Secret Pacts with U.S. over Return of
Okinawa
沖縄返還交渉をめぐる密約の存在を証言
沖縄返還密約:「補償費肩代わり」推定 有識者委報告へ
2010年3月3日
2時38分 更新:3月3日
2時38分
日米が交わしたとされる四つの外交密約を検証している外務省の有識者委員会が9日に公表する方針の報告書の概要が2日、明らかになった。1972年の沖縄返還に絡み「米国が支払うべき米軍用地の原状回復補償費400万ドルを日本側が肩代わりする」とされた問題では、米国で多数の関連公文書が見つかっていることなどから「肩代わりはあった」と推定する。ただ、従来密約とみなす最大の根拠とされたスナイダー駐日米公使と吉野文六外務省アメリカ局長(いずれも当時)による71年6月の議事要旨だけでは密約とは断定できないとの判断も示す。
◇「半島有事」「沖縄の核」確認
スナイダー、吉野両氏がサインした議事要旨は、米側が「自発的に支払う」とした返還土地の原状回復補償費400万ドルを、吉野氏が「(日本政府は)米信託基金設立のため確保しておくことを予定している」と明言したと解釈されてきた。しかし、今回の報告書では、吉野氏が「(日本政府は)400万ドルを同基金設立のため確保しておくよう(政府の一員として)期待を持っている」と述べたと解釈するのが正しいと断定した。そのうえでスナイダー、吉野両氏の交渉記録だけでは密約とは断定しないものの、日本側文書が不自然なほど残っていないことから、廃棄された可能性も示唆するとみられる。
この問題に関連しては、71年に「密約」と報じた西山太吉元毎日新聞記者らが東京地裁に関係文書の情報公開訴訟を起こし、4月9日に判決が言い渡される。
「朝鮮半島有事」密約については、60年の日米安保条約改定の際、岸信介内閣の藤山愛一郎外相とマッカーサー駐日米大使(いずれも当時)が交わした議事録などが発見された。朝鮮半島有事の際に出撃する在日米軍の戦闘行動は事前協議を必要とせず、米軍が在日米軍基地を自由に使用できることを例外的に認めていた。
「核搭載艦船の核持ち込み」については、60年の安保改定時の藤山外相とマッカーサー大使が事前協議制を巡って交わした討議録などが見つかった。しかし、報告書では「核持ち込み」を巡り、日米間で解釈にズレがあり、日本側に密約との認識がなかったことを指摘する。
米側は「米艦船の寄港、領海通過は核持ち込み(イントロダクション)に当たらない」と解釈していたが、安保改定交渉にあたった外務省安全保障課長の東郷文彦氏(後の外務事務次官、駐米大使)が「核搭載艦船の寄港などを定めたものとは思っていなかった」との趣旨の文章を残していたことを紹介する。ただ、63年4月に当時のライシャワー駐日米大使が池田勇人内閣の大平正芳外相に米側の解釈を伝えてからは、米側の主張を意図的に黙認してきたことを盛り込む。
「沖縄核再持ち込み」密約は、佐藤栄作首相とニクソン米大統領(いずれも当時)が69年11月の日米首脳会談(ワシントン)の際に交わした「合意議事録」を、佐藤氏の遺族が保管しており、有識者委は「文書は本物であり、密約が存在した」と判断する。【中澤雄大】
【ことば】日米核密約有識者委員会
09年11月の岡田克也外相の指示を受け、北岡伸一東大大学院教授ら6人の有識者が検証を続けていた。報告書は約70ページ。内容は(1)「密約」の定義(2)米国の核戦略と、核持ち込みに必要な事前協議制に関する他国・機関との比較(3)核搭載艦船の寄港・通過は核持ち込みにあたらない(4)朝鮮半島有事の際の在日米軍基地使用(5)72年の沖縄返還を受けた有事の際の沖縄への核再持ち込み(6)沖縄返還時の原状回復補償費肩代わり(7)外交史料公開制度の提言--の計7部構成。
◇解説 「外交密約」定義に苦慮 有識者委の意向反映
外務省の有識者委員会は、9日に公表する報告書で、四つの日米「密約」のうち、「朝鮮半島有事での米軍による在日米軍基地の自由使用」「有事の際の沖縄への核の再持ち込み」という二つの密約の存在を明確に認める。一方「米軍核搭載艦船の寄港・通過」「沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わり」に関する二つの密約については、それぞれ「日本側は当初は認識せず、その後は黙認」「日本側文書は見つからなかったが、肩代わりがあったと推定される」と結論づける見通しで、玉虫色の決着となりそうだ。
四つの「密約」は、米国で史料が見つかっているにもかかわらず、自民党政権下で日本側はかたくなに否定してきた。膨大な史料を前に、外交史の専門家らを中心とした有識者委が最も苦慮したのは「外交密約」とは何か--という定義だった。
検証にあたって日本側は(1)文書が存在するかどうか(2)状況証拠や当時の交渉当事者の証言の有無--などを重視する2段構えで臨んだが、文書は確認できないものの、米側の文書や関係者証言などから密約とうかがわれるものをどう判断するかが問題になった。沖縄返還時の原状回復補償費の肩代わりに関する密約はこのケース。
71年の沖縄返還協定に関して、日本側は米資産買い取り費など3億2000万ドルを負担し、米軍用地の原状回復補償費400万ドルは米側が支払うよう見せかけていた。
委員の一人は「一概に『密約』と言ってもさまざまだ。公表されている条約よりも重要な内容で、自国民や他国へ深刻な影響・負担を与えるものかどうか。当時の時代背景などを照会しながら判断した」と振り返る。別の委員は「明らかにされない執筆担当者(委員)の意向が強く反映された」と指摘する。
有識者委は「肩代わり」を「推定」するという結論に達したが、改めて検証した場合、異なった内容になる可能性もある。
外交とは「国民の理解と信頼の上で成り立つ」(岡田克也外相)ものだ。検証作業は政権交代がもたらした一定の成果だが、国民レベルでの一層の議論が望まれる。【中澤雄大】
【関連記事】
<関連記事>沖縄密約訴訟:東京地裁で結審…判決は4月9日
<関連記事>沖縄密約文書の情報公開訴訟を考える…大阪で集い
<ニュースな言葉>沖縄密約事件
核持ち込み:「66年に沖縄から本州に」元当局者明らかに
外交文書:公開ルールを外部有識者で検討へ…岡田外相
核密約調査:岡田外相「3月に結果」
菅財務相:沖縄返還密約文書 財務省へ調査の徹底を指示
菅直人副総理兼財務相は19日の会見で、沖縄返還交渉に絡む「日米密約」の関連文書について「後になって『やはりあった』ということがないよう、しっかり調べるよう強く言った」と述べ、財務省に調査の徹底を指示したことを明らかにした。
密約は、沖縄返還に伴う米軍基地の移転費用について、日本政府の財政負担を確認する内容。69年に大蔵省(当時)と米財務省の担当者が交わしたとされる。菅氏は厚相時代の96年、薬害エイズ問題の新資料を厚生省内で発見した経緯を踏まえ「役所には古い書類はだいたい残っているというのが私の過去の経験だ」と述べた。
密約文書について藤井裕久前財務相は「保存期間を過ぎており、保存していないと思う」と述べていた。【坂井隆之】
【関連記事】
財務省:月内に改革検討チーム…菅氏「霞が関変える一歩」
菅副総理:財務相就任後も官邸で会見「内閣全体に目配り」
為替:菅氏発言で閣内見解分かれる
藤井財務相辞任:後任は菅副総理 仙谷氏が国家戦略相兼務
菅副総理:「全閣僚で合宿」提案 内閣一体感を演出狙い?
毎日新聞 2010年1月19日 21時23分(最終更新 1月19日 22時35分)
沖縄返還密約:有識者委が財務省に資料要求 補償費負担で
2010年1月10日
2時30分
日米密約を調査している有識者委員会(座長・北岡伸一東大大学院教授)が、1972年の沖縄返還に絡み、米軍用地の原状回復補償費を日本が肩代わりした密約の実態を解明するため、財務省に資料の提出を求めることが分かった。米財務省と独自交渉をしたのは旧大蔵省で、同省の関連文書が欠かせないと判断した。
沖縄返還に伴う日本側財政負担については、米資産買い取り費など総額5億1700万ドルに上る密約を示す文書が米国で公開されている。当時の柏木雄介大蔵省財務官とジューリック米財務長官特別補佐官が署名している。外務省の調査では、この密約の一部にあたる「米軍用地の原状回復補償費400万ドルを日本側が肩代わりした」と推定できる関連文書は発見されたが、密約文書そのものは見つからなかった。
有識者委は、旧大蔵省財政史室がまとめた「昭和財政史」(99年刊行)などで密約に関連する時期の記述が不自然に欠落していることに注目。実際には資料が財務省に残っている可能性があると判断した。
財務省は毎日新聞などの情報公開請求に対し07年に「文書は存在しない」と回答した。しかし、情報公開に積極的な菅直人財務相が就任したこともあり、外務省関係者は「あらためて外務省から資料請求すれば文書が出てくる可能性がある」としている。【中澤雄大】
【関連記事】
安保条約改定50周年:日米首脳の共同声明発表へ
日米外相会談:11日ハワイで 両政府が調整
鳩山首相:年頭会見「正念場の一年と覚悟」
核密約:複数の元次官ら「認識」 有識者委調査に回答
岡田外相:核密約文書発見に「驚き」 歓迎の意向示す
日米密約:「存在」法廷で初証言 外務省元局長
2009年12月1日
20時54分 更新:12月2日
9時46分
沖縄返還交渉を巡る密約文書の開示を政府に求めた情報公開訴訟で原告側の証人として出廷し、証人尋問後、記者会見する吉野文六・元外務省アメリカ局長=司法記者クラブで2009年12月1日午後4時5分、佐々木順一撮影
沖縄返還(72年)の日米交渉をめぐる密約文書を開示するよう西山太吉・元毎日新聞記者(78)ら25人が政府に求めた情報公開訴訟の口頭弁論が1日、東京地裁(杉原則彦裁判長)であった。対米交渉に当たった吉野文六・元外務省アメリカ局長(91)=横浜市在住=が原告側証人として出廷し、「米側と(密約を示す)文書を取り交わした」と密約の存在を証言した。一方、密約を否定している国は、一転して認否を留保する書面を裁判所に提出した。
吉野氏は報道機関に密約を認めていたが、法廷での証言は初めて。
西山氏らが開示を求めているのは▽本来、米国が支払うべき旧軍用地の原状回復費(400万ドル)▽海外向け短波放送「VOA(ボイス・オブ・アメリカ)」の施設移転費(1600万ドル)--などについて、日本が肩代わりすることを示す3件の公文書。米公文書館では開示されている。
吉野氏は「沖縄返還交渉にかかわり、リチャード・スナイダー駐日公使(当時)が作成した(密約を示す)文書に署名した」と証言。文書に署名されたイニシャル「BY」について「私が外務省局長室で署名した。写しを取り、外務省に保管していたはず」と指摘した。
米国の費用を日本が肩代わりする経緯について「(ベトナム戦争で)米の財政事情が非常に悪くなった。米議会には日本に金を支払う必要があるのか。もう少し返さなくても良いのではないかという状況になりつつあった」と説明。日本の事情については裁判所に提出した陳述書で「(当時の)佐藤(栄作)首相が沖縄は無償で返ってくると発言していたので日本が支払うことも難しかった」と指摘した。
また、密約の存在を認めた理由について、尋問の中で吉野氏は「米では公表されており、秘匿はできないという心境に入った。(秘密交渉の内容も)30年、25年か分からないが、一定の時間がたてば公表する制度を採用してほしい」と語った。
国側はこれまで「最終的な合意文書ではない」としてきたが、今年9月に岡田克也外相が調査を指示し、吉野氏の法廷での証言を認めていた。【臺宏士】
【関連記事】
日米密約:「核再持ち込み」文書見つからず 外務省調査
核密約:検証のための有識者委設置 北岡東大教授が座長
核密約:岡田外相、公式に認める方針 関連文書を1月公表
日米密約:最終報告の公表年明け以降に 岡田外相
日米首脳会談:同盟の深化へ協議開始 普天間移設は先送り
Ex-Foreign Ministry official testifies on
secret pacts with U.S. over return of Okinawa
Bunroku Yoshino, former director general of the Foreign
Ministry's American Affairs Bureau, talks at a news
conference on Tuesday after providing testimony in court
about secret agreements regarding the reversion of Okinawa.
(Mainichi)
A former high-ranking official of the Foreign Ministry has
testified in court that Japan and the United State signed
secret pacts regarding the reversion of Okinawa to Japan's
sovereignty in 1972.
"We exchanged (relevant) documents with the United States,"
Bunroku Yoshino, 91, former director general of the
ministry's American Affairs Bureau, told the Tokyo District
Court.
He provided the testimony during a hearing Tuesday of a
lawsuit that former Mainichi Shimbun staff writer Takichi
Nishiyama, 78, and 24 others launched to demand the
government disclose the relevant documents. Yoshino was
involved in negotiations with Washington over the reversion
of Okinawa.
It was the first time that Yoshino testified in court that
Tokyo and Washington exchanged documents on the secret
pacts even though he had acknowledged the existence of such
documents in interviews with news organizations.
The government, which had denied the existence of any such
documents, has submitted a document to the court to reserve
a testimony over the issue.
The plaintiffs are demanding the documents on the pacts be
disclosed. Two of the documents pertain to the agreement
that Japan would foot the expenses of restoring the sites
of former U.S. bases to their original condition before
returning the land to the owners -- totaling 4 million
dollars -- and 16 million dollars in costs for moving the
Voice of America facility to another location, among other
expenses. The United States was supposed to bear these
costs.
The other document states that Japan agreed to deposit at
least 60 million dollars with U.S. banks for 25 years and
donate 112 million dollars of yields on the deposits to the
United States.
These documents have already been disclosed by the U.S.
National Archives.
"I signed the documents regarding negotiations on the
reversion of Okinawa compiled by Richard Sneider, then
minister at the U.S. Embassy in Japan," Yoshino told the
court.
Regarding the initial, "BY," in the signature on the
documents, Yoshino said, "I signed it at the director
general's office within the Foreign Ministry. It was copied
and must have been preserved at the ministry."
As to why Japan shouldered the expenses, he said, "The U.S.
fiscal situation had worsened (due to the Vietnam War).
Debates emerged within the U.S. Congress over whether the
United States should pay money to Japan, and it did not
have to return Okinawa for a while."
Concerning Japan's domestic situation, he pointed out in a
statement submitted to the court that it was difficult for
Japan to openly pay for the costs since then Prime Minister
Eisaku Sato had expressed that Okinawa would be returned to
Japan without compensation.
Yoshino called for a system under which secret diplomatic
documents would be disclosed after a certain period of
time.
"Since these documents have been disclosed in the United
States, I've deemed they can no longer be concealed. I want
Japan to introduce a system to disclose the details (of
secret negotiations) after a certain period of time,
whether it be 25 or 30 years," he said.
In a statement submitted to the court, the government
admitted for the first time that Japan deposited money with
U.S. banks on the occasion of the reversion of Okinawa, but
denied that it had anything to do with the secret pacts on
the reversion of Okinawa. "We don't know whether it was
free of interest. The deposits are unrelated to the secret
agreements."
Japan had maintained that these documents were not final
agreement documents. However, Foreign Minister Katsuya
Okada instructed the ministry to investigate them shortly
after the Democratic Party of Japan took over the reins of
government in mid-September.
Moreover, the foreign minister allowed Yoshino to testify
over the issue in court. Under the Code of Civil Procedure,
retired bureaucrats must gain approval from the
organizations they belonged to before testifying over
confidential information relating to their duties.
Click here for the original Japanese
story
(Mainichi Japan) December 2, 2009