Social Security
社会保障の抑制限界


10年度社会保障:2200億円削減せず 財務相が明言

2009622 2152分 更新:622 2311

 10年度当初予算の大枠となる概算要求基準(シーリング)で、社会保障費の自然増分から2200億円を削減するとの従来の目標が、削除される見通しとなった。与謝野馨財務・金融・経済財政担当相が22日、自民党執行部に「来年度は削減はしない」と明言した。社会保障費の削減は、政府の歳出改革の柱の一つだったが、衆院選を控えた与党の圧力で棚上げされることになった。公共事業など他分野の歳出削減方針にも影響を与えそうだ。

 政府は06年に策定された、歳出や歳入改革の道筋を示す「骨太の方針06」に基づき、毎年の概算要求基準で、医療や年金などの社会保障費が少子高齢化などで自然に増加する分から、2200億円を削減することを明記してきた。しかし、09年度当初予算で実際に削減できたのは230億円にとどまり、残りは道路特定財源などから削減分の財源を手当てするなど、「一律的な削減は限界に来ている」との声が与党内から強まっていた。

 現在、与党内で調整中の「骨太の方針09」は来年度予算の方向性について、「骨太の方針06等を踏まえ歳出改革」と明記。政府はこれまでの歳出削減の姿勢は維持しつつも、予算の「特別枠」を設定し、社会保障費などに重点配分を図ることで与党の理解を得ようとした。

 しかし、「2200億円を削減しないことを明確にすべきだ」とする自民党内の反発は強く、22日の自民党臨時総務会でも骨太の方針の了承が得られなかった。このため、与謝野財務相が来年度予算については削減しないことを確約。23日に了承され、閣議決定される見通しだ。【平地修】


社会保障費:抑制に反対論 「骨太」了承見送り--自民総務会

 自民党は19日の総務会で、政府の経済財政諮問会議が示した「経済財政運営の基本方針」(骨太の方針2009)の原案について協議した。社会保障費の自然増を毎年2200億円抑制する財政健全化目標への反対論が相次ぎ、同日の了承を見送った。今後、笹川尭総務会長が意見調整をし、22日に改めて総務会を開く。

 総務会では尾辻秀久参院議員会長や津島雄二党税調会長らが、社会保障費の抑制方針について「医療の崩壊はすべてこれから始まっている」などと猛反発した。

 保利耕輔政調会長が「来年度予算の概算要求基準で2200億円の削減を行わないと、政治生命をかけて約束する」と理解を求めたが、議論はまとまらなかった。

 これに関連し、自民党の細田博之幹事長は総務会後、「医療費や社会保障費を増やせという時代になっているのだから、合わせた方がいいんじゃないか」と記者団に述べ、骨太09の文案修正が必要との認識を示した。【山田夢留】

毎日新聞 2009620日 東京朝刊


社会保障費:抑制方針の撤回強調自民・園田氏

 自民党の園田博之政調会長代理は12日夜、TBSの報道番組に出演し、社会保障費を07~11年度に毎年2200億円削減する政府方針について「削減は限界で、来年度予算ではないと思う」との見通しを示した。来年度予算編成をにらみ、社会保障費の抑制方針を撤回すべきだとの考えを強調したものだ。

 政府の経済財政諮問会議が示した「経済財政運営の基本方針」(骨太の方針2009)の素案は、社会保障費について「骨太06を踏まえ」との一節が入っている。骨太06は07~11年度に社会保障費の伸びを毎年2200億円ずつ削減する目標を掲げており、この路線を来年度予算でも続けると読める。

 このため、自民党内から「日本医師会などの反発を招き、党の支持基盤が揺らぐ」などと反発が続出。園田氏は同番組で「骨太06には、そのときの経済や社会状況に応じて柔軟に対応する弾力条項がある。今まさにそういう時だ」と説明した。ただ、「全体の削減計画は続ける」と述べ、歳出削減路線は続ける方針を強調した。【野原大輔】

毎日新聞 2009612日 2222


骨太の方針:素案 消費増税12%に、社会保障費削減 与党内、異論続々

 ◇「選挙にならない」


 自民、公明両党は10日、政府の経済財政諮問会議が示した「経済財政運営の基本方針」(骨太の方針2009)の素案について、議論を始めた。社会保障費の削減方針や消費税率引き上げの試算に、反対論が続出。政府は23日に骨太09を正式決定する方針だが、次期衆院選のマニフェスト(政権公約)にも反映されるだけに、選挙戦への危機感を強める与党との調整は難航しそうだ。【近藤大介】

 「選挙にならなくなるのは目に見えている。この場で文言を消してくれ」

 自民党の尾辻秀久参院議員会長は10日の党政調全体会議で、社会保障費抑制路線の撤回を求め、党政調幹部を怒鳴り上げた。

 骨太09は、社会保障費抑制を10年度予算でも続けると読める。07~11年度に社会保障費の伸びを毎年2200億円抑える骨太06を踏襲した格好だが、尾辻氏ら厚生族は、これでは日本医師会などの反発を招き、党の基盤が揺らぐと懸念している。

 園田博之政調会長代理は財源論があいまいな民主党との差別化を図る観点から「一つの基準を捨てることは党にとって大きなマイナスだ」と理解を求めた。しかし「関係者のアレルギーはすごい」(清水鴻一郎衆院議員)などの指摘が相次いだ。

 同日は、消費税率12%の引き上げが必要と指摘した内閣府の試算にも「選挙に関係ないから言えるんだ」(柳沢伯夫党税調小委員長)との不満が噴出。公明党政調全体会議でも「歳出改革も不明確なのに、消費税の試算を出すのは無責任だ」「引き上げは社会保障の安定のためなのに、財政健全化にすり替わっている」などの慎重論が続いた。

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 ◆政府の財政健全化目標◆
10年度   骨太06を踏まえ、歳出改革を継続
11年度   景気回復を前提に消費税率をアップ
13年度まで 基礎的財政収支の赤字をGDP比半減
10年代半ば 債務残高のGDP比を安定化
19年度まで 基礎的財政収支を黒字に
20年代初め 債務残高のGDP比を引き下げ

毎日新聞 2009611日 東京朝刊


財政審建議:「歳出改革維持を」社会保障費の抑制など

 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は3日、10年度予算編成に向けた建議(意見書)を与謝野馨財務・金融・経済財政担当相に提出した。金融・経済危機に対応した大規模な経済対策で「我が国財政は極めて危機的な状況」と指摘。歳出・歳入一体改革による財政健全化への道筋を示した06年の「骨太の方針」の重要性は「一層高まっている」として、更なる健全化努力を促した。

 政府はこれまで、財政再建目標として、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を11年度までに黒字化させる目標を掲げてきたが、建議は「達成困難になった」と指摘。「新たな決意を持って財政再建に取り組むべきだ」として、改めて黒字化達成への道筋を示し、早期実現を図るよう提言した。

 10年度予算については「経済情勢にも対応しつつ、『骨太の方針06』の歳出改革を維持していくことが必要」として社会保障費の抑制などの取り組みを堅持することを求めた。

 また各論では、医師不足や病院勤務医の厳しい勤務実態が問題化している医療に重点を置き、各地域や診療科ごとの医師の適正配置の必要性を指摘。10年度に改定される診療報酬については、景気悪化で落ち込む民間の賃金や物価の動向を踏まえ、抑制を促した。【平地修】

 ◇財政審建議の骨子◇

・我が国の財政は極めて危機的な状況
・11年度までのプライマリーバランス黒字化目標は達成困難
・債務残高対GDP比の上昇を止め、安定的な引き下げが必要不可欠。そのためにはプライマリーバランス黒字化の早期実現を
・(消費税増税などを含む)税制抜本改正の中期プログラムを実行していくことが必要
・10年度予算編成は、骨太方針06の考え方を踏まえた歳出改革を維持すべきだ
・医師偏在への対応として診療報酬配分の見直し、医師の適正配置などに早急に取り組む
・地方財政は地方間の税収格差是正の仕組み拡充が不可欠。これ以上国に依存すべきでない
・成長力強化のため、大学の「質」の向上と、定員など「量」の抑制が急務
・農地集積による規模拡大を進めるべきだ
・官民給与の実態を踏まえた公務員の給与水準の見直し検討を

毎日新聞 200963日 1908



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