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少子化対策PT:小渕担当相に10の提言 「消費税1%分を子どものために」

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小渕優子少子化対策担当相(右)に「みんなの少子化対策」を手渡す佐藤博樹・東京大社会科学研究所教授らPTメンバー=内閣府で2009年6月23日

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第10回会合が23日、内閣府で開かれた。これまでに話し合った少子化対策を「みんなの少子化対策」として10の提言にまとめ、小渕担当相に手渡した。

 PTは今年1月にスタート。NPO法人「ファザーリング・ジャパン」代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香澄さん、東京大社会科学研究所教授の佐藤博樹さんをメンバーに、専門家らと意見を交わしたり、学生や地方の声を聞き取った。

 「対策」では、これまでに指摘された「関心がない」「広がりがない」「財源が足りない」といった問題を解消するため、国民みんなが具体的行動を起こす▽ライフサイクルを通じた総合的な支援を目指す▽みんなで負担を分かち合う--ことを柱としている。小渕担当相は「これがゴールではなく、ここからが始まり。まずは提言を(政府が年内にまとめる少子化社会対策)大綱に生かしたい」と語った。【浜田和子】

 10本の提言は次の通り。
1.少子化対策の第一歩は恋愛・結婚から……少子化の背景にある恋愛・結婚にまで視野を広げて政策的対応を図る。
2.若者が安心して家族を持てるようにする……家族形成可能な就労・経済的自立への支援など包括的な若者支援に取り組む。
3.妊娠や家族形成に関する認識を深める……学校段階から妊娠や不妊治療について正しい知識を得られるようにする。
4.厳しい経済情勢の今だからこそ働き方を変える……仕事と生活を調和させるメリハリのある働き方に向け具体的行動を起こす。
5.幼児教育と保育の総合的な検討を……幼児教育の無償化や保育制度改革は利用者の視点に立って行う。
6.子どもの貧困と格差の連鎖を防止する……ひとり親家庭(母子家庭・父子家庭)等への効果的な支援を行う。
7.家計の過重な教育費負担の軽減を……就学援助、授業料減免、奨学金等により家計の教育費負担の軽減を図る。
8.社会全体で子育てを支える……人づくり、まちづくりを通じて家庭や地域の子育て支援機能を強化する。
9.子どもが病気になった時にも安心を……子どもが病気になったときの親の不安の解消と病児保育の充実を図る。
10.消費税1%分を子どもたちのために……安定的な財源を確保して少子化対策を拡充する。

【関連リンク】
ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム
【動画】少子化対策PT最終回 10の提言

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少子化対策:「婚活からはじめて」小渕担当相にPTが提言

2009623 2150分 更新:623 2353

 小渕優子少子化担当相の私的懇談会「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」は23日、少子化対策案を同担当相に提言した。少子化の背景に未婚化・晩婚化があるとして、従来の子育て支援策にとどまらず、「恋愛・結婚にまで視野を広げて政策的対応を図る」よう求めている。

 PTは経済評論家の勝間和代さんら5人をメンバーに、1月設置された。

 提言は「婚活(結婚活動)への関心の高まりもある」と結婚事情にも触れたうえで、「若い世代の恋愛・結婚をめぐる状況から対策を考えていくことが必要」と指摘した。ただ、出会いの機会などを増やす具体的な取り組みについては「データの集積、現状分析と評価、政策的対応のあり方等について議論を深めていくべきだ」とするにとどめた。

 PTメンバーの佐藤博樹・東京大社会科学研究所教授は23日の記者会見で、「出会いや交流の機会を若者に提供する同窓会を開きやすいように自治体が支援するなど、(取り組みには)かなり幅がある」と語った。

 提言はこのほか、消費税を将来引き上げる場合は1%分を少子化対策に充てるよう求めた。提言内容は、政府が年内にまとめる少子化社会対策大綱に盛り込まれる予定。【影山哲也】

 ◇提言の主なポイント◇


 少子化対策の一歩である恋愛・結婚に視野を広げた政策的対応の実施
 若者の就労や経済的自立への支援
 子供の貧困と格差の連鎖防止
 家計の教育費負担の軽減
 消費税1%分を少子化対策に


少子化対策PT第9回:
子どもの病気 親も医療現場も保育サービスも危機

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少子化対策PTの第9回会合に出席した(右から)「知ろう!小児医療 守ろう!子ども達」の会理事の高橋夏子さん、昭和大医学部産婦人科学教室主任教授の岡井崇(たかし)さん、NPO「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹さん

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第9回会合が9日、内閣府で開かれた。「小児医療・周産期医療・病児保育」をテーマに、現状と課題を議論し、将来施策への提言について話し合った。

 PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香澄さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。このほか有識者として、「『知ろう!小児医療 守ろう!子ども達』の会」理事の高橋夏子さん、昭和大医学部産婦人科学教室主任教授の岡井崇(たかし)さん、病児保育事業を進める特定非営利活動法人(NPO)「フローレンス」代表理事の駒崎弘樹さんを迎え意見を聞いた。

 冒頭のあいさつで小渕担当相は「子どもの病気(に付随する問題)にはどんな親も必ずぶつかる。私自身もそうで、うちの子はなぜか私が大臣になってから熱をしょっちゅう出すようになった」と明かした。

 自らも1歳児を持つ高橋さん。小児医療について▽夜間救急は数時間待ち▽入院の必要がない患者が9割以上▽小児科医の不足・過重労働--と問題点を挙げた。子どもの体調がよくないととりあえず病院に駆け込み「コンビニ受診」と非難されていることについて、子どもを産んで初めて赤ちゃんをだっこする人が多い今、子どもの病気について知る機会がないため軽症か重症か判断できず、「とにかく心配だから受診する」という行動になると説明。「親の不安の軽減が小児医療現場の改善につながる」と述べた。子育て支援施策として「母親学級や産後の検診などの内容を見直し、子どもの病気など、今のパパ・ママに必要な情報を知らせる」ことを提案した。

 岡井さんは、産婦人科医師数の年次推移や当直翌日の勤務有無などのデータを挙げ「日本の産科医療現場の危機だ」と訴えた。危機克服のためには、長期的なビジョンを持った国の施策が必要で、具体的には▽医療従事者の増加▽医療施設の規模・配置の適正化--などを挙げた。

 病気になった子どもを保育するサービスを病児保育という。親のニーズが高いにもかかわらず、夏と冬では需要に差があり経営が安定しないなどの課題があり、なかなか数が増えない。また、地方自治体から補助金を得ようにも、開所時間やサービス提供地域などの縛りがあり、利用者のためのサービスが提供しにくい実態がある。駒崎さんは「国や自治体は、事業者の創意工夫を後押しするような姿勢であってほしい」と注文した。

 小児医療・周産期医療について、「小児医療の改善は医師を増やすだけで対処できるのか」(松田さん)、「医療費の無料化は必要か」(宮島さん)、「自治体が変わらないのはなぜか」(佐藤さん)などの質問があった。岡井さんは、「日本の医療機関は規模が小さく効率が悪い。イギリスにみられるような『家庭医』がいない。医療費は無料ではなく少しは払った方がいい」などの持論を展開。

 また、「病児保育をファミリーサポートセンターに委託できないのか」(宮島さん)という質問に駒崎さんは、「ファミサポの保育は、サービス提供会員の手の空いたときに2~3時間なら、というケースが多いのではないか。病児保育は丸一日、十数時間安全に看護することが求められるため、きちんと研修した専門スタッフの育成が必要だ」と述べ、病児保育は事業として取り組むべきだとの考えを示した。

 少子化対策PTは、次回6月23日の第10回会合が最終回。これまでのPTで明らかになった課題や提案を「みんなの少子化対策」と題した具体的な提言としてまとめ、麻生太郎内閣の「骨太の方針」に少子化対策として盛り込んでもらうことを狙う。小渕担当相は「財源をきちんと確保するとともに、若者や子どもの目線で今の時代を見ていくよう訴えたい」と意気込みを語った。【浜田和子】

【関連リンク】

ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム
【動画】
少子化対策PT第9回会合「小児医療・周産期医療・病児保育」

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少子化対策PT第8回:
「日本は子どもにやさしくない社会」

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少子化PTの第8回会合に出席した(左から)和田雄志・財団法人未来工学研究所理事、大日向雅美・恵泉女学園大大学院教授、木下勇・千葉大大学院教授

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「ソフトの面でもやさしい社会を」と述べる小渕担当相

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第8回会合が26日、内閣府で開かれた。少子化対策のための「家庭・地域・まちづくり」をテーマに、現状と課題を議論し、将来施策への提言について話し合った。

 PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香澄さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。このほか有識者として、「三世代遊び場マップ」づくりなどの経験から子どもや住民参画のまちづくりに詳しい木下勇・千葉大大学院教授、地域の子育て支援活動をするNPO法人あい・ぽーとステーションをつくった大日向雅美・恵泉女学園大大学院教授、海外の子育て事情を調査した和田雄志・財団法人未来工学研究所理事を迎えた。

 会合の冒頭、小渕担当相は「現在私も子育てをしているが、正直言って日本社会は子育てしづらいなあ、あんまりやさしい国ではないなあという気がしている。ハードの面だけでなくソフトの面でもやはり感じている」とあいさつ。

 木下さんは「子どもに優しい国づくり・子どもを元気にする国づくり」を宣言すべきだと提言。自らの経験や、先進地であるドイツ・ミュンヘン市の取り組みなどを例示しながら、子ども成育の視点からのまちづくり▽子どもの家の前に遊ぶ空間のある道づくり▽自然体験・共同体験と遊びのための環境づくり--などを具体的に進めるべきだと提案した。

 「30年間研究をしてきたが、女性の育児不安・ストレスは何も変わっていない。『子はかすがい』ではなく、(育児の負担が)夫や自分の母との溝になっている」という大日向さん。車社会の地方では、子どもとの散歩がてらに立ち寄れるようなスペースも多くはなく、「子どもの面倒は母親がみるべきだ」という考え方も根強いところもあるという。このため、育児相談や一時預かり、遊び場提供などの子育て支援活動は「都心の方がかえってやりやすいかもしれない」という見方を示した。少子化対策については、子どもと家族を支援するための人材を積極的に養成する▽広い視点とビジョンを持った施策を進める--ことを要望した。

 欧米やアジアなど海外で子育て経験のあるパパ・ママ計100人に子育て環境の調査をした和田さんによると、「海外は日本に比べ赤ちゃんや子連れにやさしい」という。ベビーカー専用スペースやバリアフリー化など子育てに配慮した社会インフラ・公共空間の整備▽「子育てにやさしい社会」に向けた国民運動の展開--などをはかることが必要だと提言した。

 宮島さんは3人に「子ども省についてどう考えるか」と質問。木下さんは「施策をチェックするという意味で、子ども省は必要」、大日向さんは「子どもだけでなく、すべての人に優しい社会をつくりたいから、反対」、和田さんは「自分の子だけでなく社会の子どもという意味で、あった方がいい。自治体では福祉関係を担当する『子ども課』などあるが、国として具体的施策に取り組むべきだ」と答えた。

 少子化対策PTは、6月9日に「小児医療・周産期医療」をテーマに第9回会合が行われる。【浜田和子】

【動画】
少子化PT第8回会合「家庭・地域・まちづくり」

2009529


少子化対策PT:
学生100人との対話 ワークライフバランスの勝ち取り方とは(1/2ページ)

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学生たちと少子化問題や働き方について話し合った=東京都千代田区の明治大で

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社会への要望も

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就職への不安も

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の大学生を対象とした公開討論会「アラハタ世代と考える恋愛、結婚、仕事、出産、子育て~学生100人との対話」が20日、東京都千代田区の明治大学で開かれた。少子化問題についての考えや社会・国の施策に望むことなどを話し合った。【浜田和子】

 ◇企業の意識は学生より遅れている?


 「アラハタ」世代とは「アラウンド二十歳」、20歳前後の人を指す。首都圏だけでなく、関西や東北などからも参加申し込みがあった。PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香澄さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さんが参加。松田さんがコーディネーターを務めた。

 討論会では学生から積極的に質問の手が挙がった。「就職してワークライフバランスを勝ち取るには?」(男子学生)との意欲に、安藤さんは「まず一生懸命がんばって会社の中で自分の実績を上げる。社内が君の求める状態ではなかったら自分が開拓しよう。ぼくは机の周りに家族の写真を飾ったりして家庭の存在を周囲に認識させた。育児休業を取りたければ、パートナーの懐妊と同時に周囲に言って理解を進めさせること」とアドバイスした。

 「教師を目指しているが、他の子どもへの責任もあり、自分の子どもの体調などを優先できないのでは?」(女子学生)という不安には、宮島さんが「サポートもいろいろあるし、パートナーと子育てをシェアすれば、病気の看病や学校行事の出席はお互い半分ですむ。責任ある仕事をしながら子育てすることが大事」と励ました。

 就職活動を経験した学生からは面接の実態も明らかにされた。「70社エントリーしたうち、男性の育休の説明は1社もしてくれなかった」(男子学生)、「面接で結婚観を聞かれた。結婚も出産もしたくないのに、それを前提にしていることが腹立たしかった」(女子学生)など、学生の感覚より企業の意識の方が遅れていると指摘があった。佐藤さんは「そんな会社はみんな受けない方がいい。今はいろんな生き方がある。結婚して子どもを持ちたい人もいれば、そうでない人もいることを理解し、(自分とは生き方が違う人のことも)支えてほしい」と話した。

 さらに「結婚より同居(事実婚)を選びたいし、自分の子どもでなくて養子でもいいのだが」(男子学生)という発言に勝間さんは「『標準世帯』という分類が事実上崩れてきている。単身世帯が一番多い。少子化PTでは『一人親』について話し合ったが、『事実婚』『養子縁組』『同性婚』なども考えるべきだと思っている」と、政府は家族の形を認識し直し、多角的な支援の必要性があることを訴えた。

 この日は小渕担当相は予算委員会のため出席できなかったがビデオでコメントを寄せた。小渕担当相は「今は子育て当事者の希望と現実社会のギャップがある。当事者以外の人に少子化問題が伝わっていないことも課題だ。集会を機に、一人ひとり考え歩き始めてほしい」と学生たちに呼びかけた。

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少子化対策PT:
学生100人との対話 ワークライフバランスの勝ち取り方とは(2/2ページ)

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スクリーンを使い出席学生の意識調査も行われた

 ◇男子は「早婚」願望?


 会場では、学生100人が「押しボタン」を持ち、質問の回答のパーセンテージがスクリーンに表示される仕掛けも用意された。

 「結婚(事実婚)したい?」について、男子学生は「早く」47%▽「いずれ」35%▽「したくない」18%、女子学生は「早く」39%▽「いずれ」55%▽「したくない」6%--の順。男子の方が早婚願望が強く、就職活動に響くのではとの心配があるためか女子の動きはいまひとつだった。

 「仕事と子育て・生活の優先度」を問うと、男女とも「両立」を回答した学生が最多。「仕事優先」「子育て・生活優先」を選択した学生は男女ともおり、性別による役割分担の考え方も変わってきている様子がうかがえた。

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少子化に歯止めをかけるためにはどうしたらいい?

 「少子化傾向に歯止めをかけるための対策」については、男子は(1)「仕事と家庭の両立支援、働き方の見直し促進」(2)「子育てにおける経済的負担の軽減」の順、女子は(1)「出産・子育てのための良好な社会環境整備」(2)「仕事と家庭の両立支援、働き方の見直し促進」の順で必要と回答した。男女ともワークライフバランスの浸透を求めていることが分かった。

 少子化対策PTは26日、「家庭・地域・まちづくり」をテーマに第8回会合を行う。

【関連リンク】

ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム
カエル!ジャパン 仕事と生活の調和(ワークライフバランス)

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少子化対策PT:
第7回/教育費の負担重い日本 大学の学費は家計の53%に

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少子化PTの第7回会合に出席した(左から)東京都品川区教育委員会の若月秀夫教育長、東京大総合教育研究センターの小林雅之教授ら

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第7回会合が12日、内閣府で開かれた。「学校教育」をテーマに、現状と問題を議論し、将来施策への提言を話し合った。

 PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香澄さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。このほか有識者として、学校選択制など新しい取り組みを次々に進める東京都品川区教育委員会の若月秀夫教育長、教育費に詳しい東京大総合教育研究センターの小林雅之教授を迎えた。

 若月さんは、公立学校に通う小中学生の教育費は、塾の費用を除いても1人当たり年間約40万円で、10年前から3割増加していると報告。国の就学援助が縮小傾向にあり、「高齢者と比べ、子どもや若者への財政支出ははるかに手薄。家庭の負担感は増している」と訴えた。品川区では3割の児童が公立中学校へ進学をせず、家計への負担が大きい私立中学校に流れているという危機感から学校選択制を導入した経緯を語った。

 教育費の分析や諸外国との比較をしている小林さんは「少子化の原因の一つは重い教育費の家計負担にある」と指摘した。日本では大学など高等教育費の負担が重く、家計に占める割合は53%と世界一だったという。さらに成績上位生徒の場合、親が低所得でもあっても、家計から無理をして教育費をねん出している実態が明らかにされた。小林さんは奨学金制度について触れ、現状では規模や変換方法などに課題が少なくなく、授業料とセットの改革▽所得連動型ローンや教育減税などの施策▽一人ひとりに応じたきめ細かな対応--が必要で、「親子とも教育費や奨学金に関する知識や活用力をつけ、人生設計に生かせるよう啓発するべきだ」と提言した。

 小渕担当相は「半分は大臣として、半分は子どもの親として聞いていたが、教育費については頭が痛いなあと思った」と漏らした。また「昔の人は『金がなくても子は生まれ育つ』と言うけれども、今の子どもや若者が抱える問題は確かにあり、学力や経済の『負の連鎖』も明らか。国として予算配分をしていかなければならない」と語った。少子化対策PT関連では、20日に大学生との討論会「アラハタ世代と考える恋愛、結婚、仕事、出産、子育て」、26日には「家庭・地域・まちづくり」をテーマに第8回会合が行われる。【浜田和子】

【関連リンク】

ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム
【動画】
小渕担当相の冒頭あいさつ「どう考えても1人では子どもを育てにくい」

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少子化対策PT:
第6回/世界的にも日本の母子家庭は貧困 父子家庭も困窮

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第6回少子化PT会合であいさつする小渕優子少子化担当相

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第6回少子化PT会合に出席したメンバーや有識者ら

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第6回会合が21日、内閣府で開かれた。「一人親家庭と子どもの貧困」をテーマに、現状と問題を議論し、将来施策への提言を話し合った。会合のあと、不景気に伴う保育所の待機児童急増を受け、早急な対策などを求める緊急アピールを発表した。

 PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香澄さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。このほか有識者として、貧困について詳しい国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩・国際関係部第2室長、母子家庭などの連絡協議機関としての歴史をもつ財団法人全国寡婦福祉団体協議会の吉村マサ子会長、児童扶養手当に詳しいNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石千衣子理事、母子家庭の住宅支援などをしているNPO法人Winkの新川てるえ理事長、離婚に詳しいハンド・イン・ハンドの会の向井通江・主任研究員が出席した。

 阿部さんは、日本の母子家庭の貧困率は世界的に見ても極めて高い▽子どもの7人に1人が貧困--と提示。「子どもが生まれても不幸せな状態ではかわいそうだ」と訴えた。吉村さんは母子家庭が全国に約123万世帯あり、平均所得213万円(06年度調査)と厳しい生活を強いられていること▽未婚の母子家庭が増加し、特に沖縄県では1割が未婚であること--などを明らかにし、「さまざまな団体との連携が必要だ」と述べた。赤石さんは、貧困は金銭面だけでなく、時間・教育・健康などでも問題に直面するとして、児童扶養手当の改善と雇用対策が急務であると強調した。新川さんは離婚支援、母子家庭の住宅支援などの経験から、「児童扶養手当と養育費との関連性を撤廃してほしい」など実情に即した政策を要望した。向井さんは、経済支援は欠かせないが、養育費の履行が確保される制度も必要だと提案した。

 メンバーの安藤さんは、「一人親家庭には父子もいるのに『母子家庭等』の『等』などと差別される。父子家庭にも理解と支援を。母子家庭のみなさんとも連帯したい」と声を上げた。

 小渕担当相は、「一人親家庭は将来的には増えていくと思う。困窮家庭が増えないよう、抜本的に考えなければならない。母子家庭と父子家庭を平等にしたいが、そうすると年金制度から何から全体をやらないといけない」と述べ、厳しい表情で対応の難しさを語った。次回第7回会合は5月12日、「学校教育」をテーマに行われる。【浜田和子】

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ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム
【動画】
小渕担当相の冒頭あいさつ「どう考えても1人では子どもを育てにくい」

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少子化対策PT第5回:
保育施設 利用者の立場での充実を

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少子化PTの第5回会合に出席した小渕優子少子化対策担当相(左から2人目)=内閣府で

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少子化PTの第5回会合に出席した(左から)「JPホールディングス」代表取締役・山口洋さん、「遊育」代表取締役・吉田正幸さん、白梅学園大教授の無藤隆さん=内閣府で

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第5回会合が7日、内閣府で開かれた。「保育・幼児教育」をテーマに、幼稚園・保育園・認定子ども園の現状を確認し、将来施策への提言を話し合った。

 PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香澄さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。このほか有識者として、幼児教育に詳しい白梅学園大教授の無藤隆さん、幼児教育・保育専門誌を発行する「遊育」代表取締役・吉田正幸さん、保育園・学童・児童館を運営する「JPホールディングス」代表取締役・山口洋さんが出席した。

 幼児教育の今後について無藤さんは、「3歳以上の集団教育は1日4時間まで無償化すべきだ」と提案。(1)幼児教育の経費は親にとって大きな負担(2)幼児教育は公共性が高い--ことを挙げた。また幼児教育の質の向上も不可欠だとして、保育者養成課程の4年制大学化▽情報を保護者と共有し親の子育て力の向上--なども培う必要があると述べた。

 幼稚園機能と保育所機能を一元化した「認定こども園」は、再来年までに国は2000園以上を目指しているにもかかわらず、昨年4月時点で229園にとどまっている。この点について吉田さんは「財政支援が少なくデメリットが多いから。幼稚園の預かり保育や3歳未満児への対応、保育所の幼児教育などを進めることで、機能面における一元化が可能だ」と提案した。また「国による財政支援だけでなく、家庭や地域の子育て機能を高めることも重要だ」と強調した。

 山口さんは「少子化と保育所数は密接にかかわっているが、働く時間帯や曜日の多様化に現状の保育所は対応しきれていない。これは運営が社会福祉法人や自治体に独占されていたために競争がなく、利用者を顧みず事業者本位になっていたからだ」と批判。夜間や休日などのニーズの受け皿になっている認証・認可外保育所への財政支援を求めた。これらを実現するため、多様な事業主体の参入と、保育士の増員を図るためには待遇や社会的地位の向上も必要だと訴えた。

 会議の冒頭、「きょう子どもが熱を出して(保育園に預かってもらうのに)どうしようかと思った」と働く親の綱渡り生活をぽろりとこぼした小渕少子化相。経済状況が悪くなっている今、ますます働きに出る人が増え、保育園が必要になっているとして、「いろんな業種が参入するのもいいのではないか。保育に関しては(子どもの数が多いとされる)この2~3年が勝負。私は3年後に消費税が上がるなら『消費税の1%分を子ども(関係の施策)にくれ』と言っている」と述べた。

 次回第6回会合は21日、「一人親家庭と子どもの貧困」をテーマに行われる。【浜田和子】

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少子化対策PT第4回:
ワーク・ライフ・バランスは「働くすべての人の問題」

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(左から)連合の古賀伸明さん、経団連の輪島忍さん、川本裕康さんを招いて行われた少子化対策PTの第4回会合=内閣府で

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第4回会合が24日、内閣府で開かれた。「ワーク・ライフ・バランス(WLB)/働き方/父親の子育て支援」をテーマに、仕事と生活のバランスをとるための制度や社会的意識について話し合った。

 PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香織さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。この日は連合事務局長の古賀伸明さん、日本経団連常務理事の川本裕康さん、同労働基準グループ長兼安全・衛生グループ長の輪島忍さんが有識者として出席した。

 まず佐藤さんが、WLBは「ほどほどの働き方ではなく、メリハリのある効率的な働き方」「少子化対策ではなく、すべての社員のため」など、「労使とも数多くの誤解を抱いている」と指摘。さらに「従来型」の働き方は「男性フルタイム社員」を想定していたが、「男女問わず多様なニーズに即した多様な働き方の開発が求められる」と述べた。

 次に松田さんが、非正規雇用者のWLBについて説明した。パートやアルバイト、契約社員など非正規雇用という働き方が社会に定着・拡大しているなか、収入が低く雇用が安定しないため、若者は結婚や出産をためらっているという意見とを紹介。育児休業や育児休業中の所得補償などを非正規雇用者も安心して受けられるようにすれば、雇用上の不安もなくなり、少子化対策につながるとして、「正規だけでなく、非正規も視野に入れたWLBを推進することが課題だ」とまとめた。

 また、安藤さんは「WLBは早く帰ることが目的ではなく早く帰って何がしたいかが重要。若い世代は家事・育児を共同でやろうとしているが、会社や上司の理解が不足している。男女の役割分担という考え方は変化しており、仕事か家庭かではなく、仕事も地域活動も家庭生活も行う『寄せ鍋』的な生き方をみんな目指してほしい」と訴えた。

 川本さんは、経団連はさまざまな取り組みはしていると紹介したうえで「有期契約者への支援については見てこなかったが、調査・検討したい」と述べた。また、連合の古賀さんは「WLBは子どものいる人や女性に限った問題ではなく、働いている人すべて、とくに男性の問題だと改めて認識した。手が回っていなかったところは見直したい」と述べた。

 小渕担当相は、「WLBの重要性は認識していても、実態はなかなか進んでいない。国として何をやっていけばいいのかを考えたい。WLBは子育ての問題だけではなく、『親の死に目に会いたい』など、生活のすべてにかかわることだと思っている」と述べた。

 次回第5回会合は4月7日、「幼児教育・公教育」をテーマに話し合われる。【浜田和子】

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少子化対策PT:
第3回詳報 
「不妊センター設置を」「家族計画を教育に」(1/3ページ)

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少子化対策PTの第3回会合に識者として出席した(左から)不妊に悩む人のための自助グループ「フィンレージの会」スタッフの鈴木良子さん、国立成育医療センター周産期診療部不妊治療科の斉藤英和医長

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第3回会合が9日、内閣府で開かれた。不妊治療の実態を知り、少子化問題とかかわりがあるのかどうか検討した。この日は不妊治療の医療現場にいる国立成育医療センター周産期診療部不妊治療科の斉藤英和医長、不妊に悩む人のための自助グループ「フィンレージの会」スタッフの鈴木良子さんからのヒアリングと、プロジェクトチームメンバーとの質疑応答があった。

 PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香織さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。この日の進行は勝間さんが務めた。

 ◇ますます必要な生殖補助医療


 斉藤さんは、晩婚化▽子宮内膜症の増加▽乏精子症・無精子症の増加▽性感染症の増加--などから「生殖補助医療がますます必要とされている」と説明。現状、個人クリニックで顕微受精など高度な治療を受ける人が8~9割だが、不妊治療は体の状態で行うため土日祝日も診療ができる体制▽カップルに十分な時間をかけ心のケアに配慮した診療体制▽なかなか妊娠に至らない難治患者に対し最適な戦略を立てられる体制--が本来は求められていると述べた。さらに、研究の必要性や治療内容・技術の標準化を図るうえでも、公的な不妊専門センターを設立し、理想的な不妊治療体制を整えるべきだと提案した。

 斉藤さんはまた、全初婚妻に占める35歳以上の妻の割合は、1950年は約1%だったが90年には約3%、2006年には約8%となり、分娩(ぶんべん)年齢調査では35~39歳の割合が80年は約4%だったが06年は約16%に増えたと紹介。「20代の後半から妊娠率は下がるということを知らず、年をとってから焦って来院する人が少なくない。年齢が上がると母胎にも負担がかかり、病気や障害をもって生まれる赤ちゃんも多くなる」と報告した。

 鈴木さんは、不妊治療を続ける苦しさ・つらさは、外からも心の内からも発生すると説明。「お子さんは?」などと聞かれたり「子どもを生み育てるのは国民の義務だ」などと言われる悲しさ、「自分は劣っているのでは?」「パートナーに申し訳ない」などの悩み、「預金を取り崩した」「仕事と病院通いの両立が難しい」などの生活上の課題など、社会的な意識・制度の未熟さを指摘した。さらに、不妊治療=少子化対策ととらえるのではなく、家族政策や労働政策、科学技術政策、医療政策にも深くかかわっていると強調した。

2009319

少子化対策PT:
第3回詳報 
「不妊センター設置を」「家族計画を教育に」(2/3ページ)

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少子化対策PTの第3回会合でコーディネーターを務めた経済評論家の勝間和代さん。右は小渕優子少子化対策担当大相。

 ◇男性への対応の難しさ

 斉藤さんの話を受けて宮島さんが「公的な医療体制がとりにくい理由」を尋ねたところ、斉藤さんは「不妊治療に取り組むには泌尿器科や心理カウンセラー、胚の培養士などの体制が必要だが、人数的に予算化されていない。公立の施設は異動も頻繁で継続診療が難しい。現在は産科医療の崩壊がいわれ、どちらかと言えば産科を優先しないといけない」ことを挙げた。

 イギリスは地域基幹病院が体外受精などを行っているが、認可制のため技術力や治療方針が標準化されているという。日本では認可制ではないため産婦人科医はだれでもできることから、鈴木さんは「クリニックにより治療内容や方針にばらつきがある。納得できなかったりうまくいかないと転院し、検査を最初からやり直す無駄も生じる」と指摘した。

 松田さんは「そもそも課題が多いのは、社会構造が弱いからといえるのでは。まずは産みたいときに安全に産める▽早い段階から妊娠について知識を得る。次に不妊の人には手厚い治療をするべきなのではないか」と発言。鈴木さんはうなずきつつも「不妊-妊娠-分娩-子育て、という流れがある。実はすべてに手厚い補助が必要ではある」と持論を述べた。

 ワークライフバランスの推進や父親の育児を提唱している安藤さんは「日本人は労働時間が長い。働き方の見直しと不妊とは相関関係があるのか。男性側への対策は」と質問。斉藤さんによると、不妊の原因はおおむね男性女性半々で、男性の場合は「労働環境のストレスが原因ということもある」という。鈴木さんは「フィンレージの会でも男性不妊のサークルを作ったが、来たのは妻ばかりだった。精神的ショックもあるだろうが、夫はなかなかしゃべりたがらない。妻に心身の負担をかけているからと口出しをしない夫もいるようだ」と男性側のケアの難しさを挙げた。斉藤さんも「『タバコを控えた方がいい』とか一般論は言えても、個人個人の内面に踏み込む話は難しい。積極的に病院に来ない人への対応はもっと難しい」と重ねた。

2009年3月19日

少子化対策PT:
第3回詳報 
「不妊センター設置を」「家族計画を教育に」(3/3ページ)

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(左から)不妊に悩む人のための自助グループ「フィンレージの会」スタッフの鈴木良子さん、国立成育医療センター周産期診療部不妊治療科の斉藤英和医長を招いて行われた少子化対策PTの第3回会合=内閣府で

 ◇補助制度の見直し、教育機会の創設を

 小渕担当相は、「少子化対策といっても、昔のような『産めよ増やせよ』ではなく、子どもを持ちたいと思う人が持てるような社会にするため、国は現実的・具体的に何ができるのだろうということを考えたい」と述べた。国の支援=経済的支援が連想されやすいが、鈴木さんは「保存した受精卵は離婚したらどちらの所有になるのかなど、不妊治療には法的問題も絡む。またシングルの人への支援なども必要だ」と訴えた。

 厚生労働省の02年度の調査によると不妊治療患者数は推計46万6900人。人工授精1回あたりの平均治療費は1万円、体外受精は30万円、顕微授精は40万円かかる。経済的負担の軽減のため「特定不妊治療費女性事業」による補助金制度があり、「給付期間は通算5年」「所得制限は730万円」などと定められているものの、「所得制限は外したらみんなが恩恵を受けられる」「所得の低い人により手厚くなるようさらに制限所得額を下げたらどうか」「治療回数や期間は個々に任せられないか」などの多様な意見が出た。

 さらに、不妊治療や家族計画について社会全体の意識が低いことから、「卒業や就職と同じころに教育できないか」「テレビコマーシャルでさまざまな切り口で伝えられないか」などの発案があり、方法はともかく、早期に知識を与えたり人生設計について考えさせる機会を設けるべきだとの総意となった。

 次回第4回会合は3月24日、「ワークライフバランス・父親の育児参加」がテーマ。全5回で、最終回は4月7日、「幼児教育・公教育」をテーマに話し合われる。【浜田和子】

2009年3月19日

少子化対策PT:
「妊娠率、20代後半から下がる」早期教育必要 第3回会合

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(左から)不妊に悩む人のための自助グループ「フィンレージの会」スタッフの鈴木良子さん、国立成育医療センター周産期診療部不妊治療科の斉藤英和医長を招いて行われた少子化対策PTの第3回会合=内閣府で

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第3回会合が9日、内閣府で開かれた。不妊治療の実態を知り、少子化問題とかかわりがあるのかどうか検討した。

 PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香織さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。この日は不妊治療の医療現場にいる国立成育医療センター周産期診療部不妊治療科の斉藤英和医長、不妊に悩む人のための自助グループ「フィンレージの会」スタッフの鈴木良子さんが有識者として出席、現状の課題と将来施策への提言を話し合った。

 斉藤さんは、少子化、晩婚化、子宮内膜症の増加、乏精子症・無精子症の増加、性感染症の増加、メタボリック症候群が進み、「生殖補助医療が必要とされてきている」と説明。現状の不妊治療は個人クリニックで受ける場合が大多数だが、研究の必要性や治療内容・技術の標準化を図るうえでも、公的な不妊専門センターを設立し、理想的な不妊治療体制を整えるべきだと提案した。また「20代の後半から妊娠率は下がるということを知らず、年をとってから焦って来院する人が少なくない。若いうちに人生設計を考えるような教育が必要だ」と訴えた。

 鈴木さんは、不妊治療を続ける苦しさ・つらさは、外からも心の内からも発生すると説明。「お子さんは?」などと聞かれたり「子どもを生み育てるのは国民の義務だ」などと言われる悲しさ、「自分は劣っているのでは?」「パートナーに申し訳ない」などの悩み、「預金を取り崩した」「仕事と病院通いの両立が難しい」などの生活上の課題など、社会的な意識・制度の未熟さを指摘した。さらに、不妊治療=少子化対策ととらえるのではなく、家族政策や労働政策、科学技術政策、医療政策にも深くかかわっていると強調した。

 小渕担当相は、「少子化対策といっても、昔のような『産めよ増やせよ』ではなく、子どもを持ちたいと思う人が持てるような社会にするため、国は現実的・具体的に何ができるのだろうということを考えたい」と述べた。

 厚生労働省の02年度の調査によると不妊治療患者数は推計46万6900人。人工授精1回あたりの平均治療費は1万円、体外受精は30万円、顕微授精は40万円。経済的負担の軽減のための補助金制度があるが、現在の所得制限が適当かどうかなど補助の内容を検討するべきだとの議論があった。さらに、不妊治療や家族計画について社会全体の意識も低いことから、早期教育・早期認識させる機会を設けるべきだとの意見も相次いだ。

 次回第4回会合は3月24日、「ワークライフバランス・父親の育児参加」をテーマに行われる。全5回で、最終回は4月7日、「幼児教育・公教育」がテーマ。【浜田和子】

2009年3月12日

少子化対策PT:
第2回詳報 
若年ワーキングプア対策を(1/3ページ)

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宮本みち子放送大学教授(左)、工藤啓「育て上げ」ネット理事長ら少子化対策PT第2回の出席者ら

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第2回会合が2月24日、内閣府で開かれた。テーマは「若者の雇用と自立支援」。就職難など若者の厳しい経済事情と少子化との関係を議論した。国内・海外の若者のライフスタイルに詳しい宮本みち子放送大学教授と、青少年就労支援NPO「育て上げ」ネットの工藤啓理事長からのヒアリングと、プロジェクトチームメンバーとの質疑応答があった。

 PTメンバーは、NPOファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、経済評論家の勝間和代さん、第一生命経済研究所主任研究員の松田茂樹さん、日本テレビ解説委員の宮島香織さん、東京大学社会科学研究所教授の佐藤博樹さん。この日の進行は松田茂樹さんが務めた。

 宮本さんは、主に北欧の政策と比較したうえで4点を提言。(1)若年ワーキングプアの防止=いかなる雇用状態になっても最低限の生活は守られる所得水準や制度の構築(2)職業訓練を受ける権利の確立=失業者中心ではなく、就学と就職の間を取り持つような普遍的な施策(3)共働きが可能な環境条件の整備=だれもがたやすく妊娠・出産・育児を乗り切れるような施策や社会的認知(4)若者総合政策=ピンポイント支援ではなく、ライフステージの中で長く広く安定したサポート--が必要だとした。

 工藤さんは、家庭環境や病気など複合的な事情がある若者や児童福祉法で保護されている年齢を超えた若者への支援が難しい▽若者を支援している者への支援も必要--などの課題を挙げたうえで、人的・金銭的・制度的なサポートが必要だが、きめ細かな視点や見直しをいとわない思い切りのよさも不可欠だとした。

2009年3月12日

少子化対策PT:
第2回詳報 
若年ワーキングプア対策を(2/3ページ)

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少子化対策PTで意見を述べる小渕優子少子化対策担当相(右)

 ◇教育機関への支援も

 2氏の話を受け、勝間さんから、「若年層は差別されている?」「若者の雇用・自立対策に予算をとるには?」と質問があった。

 宮本さんは「欧州ではあらゆる場面で若年層の意思を聞かなければならないという。法律で定められているところもある。日本の次のステップは、事業決定の際に若者の意見を聞くことだ」「欧州の福祉国家では、公的な資金のもと教育プログラムを運営している。日本で今後仕事に就けない若者が数百万単位で出てきた場合、すべてを親にゆだねてよいものだろうか」と述べた。

 続いて佐藤さんから「日本は学校を卒業したあと、そのまま職場に若者支援が引き継がれた。では中退者の対応は?」「宮本さんの調査を聞いて驚いたが、若者は共働きは普通と思っているようだが、出産したら妻は働き続けられないと考えているようだ。これはなぜか?」などの質問があった。

 工藤さんは「中退してしまうと追いにくくなるが、まず保健室登校の生徒に対して公的機関はサポートしてほしい」「育休制度は若い人はあまり知らないのでは。高校によっては、生徒を静かにさせるだけで10分かかったりする。働くことについて説明はしても、授業時間内で育休まで説明に踏み込む時間や余裕はない」と現場の厳しさを訴えた。

 一方、宮本さんは「フィンランドでは若者は職業安定所に登録するのが当たり前。職業高校の充実、職業学校に対する評価の高さも日本とは違う。日本は普通科が当たり前になっているが、実業系の学校をもっと評価するべきだ」「地方では仮に結婚して共働きしても、出産したら働けない。驚くほど産休・育休は進んでいない。不景気の中、正規・非正規の別なく環境はきわめて悪い」と紹介し、少子化の原因の一つに不景気があると指摘した。

 松田さんは「経済界は、支援はできるだけローコストでと思うかもしれないが、若者の雇用実現や自立までにお金も時間もかかるという。それはなぜか」と質問。

 工藤さんは「個々の性格も違い、慣れるまで時間がかかる子もいる。また、障害者でなくても病気や被虐待経験者、家庭環境の違いなどによっても、職場でできる作業とそうでない作業がある。いったん就職しても脱落しては元も子もない。働き続けられるようになるまで、長くサポートが必要な子もいる」と若者を一律にとらえることはできないと強調した。

2009年3月12日

少子化対策PT:
第2回詳報 
若年ワーキングプア対策を(3/3ページ)

 ◇地方も都会も厳しい

 安藤さんが「父親支援と若者支援は似ているところがある。父親は何をしているのだろう」と向けると、工藤さんは「就労相談に来る7割は母親。父親はほとんど来ない。来ても自分の意見を確認したり押し通そうとしたりする」と明かし、日本の父親は子どもに対する接し方や社会への導き方が不器用なのではないかと示唆した。

 地方の厳しさについてはさらに言及があった。宮本さんによると、地方では地元を出ていく人と出ない人の2種類がいる。出ない人には、生活状況が厳しくて出られない人と、希望の生活をしたいから出ないという人がおり、出ていく人には、親の所得が高く出られる人と、親の所得が低く出ていくしかない人がいるという。「地方へは雇用創出を含めた支援が必要だ」と宮本さんは重ねて主張した。

 雇用創出に関して、工藤さんは「都会でも雇用の食い合いがある。若者のための就労機会を作ろうとすると、シルバー人材センターなどと事業がぶつかる。シルバーと若者とがチームで活動できればいいのだが」と提案した。

 最後に小渕担当相は、(1)少子化対策はどちらかというと妊娠・出産が中心だったがそうでもないのではないか(2)若者支援は点ではなくライフステージのうえでとらえていく必要があるのではないか(3)若者支援は若者対象だけでなく支援者も対象に含めた包括的な支援が必要なのではないか(4)若者の実態を正確にとらえる必要があるのではないか--と述べ、「これまでの認識を改めないといけないことがわかった」と語った。【浜田和子】

2009年3月12日

少子化対策PT:
小渕担当相「ピンポイント支援ではダメ」認識改めた

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少子化対策のための若者雇用問題について述べる小渕優子少子化対策担当相(右)=内閣府で2009年2月24日

 少子化問題に取り組む「ゼロから考える少子化対策プロジェクトチーム(PT)」(主宰・小渕優子少子化対策担当相)の第2回会合が24日、内閣府で開かれた。結婚や出産をためらう理由の一つには、就職難や自立した生活が送れない経済事情が関係しているのではないか、という仮説を検証した。

 国内・海外の若者のライフスタイルに詳しい宮本みち子放送大学教授と、青少年就労支援NPO「育て上げ」ネットの工藤啓理事長から、現状の課題と将来施策への提言をヒアリングした。

 宮本さんは、主に北欧の政策と比較したうえで4点を提言。(1)若年ワーキングプアの防止=いかなる雇用状態になっても最低限の生活は守られる所得水準や制度の構築(2)職業訓練を受ける権利の確立=失業者中心ではなく、就学と就職の間を取り持つような普遍的な施策(3)共働きが可能な環境条件の整備=だれもがたやすく妊娠・出産・育児を乗り切れるような施策や社会的認知(4)若者総合政策=ピンポイント支援ではなく、ライフステージの中で長く広く安定したサポート--が必要だとした。

 工藤さんは、家庭環境や病気など複合的な事情がある若者や児童福祉法で保護されている年齢を超えた若者への支援が難しい▽若者を支援している者への支援も必要--などの課題を挙げたうえで、人的・金銭的・制度的なサポートが必要だが、きめ細かな視点や見直しをいとわない思い切りのよさも不可欠だとした。

 小渕担当相は、(1)少子化対策はどちらかというと妊娠・出産が中心だったがそうでもないのではないか(2)若者支援は点ではなくライフステージのうえでとらえていく必要があるのではないか(3)若者支援は若者対象だけでなく支援者も対象に含めた包括的な支援が必要なのではないか(4)若者の実態を正確にとらえる必要があるのではないか--と述べ、「これまでの認識を改めないといけないことがわかった」と率直に語った。

 次回第3回会合は3月9日、「不妊治療対策」をテーマに行われる。【浜田和子】

2009年2月26日
NPO IDO-Shien Forum