on the front line in the war on terror

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イラク:テロや戦闘の死者8.5万人 約5年間で

 【アレッポ(シリア北部)和田浩明】イラク人権省は13日、04~08年10月の約5年間にテロ行為や戦闘などで死亡したイラク人が8万5694人に上り、負傷者も14万7195人に及んだとの報告書を発表した。保健省の証明書が発行された死亡例を基にした数字で、実際の死者数はさらに多いとみられる。

 イラク政府が03年3月に始まったイラク戦争以降、テロなどで死亡、負傷した人数のまとめを公式に発表したのは初めて。AP通信によると、死傷者数は、イラク軍と警察、民間人の合計で、死者には子供1279人、女性2334人が含まれる。また、大学教授263人、判事21人、弁護士95人、ジャーナリスト269人も犠牲になった。このほか、約1万人の行方不明者がいるという。

 報道などを基にした民間推計では、03~08年11月に8万8000~9万7000人の民間人が死亡している。

 イラク戦争後、宗派・民族間の暴力的対立で一時は月間の死者数が3000人を超え、06~07年には内戦状態に陥った。その後、米軍が増派され、武装闘争を展開していたイスラム教スンニ派勢力が米軍に協力するなどし、治安は相対的に安定してきている。しかし、今もテロ行為は各地で毎日のように発生しており、14日にも首都バグダッドで発砲や迫撃弾攻撃により8人が死亡した。

毎日新聞 20091015日 1230分(最終更新 1015日 1336分)


質問なるほドリ:イラクの爆弾テロは、なぜ止まらないの?=回答・和田浩明

 <NEWS NAVIGATOR>

 ◆イラクの爆弾テロは、なぜ止まらないの?
 ◇宗派・民族間、続く対立 戦争で混乱、武器流入もやまず

 なるほドリ イラクで爆弾テロが後を絶たないね。

 記者 8月の死者は450人を超え、過去13カ月間で最悪でした。同月19日には首都バグダッドで政府機関が標的になり、約100人が死亡しました。中部や北部を主に、ほとんど毎日のように起きています。

 Q 以前と比較するとどう?

 A 06~07年ごろは月間の死者が民間人だけで3500人を超える月もありました。当時に比べれば確かに死者は減りました。6月末に駐留米軍の戦闘部隊が都市部から撤退しましたが、それはイラクとの協定に基づくほか、「治安が相対的に改善した」との判断によるものです。

 Q 最近のテロの特徴は?

 A 大まかに分けると2種類ですね。イスラム教シーア派やスンニ派、クルド人など、特定のグループを標的にして、宗派・民族間対立をあおり、イラクを内戦状態に陥れようとしているもの。それと、警備が比較的手薄なため攻撃しやすい地方で少数民族を狙ったものです。

 Q 誰の犯行なの?

 A イラク政府は、旧政権党で03年のイラク戦争後に解体されたバース党の残党や、国際テロ組織アルカイダを非難しています。8月のバグダッド中枢部のテロでは、シリアに逃れたとされる旧バース党幹部の関与が疑われ、身柄の引き渡しを巡ってイラクとシリアの外交問題に発展しました。シーア派武装勢力の活動も疑われています。

 Q なぜテロが続くの?

 A 宗派・民族間の政治的対立が続いているからです。少数派ながら旧フセイン政権では支配階層だったスンニ派と、多数派でイラク戦争後に政治力を大幅に拡大したシーア派が争っています。ほかにアラブ人主導の中央政府と、北部3県を統治するクルド自治政府の対立は、石油の権益や土地の帰属問題も絡んで「最大の不安定化要因」とみられています。

 Q 対話で解決できないの?

 A 各勢力とも努力はしています。しかし、イラクは多民族国家で宗派・民族間の暴力的対立が絶えずイラク戦争とその後の混乱で「暴力の文化」が強まったと指摘する専門家もいます。旧政権下で大量に蓄積され、流入が続く武器や爆薬も問題で解決は容易ではありません。(カイロ支局)

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 〒100-8051(住所不要)毎日新聞「質問なるほドリ」係(naruhodori@mbx.mainichi.co.jp

毎日新聞 2009915日 東京朝刊


重傷米兵:脳損傷52%にも イラクなど戦闘激化背景に

2009723 230

 【ワシントン大治朋子】イラクやアフガニスタンで重傷を負い、米軍最大の医療施設ウォルター・リード陸軍病院で治療を受けた米兵の52%が外傷性脳損傷(TBI)と診断されていることが、同病院脳損傷センターの調査で分かった。昨年末時点では33%で、TBIと診断される帰還兵の割合が半年間で急増した実態が明らかになった。

 検査態勢が向上して発見が増える一方、米紙によるとアフガンでは今年、TBIを起こすとされる手製爆弾での米兵の死者が46人にのぼるなど、攻撃も激化している。こうした負傷者も同病院に運び込まれている。同病院は、重傷を負ったり、他の病院で治療できない帰還兵らを受け入れる拠点施設。

 脳損傷センターによると、イラク戦争開戦直前の03年1月からこれまでに、両戦地で爆弾攻撃などを受け、同病院で治療を受けた米兵の52%がTBIと診断された。同センターが毎日新聞の取材に明らかにした資料によると、昨年12月末時点では33%(9100人)で、現時点での診断数は1万数千人以上とみられる。TBIと診断される帰還兵の9割以上が、頭部に目に見える外傷のないタイプ。手製爆弾攻撃などで超音速の爆風に伴う衝撃波(圧力変化の波)を受け、脳細胞が損傷されるのが原因とされる。

 米国防総省は07年11月、イラクとアフガンで従軍する米兵全員に計算など認識力検査を開始。検査済みの米兵は今年初めごろから徐々に帰還しており、検査を契機にTBI診断数が増えたとみられる。同省は今年3月、両地域に派遣された米兵の最終的に1~2割(18万~36万人)がTBIを発症すると推計していた。


イラク:バビロンの遺跡、米軍駐留で損壊 ユネスコ調査

 【カイロ和田浩明】イラク中部の古代都市バビロンの遺跡がイラク戦争後の米軍駐留などで大きく損壊していたことが、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の調査で明らかになった。ユネスコが9日に発表した報告書によると、遺跡の敷地内に多数の溝が掘られて未発見の埋蔵物が破壊されたり、重機などの使用で古代の寺院や路面が損害を受けた。報告書は、世界遺産登録を視野に損害の調査と修復を進めるようイラク当局に勧告している。

 バビロンはバグダッドの南約90キロに位置。世界最古の法典の一つを整備したハンムラビ王らが治めた。約5000年前の存在の記録が残っている。外壁内の面積は約10平方キロ。イラク戦争開始直後の03年4月に占拠され、同年9月から04年12月まで、米軍とポーランド軍などが「キャンプ・アルファ」基地として使用した。

 ユネスコの報告書によると、敷地内には長さ13~162メートル、幅や深さが約1~3メートルの溝8本が掘られていた。また、表土が広範囲にはぎ取られたり、整地された場所も20カ所以上あった。こうした工事は防御設備などの構築を目的に施されたとみられる。

 溝のうち少なくとも2本は、未発見の埋蔵物の一部を掘り起こしていることが確認された。また、重機の移動でネブカドネザル2世王(紀元前605年ごろ~562年在位)が建設した宮殿に通じる「行列道路」の路面が損壊した。寺院の一部は屋根が崩壊しており、近くの発着場を利用するヘリコプターの振動が原因だった可能性があるという。

毎日新聞 2009713日 1059分(最終更新 713日 1414分)


米陸軍:脳損傷検査、帰還兵に義務化せず 医師勧告を無視

2009年5月23日 2時30分 更新:5月23日 2時30分

 【ワシントン大治朋子】イラクやアフガニスタンでの対テロ戦争に派遣された多くの米兵が外傷性脳損傷(TBI)を患っている問題で、米陸軍当局が陸軍医の勧告を受け入れず、帰還兵に対するTBI検査を義務化しない方針であることが分かった。陸軍のTBI問題担当責任者が毎日新聞の取材に明らかにした。背景には戦闘の長期化に伴う兵員不足の中での「患者」増加や医療費増大への懸念があるとみられる。

 武装勢力の手製爆弾(IED=即席爆発装置)攻撃を受けTBIを負った兵士の治療や診断状況について、米陸軍軍医総監直属の作業部会は07年と08年、内部調査を実施。その報告書によると、戦地に派遣する兵士に記憶力や反応速度などを測るTBI検査を07年秋から義務付けたが、帰還兵には同様の検査を行っていなかった。

 作業部会は07年報告書で「(イラク戦争開戦の)03年から07年までに帰還した陸軍兵士はTBI検査を受けていない」と指摘、改善を求めた。さらに08年報告書では、全帰還兵に対しTBI検査を行うよう勧告した。

 米西部コロラド州のフォートカーソン米陸軍基地など一部では、帰還兵へのTBI検査を自主的に義務化する動きもある。だが、陸軍のTBI問題担当責任者のリン・ロウ中佐は毎日新聞に「IED攻撃を受け、頭痛やめまいなどを訴える兵士には必要に応じて検査を行っているが、全員に義務化する必要はない」と述べた。

 米国防総省は今年3月、TBIを発症する米兵は30万人以上になると推計。しかし昨年末までにTBIと診断された米兵は2万人余りにとどまる。多くは症状を「戦争による疲れ」などと誤解し、診察を受けていない。


米国:
チェイニー氏、オバマ政権の対テロ政策厳しく批判

 【ワシントン小松健一】「オバマ大統領は自らの決定を後悔するだろう」--。米国のチェイニー前副大統領は21日、ワシントンで講演し、オバマ政権の対テロ政策を厳しく批判。「米国をテロの危険にさらし、国家安全保障を損なう」と訴えた。

 チェイニー氏は1月の退任後、積極的にテレビのトークショーに出演。「反オバマ政権キャンペーン」の論客として米メディアの脚光を浴びている。

 講演は、グアンタナモ米軍基地のテロ容疑者収容所閉鎖に関するオバマ大統領の演説の直後に行われた。

 オバマ大統領がテロ容疑者への水責めなど過酷な尋問を禁止したことについて、チェイニー氏は「(尋問で)貴重な情報をつかみ、米国へのテロ攻撃を未然に阻止することができた」と反論した。

 共和党の間ではチェイニー氏の主張を支持する声は多い。米CNNの21日の世論調査では、同氏に「賛同する」人は37%に過ぎないが、1月から8ポイント上昇している。

毎日新聞 2009年5月22日 21時10分


米大統領:
グアンタナモ閉鎖「公約通り実行」

 【ワシントン小松健一】オバマ米大統領は21日、国立公文書館で演説し、グアンタナモ米海軍基地(キューバ)のテロ容疑者収容所閉鎖を公約通り実行することを強調した。

 閉鎖を巡っては、共和党だけでなく民主党も収容者が米本土に移送されることへの懸念を強めているが、大統領は収容所が「自由と正義」に基づく米国の憲法と法の支配を著しく傷つけたと指摘した。

 収容者に対する適正な司法制度を確立するとともに、閉鎖によって「米国民を危険にさらすことはしない」と明言し、議会と国民に理解を求めた。

 一方、司法省は21日、98年のタンザニアとケニアの米大使館爆破テロに関与したとして、06年から収容所で拘束されているアハメド・ガイラニ容疑者をニューヨークの連邦裁判所で裁判手続きを行うと発表した。

 グアンタナモ収容所から移送され、通常の刑事裁判で審理される初のケースになる。演説に合わせた発表は、オバマ政権が閉鎖に向けた手続きを進めるとの意思を明確にしたものといえる。

 収容所には現在240人いる。オバマ大統領は演説で容疑内容によって(1)連邦裁判所での審理(2)軍事法廷での裁判(3)裁判所の決定による釈放(4)本国や第三国への送還--などのケースがあると指摘。そのうえで「容疑者を厳重に警備された施設に移し、米国の国家安全保障にとって危険な人物は決して釈放しない」と述べた。

 また収容所閉鎖に反対する議会の考えは「間違っている」と強調。「閉鎖は難しく複雑な問題だ」と認める一方で、「ブッシュ前政権時代の『(テロの)恐怖』に基づく性急な措置が法の支配を揺るがした」と語った。

毎日新聞 2009年5月22日 1時23分(最終更新 5月22日 13時08分)


グアンタナモ:
米上院、閉鎖予算認めず 大統領苦境に

 【ワシントン小松健一】米上院本会議は20日、グアンタナモ米海軍基地のテロ容疑者収容所閉鎖に必要な費用8000万ドル(約76億円)について、支出を認めない条項を追加した補正予算案を賛成90、反対6で可決した。下院も14日に閉鎖関連費用の計上を拒否する補正予算案を可決している。来年1月までの収容所閉鎖を決定したオバマ大統領は、身内の民主党からも抵抗に遭い、苦境に立たされている。

 民主党議員の間では、閉鎖後の収容者の移送先など詳細な計画を明示しないオバマ大統領への不満が高まっていた。オバマ大統領は21日に演説し、閉鎖の手順などを説明し議会の理解を求める方針だ。

 議会側は、収容者の米本土への移送を拒否する姿勢を鮮明にしている。連邦捜査局(FBI)のモラー長官も20日の下院司法委員会で「米本土に移送すれば、米国はテロのリスクにさらされる」との懸念を示した。オバマ大統領が議会や政権内の懸念を払拭(ふっしょく)できるかが焦点となる。

毎日新聞 2009年5月21日 11時20分(最終更新 5月21日 12時06分)


米国:
対テロ戦参加の陸軍兵、自殺率が倍増 イラク開戦後、長期従軍で疲弊

 【ワシントン大治朋子】イラクやアフガニスタンでの対テロ戦争に従軍した米陸軍兵の昨年の自殺率がイラク戦争前に比べて倍増し、ベトナム戦争以来、初めて一般の米国民の自殺率を上回ったことが分かった。今年の自殺件数は「調査中」も含めると既に91件で、過去最悪となった昨年の143件を上回る見通し。戦争の長期化で米兵の6人に1人が3回以上従軍しており、背景には過剰展開による米軍の疲弊があると指摘されている。

 米陸軍が毎日新聞の取材に提供した資料によると、同軍兵士の昨年の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)は20・2人で、イラク戦争前の02年(9・8人)から倍増している。兵士と同世代(20~34歳)の米国民の自殺率は19・5人(05年統計・米陸軍修正値)で、この割合を上回ったのは「ベトナム戦争以来」(米陸軍)という。

 昨年の自殺は、今年1月時点の集計では128件だったが、その後「調査中」とされたケースの大半が確認され、143件(今年3月時点)に増えた。記録を取り始めた80年以降で最多という。今年は、既に4月末までに46件が確認され、45件が調査中となっている。

 戦争の長期化で陸軍は本来12カ月の従軍期間を15カ月に延長。除隊希望者には1年前後の延期を命じるなどして兵員不足を補った。この結果、米軍全体の4割にあたる約70万人が2回以上従軍している。キアレリ陸軍副参謀長は今年3月、連邦議会で「陸軍はストレスにさらされ、疲弊している」と指摘。兵士の従軍長期化が「自殺の大きな要因」と述べた。

 米陸軍の調査によると、繰り返し配備された米兵は、1回だけの兵士より心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する割合が5割高くなる。

毎日新聞 2009年5月21日 東京朝刊


米兵:
対テロ戦参加、自殺率が倍増…長期従軍で疲弊

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イラク戦争以降の米陸軍兵の自殺件数

 【ワシントン大治朋子】イラクやアフガニスタンでの対テロ戦争に従軍した米陸軍兵の昨年の自殺率がイラク戦争前に比べて倍増し、ベトナム戦争以来、初めて一般の米国民の自殺率を上回ったことが分かった。今年の自殺件数は「調査中」も含めると既に91件で、過去最悪となった昨年の143件を上回る見通し。戦争の長期化で米兵の6人に1人が3回以上従軍しており、背景には過剰展開による米軍の疲弊があると指摘されている。

 米陸軍が毎日新聞の取材に提供した資料によると、同軍兵士の昨年の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)は20.2人で、イラク戦争前の02年(9.8人)から倍増している。兵士と同世代(20~34歳)の米国民の自殺率は19.5人(05年統計・米陸軍修正値)で、この割合を上回ったのは「ベトナム戦争以来」(米陸軍)という。

 昨年の自殺は、今年1月時点の集計では128件だったが、その後「調査中」とされたケースの大半が確認され、143件(今年3月時点)に増えた。記録を取り始めた80年以降で最多という。今年は、既に4月末までに46件が確認され、45件が調査中となっている。

 戦争の長期化で陸軍は本来12カ月の従軍期間を15カ月に延長。除隊希望者には1年前後の延期を命じるなどして兵員不足を補った。この結果、米軍全体の4割にあたる約70万人が2回以上従軍している。キアレリ陸軍副参謀長は今年3月、連邦議会で「陸軍はストレスにさらされ、疲弊している」と指摘。兵士の従軍長期化が「自殺の大きな要因」と述べた。

 米陸軍の調査によると、繰り返し配備された米兵は、1回だけの兵士より心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する割合が5割高くなる。

毎日新聞 2009年5月21日 2時30分(最終更新 5月21日 2時30分)


Suicides among U.S. soldiers in war on terror twice as high as before Iraq War

WASHINGTON -- The suicide rate last year among U.S. soldiers serving in the war on terror in Iraq and Afghanistan was twice as high as before the Iraq War, surpassing the suicide rate among regular U.S. citizens for the first time since the Vietnam War, it has been learned.

There have already been 91 suicides or suspected suicides this year, including cases that are under investigation, and the figure looks likely to surpass the record worst figure of 143 posted last year. With the war prolonged, one in six U.S. soldiers has now served three times or more, raising concerns that troops are becoming exhausted.

Data provided to the Mainichi by the U.S. Army showed that the suicide rate last year was 20.2 people per 100,000, more than double the figure of 9.8 per 100,000 recorded in 2002 before the Iraq War. The suicide rate in the United States among people in the same generation as soldiers (between the ages of 20 and 34), is 19.5 people per 100,000, according to 2005 revised U.S. Army figures. It is the first time since the Vietnam War that the suicide rate among soldiers has surpassed that among regular citizens, according to the U.S. Army.

In January, the number of suicides last year was reported as 128, but other cases that had been under investigation were confirmed after that and as of March the number had reached 143 -- reportedly the highest figure since statistics started being collected in 1980. This year there had already been 46 confirmed cases by the end of April, and 45 cases are under investigation.

Due to the prolonging of the war, the period of active duty for U.S. Army soldiers has increased from 12 months to 15 months. Shortages of soldiers have been covered through such actions as ordering soldiers who want to leave the army to remain for another year or so. As a result about 700,000 troops, or around 40 percent of the entire U.S. military, have served in active duty at least twice. In March this year, Army Vice Chief of Staff Gen. Peter Chiarelli told Congress that the Army was tired and under stress. He said prolonged service was a large factor in suicides.

A U.S. Army survey has found that the rate of post-traumatic stress disorder is 50 percent higher among soldiers who are repeatedly deployed, compared to those who are only deployed once.

(Mainichi Japan) May 21, 2009


米オバマ大統領:
テロ拘束者対応で混迷 軍事法廷再開で

 【ワシントン及川正也】オバマ米政権がテロ拘束者問題で混迷を深めている。オバマ大統領がブッシュ前政権批判の標的とした特別軍事法廷再開を決め、リベラル団体から「公約違反」と失望を買う一方、「拷問」問題では、中央情報局(CIA)とペロシ下院議長(民主党)が「報告した」「しない」の応酬を演じる「内紛」に発展。前政権の「負の遺産」を処理するはずが、政府、与野党を巻き込んだ泥仕合の様相になっている。

 テロ拘束者への「拷問」の象徴とされる「水責め」について、CIAのパネッタ長官は15日、局員向けの声明で、02年9月にペロシ下院議長に「(水責めなど)厳しい尋問をすでに実施した」と報告したと公表した。

 ペロシ議長はブッシュ前政権の拷問を批判してきた急先鋒(せんぽう)だが、当初から拷問の実態を知りながら黙認し、放置していたとの疑惑を招いている。

 議長は14日「水責めは実施されていないと聞いた」と主張、「CIAに欺かれた」と疑惑を否定したが、パネッタ長官の声明は議長発言に真っ向から反論した形で、共和党は「疑惑は深まった」と追及する構えだ。

 ペロシ議長は14日の会見で、下院情報委員会筆頭理事当時の02年のCIA報告について「厳しい尋問は合法、水責めは未実施という説明だった」と強調。後に水責めは02年8月に始まっていたことが判明しており、議長は「CIAの虚偽報告だった」と主張した。

 これに対し、パネッタ長官は「議会を誤った方向に導くのは我々の流儀ではない。(報告を)どう評価するかは議会側の判断だ」と反論した。

 CIAは当時の説明内容の概要メモを公表しており、共和党のベイナー下院院内総務も「ペロシ氏の発言で疑惑は深まった」とCIAを擁護。「オバマ政権=共和党」対「民主党」というねじれた構図になっている。

毎日新聞 2009年5月16日 12時16分(最終更新 5月16日 12時20分)


オバマ米大統領:
グアンタナモの軍事法廷再開を発表 「変節」と批判も

 【ワシントン及川正也】オバマ米大統領は15日、120日間の審理停止を命じていたグアンタナモ米海軍基地の特別軍事法廷でのテロ拘束者の審理を再開すると発表した。オバマ氏は大統領選でブッシュ前政権が設けた特別軍事法廷を「大失敗」と批判。審理停止は同基地の拘束施設閉鎖に向けた一歩と見られていただけに、人権団体からは「変節だ」との非難も出ている。

 オバマ大統領は声明で、特別軍事法廷を「米国を守るためには最善の方法だ」と支持。再開に当たり(1)非人道的尋問で得られた証拠の不採用(2)伝聞証拠の制限(3)証言拒否の保護--などの改善策を導入する考えを示した。

 共和党が再開を支持する一方、人権団体アムネスティ・インターナショナルは「どんな改革をしても拘束者に適切な法的地位を与えていない」と批判。「約束違反だ」と糾弾した。

 連邦最高裁は昨年6月、テロ拘束者について「拘束の是非を争う憲法上の権利がある」として、特別軍事法廷の現状に「違憲」の判断を下している。

毎日新聞 2009年5月16日 東京夕刊


米オバマ大統領:
軍事法廷、審理再開 「変節」批判も

 【ワシントン及川正也】オバマ米大統領は15日、120日間の審理停止を命じていたグアンタナモ米海軍基地の特別軍事法廷でのテロ拘束者の審理を再開すると発表した。オバマ氏は大統領選でブッシュ前政権が設けた特別軍事法廷を「大失敗」と批判。審理停止は同基地の拘束施設閉鎖に向けた一歩と見られていただけに、人権団体からは「変節だ」との非難も出ている。

 オバマ大統領は声明で、特別軍事法廷を「米国を守るためには最善の方法だ」と支持。再開に当たり(1)非人道的尋問で得られた証拠の不採用(2)伝聞証拠の制限(3)証言拒否の保護--などの改善策を導入する考えを示した。

 共和党が再開を支持する一方、人権団体アムネスティ・インターナショナルは「どんな改革をしても拘束者に適切な法的地位を与えていない」と批判。虐待写真の公開を見送った決定と合わせ「約束違反だ」と糾弾した。

 連邦最高裁は昨年6月、テロ拘束者について「拘束の是非を争う憲法上の権利がある」として、特別軍事法廷の現状に「違憲」の判断を下している。

 オバマ政権は同基地拘束施設(現在241人収容)を来年1月までに閉鎖する方針だが、AP通信によると同時多発テロ首謀者を含む13被告の審理は9月以降になる見込みで、特別軍事法廷再開は施設の閉鎖時期に影響を与える可能性もある。

毎日新聞 2009年5月16日 10時58分(最終更新 5月16日 11時42分)


オバマ大統領:
テロ容疑者「虐待写真」非開示に…方針覆す

 【ワシントン大治朋子】オバマ米大統領は13日、イラクやアフガニスタンの収容所で拘束した「テロ容疑者」に対する虐待行為の写真について、公表するとした以前の方針を覆し、非開示にすると表明した。ブッシュ前政権時代に情報公開請求で開示を拒否された市民団体が訴訟を起こし、オバマ政権は公表する方針を示していた。市民団体は「オープンな政府を目指すと誓っていた選挙中の公約を踏みにじる行為」と強く反発している。

 オバマ大統領は会見で、「公表すればさらなる反米感情をあおり、米軍をより危険にさらす」と述べた。

毎日新聞 2009年5月14日 20時10分


イラク:
米兵、同僚5人射殺 任務ストレス、背景に

 【カイロ和田浩明】バグダッドの米軍基地で11日、米兵が銃を乱射し、他の米兵5人が死亡した事件で、マレン米統合参謀本部議長は同日、厳しい任務に何度も派遣されるストレスを背景として指摘した。事件を重視したオバマ米大統領は、真相究明と派遣米兵の保護態勢強化を目指すとの声明を発表した。

 イラク駐留米軍によると事件は同日午後2時ごろ、バグダッド西部のキャンプ・リバティー基地にあるカウンセリング施設で発生。米欧メディアによると、米兵が任務や私生活の悩みを相談する施設に入ってきた容疑者が突然発砲を始めた。

 イラクやアフガニスタンの帰還米兵らの団体「IAVA」によると、イラクでは意図的な友軍殺害事件は5件発生。厳しい任務と、複数回にわたる派遣に伴うストレスへの対策を強化する必要があると指摘している。

毎日新聞 2009年5月12日 東京夕刊


米兵乱射:
ストレスが背景に イラクで5人死亡

 【カイロ和田浩明】バグダッドの米軍基地にあるカウンセリング施設で11日、米兵が銃を乱射し、他の米兵5人が死亡した。米軍は容疑者を拘束し動機などを調べている。マレン米統合参謀本部議長は、厳しい任務に何度も派遣されるストレスを背景として指摘。事件を重視したオバマ米大統領は、真相究明と派遣米兵の保護体制強化を目指すとの声明を発表した。

 イラク駐留米軍によると、事件は同日午後2時ごろ、バグダッド西部のキャンプ・リバティー基地で発生。米欧メディアによると、米兵が任務や私生活の悩みを相談する施設に入ってきた容疑者が突然発砲を始めた。

 イラクやアフガニスタンの帰還米兵らの団体「IAVA」によると、イラクでは意図的な友軍殺害事件は5件発生。厳しい任務と、複数回にわたる派遣に伴うストレスへの対策を強化する必要があると指摘している。

 国防総省などの調査では、イラクやアフガンの帰還兵の約2割が心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状を訴えている。

毎日新聞 2009年5月12日 11時15分(最終更新 5月12日 13時26分)


イラク:
米兵が同僚5人を射殺--バグダッド

 【カイロ支局】イラク・バグダッドの米軍基地で11日、米兵1人が他の米兵に発砲し、5人が死亡した。AP通信などが米軍当局者の話として報じた。

 現場は、バグダッド国際空港そばにある「キャンプ・リバティー」で、同日午後2時ごろに起きたとみられる。

 容疑者の兵士は、身柄を拘束されたという。動機など詳細は不明。

毎日新聞 2009年5月12日 東京朝刊


イラク:
米軍基地で兵士が発砲、同僚5人死亡

 【カイロ支局】イラク・バグダッドの米軍基地で11日、米兵1人が他の米兵に発砲し、5人が死亡した。AP通信などが米軍当局者の話として報じた。

 現場は、バグダッド国際空港そばにある「キャンプ・リバティー」で、同日午後2時ごろに起きたとみられる。容疑者の兵士は身柄を拘束されたという。動機など詳細は不明。

毎日新聞 2009年5月12日 2時35分(最終更新 5月12日 4時35分)


イラク:
治安が悪化 テロ犠牲、先月355人--今年最悪

 【カイロ和田浩明】イラクの治安が再び悪化の兆しを見せている。首都バグダッドなどでテロが頻発、4月のイラク人犠牲者数は355人(AFP通信調べ)と今年最悪を記録し、駐留米軍の撤退計画を発表したオバマ米大統領も懸念を示している。多数派のイスラム教シーア派と少数派スンニ派の宗派対立が依然として不安定化要因になっている。

 テロが多いのはバグダッドのほか東部ディヤラ県や北部の主要都市モスルなど。バグダッド周辺では4月末、わずか1週間で計約190人が自爆テロなどで死亡した。オバマ大統領は「以前に比べ被害は少ない」としながらも、テロの頻発について「懸念の元」と発言した。

 犠牲者にはシーア派が目立っている。4月末には、同派のイラン人巡礼者100人以上もテロで死亡した。駐留米軍は、国際テロ組織アルカイダが宗派間対立をあおっていると指摘する。

 また、治安改善に貢献したとされるスンニ派主導の「覚せい評議会」と、シーア派中心のマリキ政権の対立もテロ増加の一因とされる。マリキ政権は最近、過去の対米攻撃を理由に覚せい評議会幹部を逮捕。評議会側は「政府は我々を排除しようとしている」(バグダッドの幹部)との疑心暗鬼に陥り、一部で治安維持活動に消極的な姿勢も出ているようだ。

 駐留米軍はアルカイダの活動が活発な北部モスルでは、6月末の都市部撤退期限後も残留する可能性を示唆。一方、イラク政府は「予定通りの撤退」を強硬に主張している。

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 ■イラクでの主なテロ(09年、地元報道など)
1月    自爆テロ2件、約60人死亡(バグダッド近郊)
2月    女性を使った自爆テロや車爆弾テロ2件、約60人死亡(バグダッド)
3月    爆弾テロ、120人以上死亡(バグダッドなど)
4月 6日 連続テロ、37人死亡(バグダッド)
  23日 テロ4件、88人死亡(バグダッド近郊)
  24日 テロ2件、60人死亡(バグダッド)
  29日 51人死亡(バグダッド)
5月    車爆弾テロ2件、17人死亡(バグダッド)

毎日新聞 2009年5月11日 東京朝刊


米兵脳損傷問題:
対策費16%増 米当局が300億円予算計上--10会計年度

 【ワシントン大治朋子】米退役軍人省は7日、10会計年度(09年10月~10年9月)予算の詳細を発表し、爆弾攻撃を受けた米兵に見られる外傷性脳損傷(TBI)の対策費に3億ドル(約300億円)を計上した。前年度に比べ16%の大幅増で、TBIの帰還兵の治療や検査の徹底を図る。

 同省は特に重視する政策の一つにTBI対策や遠隔地の医療体制改善を掲げた。手製爆弾(IED=即席爆発装置)攻撃により脳内の組織が破壊される兵士特有のTBIは、診断に特殊な医療器具や専門的な知識が求められる。地方の遠隔地ではこうした医療体制が整わず、多数の帰還兵が長期間診察を待たされたり誤診を受けている。今回の予算ではこうしたTBI患者の対策も含め、遠隔地の医療充実を図るため前年度の6倍余りの4億4000万ドルを計上した。

毎日新聞 2009年5月9日 東京朝刊


米下院歳出委:
総額9兆3000億円の補正予算案まとめる

 【ワシントン大治朋子】米下院歳出委員会は4日、イラク・アフガニスタン戦費や新型インフルエンザ緊急対策費などを盛り込んだ総額942億ドル(約9兆3000億円)の09会計年度補正予算案をまとめた。7日にも同委員会で採決し、来週中に米下院にはかる。政権側はグアンタナモ米海軍基地(キューバ)収容所の閉鎖に伴う費用も求めたが「(閉鎖の具体的な)計画が示されていない」として却下された。

 イラク・アフガン戦費はこのうち816億ドルを占める。アフガン戦争で重視されるパキスタンには経済支援として10億ドル、軍事用輸送機購入に22億ドルをつけた。新型インフルエンザ対策には、政権側が請求した額より5億ドル多い20億ドルを認めた。ワクチンの研究開発などにあてられる。

 一方で、政府が求めたグアンタナモ収容所閉鎖に伴う米国内の代替施設建設費など8000万ドル(約79億円)は認めなかった。同収容所には約240人が拘束されているが、米国防総省はその移転先や移送人数は発表していない。収容者の米国移送には民主党議員からも抵抗が強い。

毎日新聞 2009年5月5日 20時00分(最終更新 5月5日 20時05分)


米国務長官:
イラク武力闘争「再燃兆候なし」

 【カイロ和田浩明】クリントン米国務長官は25日、就任後初めてバグダッドを訪問した。ロイター通信などによると、イラクで最近連続している大規模自爆テロについて、長官は「状況改善への現状拒否派の恐れを示すものだ」と発言、宗派間武力闘争が再燃する兆候は無いとの認識を示した。長官はマリキ首相やタラバニ大統領らと面会、イラク市民との集会に参加する。

 イラクでは23、24日にバグダッドや周辺地域で4件の自爆テロが連続して発生、約140人が死亡するなど、治安が再び不安定化する懸念も出ている。

毎日新聞 2009年4月26日 0時20分


イラク:
バグダッドでまた2件の自爆テロ 60人が死亡

 【カイロ支局】イラクの首都バグダッドのイスラム教シーア派のモスクで24日、2件の自爆テロがあり、ロイター通信によると少なくとも60人が死亡、125人が負傷した。自爆した2人はモスクの入り口付近で、服に仕込んだ爆弾を爆発させたという。

 バグダッドと隣接のディヤラ県では23日に2件の自爆テロで78人が死亡しており、治安の悪化が懸念されている。

毎日新聞 2009年4月24日 22時15分


イラク:
バグダッドなどで爆弾テロ…78人が死亡

 【カイロ和田浩明】バグダッドや隣接するディヤラ県で23日、2件の自爆テロがあり、AP通信によるとイランの巡礼者や警官を含む合計78人が死亡、約130人が負傷した。イラクの1日のテロ被害としては過去1年間で最大級。駐留米軍撤退や連邦議会選挙を控え、治安の再悪化も懸念されている。

 1件目はバグダッドの商業街カラダ地区で、警察による食料配給に集まった人たちの近くで発生。警官8人を含む31人が死亡した。容疑者は女だったとの目撃情報もある。

 ディヤラ県のムクダディヤでは飲食店で爆発が起き、47人が死亡した。犠牲者のほとんどはイラン人で、イラク南部のイスラム教シーア派の聖地を巡礼するため入国していた。

 一方、イラク国営テレビなどは23日、国際テロ組織アルカイダ系とされる組織「イラク・イスラム国」指導者、アブオマル・バグダディ師がイラク当局に拘束されたと報道した。同師は過去にも逮捕発表があったが後に誤りと判明しており、本人確認が続いているという。

毎日新聞 2009年4月24日 11時56分(最終更新 4月24日 13時01分)


対テロ戦米兵:
脳損傷 対策、国防総省が長期放置 発症可能性、専門家が99年に指摘

 【ワシントン大治朋子】イラクやアフガニスタンで手製爆弾(IED=即席爆発装置)攻撃を受けた米兵2万人以上が爆風による外傷性脳損傷(TBI)と診断されている問題で、米国防総省などが99年から研究者に爆風と脳損傷の関係について調査・対策の必要性を指摘されながら長年放置していたことが、毎日新聞の調査で分かった。重い防護服が症状を悪化させる危険性も指摘されたが、同省は07年になってようやく対策を本格化させた。一連の対応の遅れが事態を悪化させた疑いが浮上している。(7面に「テロとの戦いと米国」と解説)

 国防総省は、爆弾による負傷は飛来物などによる直接的な衝撃で起きると考え、重厚なヘルメットや防弾服を積極的に導入した。しかしイラク戦争では、外傷がないのに爆風だけで脳損傷を起こす米兵が続出。米国防総省は07年以降、戦地に向かう米兵の脳機能を事前に検査するなど対策に乗り出した。

 ミネソタ大のデビッド・トルードー准教授は退役軍人省軍医だった98年、湾岸戦争(91年)帰還兵らを対象に脳波の調査を実施。爆風をあびた帰還兵が車の事故で脳損傷を負った患者らと同様の兆候を示すことに気づいた。同年医学論文で発表、翌99年から2年間にわたり複数回、同省に拡大調査の予算措置を求めたが、認められなかったという。論文は最近、「爆風と脳損傷の関係を最初に指摘した」として医学雑誌などに再掲されている。

 また、ジョンズ・ホプキンス大のイボラ・セルナック医師も01年から05年にかけて、米国防総省に対し繰り返し、爆風と脳損傷の関係調査の必要性を訴える提案書を送った。しかし「優先順位が高くない問題」と拒否された。セルナック医師は90年代の旧ユーゴ紛争で、多数の兵士が爆風にあおられ記憶障害などを起こす症例を調査。99年に論文で発表している。

 セルナック医師は重くて硬い防弾服が、爆風が兵士に与える圧力を増幅させることも指摘。国防総省は08年、防弾服を見直し、「(爆風による)衝撃波を消散させるのに効果的」(予算請求書)なセラミック素材の軽量防弾服の研究を始めた。

 「放置」批判に対し、米陸軍病院脳損傷センターのジャッフェ代表は「03年から兵士の脳検査を研究するなど、早期に取り組んできた」と説明している。
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対テロ戦米兵:脳損傷 最新装備の盲点 生き延び、繰り返し負傷
米兵脳損傷対策:国防総省が長期放置 専門家99年に指摘
対テロ戦米兵:脳損傷2万人以上 攻撃の爆風で--外傷なし

毎日新聞 2009年2月21日 東京朝刊


米兵脳損傷対策:
国防総省が長期放置 専門家99年に指摘

 【ワシントン大治朋子】イラクやアフガニスタンで手製爆弾(IED=即席爆発装置)攻撃を受けた米兵2万人以上が爆風による外傷性脳損傷(TBI)と診断されている問題で、米国防総省などが99年から研究者に爆風と脳損傷の関係について調査・対策の必要性を指摘されながら長年放置していたことが、毎日新聞の調査で分かった。重い防護服が症状を悪化させる危険性も指摘されたが、同省は07年になってようやく対策を本格化させた。一連の対応の遅れが事態を悪化させた疑いが浮上している。

 国防総省は、爆弾による負傷は飛来物などによる直接的な衝撃で起きると考え、重厚なヘルメットや防弾服を積極的に導入した。しかしイラク戦争では、目に見える外傷がないのに爆風だけで脳損傷を起こす米兵が続出。米国防総省は対応に追われ、07年以降、戦地に向かう米兵の脳機能を事前に検査するなど対策に乗り出した。

 ミネソタ大のデビッド・トルードー准教授は退役軍人省軍医だった98年、湾岸戦争(91年)帰還兵らを対象に脳波の調査を実施。爆風をあびた帰還兵が車の事故で脳損傷を負った患者らと同様の兆候を示していることに気づいた。同年医学論文で発表し、翌99年から2年間にわたり複数回、同省に拡大調査のための予算措置を求めたが、認められなかったという。論文は最近、「爆風と脳損傷の関係を最初に指摘した」として医学雑誌などに再掲されている。

 また、ジョンズ・ホプキンス大のイボラ・セルナック医師も01年から05年にかけて、米国防総省に対し繰り返し、爆風と脳損傷の関係調査の必要性を訴える提案書を送った。しかし「優先順位が高くない問題」と拒否された。セルナック医師は90年代の旧ユーゴ紛争で、多数の兵士が爆風にあおられ記憶障害などを起こす症例を調査。99年に論文で発表している。

 セルナック医師は重くて硬い防弾服が、爆風が兵士に与える圧力をさらに増幅させることも指摘。国防総省は08年、従来の防弾服を見直し、「(爆風による)衝撃波を消散させるのに効果的」(予算請求書)な伸縮性のあるセラミック素材の軽量防弾服の研究を始めた。

 「放置」批判に対し、米陸軍病院脳損傷センターのジャッフェ代表は「03年から兵士の脳検査について研究するなど、早期に取り組んできた」と説明している。
 ◇補償認定の壁高く

 「テロとの戦い」で爆弾攻撃を受けた米兵に多発する外傷性脳損傷(TBI)は、目に見える傷がないため確認が難しい上、米国防総省の対策が遅れたため、状況をさらに悪化させている。

 武装勢力は不発弾や日用品で作る即席爆発装置(IED)に改良を重ね、威力を増大させている。これに対し米軍は最新鋭の装備を導入。イラク戦争では負傷者の9割が生存し、過去の戦争でも例を見ないほど生存率が高まっている。

 一方で、爆風という予期せぬ凶器は米兵に「見えない傷」を刻み続けていた。記憶障害や頭痛、集中力の低下などをもたらすTBIを患った帰還兵には失業、離婚に追い込まれるケースも多い。少なくとも2万人以上の米兵がTBIと診断されているが、米シンクタンク「ランド研究所」は対テロ戦争に派遣される米兵の約2割に相当する約32万人が同損傷を負う可能性に言及している。米軍管理の病院では記憶障害を訴えた帰還兵が「先天性だ」と言われたり、爆発との因果関係を否定されている。

 退役軍人省の元医師、トルードー・ミネソタ大准教授は「政府は補償費用の問題などがあり、ベトナム戦争や湾岸戦争の帰還兵が訴えた戦争特有の負傷もなかなか認めなかった。今回も同じようなことが起きている」と指摘している。
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ことば:外傷性脳損傷
テロとの戦いと米国:第1部 見えない傷/4 一斉検査、ようやく軌道に
米国:ブッシュ大統領が退任演説 正当性主張、反省も
対テロ戦米兵:脳損傷 最新装備の盲点 生き延び、繰り返し負傷

毎日新聞 2009年2月21日 2時30分(最終更新 2月21日 2時50分)


対テロ戦米兵:
脳損傷2万人以上 攻撃の爆風で--外傷なし

 【ワシントン大治朋子】イラクやアフガニスタンでの戦争で、反米武装勢力の爆弾攻撃を受けた米兵が爆風だけで脳内に特異な損傷を負うケースが多発している。毎日新聞の米国防総省などに対する情報公開請求で、その負傷兵士数が少なくとも2万人以上に上ることが分かった。頭部に外傷がなく、脳組織だけが破壊されて記憶障害などの症状を起こすのが特徴。ハイテク防護服が従来以上に米兵の生命を守る「生き残る戦争」の現状が背景にあり、米軍は対テロ戦争で新たな課題に直面している。

 武装勢力は米軍への攻撃で、改良して爆発力を増したIED(即席爆発装置)と呼ばれる手製爆弾を多用している。毎日新聞が入手した米陸軍病院作成の資料(06年3月)によると、手製爆弾の多くは超音速(秒速約340メートル以上)の爆風を生む。武装勢力は爆弾を道路脇などに仕掛け、米軍の至近距離で爆発させている。

 医療関係者らによると、爆風の衝撃波が外傷性脳損傷(TBI)という負傷をもたらす。著しい記憶障害やめまい、頭痛、集中力低下などが主な症状。過去の戦争での医学的データはほとんどなく、損傷のメカニズムは分かっていない。

 国防総省の開示文書によると、同省管理の病院で03年1月から昨年末までに脳損傷と診断された米兵は約9000人。また、退役軍人省が管理する病院では07年4月から08年10月までに、約1万3000人が同様の診断を受けており、総数は2万2000人に及ぶ。さらに2万人に「疑い」があり、実数はこれを大きく上回るとみられる。詳しい診断状況が報じられるのは、米メディアも含め初めて。

 陸軍病院脳損傷センター代表のマイケル・ジャッフェ医師は取材に対し、05年以降、論文などでこうした脳損傷の発生について「強調した」と述べた。しかし、米軍が対策を本格化させたのは07年秋以降で、米国防総省は事態を認識しながら、迅速な対応を取らなかった疑いもある。

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 ■ことば
 ◇外傷性脳損傷(TBI)

 外力によりもたらされる脳の組織の損傷。日常生活では車の事故やスポーツでの転倒などで頭部に直接的な衝撃を受けて起きることが多い。戦場でのケースの大半は爆発の爆風によるもので、外傷がない。診断が難しく、脳機能の回復にはリハビリなどが必要。治療が遅れると症状が固定しやすい。
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毎日新聞 2009年2月17日 東京朝刊


対テロ戦米兵:
脳損傷 最新装備の盲点 生き延び、繰り返し負傷

 イラクやアフガニスタンに派遣された米兵が、武装勢力の手製爆弾攻撃で「見えない傷」を受ける問題が浮上している。オバマ政権はアフガン駐留米軍を最大で約3万人増派して倍増させる方針で、米兵の負傷者増加が懸念されている。ハイテク装備の米軍とゲリラ的に攻める武装勢力が対峙(たいじ)する「非対称の戦争」は、米兵の負傷状況にも未知の領域をもたらしている。【ワシントン大治朋子】
 ◇生き延び、繰り返し負傷

 爆発による爆風は一般に、4種の損傷(爆傷)を与えるといわれる。

 第1は急激な気圧の変化によるもので、空気を含む体内の肺や腸のほか、耳や目などが損傷を受けやすい。第2は、爆発で飛ばされる金属片やがれきによる外傷。第3は、爆風で地面にたたきつけられたり建物の倒壊などによる負傷。第4は、やけどなどだ。

 イラク戦争開戦後の03年夏、武装勢力は即席爆発装置(IED)攻撃を激化させた。このため米軍は巨額の資金を投じ、地雷にも耐えうる装甲車を大量に購入。最新のヘルメットや防護服を導入した。その結果、イラクでは負傷兵の9割以上が命を取り留めるようになり、米軍の戦いはかつてない「生き残る戦争」へと変質した。

 米兵の死者と負傷者の比率はベトナム戦争で1対2・6、湾岸戦争で1対1・2。イラク戦争ではこれが1対7・3となり、負傷者の割合が極めて高くなった。

 ハイテク装備や戦場での高度な医療体制がもたらした変化と見られている。
 ◇損傷のメカニズム不明

 だが一方で、遠隔操作により至近距離で爆発するIEDが放つ超音速の爆風は、外傷性脳損傷(TBI)という「見えない傷」を兵士の脳にもたらしていることが判明。「気圧の急激な変化」がもたらす爆傷の第1のケースに分類されているが、兵士の一般的な負傷としては過去に知られておらず、損傷の詳しいメカニズムなども分かっていない。

 米兵は戦場で繰り返し爆弾攻撃を受けることが多い。過去の戦争では死亡していたような大規模な爆発も、戦闘服やヘルメットなどのハイテク化で生き延びるようになった。その結果、一人の兵士が繰り返し爆風にあおられることも多くなっているとされる。

 戦争の長期化も、兵士の健康面に悪影響を及ぼしている。米国防総省が毎日新聞に開示した文書によると、01年10月以降、「テロとの戦い」に派遣された米兵は約180万人。

 このうち派遣2回以上は約69万5000人で、3分の1以上を占める。派遣3回以上は18万人で、全体の1割。十分な治療を受けず繰り返し爆風にさらされることは、症状の固定化につながるとされる。

 帰還兵の治療に当たるウェイン・ミシガン州立大のミリス教授は「爆風という凶器と、米軍のハイテク装備がぶつかり合って生まれた、新しいタイプの脳損傷だ」と指摘する。
 ◇検知自体が難しい爆風による脳の損傷--カリフォルニア大サンフランシスコ校のアリサ・ジーン教授(神経放射線学)の話

 ドイツ南西部にあるラントシュトゥール米軍病院で07年に約1カ月間、医療ボランティアとして働いた。毎日、米兵30~40人が負傷から8~24時間以内に運び込まれた。TBI(外傷性脳損傷)が疑われる米兵約150人の調査を行った。

 IED(即席爆発装置)による負傷が大半だった。TBIの早期処置で重要なことは、損傷を受けた脳細胞が死滅せず回復できるよう、血流を促し適切な環境を作ることだ。

 だが爆風によるTBIは、検知自体が難しい。精巧なMRI(磁気共鳴画像化装置)なら一部確認できることもあるが、磁気を使うので爆発で金属片が体内に入っている可能性のある兵士には使えない。画像で明確にとらえる技術は国防総省などが開発を進めているが、まだ研究中だ。

 若い兵士なら自力回復することもあるが、一度被爆した人が再び爆風を受けると、TBIを起こす可能性は1・5倍に高まるというデータもある。イラクでは、負傷兵の半数以上が72時間以内に部隊に戻っている。学生スポーツでは、一度頭に衝撃を受けたら、頭痛など何らかの症状があるうちは試合に戻さない。兵士も何らかの症状がある限り、戦闘に戻るべきではない。
 ◇家族の助けなければ乗り越えられない--帰還兵の相談を受ける米ミシガン脳損傷協会のリチャード・ブリッグス元空軍少佐の話

 (イラク、アフガン)帰還兵への聞き取り調査によると、兵士は戦場で1年に200回前後のパトロールを行い、その過程で平均12~15回のIED攻撃を受けている。

 帰還後半年から1年して「以前は普通にできたことができない」と相談に来る人が多い。簡単なことが記憶できず、職場を解雇されたり失業することもある。精神的に不安定になり、酒を飲みすぎて妻や子供との関係が悪化したり、光に過敏になるので暗い部屋に閉じこもり、戦争もののテレビゲームにふける帰還兵を多く見てきた。

 自暴自棄になり自殺に走ることもあるが、兵士としての経歴に傷が付くと考えて治療せず、戦場に4回も5回も戻った者もいる。戦地には仲間がいて、すべてがルール化されているので日常生活より居心地が良いと感じてしまうのだ。

 TBIの症状がありながら戦場に戻るのは危険だ。彼らには「命令が記憶できない君が行けば、仲間を危険な目に遭わせることになる」と説得している。兵士の帰還前には家族を集め、TBIのせいで別人のようになってしまうかもしれないことや詳しい症状を説明している。家族の助けがないと、この問題は乗り越えられない。

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 ■ことば
 ◇IED

 Improvised Explosive Device(即席爆発装置)の頭文字を取った略語で、武装勢力が不発弾や日常品で作る手製爆弾を指す。路上などに仕掛け、米軍車両が近づくと携帯電話などで遠隔操作し起爆させる。対人用の小型爆弾から、戦車を破壊するほど威力の強いものまである。手製のため、威力や機能が異なり一律的な対応は難しい。米軍は携帯電話の電波を妨害する装置を導入するなど対策を模索している。
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毎日新聞 2009年2月17日 東京朝刊


オバマ米大統領:
グアンタナモ閉鎖 人権と安全、両立訴え 最初の試金石に

 【ワシントン大治朋子】オバマ米大統領は22日、グアンタナモ収容所の1年以内の閉鎖を命じ、ブッシュ前政権との「決別」を明確にした。国民の安全確保と「容疑者」の人権保護は両立できると訴えるが、大統領としての手腕が問われる最初の試金石となりそうだ。

 閉鎖に向けた課題は三つある。米国防総省が「容疑なし」とした約60人の収容者の送還先だ。イエメンなど「送還先の政府に厳しい監督が期待できない」(米国防総省)例や、非人道的な扱いを行う懸念のある国も存在する。

 欧州連合(EU)などは受け入れの検討を表明。ゲーツ国防長官は22日、記者団に「(前政権時代には)なかった反応」と期待したが、どこまで協力を得られるかは不明だ。

 「訴追が必要」な約80人の扱いも課題だ。移送先として米中部カンザス州などの米軍施設の名前が候補に挙がっているが、地元議員が猛反発している。同省が希望する「新たな拘束施設」の国内設置には、人権団体が「第二のグアンタナモ」と反対している。

 グアンタナモの特別軍事法廷では米同時多発テロ(01年)の主犯格とされる国際テロ組織アルカイダの元最高幹部、ハリド・シェイク・モハメド被告ら21人の審理が行われてきた。新政権は通常の裁判所への移管に前向きだが、治安当局は「秘密情報が公表される」と懸念する。

 三つ目は「訴追できないが、釈放するには危険」とみる約100人の処遇だ。元収容者が釈放後、テロ事件を起こせば新政権の責任が問われるが、容疑なしのまま拘束を続ければ「ブッシュ政権と同じ」とみなされる。

 大統領は就任演説で「安全」のために「理想」を犠牲にした前政権を暗に批判した。グアンタナモの収容者を合法的に処遇することが米国への反感をなくし「安全につながる」と訴えるが、「理想論だ」(共和党議員)との批判も強い。

 ブルッキングス研究所のウィッツ上級研究員は、「実際に閉鎖したわけではなく、過剰評価すべきではない。早期に閉鎖ができないため時間稼ぎの苦肉の策でもある」と指摘する。

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 ■ことば

 ◇グアンタナモ収容所

 キューバの米海軍グアンタナモ基地(総面積116平方キロ)の一角に02年1月に設置された。現在は約245人を収容。従順度などで少なくとも八つの施設に分かれる。土地は米国が1903年、当時は友好関係にあったキューバから租借したが、キューバ現政権は「違法占拠」とみなしている。

毎日新聞 2009年1月23日 東京夕刊
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