【セイフティネット:社会保障費の抑制目標:メディア報道から】

社会保障費の抑制目標、撤回求める決議 自民厚労部会

 自民党の厚生労働部会などは27日、毎年2200億円ずつ社会保障費の伸びを抑制するとした政府目標について、09年度予算では撤回するよう求める決議をした。「医師不足や少子化への対応で国民負担をお願いしなければならない時に、さらに社会保障の削減を行うことは理解が得られない」としている。

 社会保障費の抑制政策は02年度から7年間続いており、09年度も雇用保険の国庫負担廃止や、介護保険利用時の自己負担率引き上げなどの案が浮上している。だが、抑制が医師不足や介護労働従事者の待遇悪化などのひずみを生んだとの指摘が与野党双方から続出。自民党の尾辻秀久・参院議員会長も26日の会見で「乾いたタオルを絞っても水は出ない」と発言し、抑制策に反対意見を表明していた。

 27日の合同会議では、「縦割り行政やムダを見直す余地がまだある」など抑制継続を主張する意見も出たが、「これ以上の抑制は取り返しのつかないことになる」などの意見が大勢を占めた。

 政府は09年度予算の方向性を定めた「骨太の方針08」を6月中にまとめる予定だが、抑制継続が盛り込まれるかが焦点となっている。

社会保障費抑制、政府方針「もう限界」 公明から相次ぐ

 社会保障費の伸びを毎年度2200億円ずつ抑制する政府の方針について、公明党議員から18日、相次いで見直しを求める声が上がった。高木陽介広報室長はテレビ朝日の番組で「基礎的財政収支を11年度までに黒字化するための聖域なき削減で削ってきたが、限界に来ている」、坂口力元厚生労働相もフジテレビの番組で「もう限界に来ている」と述べた。一方、自民党社会保障制度調査会の大村秀章医療委員長は同じ番組で「財政再建路線は放棄できない」として、政府方針を堅持すべきだとの考えを示した。

社会保障抑制見直し「検討中」 首相

 福田康夫首相は26日、年間2200億円の社会保障予算の抑制目標見直しについて「検討中と言うしかない。社会保障費の膨張(抑制)へ工夫しなければならない一方で、必要なものを削ることはできなくなりつつあると皆さんが思っているので、十分配慮しながら決めなければならない」と記者団に述べた。

社会保障費の伸び2200億円抑制、09年度の見送り決議・自民部会

 自民党の厚生労働関係合同部会は27日午前、社会保障費の伸びを毎年2200億円抑制する政府の目標について、2009年度は実現を見送るべきだとする決議をまとめた。会合では「社会保障費の抑制は医療の崩壊につながる」「欧州に比べ日本の社会保障の予算規模は小さい」などの発言が相次ぎ、社会保障財源として消費税増税を求める声も上がった。

 衛藤晟一厚労部会長は記者団に「これ以上の圧縮は不可能で社会保障のひずみを見直すべきだ」と述べた。一方、若手議員には「今の社会保障は非効率でまだまだ削減できる」など、抑制目標を堅持すべきだとの意見もあった。

社会保障費 財務省と厚労省が攻防…2200億円めぐり

 自民党社会保障制度調査会など三つの合同部会が27日、社会保障費の伸びを抑制する政府方針の撤回を決議したことで、09年度予算編成での社会保障費に関する攻防の幕が開いた。医師不足などを理由に、抑制方針撤回を訴える厚生労働省や厚生族議員に対し、財務当局は方針を貫く構えだ。6月末に固まる政府の基本方針「骨太の方針08」に、抑制方針の継続を盛り込むかどうかで、両者の対立は激しさを増している。

 同調査会の決議文は、09年度に基礎年金の国庫負担割合を50%へ引き上げるため「税制抜本改革」を行う必要があるとし、「新たな国民負担をお願いしなければならない時に、更なる社会保障費の削減は理解が得られない」と指摘した。年末には消費税率のアップを決めなければならないのに、福祉サービスを削れるはずがない、というわけだ。舛添要一厚労相も閣議後会見で、「医療費の削減努力は限界に近い」と述べた。

 高齢化に伴い、社会保障費は毎年7000億〜8000億円増えている。構造改革路線を掲げた小泉政権は02年度以降、診療報酬や生活保護費をカットして、ほぼ毎年、伸び幅を2200億円抑えてきた。同政権で最後となった「骨太の方針06」では、07〜11年度の5年間でさらに1.1兆円(年平均2200億円)削る方針を打ち出した。

 ただ、7年に及ぶ抑制策は、産科医不足による患者の搬送受け入れ拒否など、地域医療の崩壊を招いたとされる。警鐘を鳴らしてきた自民党の尾辻秀久参院議員会長は、25日の講演で「今年の骨太の方針で(抑制策に)触れさせてはいけない。命がけの勝負をする」と“宣戦布告”した。

 それでも、額賀福志郎財務相は27日の会見で、「財政健全化の道筋が揺らぐことがあれば、日本の信頼を失う」と強調。厚生族の動きをけん制した。

 具体的な抑制策として、財務省は介護保険の自己負担増などを挙げるが、メーンに想定するのは、失業給付に充てる雇用保険の国庫負担(08年度1600億円)の全廃だ。雇用情勢の改善で失業給付が減り、08年度の積立金は5兆円に達する見込み。国庫負担を廃止しても問題はない、と同省はみる。

 厚労省は、07年度に国庫負担を半減したばかりとあって強く抵抗するが、雇用保険の国庫負担については06年7月、「07年度に廃止を含む見直しを行う」方針が閣議決定されている。このため財務省は「情勢に変化はない」と、全廃を迫る方針だ。【吉田啓志】

 ■骨太の方針06に基づき、07年度予算以降伸び幅を削減してきた社会保障分野(09年度は検討項目)
 07年度 2200億円=▽雇用保険への国庫負担削減(1800億円)▽生活保護の母子加算の段階的廃止(400億円)
 08年度 2200億円=▽診療報酬(薬価)削減(660億円)▽後発医薬品の使用促進(220億円)▽政府管掌健康保険の国庫負担削減(1040億円)▽その他(280億円)
 09年度 ? 円=▽雇用保険の国庫負担廃止1600億円▽介護保険の自己負担割合引き上げ700億円

社会保障費 自民部会、抑制方針に反対決議

 自民党の社会保障制度調査会など厚生労働関係の議員らで構成する三つの合同部会は27日午前、毎年社会保障費の伸びを2200億円ずつ抑えてきた政府方針について、09年度に関しては「削減は行うべきではない」とする決議案をまとめた。近く福田康夫首相に提出する。今後本格化する予算編成に向けて、政府・与党内での攻防が激化しそうだ。

 政府は財政再建のため、07〜11年度の5年間で社会保障費の伸びを1兆1000億円(毎年平均2200億円)抑制する方針。ただ、医師不足などを背景に、舛添要一厚労相は2200億円抑制策の撤回を求めるなど、政府内でも公然と異論が出ている。抑制方針の継続を、政府が6月にまとめる「骨太の方針」に盛り込むか否かが焦点となっている。

 決議文は、09年度から基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるためには、「税制抜本改革」を行う必要がある点を指摘。「新たな国民負担をお願いしなければならない時にさらなる社会保障費の削減は理解が得られない」としている。【佐藤丈一】

<NHK>5月27日 13時13分
自民 社会保障抑制の撤回決議

27日に開かれた自民党の社会保障制度調査会などの合同会議で、来年度の予算編成では、社会保障費の伸びを毎年度2200億円ずつ抑制する方針を改めるよう政府に求める決議をまとめました。

政府は、財政健全化を進めるため、2011年度までの5年間、社会保障費の伸びを毎年度2200億円ずつ抑制する方針を掲げていますが、舛添厚生労働大臣や自民党の伊吹幹事長らが見直しを求めるなど、来月に予定されている政府の経済財政運営の基本方針、いわゆる「骨太の方針」でこの方針を維持するかどうかが焦点となっています。

これについて自民党の社会保障制度調査会や厚生労働部会などは27日、合同会議を開いて対応を協議しました。この中で出席者からは「社会保障の非効率な部分を正す努力を続けるべきで、抑制方針は貫くべきだ」という意見も出されましたが、「医療や介護の現場は限界にきており、むだを省くだけで解決できる状況ではない」といった意見が相次ぎ、来年度の予算編成では、社会保障費の伸びを抑制しないよう政府に求める決議をまとめました。

決議では、来年度に基礎年金の国庫負担の割合を現在の3分の1から2分の1に引き上げるためには税制の抜本改革が必要で、国民に新たな負担を求めるときに社会保障費を抑制することには到底理解が得られないとしており、合同会議では、決議に盛り込んだ内容を近く政府に申し入れることにしています。

これに関連して舛添厚生労働大臣は、閣議のあと記者団に対し、「介護や医療など社会保障の現場は限界に近くなっている。社会保障費の削減努力は相当やってきており、さらに抑制することがいいのかどうか。国民の生命を守るためにきちんと予算をつける必要があり、くふうすることができるかどうか議論して知恵を働かしたい」と述べました。

一方、額賀財務大臣は、閣議後の会見で「政府の財政健全化の方針が揺らげば世界の信頼を失う。社会保障費の伸びを年に2200億円抑制する方針を掲げた2006年の骨太の方針の枠組みは堅持する必要がある」と述べ、財政健全化の観点から、社会保障費の伸びの抑制はこれまでどおり続けるべきだという考えを示しました。

<時事通信>5月27日13時2分配信
社会保障費の削減に反対=09年度予算で−自民部会

 自民党の厚生労働部会や社会保障制度調査会などの合同会議は27日、2009年度予算での社会保障費削減に反対する決議をまとめた。政府が6月に策定する「骨太の方針」を見据え、社会保障費の抑制方針からの転換を求めるのが狙い。

 決議は、医師不足への対応や介護労働者の人材確保、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引き上げといった課題を挙げて、「安定的な社会保障財源の確保に向けた検討と併せて、所要の予算の確保を図るべきだ」などと指摘している。同調査会の鈴木俊一会長は会合後、「(社会保障費に)キャップをかぶせるシーリングは限界に来ている」と述べた。

<共同>2008年5月27日 11時06分
社会保障費抑制は限界 自民部会、転換求め決議

 自民党の厚生労働部会と厚労関係2調査会は27日午前、来年度予算編成に関し、社会保障費の伸びを年2200億円ずつ圧縮する政府目標はもはや達成困難だとして、抑制路線からの転換を求める決議をまとめた。

 近く本格化する今年の「骨太の方針」づくりや概算要求基準(シーリング)に反映させるよう、政府に働き掛けを強めていく方針だ。

 これに関連し、舛添要一厚生労働相は27日午前の記者会見で「医療費削減の努力は相当やっていて(抑制は)限界に近い。その一方で無駄を省くこととどうバランスを取るか、知恵を働かせたい」と述べた。

 自民党の部会などがまとめた提言は、社会保障予算が2002年度からの5年間で既に計1兆1000億円が削減された一方で、非正規雇用や医師不足、少子化対策などの課題が山積する現状を指摘。09年度に予定される基礎年金の国庫負担割合引き上げに伴い、新たな財源確保が必要な時に、社会保障費をさらに削減することは「国民の理解を到底得られない」と強調している。(共同)

<東京新聞>
スコープ 
社会保障費2200億円圧縮 『改革の象徴』 攻防が激化
東京新聞 2008年5月27日 紙面から

 二〇〇九年度予算編成をめぐり、社会保障費を毎年度二千二百億円ずつ圧縮する政府方針の見直しを求める意見が、与党内から相次いでいる。福田康夫首相は小泉政権からの「改革路線」を守れるのか−。社会保障費がその試金石となる。(清水俊介)

 高齢化の進展に伴う社会保障費の伸びを毎年度二千二百億円ずつ抑制することは、小泉政権時代の二〇〇二年度に始まった。

 小泉政権が最後にまとめた「骨太の方針2006」は、社会保障費を今後五年間で一・一兆円、毎年度二千二百億円抑制することを明記。政府・与党は〇七、〇八両年度の予算編成でこの方針を守った。

 しかし、政府・与党は、今年四月から始めた後期高齢者(長寿)医療制度で、国民の批判にさらされている。その上、社会保障費抑制を続ければ、給付減や負担増を引き起こし、反発がさらに強まるのは避けられない。

 「庶民の党」を自任する公明党や、自民党の厚生労働族議員は、圧縮方針を反故(ほご)にしたいのが本音で、公明党の北側一雄幹事長や自民党の尾辻秀久参院議員会長(元厚労相)は既に、圧縮方針の撤回は不可避との見方を相次いで表明。

 伊吹文明自民党幹事長が二十六日の記者会見で「国民の批判を受けて補正予算で見直すのなら、当初予算から政治主導できちんとしたほうがよい」と強調したのも、与党内の空気を反映したものだ。

 ただ、社会保障費の枠を外せば、公共事業や政府開発援助(ODA)でも、枠も外すように求める圧力が強まるのは必至。

 そうなれば、財政健全化のペースが落ち、一一年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化という目標達成は困難になる。

 このため、額賀福志郎財務相や大田弘子経済財政相らは圧縮方針の堅持を主張。

 歳出削減や経済成長を重視する「上げ潮派」の中川秀直元自民党幹事長も二十六日、札幌市内での講演で「首相は断固、骨太方針2006を守ると言っている」と、圧縮死守を宣言しており、「二千二百億円」をめぐる政府・与党内の攻防は激化しつつある。
(2008/05/27 20:18)

[ml-kitakyusyu:00144] 難病の会 山本 創
Date: May 29, 2008 10:49:55 PM JST
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