

 ◇渋滞の心配は?


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「1000円乗り放題」の影響で例年より渋滞が激しかった大型連休中の東名高速道路=愛知県岡崎市で2009年5月2日

 「1000円乗り放題」がスタートした直後の大型連休では、多くの高速道路に車がひしめいた。交通量が2008年の1.7倍に増えた高速もある。乗り放題は休日とETCつきの乗用車・二輪車に限られる。「いつでも」「どの車も」無料となれば、連休や年末年始などを中心に渋滞がひどくなることが予想される。

・ETC……自動料金収受システムのこと。料金所で停車しなくても通行料の支払いができる。

 ◇経済への影響は?


 民主党は無料化で「最大7.8兆円の効果がある」と説明する。国土交通省(国の役所)によると、高速道路は渋滞の発生などでマイナスだが、一般道路は事故の減少などでプラスとなり、人やモノを運ぶ時間が短くなる効果などを加えると、7.8兆円のプラスという。マイナス面には、他の交通機関がしわ寄せを受けたり、料金所で働く1万6000人が失業したりするなどの問題もある。

 ◇建設などの費用は?


 これまで高速道路は旧日本道路公団(今の高速道路会社)が借金をして建設し、利用者がはらう通行料金で返してきた。2007年度末の借金総額は約35兆円。一方、料金収入は年間2兆3000億円(08年度)。無料になると過去の借金は税金で返すしかなく、新しい高速道路も税金や国の借金で建設することになる。

・日本道路公団……1956年に設立され、高速・有料道路の建設や管理にあたった。2005年に民営化され、東日本高速道路など六つの会社と借金を引きつぐ独立行政法人に分かれた。

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 計画のうち完成したのは7割ほど。つながっていないところもあるのね。

 ◇新幹線とほぼ同時に誕生


 国内初の本格的な高速道路は名神高速道路(愛知県~兵庫県・約194キロ)で、1963年に一部が完成し、65年に全線開通した。その前年の64年に東京オリンピックが開かれ、東海道新幹線が開業。名神高速と新幹線が並行する姿は日本の復興ぶりを世界に示した。名神と合わせて計画された東名高速道路(東京都~愛知県・約347キロ)はルートの決定に手間取り、全線開通は69年だった。

 ◇22年前にできた全体計画


 経済の急成長とともに高速道路網は全国に広がった。1987年に政府は1万4000キロの高速道路(高規格幹線道路)の整備計画を作成。その約7割が完成し、東名、名神のような高速自動車国道は今後、約1700キロの着工が決まっている。しかし、計画ができてから22年。日本社会は人口の減少が始まり、全国の交通量も減りつつある。計画にある高速をすべて造るのかどうか、見直しが必要との意見もある。

 ◇日本の高速料金は世界一!?


 日本の高速道路の料金は世界で一番高いといわれる。土地代が高いのに加え、けわしい地形が多いこと、地震などに備えた強固な構造が必要なことから建設費がかさむ。その費用を料金でまかなっているためだ。1キロ走るのに24.6円かかる(普通車の場合)。原則として全国どこの高速を走っても同じだ。フランス、イタリア、韓国なども高速道路は有料だが、料金は日本の半分以下になっている。

 ◇「名神」「東名」は本来ならとっくに無料?


 高速道路は「全国料金プール制」という仕組みで建設されてきた。全国の高速道路を一体のものとして考える制度で、黒字の道路の料金は、赤字道路の借金返済や新しい道路の建設に回されることになる。1960年代に開通した名神高速と東名高速は当初、30年かけて借金を返し、その後は無料にする計画だった。しかし、72年に導入されたプール制により、いつまでも無料にならないことになってしまった。

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 普通車の場合、(300×24.6+150)×1.05=7906.5となり、端数を処理して7900円が答え。実際には、走行距離が100キロから200キロまでの部分については25%、200キロをこえる部分については30%の割り引きがあるので、料金は6500円となる。150円は利用のたびにかかる初乗り料金。

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どうなる? 高速道路/4止 海外の高速道路は有料? それとも無料?

 ほかの国の高速道路は、どんな状況なのだろう。日本と同じように借金で建設しているところは有料のようだね。フランスやイタリア、アジアの中国、韓国、インドネシアなどだよ。アメリカ、ドイツ、イギリスのように、税金で整備してきた国は無料なんだ。でも、一部を有料にしたり、有料化を検討したりする動きもある。日本とは反対だね。

 ◇無料


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 アメリカ 世界一の高速道路大国

 自動車大国にふさわしく、約9万キロの高速道路が整備されている。中心となるのが各州にまたがるインターステート・ハイウエー(州間高速道路)で、1990年ごろまでに約7万キロが完成。州が無料道路として建設したものだ。最近、建設費や維持費をまかなうために有料化の議論も起きている。制限速度は州によって時速90~120キロと幅がある。

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 ドイツ いち早くアウトバーンを整備

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各国の高速道路計画の手本にもなったドイツのアウトバーン

 スピード制限がなく、どこまでも無料で走れるアウトバーンが有名だ。高速道路網の必要性にいち早く注目、第二次世界大戦前に約4000キロが完成。各国の高速道路計画の手本にもなった。現在の総延長は1万2000キロ。しかし、交通量や事故の増加などで大型トラックは有料となり、4割の路線には時速100~130キロの速度制限が設けられた。

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 ◇有料


 イタリア

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 フランス

 地域によって無料の高速も

 世界初の高速道路はイタリアで生まれた。1925年にミラノと北部のリゾート地を結んで開通。現在の総延長はイタリアが約6500キロ、フランスは約1万キロ。両国とも民間の会社などが借金で建設している。

 ただし、経済的にあまり豊かでないイタリアの南部地域やフランスの西部地域などでは、地域振興のため国が無料の高速道路を整備している。有料の割合はイタリアが9割弱、フランスが8割弱となっている。

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 中国 急ピッチで高速道路を拡大

 1980年代後半から建設が始まり、90年に大連~瀋陽間に初の本格的な高速道路(375キロ)が完成。経済発展には高速道路が欠かせないとして急ピッチで整備された。2005年の総延長は約4万1000キロ。建設には民間や外国の資金が投入されている。約8万キロの整備を目指し、アメリカ並みの高速道路ネットワークを国土に張りめぐらす計画だ。

ニュースがわかる 2009年11月号

【おすすめの本】
「道路問題を解く-ガソリン税、道路財源、高速道路の答え」(山崎養世・著、ダイヤモンド社)
「高速道路の謎」(扶桑社新書、清水草一・著、扶桑社)
「高速道路 何が問題か」(岩波ブックレット、宮川公男・著、岩波書店)
「ゆえに、高速道路は必要だ-ネットワーク日本、めざして」(四方洋・著、毎日新聞社)

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